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ゴジラ S.P<シンギュラ・ポイント> 感想(総評)

立ち向かう用意をしよう

これほどの熱量を持ったSFゴジラを見れて本当に嬉しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先週無事終了した『ゴジラ S.P<シンギュラ・ポイント>』。シリーズ初の連続テレビアニメということで以前から注目していました。SF考証とシリーズ構成に著名なSF作家である円城塔氏を起用し、その他監督に『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』を手掛けた高橋敦史氏、キャラクターデザイン原案には『青の祓魔師』の作者加藤和恵氏、怪獣のデザインには『平成狸合戦ぽんぽこ』などで有名な山本英司氏と錚々たる面子を据えています。

 この面子から繰り出されたゴジラは毎回驚きの内容と引きを展開していき、多くの視聴者を驚愕させてきました。僕自身毎週楽しく見れましたね。ということで今回はいよいよ作品全体の感想・総評について書いていきたいと思います。

 

 

 先に評価点について語りたいと思います。

 まずあげられるのが本作が徹底したSF(サイエンス・フィクション)作品である点。怪獣の登場に伴い生物の進化、未知の物質の定義、さらには時間的概念の話にまで発展していく内容が1クール通して描かれていました。専門用語が非常に多く飛び交い、現実には存在しない空想科学が繰り広げられていく様子は実にSFらしいテイストでよく出来ていました。理屈や仕組みなどもしっかり設定されており、矛盾を出さないように力を入れていたところも素晴らしいです。ゴジラをはじめとした怪獣映画はSF作品としての側面もあるので、本作は“SFとしてのゴジラ”をとことんまで突き詰めた作品と言えるでしょう。

 それでいて設定の理解が追いつかなくても作品を楽しめる点がこの作品のすごいところ。登場人物が何を言っているのかわからない、そう感じる場面が多くあったのですが、人物のほとんどが積極的に動くことで物語が進んでいくので、それをみているだけで「何となく」彼らが何をしているのか理解出来ました。設定面を把握していないと物語の大部分を理解出来ない作りになっていないのでSFに明るくない人たちにも楽しめる内容に仕上がっていたと思います。「わからない」は「面白くない」とは別のものだと感じさせてくれますね。

 だからこそ視聴してこれは何なのか、と考えさせる要素が引き立ちました。毎回引きが強く次回の展開を期待させる演出が多かったので、次はどうなるのか、謎は明かされるのか、と楽しみにしながら見ることが出来るオリジナルのテレビアニメの利点を十二分に活かせていたと感じます。1週間の間に多くの人が自分の考察を広め、共有していく楽しみもあり、終盤に連れて伏線が解き明かされ、謎が解明していく爽快感と合わせて非常に楽しい時間を提供してくれましたね。

 

 上記の登場人物においても注目ポイントが高いです。加藤和恵氏がデザインを担当したキャラクターのほとんどは一言で言うならば「垢抜けない」デザインで、近年のアニメキャラと比べるといささか地味に感じます。しかしそれがかえって特徴になっていたと思います。前述の通り彼らの多くが活動的で、何かしらの形で活躍してくれるのもあって見ている内にドンドン愛着が湧いてきます。一見根暗そうなユンが実際は自分から動く場面が多かったなど、第一印象とは大きく異なる動きを見せてくれたのも魅力だと言えますね。

 そんな彼らの動きが東京のゴジラに収束していく物語も見事。それぞれ異なる目的で行動していく中、別々だった物語が次々と繋がっていって怒涛の最終回へと向かっていく展開にはドキドキしながら見ていました。天才的頭脳を備えた一般人がゴジラに立ち向かっていく様子は従来のゴジラシリーズにはないワクワク感があります。特に主人公と共に物語を引っ張ってきた「ペロ2」と「ジェット・ジャガーユング)」の2つのAIこそが本作のゴールの鍵だったと判明した時は膝を打ちましたね。彼らの愉快な掛け合いも魅力的で、深刻な事態ながら悲壮感を思わせないライトな作風も相まって明るい気持ちで見れました。

 

 怪獣が出てくる作品としても本作は興味深いです。登場する怪獣の多くが恐竜をはじめとした既存の生物を強く意識したデザインでした。(この辺りの「人が着ぐるみに入ることを考慮しなくて良い」デザインはアニメならではと言えます)それでいてその多くが「アーキタイプ」を元にした超常的能力を持っており、多くの人が知っている動物が未知の力を備えてきた、といった印象を受けます。そこからどんどん生物とは考えられない存在へと変異していくように思えましたね。

