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『ニュージェネレーションヒーローズ』から見るウルトラマンと人間の距離の変化について

 

 

 明日20日に最新作『ウルトラマンZ(ゼット)』の放送を控えるウルトラマンシリーズ。2013年に始まった『ギンガ』以降、半年周期とはいえ毎年新作のテレビシリーズが作られる今の状況はそれ以前の暗黒の氷河期のことを考えるとまさに常春と言えるでしょう。『GRIDMAN』をはじめとしたアニメ作品に庵野秀明らが手掛ける『シン・ウルトラマン』の発表など、特撮以外にも手を広げまさに絶好調である円谷プロダクションの今を象徴するのが「ニュージェネレーション」と呼ばれるウルトラマンたち。先日僕はそのヒーローたちが集合する『ウルトラギャラクシーファイト』を見返してみて、非常に楽しめました。リーダーシップをここぞとばかりに発揮し、かつての戦友タロウと再び一体化を果たすギンガ、ゼロとの気心の知れたやり取りをするジード、どんな状況でもマイペースに漫才を繰り広げるルーブの兄弟など、この作品はニュージェネレーションの良さを見事に詰め込んだ内容だったと改めて思いました。

 

 

 さて、ここで語りたいニュージェネレーションの良さというのは「”ヒーロー”としての身近さ」に尽きます。

 ウルトラマンは宇宙人であり、人知を超えた力を有する超人です。そんな彼らが地球人と一体化したりあるいは地球人に擬態したりして人間社会に溶け込み、地球の危機が迫った時には本来の姿に戻って戦ってくれる神秘のヒーロー。しかし一方でその神秘だからこそ何を考えているのかわからない不気味さ、得体の知れない存在故の近寄りがたさというのを僕は幼少の頃から感じていました。安心感と同時に幽霊を見ているかのような恐怖がありました。

 

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 そんなウルトラマンも平成のシリーズに入ってから少しずつ変化していきました。『コスモス』で主人公が小学生の頃からの付き合いという子どもたちにとっての憧れの関係を築いたウルトラマンが登場したり、『メビウス』で若きルーキーウルトラマンが地球の文化に目を輝かせながら守ることに関して度々壁にぶち当たり悩み続ける姿が描かれるなど、ウルトラマンも人間と同じように友情を築いたり悩んだりするということが示されました。我々ウルトラマンは神ではない*1というセリフからもウルトラマンに対する認識がこの時点で変わりつつあったように思えます。

 

 

 そうしたウルトラマンのイメージ変化が行われていく中で満を持して登場したのがウルトラマンゼロ。セブンの息子という衝撃的な肩書きでデビューしたこのヒーローはこれまでのウルトラマン像から大きくかけ離れていました。まず人気の声優が声を当てているのもあってかよく喋ります。カッコよく啖呵を切る一方で「俺のビックバンはもう誰にもとめられないぜ!」や「うそーん」といったユーモア溢れる一面も見せてくれます。他にも『サーガ』では一体化した人間と度々言い合いに発展したりするなど*2従来の神秘性を内包したウルトラマンとは180度異なる「気安い」イメージをもたらしてくれました。そのかいあってか今年で10周年を迎えるヒーローであるにも関わらず、子どもたちの人気は今なお衰えることを知りません。

 

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 平成ウルトラマンウルトラマンの人間的魅力を引き出し、ゼロが気安さを開拓してくれた後に、ついに登場したニュージェネレーションはこれまでのノウハウを詰め込んだかのような身近さが存在するヒーローたちでした。まず紹介するべきはインナースペース。変身した人間が不思議な空間で変身アイテムを操作し、必殺技を叫びながら放つ姿はロボットを操縦しているかのような違和感があるものの、子どものごっこ遊びにおけるとっつきやすさ、何より変身する人間がそこにいることがわかる気安さには当時衝撃を受けました。ある意味で画期的な表現方法と言えます。

 

