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ゴジラVSコング 感想

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破壊神VS守護神、勝つのはどちらだ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長い延期を経てついに公開された『ゴジラVSコング』。ずっと待っていた人も多いかと思われます。かくいう僕も『ゴジラ S.P』があったおかげで何とか待っていられたものの、それでも早く見たい!とずっと思っていたので観に行けて本当に良かったです。

 そうして観た本作ですが、すごいわかりやすい映画だった、というのが最初に抱いた感想でした。ひたすら怪獣が暴れ回る様子はまさに怪獣プロレスのお手本で、ゴジラ映画の方向性を決定付けたキングコング対ゴジラ』の系譜をそのまま受け継いでいるかのような作品でした。今回はそんなゴジラVSコングの感想を遅ればせながら書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 怪獣王の超絶バトル

 本作は何と言ってもゴジラコング2大怪獣のバトルが最大の魅力だったと言えます。種族全体における因縁のライバルという設定の2体がひたすら激闘を繰り広げる怪獣プロレスは素晴らしいの一言。どのバトルも怪獣たちがよく動き、暴れまわる様子をこれでもかと描いてくれていたので終始大興奮して見れました。強力な放射熱線(ただでさえ高火力なのにいつの間にか連発出来るようになってるのズルくない?)と凄まじい膂力で圧倒してくるゴジラに対し、身軽な動きと技、そしてゴジラの背びれから作った斧で対抗するコングと異なる戦い方がそのまま怪獣の個性としてわかりやすく視聴者に伝わってくるのが良かったです。

 極めつけはメカゴジラというサプライズの存在ですね。ここ最近のゴジラ作品にほぼ毎回登場しているメカゴジラをモンスターバースでも導入してきました。本作のメカゴジラは過去作のメカゴジラのテイストを多く盛り込んだオマージュぶり、そしてゴジラとコングの2体を易々と追い詰めていく強さが印象的でした。そんな強敵を図らずも力を合わせて倒す主役2体の構図は「対決→共闘」というVSもののお約束をキチンと守っていて嬉しかったです。

 

 またバトル以外でもゴジラとコングのキャラクターに大きな要素が見られたのがポイント。人間に利用されながらも一部の相手と心を通わせていくコングに対し、自然のバランスを乱す存在を許さないゴジラという対比が特徴的で、友好的なコング&孤高のゴジラといったイメージを抱きました。特にコングは手話を使うといった可愛らしいシーンも多く見ていて一気に愛着が湧いてきましたね。人間たちとは決して馴れ合わないゴジラとは異なる魅力にあふれていました。

 両者のスタンスは登場頻度の違いとしても表れており、秘境探索のために駆り出されたコングが常に物語の中心にいて、代わりにゴジラはサイドでちょくちょく姿を現す程度といった感覚でした。とはいえ不思議とどちらか片方が不遇という印象はありませんでしたね。この辺りのバランス感覚派は見事です。

 物語に関わってくる人間たちのドラマも全くと言っていいほどなく、終始怪獣たちが主役の映画だったと言えます。小難しい話は一切せず、単純にゴジラとコングを暴れまわる姿が見たいという人にとっては本当に楽しいエンタメ作品でした。(逆に怪獣プロレスに興味がない人には合わないだろうなぁ、と思いましたが)つい最近まで放送していたアニメ『ゴジラ S.P』が極限まで理知的な内容だったことを考えると実に対照的です。そういうこともあり、SPで使った頭を発散させるのにも最適だったと思いましたね。

 

 

  • 人間の“エゴ”との付き合い方

 さて本作はストーリー自体は単純で怪獣が主役と前述しましたが、一方で人間たちの“エゴ”が物語全体で関わっていたとも感じました。まず取り上げるべきはコングの周りの問題で、「地球の地下奥深くに存在する内部世界」という『センター・オブ・ジ・アース』を彷彿とさせる秘境への冒険の案内役として連れてこられる彼の悲痛な姿が目に焼き付きました。ゴジラから守るためと隔離されながら、必要になって外へ連れ出される様子は実に不憫です。鎖に繋がれ自由を奪われるコングの痛々しさが本作の人間の身勝手さを表していたかと思います。

