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ゾイドワイルド ZERO 第50話(最終話)「無限大の地球へ」感想

推し迫る未来(とき)を超えて

僕達はゆく

ゾイドの未来はZEROから始まる

blue blue blue

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  • 発売日: 2019/08/21
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 決戦の地にて輝く光

 いよいよ始まった最終回。前回決死のネオヘリック自爆作戦で倒したと思われたゼログライジスが復活し、ボロボロになりながらも向かっていく様子は非常に不気味かつ威圧感があります。共和国・帝国の垣根を超えたチームにレオとバーンも加わってからの総力戦でものっしのっしと歩きながらビームで街ごと相手を粉砕するほどの無双ぶりを見せつけてくれました。(心なしかゴジラのようなテイストを感じます)いつにも増してクオリティの高いCGを多用しているのもあって実に迫力があります。

 また個人的にギレルとディアスがそれぞれジェノスピノとオメガレックスを引っ張り出して戦いに参加したのが嬉しかったですね。ジェノソーサーも荷電粒子砲もなく、ボロボロで不完全な状態でも戦う姿は真っ当にカッコよかったです。武装が無くても動物の爪と牙を活かした肉弾戦を繰り広げるのがゾイドの魅力の1つだと考えているので、それを体現する2大破壊竜の雄姿はとても素晴らしかったです。

 

 そんな破壊竜もゼログライジスの前では全く歯が立たず。そんな中レオとライガーがいきなりゼログライジスのコアに突っ込んだときは驚きました。胸からの破壊光線を受けて装甲の一部が剥がれても向かっていく様はカッコいいものの*1、前置きもなくあまりにも唐突過ぎたので呆気に取られてしまいました。その後ライガーがゼログライジスの体内で攻撃を繰り返して倒すシーンもゾイド因子のオレンジの光が広がりジャミンガやイレクトラまで消滅、そのまま崩れ去るゼログライジスからライガーが出てくるまでの流れが描写があまりにもあっさりすぎたという印象です。ほんの少しでもいいので何が起きたのか説明が欲しかったところ。

 しかしそのシーンで前期のOPである「blue blue blue」が流れたのは良かったです。単純に盛り上がる曲ですし、何よりどこか前向きになれる歌詞がレオとライガーの戦いにピッタリ合っていて流れ出した時は興奮しました。こうしてかなり早足で終わった感じの最終決戦でしたが、最終回の詰め込み具合に何とも言えない”ゾイドらしさ”があって何だかんだで面白いと感じましたね。

 

 

  • いつだって前を見てる

 そうして戦いを終えた後レオたちのその後を描いた後日談が始まりましたが、このパートが長めだったのが意外ながらも嬉しかった点ですね。各キャラがそれぞれどのような道を歩んでいく様子は見ている側としても「終わりの余韻をしっかりと噛みしめられる」ので、それをじっくりやってくれたのは非常に喜ばしいことだと思います。

 ボーマン博士の助手として再スタートしたメルビルにラプちゃんと共に新たな調査に向かうアイセル、コリンズ准将の墓の前に立つギレルや両親に結婚の話を持ち出されるディアスとキャラによってその後は様々。個人的に追われる身ではなくなったことに安堵して光学迷彩を解除するバーンとフォックスに思わずほろりときました。このコンビのラストを見ていると特に「戦いが終わった」という実感が湧いてきます。

 

 一方で38話で登場した野生ゾイドの楽園が他の大陸から切り離されたという事実がレオたちの会話で判明した時は衝撃を受けました。恐らくその独立した大陸こそが前作『ゾイドワイルド』の舞台である「ワイルド大陸」であることが考えられますが、まさかここにきて前作との繋がりを示したのは意外でした。これまで前作とは別の世界観のように描かれていただけに不意を突かれた気分です。ここから数百年かけた結果アラシたちの物語に続いていくと思うとワクワクしますね。

 

 肝心のレオはまさかの父親の後を継いで地球考古学者になるとのこと。個人的にレオは機械いじりが好きというイメージを抱いていたのでそれとは関係のない別の道に進む選択をするのは予想外でした。(どうせなら考古学に興味を持つ描写などを挟んでほしかったです)とはいえサリーとの関係もボーマン博士公認になったり(?)他にも「バズはいらないよ」といったジョークも飛んだりと彼らの元気な様子が最後まで見られてほっこりします。

 そして何より感動したのはレオとライガーが1話で行った崖越えに再挑戦するシーンで締めたこと!これに尽きます。かつて挑んだものの、失敗してしまったチャレンジはレオとライガーにとってまさに超えるべき壁であり、それに再び挑む流れは彼らの成長の集大成を見せつけるに相応しいものでした。満を持してこのシーンを見せてくれたことに感謝の意を示したいです。

