ぶつかり合わなきゃ
未来なんてない
凄まじいお祭り感があったと本作は思わせてくれましたね
2021年度に放送された『デュエル・マスターズ キング!』前作『キング』のノリはそのままに、「デュエマ20周年」という記念すべき時を祝うアニバーサリーとしての側面を含めた作品でした。そのためいつにも増してバラエティ豊かだったように感じます。
先に評価点について語りたいと思います。
まず本作はデュエマ20周年ということもあり、過去作の要素を全面に押し出していたのが特徴的。過去のカードの登場はもちろんのこと、過去作のキャラをゲスト出演させて物語を盛り上げていく内容にはワクワクさせられました。特に中盤に入ってからのレジェンドキャラ出演ラッシュ、そして15周年回以来となる主人公揃い踏みなどを見せてくれたので、過去作を知っている人にとってはグッとくる場面が色々見られましたね。従来以上のお祭り感を出してくれていたと言えます。
そして本作はそういった過去を巡る中で「デュエマはみんなで楽しむこと」を再確認するまでの過程を描いていたのが良かったです。デュエマを楽しむコンセプト云々は前作もやっていましたが、本作では「昔からデュエマの“楽しい”を繋いできた人たちがいるからこそ、今もデュエマが続いている」とデュエマの歴史そのものを肯定する流れになっていました。敵のジェンドルが「自分1人が楽しめればいい」という姿勢だっただけに、歴史を利用する者との戦いの構図によって上述の“楽しい”をより強調させられていたと思います。
また後半からは敵キャラのハイドが大いに話を盛り上げてくれていたのも印象深いです。「特別」という言葉に囚われ、ジョーたちの心に深い傷を残していく展開にはかなり驚かされました。そうしてホビーアニメでもかなりの禁句である「使われなくなったカードたち」について言及する内容にはこれまでのギャップもあってとてつもないインパクトでしたね。ジョー側とジェンドル側の双方に波乱を巻き起こしたハイドのトリックスターぶりには少しだけ惚れ惚れしてしまいます。
そしてハイドの指摘を受けたことで、ジョーにとってのクリーチャーやジョーカーズをある程度見つめ直していく展開になっていったのも興味深い点。ジョーにとってカードは道具ではなく友達、という考えをここぞとばかりに押し出していたと思います。上述のジェンドルが自分以外を道具として扱っていた分、ジョーの考えがこれまたより強く印象に残りました。全体的にみんなで遊ぶ“楽しさ”が自分1人だけのものに打ち勝つ話になっていたため、最終的にスカッとする終わり方になっていたのも素敵でしたね。
デュエマパートに関しては例によって見栄え重視。割と淡泊なプレイングが多かった分、絵面でド派手に見せることが多かったように感じます。スター進化やディスペクターの合体バンクなど、過去のクリーチャーの要素をしっかり見せていたのも良かったですね。
もちろん過去作の主役級クリーチャーの登場も印象的でした。侵略などのお馴染みの演出はもちろんのこと、カツキングのドロン・ゴーといった久々にアニメで使われた能力の披露なども惜しみなくやってくれていたので興奮しましたね。新旧を越えたクリーチャー同士の共演はデュエマの良く出来たCGあってこそ、ということも再確認しました。
さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。
問題としてまず取り上げられるのが本筋とタイムスリップ要素の関連性が薄いこと。本作は上述の通り過去の時代に飛ぶことをウリにしていましたが、本編の流れに関係のない話ばかりが展開されていた印象があります。伝説のカードを探して過去に遡ったものの、カードを手に入れるための過程がその時代でなければならないことはなく、むしろ現代で行っても問題のないものばかりだったのは残念なポイントでした。
そして伝説のカードの在り処やクリーチャーの扱いなど、割と投げやりなところも引っかかりました。バロムが江戸時代で怪物扱いされていたり、はたまたライオネルが神話の時代に崇められていたりとよくわからないことになっていたのは頂けなかったです。何故そのカードがあるのかなど、ある程度の説明が欲しかったところですね。
他にもメインキャラの扱いについても疑問を覚えることが多かったです。前作同様仲間たちの不遇な一面が良く見られ、あまり活躍することのないまま終わってしまいました。ゼーロJr.などはちょくちょく出番があったものの、ほとんど説明役としての登場だけでデュエマパートも数えるほどしかありません。終盤の五龍神との戦いもせっかく仲間たちが戦う機会を与えておきながら、ほぼカットで終わってしまい非常に残念に思いました。
