湧きまくってきたぜ!!
本作の回りくどいようで意外とストレートなところがお気に入り
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先週無事完結した『仮面ライダーリバイス』。木下半太氏を脚本に迎え入れて始まった本作は、自分の悪魔と共に変身して1人で2人の仮面ライダーになるという特殊な性質をストーリーを交えて見せつけてくるかのような作品でした。主人公コンビ以外にも1人で2人の要素がチラホラ見られており、本作は徹底して「もう1人の自分との物語」だったのだと今になって感じます。
先に評価点について語りたいと思います。
まず本作が「家族」についての光と影を描いていたこと。これは放送開始時に何かと話題になっていた要素ですね。主人公が家族との日々を過ごしながら戦うホームドラマ的側面に対し、家族との諍いから生まれる軋轢といった問題を次々と取り上げていく様子が見られました。特に序盤はその傾向が顕著で、家庭と上手くいかない少年少女たちが悪魔と契約して暴走していく展開が多々見られました。
ゲストキャラに限らず、メインキャラの家族の問題を取り扱っていたのも特徴的。特に五十嵐家は序盤から何かと不穏な描写も多く、その疑惑が膨らんでいった中で両親の過去が明かされるといった展開は中々に盛り上がりました。一見して幸せそうな家族でも、実は……といった多面的な見方が要される内容には心をざわつかせつつ、考えさせらることもありましたね。
またそこから発展して「個人の闇」について扱っていたのも忘れてはいけません。本作の登場人物はそれぞれ人間性に欠点を抱えているか、あるいは腹に一物を抱えており、その重苦しさが各キャラクターの説明になっていたのが興味深かったです。そういった人間的な問題から上述の軋轢が生まれる例も多く、どこかリアルで生々しい描写の数々は視聴者たちに大きな心象を与えたのではないかと思われます。
そして「悪魔」はそんな闇の部分の異化であり、同時に本作の象徴として描かれていました。当人が抱えているもう1人の自分だったり、あるいは隠したい感情だったりと本作の悪魔はまるでその人の鏡であるかのような表現が見られます。その鏡と向き合っていくことで自分を見つめ直すのが本作のポイントでもあったわけです。
ではそんな闇の問題を如何にして解決していったのかというと、本作では「受け入れる」という形が比重に置かれていました。異なる自分や欠点を間違いと否定するのではなく、それもまた自分自身と認め、共存していくことを目指していくような展開が多かったですね。光と影のバランスを保つことこそが最善の策だと訴えかけているかのような作風でした。
また同時に他者との“繋がり”を大事にしていたのも大きなポイント。本作の悪役、あるいは主人公たちと敵対した人物はほぼ全員、自分1人で何かを成し遂げようとする傾向がありました。その結果どんどん本人にとっても望まぬ道に進んでしまい、最終的には袋小路にはまってしまう光景も少なくなかったです。“孤独”であればあるほど生き方が狭まっていく……というのはどうも嫌にリアルに思えます。
対して主人公側の仲間と協力するやり方が響いてきますが、主人公の一輝はそこから一歩先の、他人へのお節介によって相手を孤独から救い出す方法を貫いているのが印象的でした。仲間との繋がりを以て勝利するという少年漫画的な王道要素がありつつも、相手をその場に誘って助けていく過程を重視していたことが読み取れます。まとめると自分の悪性を認め、自分と他人とも向き合っていくという割とシンプルなテーマがあったのだろうと個人的には考えています。
本筋に関してはここまでにして、次はキャラクターについて。こちらは親しみやすい、それでいて個性の強い人々が多かったのが特徴的でしたね。主人公の一輝は困っている人を放っておけない気のいいお兄ちゃんで大二は真面目でかつ自分が認めた人に対しては人懐っこい、さくらは気が強くどこまでも一直線と、見た目のイメージと全く同じ故にとてもわかりやすかったです。
同時にバイスら味方の悪魔たちもコミカルで面白いキャラクターが多かったですね。本作のマスコットとしての役割も担っているため、見ていて顔が綻ぶようなコメディシーンの数々を見せてくれました。特にラブコフ辺りは可愛い見た目と発言の毒々しさが何ともキュートです。
それ故上述で語った各人物の闇が際立っていたと言えます。一輝のお節介はある面から見ればエゴイストといったように、別の角度で見れば歪に思える要素をこれでもかと見せてきました。そしてその裏の顔と表の顔のギャップが激しかったからこそ、本作の主人公たちは魅力的になったのだろうと個人的には考えています。
続けてアクション方面。こちらは毎年進化している戦闘シーンの迫力もさることながら、上述のキャラクターの要素がアクションにも大きく影響を与えていたように感じました。例えばバイスは何かと画面の向こうの視聴者に話しかけるネタを日常パートだけでなく戦闘でも活用していました。他にも弱いため普段は逃げ回るラブコフなど、それらの描写がそのままそのライダーの個性として定着していくのが興味深かったです。