 

 

 というわけでゾイドワイルドZEROも無事完結。やるべきことが多く残った前回を見終わった時はどうなることかと心配していたのですが、こうして円満なラストを迎えられたことに安心しました。21話の人形や45話のライオン種のシルエット、イレクトラが宇宙船を襲撃した理由など未回収の伏線・描写などがあったものの物語自体は上手く収めたこと、何よりコロナウイルスによる現在の社会情勢の中きっちりとやりきってくれたことは非常に素晴らしいことだと思います。製作スタッフの皆様、1年間本当にありがとうございました!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾイドワイルド ZERO』総評

 アニメ『ゾイド』シリーズ第6作目として製作された本作。前作『ゾイドワイルド』の異色の作風から一転し、共和国と帝国の対立関係や近未来的世界観など過去シリーズに大きく寄せた「原点回帰」とも言えるコンセプトで描かれました。製作スタッフも監督の加戸誉夫(かと・たかお)氏をはじめとしてシリーズ構成に荒木憲一(あらき・けんいち)氏にキャラクターデザインに坂崎忠(さかざき・ただし)氏と初代『ゾイド -ZOIDS- 』と2作目『ゾイド新世紀/ゼロ』を手掛けた錚々たる面々が集結しており、古くからのゾイドファンに向けて作られた作品であることがよくわかります。

 

 先に評価点について語りたいと思います。(※前作をはじめとした過去のシリーズと比較した発言が度々出てきます。ご了承ください

 本作は何と言ってもゾイドたちの戦闘シーンのクオリティの高さが素晴らしいです。初代アニメの時点でCGの評価の高かったゾイドですが、本作は特にそのCGの美しさが洗練されていました。重厚感のあり、それでいて艶やかなゾイドたちの装甲はどれも美しく、特に主人公機の進化形態であるライジングライガーの金色に輝く装甲の表現には目を見張るものがありました。

 これらのゾイドが動き回る戦闘シーンが肉弾戦だけにとどまらず、砲撃装備なども活かした遠距離戦でも発揮されたのが魅力的でした。頻度は低かったものの武装のカスタマイズによる戦闘スタイルの変化が見られたのもポイントです。他にも巨大なゾイドを相手にした場合の緻密や作戦や多数のゾイド軍団によって展開された集団戦、敵味方問わずゾイドに乗り換えるなど「前作では出来なかったこと」をバトルで思う存分やってくれたように思えます。それらを前作から引き継いだCGを駆使して描いてくれているので実に見応えがありました。

 また初代ゾイドのオマージュが多く見られたのも印象的。終盤のゼログライジスに至っては”真なるデスザウラー”を意識しているであろう描写がチラホラ見られました。これらのオマージュは初代を見たことのあるファンならハッとなるファンサービスであり、一方で初代を知らない世代にとっては新鮮なシーンとして見られる塩梅になっており、その点もまた絶妙だったと思います。

 

 もう1つ世界観と登場人物の良さがあげられます。近未来の文明を持ちながらも荒廃した世界で繰り広げられる国家間の戦争を描いたミリタリーテイスト溢れる作風は人によってはたまらないでしょう。それでいてタイムスリップなどのSF要素も豊富で、かつ前述のミリタリーと上手く噛み合って1つの世界を形成している点が興味深いです。

 過酷な世界で暮らす人々もまた魅力的。基本的にみんな前向きに生きている人たちばかりなので、絶望的な状況でもそれほど暗い雰囲気にならずどこか安心感がありました。そんな一般人たちも良かったのですが、それ以上に共和国と帝国、それぞれに属している軍人たちの描写が見事でした。最後まで諦めずに困難に立ち向かう「カッコいい大人」たちが多く登場し、彼らの活躍を見せてくれるのはこちらとしても楽しかったです。リュック隊長など初期の敵キャラクターが中盤から頼れる仲間となってくれたのが個人的には嬉しかったですね。(一方で新帝国勢のキャラクターがネタキャラとして描かれましたが)

 一方で主人公たちは少年レオと少女サリーのボーイ・ミーツ・ガールが展開されたのも面白い点で、旅を続ける彼らのパートはロードムービーのような風情があり見ていて新鮮に楽しめました。軍人たちの緊迫したやり取りを中和してくれる良い癒し要素です。

 キャラクターの会話が基本的に物静かなのも印象的でした。時に意見が対立するものの変に声を荒げることなく話がスムーズに進行するため非常に見やすいです。他にも主人公が素直で彼と関わる者たちが皆話の分かる人物であるなど、徹底してストレスフリーで見られるように配慮されていたように感じました。