そもそも本作ではキラたちが本筋に関わる機会が極端に少なかったように思えます。中盤でもジョーだけでカードを集める話ばかりが展開されていたのが気になりましたね。本作のストーリーは極論ジョーとジェンドル(+ハイド)さえいれば十分に成り立つものだったので、そこに彼らが入り込む余地がほとんどなくなっていたのかもしれません。
そしてこれは作品そのものの評価とはあまり関係がありませんが、やはり特別編の多さが気になりましたね。数えてみると総集編が4回、普通の再放送が4回と計8回もの特別編が挟まれていたことに驚愕を覚えます。(そのせいか本編の話数も全43話と微妙に少ないです)前者は新規映像を交えている分ある程度見れますが、後者は単なる再放送に過ぎず、面白みがありません。
それ以上に本編がいいところで何度も中断される構成には見ていてストレスが溜まりました。製作側もやむにやまれぬ事情があったであろうことは察せられますが、もう少しやりようがあったのではないかと思うばかりです。
総評としては「ド派手さ重視・細やかさ軽視」といったところでしょうか。毎回何かしらのインパクトを提供してきた反面、ストーリーやキャラの扱いなど細かいところがおろそかになっていました。前作でも感じた問題点もあまり解決されておらず、そちらが引っかかる人にとっては相変わらず見づらい作品になっていたと思います。もう少し丁寧にやってほしい、と思うところが多々見られたのが非常に残念でしたね。
とはいえ過去作との組み合わせやストレートなテーマなど、見ていて面白い要素も十分にありました。切札家集合回などの派手な内容は僕にとっても本当に楽しかったです。20周年というお祭り騒ぎを全力で見せてくれた作品、という印象を受けましたね。
では以下、各キャラクターについての所感です。
切札ジョー
我らが主人公。例によって年相応の少年として楽しむ様子が描かれており、タイムスリップでもいつも通りのスタイルを見せてくれたのが特徴的。特にバサラや勝舞、勝太といったレジェンドキャラとの共演で全力で楽しみながら成長していったのが良かったですね。
そして後半からは後述のハイドとの件などもあって大忙しだった印象を受けます。モモキングの暴走を止めたり旧ジョーカーズとの関係についてハイドに反論したりと、彼の優しさが目立つ場面が非常に多かったです。ジョーの純朴な面がたくさん見られて個人的にはほっこりさせられました。
モモキング
前作に引き続きジョーの相棒にして切り札。本作においてはパワーアップイベントが定期的に発生したため、より出番が増えていました。新しい力を得るたびに謎のキャラ変をしたり、突然暴走してしまうなど、ギャグでもシリアスでも見せ場が多かったです。
そういった中でジョーの友達としての側面を押し出していた終盤が印象的。責任感が強すぎるあまり自分を追い詰めてしまうモモキングが、ジョーの言葉を受けて大きく成長を遂げる流れには感動しました。彼もまたジョニーやジョラゴンに負けないジョーの相棒であったことが本作でよくわかりましたね。
ジェンドル
,本作の敵のボス。自分が王である未来を確立させるために周囲を巻き込んでいく悪役として描かれていました。と言っても序盤は何かと余裕たっぷりな態度を見せつけたり、そのくせジョーには何度も敗北したりと意外な愛嬌を感じましたね。
しかし後半に入ってからは暴君としての面が強く出てきました。目的のために自分以外を利用する凶暴さを徐々に見せていくキャラクターには恐怖を覚えます。前半から後半にかけて印象が大きく変わっていく点も含め、妙に憎めない悪役だったと思います。
ハイド
敵サイドのメインキャラにして本作屈指のダークホース。当初はクールで有能な幹部として描かれていたためか影が薄いと感じましたが、ジェンドルに突き放されてからは「特別」に固執する少年として一気に存在感を表してきました。
誰かに評価されないと自分を保てない危ういところ、そしてそれがジョーとの戦いによって大きく変化していく様子など、壊れてからのハイドの同行はどれもかなり見応えがありました。本作の後半を盛り上げてくれた立役者として、かなりお気に入りのキャラです。
そして次回からは新番組『デュエル・マスターズ キングMAX』がスタート!次は『キング!!』になるというこちらの予想から大きく外れたタイトルになったのは意外でしたが、それ以上に次作でジョー編が完結すると大きく報じられていることに驚かされます。いよいよクライマックスを迎えるジョーの物語がどうなるのか、最後まで見届けていきたいと思います。次作の感想の方も引き続き書いていく予定ですので、良ければまた読んでいただければ幸いです。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想一覧です。