”聖”なる”刃”が全てを救う
剣豪にして文豪!新たなる戦士の物語がここに綴られる───
というわけで始まりました、仮面ライダー最新作『仮面ライダーセイバー』。前作『ゼロワン』とは打って変わってファンタジー寄りの作品という触れ込みの本作ですが、冒頭から謎の人物「タッセル」の語りから物語が展開されていくという驚きの1話でした。それでいてどこか懐かしさも感じさせる内容になっており、早くもハマってしまいましたね。今回はそんな印象的だった要素についてそれぞれ触れていきたいと思います。
- ”本”と”約束”を愛する主人公
まずは本作の主人公「神山飛羽真(かみやま・とうま)」について。作家にして本屋の店主も勤める本好きからしたら大変羨ましい職業についており、さらに店に訪れた子どもたちに本の読み聞かせをしたり仲のいい「亮太(りょうた)くん」の誕生日に本をプレゼントするなど子どもたちに優しい点から早くも個人的な好感度が高めです。でも子どものプレゼントに『家なき子』をチョイスするセンスはちょっとどうかと思う。
こんな感じで子どものことを優先する辺り作家としてはダメなのでは?という疑問に対しても彼の「約束」を何よりも大切にする性格がさらに良い印象を抱かせてくれます。上記の亮太くんとの約束を優先しつつ自分の作品の締め切りもきっちり守る(今時原稿用紙に万年筆で書き上げるスタイルで驚き。そのスタイルなのに1日で書き上げる速筆ぶりにさらに驚き)誠実さ*1や、担当編集の「須藤芽依(すどう・めい)」の「締め切りは明日だけどその日は友達と遊ぶ約束をしているから今日原稿が欲しい」という要求に対して文句の1つも零さずむしろ尊重する様子には非常に驚かされました。マイペースながら自分の信条を決して裏切らず、同時に相手の考えを否定しない大らかさも持ち合わせているかつてない好青年ぶりに衝撃を受けます。かつてない安心感を覚えると同時に「これほどまでに”いい人”が主人公を務めて大丈夫なのだろうか・・・・・・?」という不安も抱いてしまいますね。
しかし単なるいい人で終わらず、本を悪用しようとする輩などには強い怒りを見せる熱い人物であるのはカッコよかったです。先程の約束の話も含め、「絶対に譲れないもの」をしっかりと持っているのは主人公として必要な要素の1つだと個人的に考えているので今後もこの部分も強く押し出していってほしいですね。
- 勇猛なる炎を纏いし紅き竜騎士
ブレイブドラゴン!
『かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた・・・・・・』
烈火抜刀!
ブレイブドラゴン!!
『烈火一冊!
勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣(つるぎ)が悪を貫く!!』
そんな飛羽真が自ら抜いてみせた「聖剣ソードライバー」と物語開始時には既に持っていた「ブレイブドラゴン」のワンダーライドブックを使って変身して見せたのが本作のメインライダー「仮面ライダーセイバー ブレイブドラゴン」。まず目を引くのがその頭部ですね。剣が突き刺さったような角に炎の斬撃が交差したような複眼は1度見たら忘れられないほどの印象を与えます。*2このシリーズは毎年この手のデザインのインパクトが強いですね。他にも右肩の竜をあしらった衣装や右側だけに着いたマントなど全体的にアシンメトリーなデザインが特徴的です。
戦闘スタイルはソードライバーから引き抜いた「火炎剣烈火(カエンケンレッカ)」を駆使した剣戟スタイル。息つく暇もなく繰り出される攻撃の嵐もそうですが、敵の「ゴーレムメギド」の攻撃を剣で打ち返すなど全体的に力任せな戦い方が印象に残ります。また必殺技を繰り出す際に本のページが隣でパラパラ漫画のように展開されてセイバーがそれに合わせて動くという演出を披露したのも面白いです。今回は1話ということもあってCGをふんだんに使用した迫力のあるバトルが展開されましたが、今後CGがなくともこの特徴的な表現方法を見れると思うと楽しみです。
- シャボン玉で魅せるファンタジー表現
他にも今回気になったのが本作のキモであるファンタジー世界の表現方法。敵がブランクのワンダーライドブックを開くことで現実世界の一部がページをめくったかのように無くなり、その一部が異世界へと繋がる演出は実に綺麗でした。現実世界と異世界を繋ぐ方法は古今東西の作品によって様々ですが、それを本という媒体とこれほど上手く融合させる技法は見事というほかありません。
またそれ以上に拍手を送りたいのが「シャボン玉」。異世界と繋がってから元に世界に戻るまでの間シャボン玉が画面全体を終始覆っていましたが、驚きなのがこのシャボン玉が周囲に浮いているだけで「非現実感」が一気に湧いてくる点です。僕自身が「夢の世界にシャボン玉が飛んでいる」ような表現を他の作品などで既に見ていたからこそそう思うのかは知りませんが、これほど安価なもので異世界を表現する手段も中々ないと思います。この作品は今後CGの予算がなくなってしまってもシャボン玉を飛ばすだけで異世界にいることを表現出来るというかつてない強みを獲得しました。この映像表現を最初に考え出した人に「ブラボー!」と叫びたい気分ですね。
とまぁ長々と書きましたが本作は他にも『RX』以来となるアイキャッチに『響鬼』以来となるED、そして『アギト』以来となる歌詞に「仮面ライダー」のワードが入った楽曲など、懐かしい要素が多く見られました。「戦隊っぽい」という声もあるようですが、個人的には昔ながらの特撮作品全体の要素を上手く拾っている印象ですね。
さて無事に始まったセイバー。第1話から盛り上がる要素盛りだくさんで最初から最後まで楽しめました。熱い展開以外にも敵集団「メギド」と彼らに協力する謎のライダー「仮面ライダーカリバー」に、飛羽真の夢の中に出てくる謎の少女と先代の炎の剣士など、気になる要素も非常に多かったです。これらの謎が何を意味するのか予想しつつ、今後明かされていくことを楽しみにしていきたいところです。(あとタッセルは何者なんだマジで)
そして次回は本作の2号ライダー枠である「新堂倫太郎(しんどう・りんたろう)」を主軸とした展開になる模様。今回「普通のホモ・サピエンスには聖剣は抜けない!」というパワーワードをはじめラストにライオンに乗って飛羽真たちの前に登場するなど(これがゾイドワイルドちゃんですか?)早くもネタキャラ街道を突っ走っていますが、彼自身どんな性格なのかが気になります。パッと見彼もまた誠実そうな印象を受けるので飛羽真とはいい関係を築いてほしいですね。
ではまた、次の機会に。