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エターナルズ 感想

“永遠”の名を超えて

英雄譚は終わり、新たな神話が幕を開ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作として公開された『エターナルズ』。『アベンジャーズ』が無事完結したその後を扱ったフェーズ4に突入し、本作はその中でもかなり気合の入った作品として公開前から紹介されていました。

 僕も期待に胸を躍らせながら公開当日に映画館に足を運んだのですが、とてつもないスケールの話に終始圧倒されました。これまでの映画の中でも段違いの映像に加え、次元の異なる存在の設定が一度に叩き込まれていくので、見るにもかなりのエネルギーを必要としました。それでいて登場人物が実に人間臭く、見ていて愛着が湧いてくるのが素晴らしかったです。今回はそんなエターナルズの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 映像美で描く神話の世界

 まず取り上げたいのが、上述でも触れた圧倒的な映像表現について。CG技術を極限まで使用したかのような映像が実に魅力的でした。予告の時点でその凄まじさは伝わってきていましたが、大スクリーンで観た時の迫力は予想をはるかに上回っていましたね。そしてエターナルズのメンバーがそれぞれ使用する能力はもちろんのこと、彼らを従える「セレスティアルズ」の存在や宇宙の成り立ちなど、これまでになかったような世界観を構築するのにこれらの映像が一役買っています。

 黄金のラインが描く能力表現は彼らがこれまでの能力者とは大きく異なる存在であることを実感させてくれますし(個人的に「セナ」の光のラインで形成された武器がお気に入り)、中盤で明かされた彼らの故郷は不気味ながらもどこか神々しさすら感じられました。機械的ながら、どこか神秘的な表現は見事の一言。宇宙の表現も『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のコミカルさとは異なる、ひたすらに広大な光と闇の世界を描いていると思いました。

 

 設定の数々も壮大です。セレスティアルズの「アリシェム」の元で動くエターナルズの真の役割、新たなセレスティアルズを作るために必要な人類の管理という遠大な計画が明かされる中盤からは物語の一気に規模が広がっていきます。その計画も宇宙の存続・維持に繋がっており、これまでのように悪意を持ったヴィランが介在しない点はシリーズの中でもかなり異質です。セレスティアルズの思惑が決して私欲のためではないだけに、彼らの考えが判明した時は何とも言えない不安に襲われました。

 総じてまとめるとこれらの物語はまさしく「神話」セレスティアルズという「神」に、多くの生命と宇宙の命運が握られていく世界観は恐ろしさに満ちていました。これまでのMCUの戦いとはスケールが違い過ぎるので、よくも悪くも突飛に感じてしまうところもあります。しかしながら過去作が手掛けてきた物語に新たな可能性を示してみせたとも言えるので、個人的には好感が持てますね。

 

 

  • 愛すべきエターナルズ

 そんな大きすぎる物語とは裏腹に、主役である「セルシ」たちエターナルズはどこまでも人間的だったのがまた素敵でした。何千年も生きている長命な種族でありながら、人間社会に紛れて暮らしてきた彼らのキャラクターは実に面白かったです。映画スターとして名を馳せる「キンゴ」のような者もいれば、人里離れた場所で可愛らしいエプロンを着ながらパイを焼いている「ギルガメッシュ」のように庶民的な生活をしている者もいるなど、暮らしぶりも十人十色。(中でも同性婚を果たし夫とその息子と仲良く暮らしている「ファストス」が特に楽しそうだと感じました)公開前は10人もいる彼らを覚えきれるか不安でしたが、幅のあるキャラクターも含めて個性豊かな彼らを見事に記憶することが出来ましたね。

 仲間たちの仲が良好だった点もグッド。過去の諍いで口論になるシーンやすれ違いもいくつかありましたが、基本的には全員仲間意識が強いのが良かったです。憎まれ口や皮肉を叩き合いながらも笑顔で語り合う彼らの様子は見ていて何度もほっこりしました。ひたすらに壮大な背景がありながらも無理なく見れたのは、間違いなくエターナルズのキャラクターのおかげだったと言えますね。

 

 それだけに各々が抱える苦悩やコンプレックス、そしてそれ故に起きる仲間同士の争いは辛かったです。特にメンバーのエース的存在でもある「イカリス」がリーダーの「エイジャック」を殺害した張本人であることが判明してからはショッキングな物語が続けて展開されていきました。公開前は彼が活躍するとばかり思っていたので衝撃の度合いも大きかったです。彼の真意が明かされてからはどうなっていくのか予測がつかず、常にドキドキしっぱなしでしたね。