主人公はコンビでの共闘といったようなライダーごとの戦闘スタイルもわかりやすかったですね。他作品にも当てはまることですが、本作のライダーはベルトが別々だったのもあって異なるギミックがそのまま「どのように戦うか」に繋がっていました。同じバイスタンプでもデモンズやオーバーデモンズのようなボディの一部を変化させる変則的なフォームチェンジも見られましたし、そこから映し出される戦闘シーンのバリエーションもかなり幅広かったか印象を受けます。
あとこれは個人的な好みですが、リバイとバイスのこのコンビは初期から登場している派生形態の出番が何かと多かったのが嬉しかったですね。何気ない戦闘シーンでもメガロドンゲノムといったフォームが登場し、活躍とまではいかずとも画面を賑やかにしてくれていました。坂本浩一氏が監督を務めた見どころの多いアクション回も多く、戦闘シーンに関しては毎回楽しんで見ることが出来ましたね。
さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。
先に触れておきたいのは急展開の多さ。毎回インパクト抜群の要素を何かしら用意している作品だったため色々と話題になりましたが、その一方で重要な描写をさっさとに済ませてしまったように見えます。序盤のゲストキャラのお悩み相談などはわかりやすい例で、彼らの問題を解決していく過程があっさり気味に感じることがありました。これは本筋の不穏な描写に力を入れていた関係で、それとはあまり関係のないゲストの話を片手間に置いてしまったのではないかと考えています。
そして中盤からはそれが本筋にも響いてきていたのは明白でした。主要人物の活躍を描いている途中で挟まれる彼らの問題に関して、ざっくりとした展開ばかりを見せられているように思えました。問題の提示自体はしっかりとしているのに解決までの過程に疑問を感じることが多く、視聴中はそれで解決したと言っていいのか?と首を傾げることが何度もありましたね。上述の欠点を受け入れていく作風も、見方によっては問題の棚上げにしか見えなかったのも痛いです。
それと並んで人物描写にも明確な格差が感じられたのも大きな問題。上述の通りゲストキャラの扱いは言わずもがな、ウィークエンド勢の描写などもおざなりに終わってしまったように見えます。それによって光くんといった面々のキャラクターに唐突感が出てしまいました。五十嵐家を中心に話を進めているせいで、その他の人たちを放っておいてしまったという印象は否めません。
主要人物に関しても暴走や敵対の流れがこれまた唐突に見えてしまいましたね。大二や狩崎の暴走などはあらすじを読み解くと理解出来るのですが、やはりそこまでの筋道に関して疑問を覚えることがありました。それが上述のざっくりとした解決が加わることで、腑に落ちないことも多かったように思えます。
あとはやはり、ヒーローものらしいスカッとする展開が終盤に向かうにつれ少なくなっていたのも気になりましたね。初期の頃はデッドマンズという明確な敵組織が存在していたものの、フェニックスの赤石長官の本性が露になってからは「敵を倒せばいいわけでない」という問題が浮き彫りになってきていました。守るべき人たちが敵の土地に向かうなど戦闘ではどうにか出来ない問題が多く、それが爽快感の少なさに拍車をかけていたように思えます。
それでいてギフとの対決などはあっさり終わってしまったのがまた残念なポイント。ギフは人類との共存に対する見解の違いなどを見せていたものの明確に倒すべき敵であり、兄弟が如何にして力を合わせて倒していくかが見どころになるだろうと予想していました。しかし実際はさくらの成長イベントの直後の戦闘ですぐ倒されるというスピード討伐で終わってしまったので拍子抜けしてしまいましたね。それ故その後のエピソードを消化不良のまま見ることになってしまいました。
総評としては「光と闇、問題と解決のバランスを考えさせられる作品」といったところでしょうか。不穏な描写や問題の提示などをしっかりとやっていた一方で、その解決までの道筋には苦言を呈したくなることが何度もありました。毎週毎週のインパクトに力を入れていたのもあって、それらの粗雑な部分が表面化してしまったようにも感じられます。
とはいえ一輝とバイスの関係や各人物の描写など、素敵なポイントがたくさんあったのも事実です。不穏なものを扱っていながら、最終的には「家族の絆」「自己の肯定」といったポジティブな話に落ち着いていったのも素晴らしかったです。異なるもの・一見して悪いことを頭ごなしに抑えつけない作風には好感が持てますね。そういった意味で本作もまた、見ていて良かったと思える作品でした。
では以下、各キャラクターについての所感です。
本作の主人公。序盤から明るい兄貴として描かれている一方で、抱えている闇の深さを見せつけていくようなキャラクターに惹かれました。他人のことを見ているようで見ていない、自分の信じる正しさを押し付けていくようなエゴイストぶりはまさに本作の光と闇を体現していると言えます。そのうえ戦うたびに家族との記憶を失っていくデメリットを背負ったりと、とにかく歪さと不憫さが感じられる主人公です。