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 またウルトラマンに変身する人間の多種多様さにも驚きがありました。『ギンガ』では防衛隊に所属しないさすらいの高校生が主人公であることに斬新だと感じましたが、それはまだ序の口、銭湯に入ったりラムネを飲んだりどこか気さくなお兄さん感溢れる風来坊が登場した『オーブ』に特別でも何でもない兄弟がウルトラマンになる様子が描かれた『R/B』など、作品ごとに異なるアプローチが見られます。彼ら人間と一体化するウルトラマンに関しても同様です。『X』では真面目な一方で度々どこか抜けた発言をする愛嬌のあるウルトラマンが、『タイガ』では出身も性格も異なる3人のウルトラマンのコントのようなやり取りがそれぞれ描かれています。

 人間やウルトラマンに限らず宇宙人に関してもこのシリーズにおいて大きな変化が見られます。これまで種族名のみで呼称されてきたウルトラマンの宇宙人たちがニュージェネレーションでは個人名と個性がそれぞれ与えられました。同じ種族の宇宙人でも名前の異なる人物によって性格も思想も異なるなど、かつて「種族全体」で描いてきた宇宙人たちを「個人」として扱うように変化した点は特に過去作との違いがハッキリしています。

 

metared19.hatenablog.com

↑宇宙人描写の変化についてはこちらの記事にも少し触れています。

 

 このように非常にバリエーション豊かな表現が見られるニュージェネレーションですが、何より上記の全ての要素に「身近さ」が含まれているのが最大の特徴と言えます。これまでまるで雲の上のような存在だったウルトラマンが、人間と同じように悩み、また同じように楽しむ心を持っている。宇宙人たちも同様に様々な感情を抱えながら生きている・・・・・・最早彼らは人の理解の及ばない「超人」ではなく、人と共に感情を分かち合える「隣人」となったのです。

 

 

 こうした変化がなされたのはある意味社会の意識変化が関係していると個人的に考えています。社会進出が進んで多様性が認められるようになった時代。何よりも「個人」が重視されるようになった今の時代において、ウルトラマンも「個人」として扱われるように変化したのだと思われます。

 またウルトラマンや他の宇宙人を「異邦人」として見るとこの変化にも納得がいきます。昭和のウルトラマンが放送された当時、海外との交流が今ほど盛んではなかった日本人にとって外国の人間というのはまるで宇宙人のような異質な存在に見えたでしょう。その理解出来ない恐怖と畏怖こそがあの頃の宇宙人たちを生み出したのかもしれません。だからこそ、外国の人々も同じ人間なのだと認知されるようになった現在では同じように宇宙人たちも同じ人間として見られるようになったのでしょう。*3

 

 

 時代の変化に合わせて同じように変化していくウルトラマン。今や彼らは人間に寄り添うヒーローとして人間との距離を一気に縮めました。それを良しとするかは人それぞれですが、僕個人としてはこの変化を非常に好ましく思っています。かつて手に届かないようなどこか遠い存在だったヒーローが今や人と同じ視点に立つようになった・・・・・・幼い頃ウルトラマンの近寄り難さに難色を示した当時のことを思うとこれほど喜ばしいことは中々ありません。ある意味でヒーローショーなどで見られる「子どもと握手してくれるヒーロー」になったことをとても嬉しく思います。

 

 

 ウルトラマンには作品ごとにそれぞれ異なる良さがあり、昔も今も楽しい作品だという考えが僕の中にあります。だからこそニュージェネレーションの良さというものを改めて実感したいと思いこの記事を書きました。長々と書きましたが最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

 さて記事の冒頭でも書きましたが、いよいよ明日は新作『Z』の放送日。個性豊かなウルトラマンを描いてきた円谷が次はどのようなヒーローを見せてくれるのかワクワクが止まりません。新ヒーロー誕生の瞬間まで楽しみに待っていたいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』より

*2:上記の「うそーん」はこの映画が初出です

*3:ウルトラマンジード』や『タイガ』に登場する宇宙人たちが難民のように描かれているのもそういった変化が関係しているのかもしれません。