 中でもゴジラ魚類のような姿から両生類、爬虫類、そして本来のゴジラの姿へと短時間で進化していったのが特徴的。『シン・ゴジラ』以降の作品で概念的な扱いがされてきているゴジラですが、本作は進化を重ねるごとに生物という枠組みから外れていき、世界そのものを滅ぼす存在と化していく恐怖と威圧感に満ちていました。そういった点から、ゴジラをはじめとした怪獣たちは「災厄」の異化なのではないか、とも考えましたね。本作の怪獣は「生物」から「災厄」へと進化していく道を辿っていたのかもしれません。

 

 そしてゴジラファンとしては各所に見られる歴代ゴジラシリーズのオマージュ・パロディ要素が楽しかったです。自衛隊の戦車がゴジラ相手に砲撃を開始する定番のシチュエーションをはじめとして、作品を知っているファンならニヤリと出来る要素が満載でした。巨災対のメンバー出演など数え上げればきりがありません。(個人的には3話で登場した女子高生のスマホ画面にモゲラが映っていたシーンが印象深いです)

 中でもジェットジャガーを主役ロボットに起用したことには多くのファンが驚いたかと思います。『ゴジラ対メガロ』というイロモノ作品に登場するイロモノロボットを物語の中心に据えるセンスには本当に度肝を抜かされました。それでいてキチンと活躍させてくれたので感服するほかありません。ウルトラマンZ』のセブンガー然り、近年のマイナーなロボットの活躍はとても好ましかったです。

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 まず前述の通り本作はSF要素を知らずとも楽しめる作りになっているのですが、やはり「わからない」という点に不満を覚えるところもあります。理解出来ないものを理解しておきたい、劇中で解明してくれないことが気になってしようがないという点もありました。

 劇中で明かされなかった謎や伏線が多く存在していたこともあり、物語としては大団円でも作品としては不可解なまま終わってしまった印象は否めません。明かされないものに恐怖を覚える楽しみは人によっては消化不良に思えるでしょう。謎に関して考察する楽しみがある一方で、謎を謎のまま放置しておくことが許せない人にとってはやや不親切な内容になっていたように思えます。

 

 また怪獣作品としては怪獣たちの大暴れが少なかったのも引っかかりました。回によっては怪獣の出番が数分しかないのでそれらの活躍を期待していた場合は退屈に思えてしまいます。本作は人間が主役なので仕方がないところもありますが、やはり怪獣同士の対決などはもっと見てみたかったところ。怪獣プロレスもほとんどないので従来の怪獣らしい作品を見たかった人には肩透かしになってしまったのではないでしょうか。

 ゴジラ自体の出番もそれほど多くなく、どうしてもゴジラ作品としてのイメージがつかない場合がありました。10話のゴジラウルティマの進撃までは中々ゴジラらしい活躍がなかったのでもっと早くこのシーンを見たかった、とつい思ってしまいましたね。

 

 そして人間たちが主役である一方で人間同士のドラマが希薄だった点があります。登場人物の多くが目的のために行動する中、ほとんどが会話劇で済んでしまうので繋がりが薄く感じられてしまうところがありました。良くも悪くも悩まずに最適解で動くためか、彼らの葛藤や衝突が見られなかったのは少々残念でしたね。見ていてストレスを感じさせないのは良いのですが、やはり彼らの人間らしさも味わってみたかったと思います。

 怪獣による被害がほとんど描写されなかったのも残念なところ。特にネームドキャラは李博士くらいしか死者が出てないので危機感が全体を通してあまりなかったように見えてしまいます。悲壮感がないライトな雰囲気が怪獣災害によるヘビーな作風とミスマッチしていたかもしれません。

 

 

 総評としては「SF好きにはたまらないゴジラ」といったところでしょうか。考察好きなオタクには非常に嬉しいものの、気軽に見たい人にはあまりに難解な作品だったと言えます。従来のゴジラ作品以上に人を選ぶ内容でしたが、僕にとっては非常に面白い作品でした。毎回視聴後に自分の考えを広げ、他の人の考察も見てまとめていき、ブログに感想を書いていく作業は実に楽しかったです。書き上げるのに難儀した点も今ではいい思い出です。新世代ゴジラの1作として今後も語り継いでほしいですね。

 

 

 さてゴジラといえば先日『ゴジラVSコング』が公開されましたね。僕はまだ観にいけていないのですが、ずっと待ちわびていた作品なので必ず映画館に足を運んでおきたいと考えています。ゴジラSPではあまり堪能出来なかった怪獣同士のプロレスも存分に味わえそうなので実に楽しみです。

 

 

ではまた、次の機会に。

 

 

↓以下、過去の感想一覧です。

 

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