そこからの解決の糸口を見つけていくのは本作全体の特に重要な本筋でもありました。相棒のバイスからの肯定や家族からの激励、そして自分が助けてきた人々の協力もあってようやく自分自身の夢を終えるラストには不覚ながらウルっときましたね。そのためリバイスという作品は、一輝が自分を認めていくまでの物語だったのだと感じました。
本作のもう1人の主人公。お茶目でお調子者なコメディリリーフとしての顔と、どこか凶悪そうで油断がならない面が同居しているのが特徴的でした。声を担当している木村昴さんの演技もあって、本作の代表的なキャラクターに仕上がっていたと思います。
中盤からは一輝を思い遣る描写が多くなり悪魔らしさは薄れてきましたが、その分人間臭さが増大し一気に愛着が湧いてきました。どこまでも自分を認められない一輝に代わり、彼を肯定してあげる存在として頑張っていたと言えます。振り返ってみると、ある意味で本作の「もう1人の自分」としての悪魔だったことがわかりますね。
五十嵐大二(カゲロウ)/仮面ライダーライブ(仮面ライダーエビル)
2号ライダーにして弟キャラ。何かと可愛がられやすく、同時に一輝のお節介に異を唱える役どころも多いポジションでした。良くも悪くも真っすぐで、それ故カゲロウのような鬱憤を抱えたもう1人の自分との対峙が中心に描かれていました。
カゲロウが一旦退場した中盤からは何かと暴走する展開が多く辟易していましたが、44話のカゲロウ復活からの流れはそれらを吹っ飛ばすカタルシスでしたね。純粋すぎるが故に悩み誰かの助けを得て初めてその正義が輝く、放って置けない弟君だったと思います。
五十嵐さくら/仮面ライダージャンヌ
3号にして本作の女性ライダー代表。初登場時から強気で何ものにも臆さない性格が印象的でした。直情型のため家族と口論になりがちだったものの、最終的には自分を貫いていく異様な押しの強さも光ります。
戦えない自分の弱さや花(アギレラ)との関係などで見られましたが、弱音を吐くことはあっても迷わない・諦めない姿勢には好感が持てました。自分の弱さの象徴であるラブコフとの付き合い方もあって、強さを癒しを同時に魅せてくれていましたね。
五十嵐元太/仮面ライダーデストリーム
ほぼ毎年出てきている気がする父親ライダー。当初は動画撮影のために銭湯を売り飛ばそうとするなどとんでもない行動に出るダメ親父っぷりに呆れましたが、25話で衝撃の真実が明かされた時は本当に驚きました。前半と後半で印象が180度変わった最もインパクトのあるキャラでしたね。
過去の不憫さや家族への想いも明かされ一気に良き父親として定着していく中(『セイバー』の尾上さんといい、最近の父親ライダーは善良で大変よろしい)、ベイルとの決着の付け方は本当に印象的。上述の自分の闇を受け入れていくテーマを見事に体現し、まるで前作主人公のような活躍を見せてくれたことには感謝したいです。
五十嵐幸実
本作の一般人枠にして、主人公たちの帰るべき場所。母親として一輝たちを見守る存在として最後まで変身せずにそのポジションを保ってくれていました。末っ子で女の子のさくらが戦うことに反対するなどどこか前時代的な考えもありましたが、個人的にはそこまで気になりませんでしたね。
家族に対してアドバイスするだけであまり自分から動かない放任主義は良く言えばみんなを信じている、悪く言えば無責任と思えるなど色々と複雑な面も目立ちます。とはいえ家族への愛情があったのも事実。完全無欠の聖母とはいかずとも、決してダメな母親ではない不思議なバランス感覚がありました。
門田ヒロミ/仮面ライダーデモンズ
出番的には2号だけど形式的には4号ライダー。本作屈指の人気キャラであり、本来1話で退場するはずだったものの大出世を遂げた人物です。正義感に溢れていてかつお茶目と隙の無い性格、ベルトの副作用に苦しむなど不憫さも目立っていました。ギャグ方面での見せ場も良き。
不安な場面を見せるものの基本的には善良で、登場回では一貫して安定したメンタルを見せていたと思います。それどころか終盤は大二や狩崎に寄り添う重要な役割も担ってくれていました。特別ではないからこそ正しくあれた、本作の光の側の代表的存在ですね。
ジョージ・狩崎/仮面ライダージュウガ
本作の開発者枠。ただのマッドサイエンティストでは収まらず、仮面ライダーのファンという奇抜な設定で話題となりました。常にハイテンションで人を小馬鹿にしたような態度が何とも言えない味を見せてくるキャラで、序盤は敵か味方について気になっていた記憶があります。
しかし終盤、父・真澄が出てきてからは親に振り回される存在として本作の闇の部分を背負う羽目に。ぶつかりながらもわかり合えた五十嵐家とは対照的に、交流を避けていたが故に最後までわかり合えなかったという無情さには同情しました。父親の前では感情的になるなど気丈に振る舞っている子どものように見えてきて、最終的には一気に愛着を抱きましたね。
そして次回は『仮面ライダーギーツ』の感想をスタートする予定。数多くのライダーが自分の願いを賭けた生き残りゲームに臨むという、殺伐とした展開が期待出来る作品となりそうな予感がします。令和ライダー4作目がどうなっていくのかも非常に楽しみです。感想の方も例年通り毎回書いていく所存ですので、これからもよろしくお願いします。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想一覧です。