 しかしながら、イカリスの行動も決して理解出来ないわけではなかったのが興味深い点ですね。彼は結局のところセレスティアルズに与えられた使命を全うしようとしたに過ぎず、人間を守ろうとしたセルシたちを止めたい一心だったことが劇中で伝わってきます。中でもエイジャックの亡骸を運んだ後に八つ当たりのように小屋を破壊するシーンでは、彼の葛藤が強く表現されていました。

 

 またエターナルズが決してヒーローではない設定も彼らの人間性に深みを持たせています。上述の通りセレスティアルズの同胞を作るための管理をしていたに過ぎない彼らは、決してヒーローとは言えないのかもしれません。劇中で「クロ」に言われた「お前たちは救世主ではない、殺戮者だ」という言葉が深く突き刺さってきます。この作品はヒーロー映画ではなく、神の運命に振り回される「等身大の人間たち」の物語であることが何となくですがわかってきました。

 しかしそんな彼らも、地球に暮らす人々のために神に反逆する意志を見せつけてくれたのは見事。イカリスとの激闘はあれど、最終的には生き残った全員で繋がり地球に眠る「ティアマット」を止めてみせた姿に、僕はヒーローの片鱗を見ました。エターナルズがヒーローになっていくのはまだまだ先のことかもしれませんが、これからの活躍に期待を持てたのは大きな収穫です。神の使いから人間になり、最終的にヒーローになれるのか・・・・・・そんなエターナルズの今後が楽しみになるような内容でしたね。

 

 

 そんな感じで壮大な物語と等身大の人間たち、対となる要素の合わせ技で楽しませてくれた本作ですが、どこか不満を覚える点もいくつかありました。(ここから先は批判が多いので見たくない方はブラウザバックを推奨します

 

 まずあげられるのが爽快感の無さですね。エターナルズの超能力バトルが何度も見れられる本作ですが、彼らの葛藤がメインで描かれているたけにひたすら鬱屈とした雰囲気のバトルが多いです。現代での戦闘も夜の暗闇の中で行われることが多かったのも、バトルシーンの暗さに拍車をかけています。ヒーローたちが大活躍してスカッとする展開を期待するほどがっかりしてしまうかもしれません。

 次にエターナルズが戦う「ディビアンツ」の存在について。邪悪な怪物として描かれる中でエターナルズと同じくセレスティアルズによって作られた存在であることなど、衝撃的な設定に関わっているはずが、本編自体にはあまり絡まなかったのが残念でした。極論エターナルズとセレスティアルズだけでも成り立つ話だったので、後半から彼らの存在が蚊帳の外になっていた印象は否めません。上述でも触れたクロはエターナルズを殺害して能力を奪っていく度、人間のように進化していくという素敵なキャラクターだっただけに、本筋的にはあまりいらない存在だったのが非常に惜しかったです。(しかしギルガメッシュ関連で因縁が出来たセナとクロの戦いを決着まできっちりやってくれたのは評価点)

 あとは回想シーンの多さと挿入の方式に疑問を覚えたことでしょうか。回想シーンは彼らのキャラクターの掘り下げには必須だったのですが、いかんせん現代との切り替わりがわかりにくかったのが問題でしたね。唐突に回想に入ってもそれが過去の話だと理解するのに数分要する場面はいくつかありましたし、かと思いきやいきなり現代に戻るので見ていて理解が追いつかない場合がかなり多かったです。この辺りの見にくさはどうにかしてほしかったと思います。

 

 

 恐らくMCUの映画の中でも特に好き嫌いははっきりわかれそうな作品だと思った本作。しかし個人的には満足度の高い作品でとても良かったです。『シャン・チー』以上に過去作にはなかった“新しさ”で攻めていく内容は大変気に入りました。シリーズに大きな楔を残した挑戦作として評価していきたいです。

 また他作品との繋がりは薄かったものの仄めかせる発言が多かったのでニヤニヤ出来ましたし(サノスと戦わなかったのはセレスティアルズの計画を遅らせるのに都合が良かったからなんだなと理解)、今後の新展開の布石も例の如くばっちり仕込んでくれたのでワクワクが止まりませんでした。特にセルシの現代の恋人である「デイン・ウィットマン」が今後どう活躍していくのか非常に気になるところです。他のヒーローと全く絡まなかった分、この先の作品でヒーローたちと如何にして関わっていくのかも楽しみですね。

 

 さてMCUの新作は次に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を控えていますが、こちらの日本公開は来年1月と微妙に間が空いています。早く観たいという気持ちは強いものの、ここは焦らずキチンと待っていたいと思っています。幸い来月にはソニーの『ヴェノム』の公開もありますし、この先も決して退屈はしないことでしょう。これから先の映画も是非満喫していきたいです。

 

 

 ではまた、次の機会に。