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 まずあげたいのがストーリー全体の単調さ。本作は「地球滅亡の阻止」という大きな目的を主軸にしておりその傍らで起きる戦いや事件に主人公たちが立ち向かっていく、というのが大筋の流れなのですが、基本的にほぼ同じ人物が問題を起こし、しばらくしてから主人公がそれらに関わっていく展開を年間を通して何度も繰り返しているため話が進むほどにどこか既視感のある内容になってしまい、終盤になると退屈とまで思うところがありました。(この辺りは序盤は退屈だった一方で終盤から怒涛の盛り上がりを見せた前作とは真逆の印象を受けます)

 また前述の通り登場人物が変にいがみ合わず、話し合いも作戦もテンポよく進んでいくのですが、一方で驚きの要素が少なく感じる場面もちらほら見られました。大きなトラブルや困難もほとんどなく計画通りに戦いが進行していく様子は見ている分にはストレスを感じないものの、物語に不可欠な”意外性”も同時に失われてしまったように思えます。1話1話の完成度は高く盛り上がるポイントも多いのですが、物語全体で見てみるとどこまでも視聴者の予想の域を超えない「予定調和」すぎた、という印象を受けます。

 

 次に気になったのが主人公とその仲間たちの描写の少なさ。個人的にこの問題点が最も致命的だと考えています。主人公のレオは素直で聞き分けもよく、機械の知識なども併せ持った少年。他の登場人物と話すときも変に否定したりしないなど、視聴者をイラつかせないよく出来た「いい子」です。ただ他人の主張に物申さない一方で自分の考えや主張なども一切見せないため彼個人のキャラクターがどうにも弱いです。本作での彼の行動についても地球を破壊させないという使命感からきたものや軍の知り合いに協力を頼まれたから引き受けたものなど全体的に受け身のため、結局のところ”話の分かるいい子に過ぎなかった”ように思えます。

 他にも肝心のレオとライガーの活躍の場が少なかったのもいただけません。レオたちは前述の通り地球滅亡を防ぐために行動しており、その最中の事件に関しては大抵話の大詰めに差し掛かる辺りになってようやく関わっていくので非常に出番が少ないです。要所要所の重要な場面ではしっかりと活躍しているものの、そこに至るまでの過程で描かれた軍人たちのやり取りの濃さもあって途中から介入してくるレオの印象はどうしても薄くなってしまいます。(レオと行動を共にする仲間たちも同様で、特にサリーはペンダントを失ってからは彼女個人が活躍する機会が失われてしまったのが残念でした)本作が群像劇であると言ってしまえばそれまでですが、物語の中心となるべき主人公としては影の薄さがどうにも拭えませんでしたね。

 

 そして設定などの説明・描写不足なども目立ちました。「ゾイド因子」「Ziフォーミング」「第一世代・第二世代」「ジャミンガ」など話の根幹をなす設定の数々はSF好きとしては非常に惹かれるのですが、これらの説明が終盤につれて雑になっていきました。特にゾイド因子に至っては最終回で起きた数々の現象などの説明を省くための都合のいいものになってしまったように感じます。

 他にも本作のゾイドの扱いに関しては首を傾げる点が多かったです。帝国軍で使われているバイザーに縛られるゾイドを序盤に描写しながら以降バイザーについては触れられなかった点やディアスが愛機であるトリケラドゴスが真っ二つになったことについて特に言及しない点など、「生物」として描写しているはずのゾイドを「道具」として扱う場面が多々見られました。レオたちに関してはかろうじて相棒のライガーたちを大切に想っている場面が見受けられるものの、前述の通り彼らの主張が見られなかったので見ていてあまりそれらが感じられませんでした。いっそのこと兵器として描けば良かったと思うのですが、「人間と共に生きる仲間」という要素もあってどっちつかずになってしまったのではないかと思います。

 

 

 総評としては「良くも悪くも”普通のゾイド」といったところでしょうか。物語自体は丁寧で粗などもなく、登場人物も皆性格が良いのでストレスもなくスイスイ見ることが出来ました。ただそれだけに盛り上がりに欠ける内容になってしまったという印象は否めません。ゾイド作品としてもオーソドックスにまとまっていたのですが、どうせならこの作品にしかない特色などをもっと出すなど尖った要素を見てみたかった、と個人的に感じてしまいましたね。

