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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第5話「氷の瞳に映るのは」感想

君は僕とは違うのか

グエル先輩の株上昇は止まらない、加速する!

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  • 仲間を求めた孤独の担い手

 前回のラストでチュチュ先輩がデレたおかげで地球寮に住むことになったスレッタ。冒頭からニカをはじめとしたアーシアンの女子たちと仲良くしている様子にほっこりさせられました。(そして地球寮に住んでないのに寮の面子に馴染んでいるミオリネに驚く)一方でスレッタが「アリヤ・マフヴァーシュ」に占ってもらっているシーンが興味深かったです。死に目を覚えていない父親のこと、そしてアリヤが口にした「キョウダイ」とは何を意味するのか、今後の展開への何かしらの伏線を残したように思える、意味深な占いでした。

 

 それはともかく、今回は予想通りエランにスポットが当たりました。以前から謎めいた雰囲気を醸し出している彼の秘密、そして抱えている心情が次々と明らかになったのでかなり見入りましたね。

 何といってもエランが「強化人士」と呼ばれる存在だったことに衝撃を受けました。(ガンダムシリーズでは定番の「強化人間」枠です)GUNDフォーマットが引き起こすデータストームの障害を克服し、ガンダムを乗りこなすために造られた人間だとわかった時は驚きつつも不思議とすぐ納得出来ましたね。表情が堅いのも肉体を改造された影響故なのか、などといった想像が湧いてきます。またエランはペイル社の「ベルメリア・ウィンストン」から劇中で「4号」と呼ばれていましたが、それ以前の強化人士1号たちはどうなったのかも気になるところ。

 そして改造された経緯を持つエランが何故スレッタに興味を持っていたのかも判明しました。同じガンダムに乗る者としてのシンパシーを感じ、同類を求めていたことは想像に難くありません。ガンダムの呪いに関しては後述で触れますが、その呪いを一心に受けてきたであろう彼にとって、スレッタは「自分の苦痛を理解してくれる人」だと期待していたのでしょう。そうではないと理解してからあの露骨な態度の違いを見せていたことにも納得がいきます。(まぁスレッタからしたらわけもわからないまま手のひらを返されたようなものなので困惑する他ないのですが)

 勝手に期待したくせに違うとわかると勝手に裏切られたと思って落胆する……ここまで書くと解釈違いを起こしたオタクみたいで何とも滑稽なのですが、個人的にはエランのような苦しみを背負ったキャラは結構好きですね。魔女の呪いに振り回される彼が今後どうなっていくのか、温かい目で見守っていく所存です。

 

 

  • 呪いとの付き合い方

 そして今回もう1つの大きなポイントが2体のガンダムの違いですね。スレッタが乗るエアリアルとエランが乗るファラクト、同じガンダムでありながら、呪いへの対処の仕方が全く異なっていたのが興味深かったです。

 特にファラクトがルブリスなどと同じデータストームの障害を抱えたまま強化人士を造るというやり方だったのに対し、エアリアルは機体そのもののデータストームを完全に克服していることが判明するシーンは中々に衝撃的です。ガンダムの存在が否定されてきた最大の理由が既に解決されていたことで、エアリアル既には呪いから解き放たれていたことにはかなり驚かされました。同時にスレッタ自体はエランのような強化はされてない可能性が出てきたことにもホッとしましたね。まぁ当人が知らないだけで実は体が弄られていることが今後判明してもおかしくないのですが……

 またエランとファラクトを擁するペイル社がこっそりガンダムを作っていた事実にも関心が深まります。条約で禁止されているガンダムの製造を秘密裏に続けていることには、会社側のGUNDへの執念めいたものを感じます。社のCEOたちが2話でプロスペラに助け舟を出していたのも、エアリアルの技術を手にするためだったのかもしれません。呪いを引き受ける人柱(エラン)を擁立してでもガンダムを生み出し続ける、別の魔女たちの思惑にも注目していきたいです。

 

 

  • 毒を巡らせ、忍び寄る黒き蛇

 エランがグエルとの決闘で使用したMS(モビルスーツ)「ガンダム・ファラク」。エアリアルに続いて登場した本作2体目(ルブリスもカウントすれば3体目)のガンダムです。ただその見た目はエアリアルとは大きく異なっており、人間的なシルエットをしているあちらに対し、スラリとした手足と小顔のおかげでかなりスマートな印象を受けます。冒頭でエランが搭乗していたペイル社製の「ザウォート」と要所要所で酷似しており、この機体をベースに作られたことが予測出来ます。

 戦闘ではロングバレルビームライフルとビットを駆使した遠距離戦法を基本としている模様。一応ビームサーベルも装備されているようですが、劇中の描写からしてエランは空中から攻め立てるのが得意のようですね。それを超える最大の特徴は何といっても「GUNDビット」。機体の動きを一定時間停止させる電磁ビームを照射するという、ガンダムシリーズ全体から見ても珍しいタイプの武装です。この効果とオールレンジ攻撃の相性はすこぶる良く、複数の電磁ビームを張り巡らして相手を行動不能にするトラップめいた使い方が可能となっています。相手の動きを止め、確実に倒すコンセプトはさながら蜘蛛か蛇を思わせます。*1

 そんなファラクトの戦闘シーンですが、決闘相手のグエルに対する攻撃のエグさが凄まじかったです。最初は攻撃を避けつつ罠を張って追い詰める知的な面が目立っていたものの、彼が搭乗した(弟の)ディランザの動きを止めてからの機体のボディを少しずつ破壊しつつ頭部のアンテナをへし折るやり方にはドン引きしてしまいました。戦法自体は間違ってはいないのでしょうが、ここまでのエランの境遇を見た後だと、この鬱憤を晴らすかのような戦いぶりが何とも不安を掻き立ててきます。描写からしてルブリスのようなデメリットを以前負っているであろうことも含め、それに乗るエランの闇を体現したかのような機体だと思いました。

 

 

 とまぁエランとペイル社関連がどれも衝撃的だった回でしたが、同時にグエルの男前なところも大きな見どころでしたね。スレッタとエランのデートの話を聞いて駆け付けるまでのスピードには笑ってしまったものの、ショックを受けるスレッタを見てからの行動には感銘を受けました。惚れた相手を傷つけた奴に憤る姿は素直にカッコいいと思います。父親の言葉も無視して決闘をする流れからも、吹っ切れてからのグエルの気持ちのいい一面が表れていたと思います。

 戦闘ではガンダムに為す術もなくまた敗れてしまったものの、そこまでの戦いぶりもあってグエルの強さそのものは決して損なわれていないと感じました。そもそも同じディランザとはいえ弟の機体を即座に乗りこなし、ファラクトの攻撃に対応する辺り彼の操縦テクニックは本当に高いのだと実感します。いやぁ3話以降本当にいいキャラになったなぁ……!とグエルの成長にどこか誇らしい気持ちになれる一幕でした。

 

 

 そして次回はスレッタとエランの決闘が開始。スレッタにとっては家族同然の存在であるエアリアルが賭けの対象になったことで、彼女がいつになく本気になりそうな予感がします。家族を守るために戦うスレッタと仲間を得られなかった苛立ちをぶつけようとするエラン、ガンダムパイロット同士の戦いに早くも興奮させられます。

 また次回のサブタイは「鬱陶しい歌」とのことですが、この歌が何を差しているのか気になるところ。現状劇中で歌われたものというとプロローグのハッピーバースデーくらいしかないのですが、まさかね……

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:ちなみにファラクトの名前の元ネタは、「ファラク」という巨大な蛇である。