 一方でゴジラは人間に対して牙を剥く、他の作品ではお馴染みでもモンスターバースでは衝撃的な光景から始まりました。最初は首を傾げますが、その謎が怪獣を使った兵器の開発だとわかるや否や納得するほかなくなる展開には舌を巻きました。大自然のバランサーであるゴジラが怒り攻撃するほどの人間の業が描かれており、メカゴジラはまさにその人間の業が形を成したものと言うべきでしょう。他にも『キング・オブ・モンスターズ』のギドラがメカゴジラのパーツ、『髑髏島の巨神』のスカル・クローラーメカゴジラの当て馬と、各作品のラスボスが容赦なく利用される展開もショッキングでしたね。

 このように本作は終始怪獣が主役であると同時に、身勝手で業の深い人間たちに巻き込まれていく怪獣たちを描いた映画でした。モンスターバースはこれまで怪獣たちの脅威に為すすべなく巻き込まれていく人間たちが描かれましたが、今回はその逆をいったと思います。どんなに圧倒的な怪獣たちよりも恐ろしい人間の“エゴ”がそこにありました。

 

 そんな人間たち相手に怪獣たちがどう対応していくのか、というのも本作の見どころだったと思います。コングは人間たちに利用されながらも、少女「ジア」をはじめとした気遣ってくれる人間たちには優しく、物語終盤まで彼女らのために戦ってくれました。そして戦いが終わった後は変わらず管理されることになりながらも、広大な地下世界でのびのびと動き回る様子まで見せてくれます。敵対的な相手には容赦のない一方で、友好的な相手には村長の意思を見せてくれる理性的な姿が印象深かったです。

 そしてゴジラは最初から最後まで人間に深く関わらなかったのが良かったですね。若干ゴジラ信者と化している「マディソン・ラッセ」とその仲間たちがゴジラの目的を探ったりしましたが、当のゴジラはそんなこと一切お構いなしで暴れまわるのが非常に“らしかった”です。メカゴジラとの決戦でコングの助太刀をえた時もコングに対する感謝などは見せず(代わりに熱線を斧に当ててくれる自分のファインプレーもあまり気にしてない)、どこまでもドライな態度でした。それがかえってゴジラの厳かなイメージを高めていたと思います。

 人間の“エゴ”を前にして共存の道を選んだコングと、あくまで人間や他の怪獣とは馴れ合わないことを貫くゴジラ異なる方向性ながらどちらも美しさを感じさせる“王”としての威厳に溢れていました。本作はまさに人間との付き合い方を見せた作品だったと感じましたね。

 

 

 というわけでゴジラVSコングの感想でした。ここまでわかりやすい単純娯楽映画は中々ないと思った一方、あまりにも単純な内容故に感想をどう書くかでかなり悩みました。「そういえばゴジラもコングも人間の都合に振り回されていたな」と思い、その方向性で書き進めていくことで何とか書き上げることが出来ました。いやぁ結構大変でしたね。

 また多くのゴジラファンには嬉しい作品だった一方、僕や母みたいなタイプのファンにはあまり合わない作品だっただろうな、とも思いました。実際先に映画を観た僕の感想を聞いたメタレド母が「怪獣プロレスばっかり見せられるのなら別にいいかな・・・・・・」と途端に観る気を失くしたのが印象的でした。(思えばウチの母のように“戦闘シーンにあまり興味のない特撮ファン”はかなり珍しい気がします)僕はわかりやすい戦闘ばかりでも十分楽しめましたが、同時にもっとテーマ性のあるストーリーが見たいとちょっと思ってしまいましたね。

 

 ともあれ何だかんだでとても楽しい作品でありました。ゴジラのような怪獣映画は大スクリーンで観るに限りますが、本作は特に大スクリーンで観ておくべき映画でしたね。この先のモンスターバースがどうなっていくのかはまだわかりませんが、クリエイターの個性が強く尖った方向性になりつつある日本のゴジラに対する「スタンダードなハリウッドゴジラ」として今後も作品を魅せていってほしいです。

 

 

 ではまた、次の機会に。