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

レオ・コンラッド

 本作の主人公。活発な一方で礼儀正しさも持ち合わせたハイスペック主人公ですが、前述の通り主体性といったものがほとんどなかったためどこか影の薄いキャラクターになってしまいました。機械いじりに関しては子どもっぽくはしゃぐ様子や運び屋としてのバズとの関係性など彼個人のキャラクターが感じられる要素もいくつかあってのでその辺りを掘り下げてほしかったところ。

 しかし相棒のライガーとの絆は本物。ライガーのことを気遣う描写に加え、ライガー自身もレオのために行動する場面が見られたので互いに相手のことを想っているのがよくわかりました。また戦いに向かうたびに「行くぞ、ライガー!!」と声をかけるシーンを毎回入れてくれたのは地味ながらもここすきポイントです。

 

 

サリー・ランド

 本作のヒロイン。レオとのボーイ・ミーツ・ガール要員にして一方で事件を起こす父に振り回される悲劇の少女。研究者として端末探しや祖父のボーマン博士のサポートなど幅広く活躍する場があったのですが、ペンダントを奪われて以降は一気に存在感が薄くなってしまったように感じます。ランド博士との確執もメルビルがほぼ担っていたのも残念でした。

 ただレオとの甘酸っぱいやり取りはどれも良かったですね。本編以外でもED映像で見られた手を繋ぐ2人を見ていると「こういうのもっとやって!」と興奮しましたね。(最初のEDみたいにレオと一緒にライガーに乗ってほしかったなぁ)

 

 

バズ・カニンガム

 レオの運び屋としての相棒。相棒のゾイドは大型車お調子者ながら気遣いも出来る優秀なコメディリリーフで、本作の主人公一行の良きムードメーカーとして物語の雰囲気を度々明るくしてくれました。金儲けに目がない性格も話を牽引するのに最適でアイセルとのコントのようなやり取りが魅力的。レオの保護者としての一面もあって本当に良いキャラクターだったと思います。

 

 

ジョー・アイセル

 主人公の仲間の1人。ゾイドシリーズ恒例の「大人のお姉さん枠」で主人公一行と共和国軍と繋ぐパイプ役としての役割も持っています。基本的に真面目な性格でバズとは別にレオたちの良き保護者となってくれました。それでいて可愛いものが好きなギャップが良かったですね。相棒のラプトリアに「ラプちゃん」とあだ名をつけていたのも可愛くて好きです。結局21話の彼女にしか見えなかったフラッシュバックは何だったんだろう・・・・・・

 

 

バーン・ブラッド

 元帝国軍人の風来坊。本作における個人的な推しの1人。相棒のガトリングフォックスの自由のために帝国を裏切り、世界を転々とする姿には序盤から惚れ惚れしました。ただ以降はレオたちのお助けキャラとしての活躍ばかりが目立つようになったのでフォックスと旅をする描写をもっと増やしてほしかったです。

 

 

クリストファー・ギレル

 帝国軍の若きエース。高い実力と軍人としての誇りを持ち合わせているカッコいい人物で、序盤のコリンズ准将への忠誠心が印象的。それだけにレオの良きライバルになるかと思ったけど全然そんなことなかったぜ!代わりにディアスやフィオナ皇帝など主人公たち以上に濃密な人間関係をどんどん広げていったのが面白かったですね。

 

 

ハンナ・メルビル

 ヒロインの1人。「チャオ」が口癖のハンターウルフ乗りを弟に持つ。当初はランド博士の助手に過ぎなかったのが皇帝の血を引く者であることが判明してからはオメガレックス編のキーパーソンに躍り出てきて驚きました。視聴者にポンコツ可愛い」と「可哀想可愛い」という2つの属性を見せつけてくれ、最後に終盤で姉妹のフィオナ皇帝と仲良くなる救いも見せてくれました。ジャミンガを操る能力はもっと使ってほしかったかも。

 

 

フランク・ランド

 本作の悪役。最初から最後まで物語をかき乱すトリックスターとして活躍してくれました。基本的に前向きで自分の才能や計画に一切の疑いを持たないポジティブ思考は見ていて本当に明るくなれます。若返ったりゾイド人間になるなどどんどん人外と化していくネタ要素も持ち合わせていて個人的に憎めないキャラだったと感じましたね。

 

 

 さて本作終了後、その後の世界を描いた続編『ゾイドワイルド戦記』もすぐに開始されました。1回につき3分という短さでしかもペースが月一と非常に寂しいですが、こうしてゾイドアニメを続けてくれること自体はとても嬉しいです。(本作の戦いが終わってから共和国と帝国がまた戦争している件に関してはスルーで。戦争なんてそんなものですよ)新しい展開に期待しつつ戦記の方も楽しく見ていきたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:ゾイド -ZOIDS- 』最終話のオマージュシーンとも言われてます。