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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第4話「みえない地雷」感想

“背負う”者として歩み寄る

ハハーン、さてはこの学園って色々と問題ありなんだな?(今更)

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  • その意識を越える時

 この作品、ツンデレが多いな……と感じた今回の水星の魔女。ただミオリネに関してはいつも通り、それでいて実習に挑むスレッタを手厚くサポートしたり泣き出す彼女を叱咤激励する活躍を見せてくれました。さらに前回衝撃のプロポーズをしてきたグエルは典型的な「勘違いするなよ」発言で画面を和ませた一方で、ミオリネへの謝罪をきちんと行う誠実な一面まで披露してくれたので本当に驚きましたね。(一皮むけたのか、どこか晴れやかな表情を見せていたのも印象的です)単にツンデレというだけでは終わらず、彼らの誠実さがこれでもかと堪能出来たのが興味深かったです。

 

 そして新たなるツンデレとして今回の主役となったのがチュチュこと「チュアチュリー・パンランチ」。彼女に関しては序盤のツンが強く、以前から抱いていたスペーシアンへの敵意が輪をかけて露出したような印象を受けます。スレッタに対する狂犬染みた態度にはビビりますが、これまでの学園での様子に加えてさらりと描かれたアーシアンへの冷遇ぶりを考えるとこのようになるのも仕方ないのかもしれません。そしてミオリネに「あなたもアーシアンと差別する連中と変わらない」とチュチュ自身の問題が刺されるシーンで、差別される側がする側に回ってしまう無情さを感じました。

 一方で故郷の男たちの想いを一身に背負っている描写、そしてスレッタが自分と同じ何かを“背負う”者だと知ってからのチュチュの行動には感銘を受けました。スペーシアンではあるものの、仲間からの期待に応えようとしている点でスレッタは自分と同じだと理解するまでの流れはスピーディーながらも説得力がありましたね。(あと悪戯をしてきた女生徒たちとのガチ殴り合いもあって、視聴者にとってもそれどころじゃなくなっていたのもある)

 何よりスペーシアンやらアーシアンなどは関係ない、というシンプルな答えが出た展開にはスカッとしました。根強い差別意識もそこから生まれる諍いも、自分から歩み寄ることで越えていける可能性を劇中で示したように思えます。スペーシアンやホルダーとしての扱いに苦しむスレッタでも鋭いところを突いてくるミオリネでもなく、アーシアンスペーシアンの枠組みに囚われていたチュチュがそれをやってくれたからこその感動が今回の内容にはありました。最終的にスレッタの地球寮への入寮を認めてくれたチュチュの今後のデレが実に楽しみです。

 

 

  • 肩書きに苦しむ少女にとっての救い

 チュチュが大きな躍進を果たしたのに対して、全体的に後ろ向きなまま終わってしまった印象がある今回のスレッタ。教習用MSを使用しての実習でメンバー探しに苦労した挙句、スペーシアン女生徒の妨害もあって心が折れかかるシーンは中々にショッキングでした。何だかんだで進めば2つを実行してきたスレッタが「帰りたい」と泣きじゃくる様子から、ここまで彼女がどれだけの心労を抱えてきたのかも伺えましたね。*1そもそも決闘もホルダーの件も、当人が望んでやったことではないのでスレッタの文句も当然と言えますが。

 スレッタに関しては物語開始当初から、肩書きに振り回されている苦労人としてのイメージが個人的にはあります。2話では魔女と罵られ、そして今回はホルダーの立場が学園生活を邪魔してくる……以前はミオリネの不自由さについて触れていましたが、今のスレッタは彼女以上に不自由な生活を強いられていると言えます。上述のチュチュのような行動力がスレッタには欠けている分、気の毒に思えてきますね。

 そんなスレッタの救いと言えるのがエランの存在。初めて会った時から優しくしてくれる彼がスレッタからしたらどれだけ有難いかを、視聴者側として再認識した気分です。良くも悪くもスレッタ個人に興味があるエランは、彼女にとっては「自分の見てくれる人」という認識なのかもしれません。ただ魔女とかホルダーとか関係なく“自分自身”を見てくれる人を欲しているスレッタの気持ちもわかりますが、このエランとの関係に甘えるのは少々危険なような気もします。母親や周囲に縛られているスレッタにとって、やはりミオリネのように厳しくも最後まで付き合ってくれる相手こそ大切だと考える身としてはエランとは適度な付き合いを心掛けてほしいところです。

 

 

  • 丸い機体と問題あり?な実習

 今回は残念ながらMS(モビルスーツ)同士での戦闘はなかったものの、代わりに学園の実習に使われた機体「デミトレーナー」が目立っていました。その武骨な見た目と丸っこい頭部の組み合わせは『ビルドファイターズ』シリーズに登場するモック(ハイモック)を彷彿とさせます。ブリオン社製MSであり、学園の訓練用として起用されていることから汎用性がある程度高いのかもしれません。

 そんなデミトレーナーを使った今回の実習も面白かったです。地雷を避けて装備を換装するという単純な内容(サブタイの「みえない地雷」ってそういうこと……?)ですが、カニックやスポッターといったサポートの役割を担う仲間をあらかじめ用意していなければならない点は何とも興味深いです。教官たちの厳しい指摘もごもっとものように聞こえます。

 ただこの辺りの教官たちの放任ぶりが問題に思えましたね。特に女生徒たちの妨害を受けたスレッタの機体トラブルを「事前点検も課題の1つ」と突っぱねる姿勢にはヤキモキさせられました。生徒の自主性を重んじていると言えば聞こえはいいですが、生徒同士の派閥争いなどに無関心なままなことに疑問を覚えます。これまでの描写もあって、この学園の問題を改めて実感した気分です。

 

 

 さて次回のサブタイは「氷の瞳に映るのは」。タイトルの意味と読み上げた相手からして、次はエランにスポットが当たる模様です。(今度は彼がスレッタと決闘を行うのでしょうか)今回ミオリネに「マネキン王子」とまで言われたエランがどういう人物なのか、その掘り下げがされそうですね。。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:余談だが、スレッタ役の市ノ瀬加那(いちのせ・かな)さんはこのシーン「イオンモールで泣いている子供」というディレクションを受けて演じたことを自身のTwitterで明かしている。その場合ミオリネはさしずめ「子どもを叱りつつ引っ張っていくお母さん」の役回りだったと言えるのではないだろうか。