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さらば、正義に仕える6本の剣(雑記 2020.3.1)

 

 

 

 スーパー戦隊シリーズ第43作目『騎士竜戦隊リュウソウジャー』が今日、最終回を迎えました。冒頭から巨大ロボ総動員というクライマックスな戦闘に加え、前代未聞のレッド抜きの名乗りを決めるなど最後まで過去作のお約束に縛られない展開を見せてくれました。思えば、本作は当初からこちらの予想とは大きく異なるものをやり続ける作品だったと言えます。

 

 

 9人以上もいる究極の救世主怪盗と警察の対決と2年続けて変化球を投げ続けてきたスーパー戦隊が次に送り出したリュウソウジャー。第1話では主人公たちのマスターがまとめて死亡し、大迫力のロボ戦を見せるといった引き込まれる内容から始まりましたが、物語が進むにつれコウたちリュウソウ族のどこかズレた感覚や、やや強引に思える展開などが気になり、そのカオスさからネットの視聴者に「蛮族戦隊」「ケボーンキメてる」「自分をギンガマンだと思い込んでいるニンニンジャーなどと揶揄され、どこか否定的な意見が多かったように思えます。(個人的にはメイン脚本家の山岡潤平(やまおか・じゅんぺい)さん*1が戦隊のテンポやノリに慣れてなかったかのように感じていました)

 しかしワイズルーやカナロなど、本作を象徴するキャラクターが出てきてからは作品としての動かし方がわかってきたのか蛮族やケボーンの要素はそのままに1話1話の物語の完成度も徐々に上がってきて、純粋に面白いという意見が増えてきました。その後ナダという人気キャラクターを巻き込んでからの怒涛の展開から一気に駆け抜けていったことで、これまでの要素を全て作品の「個性」として見事昇華させ、シリーズでも類を見ない唯一無二性を獲得しました。

 

 そうした中でリュウソウジャーが評価されてきたのは、様々な奇抜さを見せながらも「困難に立ち向かう覚悟」や「辛い道を仲間と進むこと」を一貫して描き続けてきた点にあると考えています。序盤に繰り広げられた”マイナソーを生んだ人間ごと斬るか”といった選択から始まり、最終決戦でも”相棒である騎士竜たちを犠牲にするかどうか”で悩み、決断していく彼らをキチンと描いてきたからこそ、視聴者たちに主人公たちの生き様がしっかりと刻み込まれてきました。親のように慕っていたマスターを突然奪われ、ようやく和解することが出来た兄弟子も失っても、彼らの残してくれたソウルと共も前に進むことをやめなかった彼らは、戦隊に相応しいヒーローでした。どんなに頑張っても失われたものが帰ってくることはない、過去の過ちは変えられないからこそ、未来をより良いものにしようとする戦隊を描き続けてきた展開は、序盤の不慣れさを認めながらも少しずつそれを改善してきた本作そのもののように感じます。そうした姿勢が、今日の評価に繋がったのではないかと思います。

 

 物語の終盤、敵方ドルイドンの創造主であるエラスこそがリュウソウ族を生み出したという衝撃の事実が明かされ、生み出したこと自体が間違いだと決めつけるエラスに「みんなと一緒にお腹いっぱい食べたい」という素朴ながら大切な主張をもって反論するアスナは実に逞しい戦隊ヒロインでした。倒れたコウの代わりに剣を2本持って仕切ってくれるメルトは最後までみんなの頼れるブレインでしたし、序盤は生意気だったトワはいつの間にか誰よりも仲間想いな若者になり、バンバは登場時からの堂々とした姿勢を崩さないままカッコよさを維持し続け、カナロは結局運命の相手を見つけられないまま婚活を続けることになりました。

 そしてレッドであるコウは最初どこか掴みどころのない性格をしていて当初は『ゴセイジャー』のアラタのようなキャラクターを思い浮かべましたが、物語が進むにつれ「最初は狂暴だったが、仲間たちのおかげで優しさを手に入れることが出来た」、つまりその温厚さが後付けだったという過去があったことには本当に驚きました。*2しかしエラスが語る「乱暴なリュウソウ族」そのものだった彼が今の性格になれたという事実は、先程も書いた「過去の過ちからより良い未来を作っていこうとする」作品のテーマそのものを象徴しているとわかった時には思わず膝を叩きました。そういった意味でもこの作品は一貫したものを持っていると言えます。

 

 

 周りのイメージや主張などに囚われず、決してブレない「芯」というものを見せてくれたリュウソウジャー。『スーパー戦隊最強バトル』や夏の劇場版、先月公開されたばかりの『VSルパパト』を含め、1年間本当に楽しんで見ることが出来ました。彼らとは一旦お別れすることになりますが、恐らく1年後にまた再会出来ることを願いつつ(カナロは後輩のグリーンかピンク辺りにナンパするんだろうなぁ)、来週から始まる新戦隊『魔進戦隊キラメイジャー』も楽しみながら視聴していきたいと思います。

 最後に、演じてきた役者やスーツアクター、監督と脚本家をはじめとしたスタッフの皆さま、素晴らしい作品を見させてくれて本当にありがとうございました!!

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:『家政夫のミタゾノ』(2016・2018・2019)や『遺留捜査』(2017・2018)などが代表作として有名

*2:これほどの演技力を誇る一ノ瀬颯(いちのせ・はやて)さんという逸材が大学の入学式にスカウトされたという経歴も非常に面白いです。くりぃむしちゅー上田「俺の入学式とかスカウトどころかサークルの勧誘すらなかったぞ」