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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第8話「彼らの採択」感想

呪いに立ち向かう若さと理念

この番組は「“楽しい時を創る企業”ガンダム」の提供でお送り致します。

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  • 少女たちが悩む呪い

 ミオリネの宣言により始まった株式会社ガンダム。今回はその会社で「何をするのか」ということを彼女たちが考えていく様子が描かれました。そもそもの会社設立宣言自体勢いでやったことだったのでミオリネが何も考えていないのは予想していましたが、あまりにもノープランすぎてちょっと変な笑いが出てきます。そのくせ地球寮のメンバーを半ば無理やり社員にしてこき使おうとするなど、行動力だけはあるのが恐ろしいですね。丸投げとムチャぶりの多さ、そしてチュチュに「クソスペわがまま女」というあだ名を付けられていた辺りにミオリネとデリングの似たもの親子としての一面を垣間見た気がしますね。

 それはともかく、今回の注目すべき大きなポイントは定款*1の1つである「ガンダムをどうやって売るか」。MS(モビルスーツ)である以上兵器として売るのが妥当ではあるものの、若い学生たちが人殺しの道具を売れるのかどうか、に着目していたのが興味深かったです。兵器でお金を稼ぐことは気が引ける者、戦災孤児故に兵器そのものを嫌うものといったように、それぞれの感情と考えが入り乱れている様子は見ていてどこか胸が締め付けられますね。(そんな状況でもスペーシアン嫌いを貫くチュチュはある意味ブレない)

 学生の身分故の見通しの甘さ、そこから来るぶつかり合いは見ていてどこかエグい感覚を覚えずにはいられません。まだ善も悪もよく理解出来ていない子どもにこういった重い責任を背負わせてしまう点も、またガンダムの呪いなのかな……などと思ってしまう前半でした。

 

 

  • 兵器を否定する可能性

 そんな息苦しい状況の中、ミオリネが見つけ出した「GUND医療の可能性」が光明となる展開には膝を打ちました。資金確保のために兵器として売り出す必要があったものの、本作のガンダムは本来医療の発展から生まれた存在。そこを突き詰めて兵器ではないガンダムを追求していく形を示したことに感動を覚えます。何よりプロローグから示されていたガンダム本来の理念を、ここにきて拾ってきたことにかなりテンションが上がりましたね。

 無残な最期を遂げたヴァナディーズの意志を、純粋な若者たちが受け継いでいく構図にもグッときます。バラバラになりかけた地球寮の仲間がその理念に共感し、がむしゃらに邁進していく様子も「株式会社ガンダムのプロモーションビデオ」から読み取れました。(何とこのPV、YouTubeガンダムチャンネルで公式公開されている模様https://www.youtube.com/watch?v=rLr_ZFXQq4Q) 編集など至るところに拙さを感じるものの、それが彼らの青臭さと精一杯の形が感じられるかのようで結構素敵です。彼らなりの若さでガンダムの呪いに立ち向かっていることが伝わってきました。

 他にも歴代のガンダムシリーズとも異なる「医療のためのガンダム」というコンセプトが好きな身としては、本編でその理念を復活させてくれたのがまた素晴らしいことだと思いました。子どもに重荷を背負わせるガンダムの呪い、シリーズ全体で共通している要素に真っ向から立ち向かう姿勢が感じられるのが大変好ましいです。戦争の兵器であるはずのガンダムの異名に新たな可能性を示してくれるかのような後半には終始心が躍りましたね。

 

 

  • 本質を隠す策士の感情

 上述の通り戦争の道具としての呪いに医療という理念で立ち向かう可能性を示してくれた8話。そんな素敵な一幕の他にも、今回はシャディクの行動が目につきました。長いことスレッタたちの様子を後ろから伺うだけだった彼が、今になってグエルやミオリネを勧誘してきたことに驚かされます。どちらも親への反骨心を示しつつ独立を果たしたタイミングで誘ってきた辺り、親の目がない今なら御しきれると思ったのでしょうか。どっちつかずのスタンスを醸し出しながら、引き抜けそうな人材は見逃さない切れ者としての一面を本格的に見せてきたようです。

 ただ個人的にはそれよりも、シャディクの知り合いへの異様な感情の重さの方が問題だと思いました。過去に様々なことがあったことをさらりと語りつつ、グエルたちに手を差し伸べる様子からは、自分の庇護下にいれたいという湿っぽい欲求を感じずにはいられなかったです。学生規約を追加して株式会社ガンダムの事業の妨害をしてきた点も、会社ごとミオリネを手に入れて守ろうとしているのかもしません。自身の本心を隠し、本質を遠ざけて誘う辺り、シャディクには「殺伐さとは無縁なところで大切なものを管理したい」感情があるのではないでしょうか。(となるとラストに登場したシャディクの取り巻き女子たちの存在は「いつ切り捨ててもいいように用意した手駒」である可能性も……)

 他にも元々は孤児という過去と養父サリウスへの冷徹な感情を秘めている点。親子関係自体はそこまで悪くはないものの、シャディクが父やグラスレー社に対していい感情を抱いていないことも友人たちへの重い感情をより際立たせています。そんな中裏で何かを成し遂げようとしていることも今回示唆されたこともあり、一気にシャディクのことが気になってきました。次回ぶつかり合うであろうミオリネと、どのようなやり取りを繰り広げるのか実に楽しみです

 

 

 というわけで次回のサブタイは「あと一歩、キミに踏み出せたなら」…………いや重いわ!!この絶妙に長いタイトルは上述のシャディクの話からして、彼の本心を語っているのは明白です。表向きは飄々としていながらも、本当はミオリネたちと本心で語り合いたいのが丸わかりでよりシャディクの重さに色々考えてしまいますね。お前の面倒くささはどうにかならんのかシャディクゥッ!!

 それはともかく、次回はシャディクとその取り巻きたちとの決闘が行われそうなのが楽しみですね。あちら側はどうやらMSを数機用意しているようですが、スレッタたちはエアリアル1機で複数に立ち向かうことになるのでしょうか。どうせなら地球寮メンバーも参加してチーム戦を繰り広げてほしいです。(チュチュのマジ殴りがデミトレーナーでも炸裂する瞬間が見られるかどうか)そしてシャディクが乗るであろう例の機体と、プロローグで量産型ルブリスを討ったあの機体との関係性も明かされるのかどうか気になるところです。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:公益法人・会社・協同組合などの社団法人の目的・組織・活動などに関する根本規則。また、それを記載した書面」(「goo辞書」より抜粋 https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%AE%9A%E6%AC%BE/)のこと。