何のために生きるのか
ナックル星人に泣かされる日が来るとはなぁ……
小田さん……思わず名前を呼んでしまうほど今回のウルトラマンタイガは悲しい結末でしたね。最近のタイガは序盤でよく見られた「ゲストキャラがすぐに死亡する」展開があまりなかったので、今回のラストは衝撃的でした。
戦いから逃れようとしていたのに、実は何よりも戦うことを望んでいた小田さんの葛藤と選択は見ていて辛く感じるものもある一方で、夕日をバックにした戦闘シーンも相まって美しく思える面もあったので、視聴後は何とも言えない複雑な気持ちにさせられました。
戦いの後でどうすればよかったのかタイガに問いかけるヒロユキと、「わからない」としか答えられなかったタイガの様子も悲しくも美しいラストを彩っていたと思います。
- 今週のトレギア
出てくるたびに視聴者のヘイトを買う霧崎(トレギア)ですが、今回は特にそのド畜生ぶりが発揮されていたと言えます。
小田さんの内に秘めた感情を揺さぶりながら、ブラックキングの卵(この怪獣の卵が出てくるのは何気に初めてだったので驚きました)まで利用して、彼を後戻りできない道へと追いやるという手口は、あくまで小田さんが自分の意志で選択するように誘導したに過ぎない点がタチの悪さを際立たせています。
小田さんの戦いを笑いながら見つつ、彼の最期に形だけ追悼するようなポーズを見せる姿も、見てて最高に胸糞悪くなりました。
それにしても、トレギアの下衆っぷりが描かれれば描かれるほど、コイツとタロウが過去知り合いだったというのが信じられなくなります。両者の関係についてはいつか語られる時が来るとは思いますが、個人的にとても気になって仕方ないので早く明かしてほしいですね。
- 夕映えのウルトラマン
今回のエピソードで一番驚いた点と言えば、小田さんの回想に登場した光の巨人がどう見ても「帰ってきたウルトラマン」こと「ウルトラマンジャック」だったことですね。
ナックル星人はジャックの宿敵ともいえる宇宙人なので当然と言えば当然かもしれませんが、どのウルトラマンに負けたのかはっきりと映し出さなくても済む場面でシリーズのファンなら誰だかすぐにわかるように描いた点に、製作側の拘りが感じられました。
このジャックは一体いつの時代のジャックなのか、はたまたTVとは別宇宙出身のジャックなのか、他にも小田さんにトドメをささなかった理由はあるのかなど、様々な疑問はありますが、過去作を見てきたファンにはたまらない素晴らしいサプライズでした。
- ニュージェネの宇宙人描写について
”ニュージェネレーション”に属するウルトラマン作品の大きな特徴の一つとして、「宇宙人に個人名と個性が与えられている」点が挙げられます。過去のウルトラマンシリーズに登場する宇宙人の殆どは種族名で呼称されていて、同じ宇宙人が複数名登場していても一括りにされることが多く、1人1人の個性などは描かれませんでした。
しかし平成に入ってからのウルトラマンは種族名の他に個人名を持った宇宙人もごくわずかですが登場するようになり(まず思いつくのは「サイコキノ星人のカコ」や「チャイルドバルタンのシルビィ」でしょうか)、ニュージェネに入ってからは宇宙人たちに個性が加わりました。特に既存の宇宙人に個性がついたことは大きく、過去の作品で定着した「この宇宙人はこういう奴だ」といったイメージが大きく変えられることになります。
例えば同じメトロン星人でも『ギンガS』に登場した「ジェイス」と『オーブ』に登場した「タルデ」はどちらも過去のメトロン星人のイメージとはまた違った側面を持っており、それぞれが全く別人だとわかるほど性格もその後辿った結末も異なっていました。(最も、どちらも多くのファンが抱くメトロン星人の情緒溢れる要素も備えていましたが)
今回登場したナックル星人オデッサ、もとい小田さんも同様です。ナックル星人といえば『帰ってきたウルトラマン』における極悪宇宙人の代表格みたいなイメージがありましたが、小田さんはタイガとの戦いの中に挿入された独白でも最後までヒロユキのことを気にかけているなど、そんなイメージを払拭させてしまうほど優しい人物でした。
幼少期、ウルトラマンを見ながら「同じ地球人でもみんな自分の名前を持っているのに、宇宙人たちには名前がついていないのだろうか?」というませた疑問を持っていた自分にとって、これは表現の素晴らしい進歩だと思います。宇宙人を「種族全体」ではなく「個人」として描いてくれる今のウルトラマンは、”ニュージェネレーション”を名乗るに相応しい作品群だと言えるでしょう。
次回は魔法使いを名乗る女性が登場するようですが(本当に特殊能力持ちの女性が多いなこの地球……)、それ以上に『ウルトラQ』に登場した怪獣パゴスが50余年ぶりに出演することに驚きました。過去作の怪獣が意外な形で再登場するのも最近のウルトラマンの魅力の一つですね。
ではまた、次の機会に。