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ウルトラマンデッカー 第20話「らごんさま」感想

その心を閉ざさないで

「心が綺麗で“若くて”美しい女性」云々で拗ねるカイザキ副隊長が可愛い

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  • 深き神々か、少女の友達か

 今回のデッカーは村の古き伝承、そこに土地神として祀られている「海底原人 ラゴン」にスポットが当たった回でしたが、ラゴンが「深きもの」として描かれる意外な内容に仰天しました。インマウス事件や海神ダゴンなど、様々なクトゥルフ関連の神話との繋がりを示唆する要素がカイザキ副隊長の口から語られ、実際に本作のラゴンは全く異なる次元の存在から「海女の岩戸(あまのいわと)」を通じて出現した者という驚くべき展開はかなり衝撃的です。*1何より前作『トリガー』では控えめだったクトゥルフ要素を、本作で押し出していくのは予想外でしたね。

 というわけで今回のラゴンはそんな神の一種として登場したわけですが、劇中での異様な強さがこれまた印象に残りました。デッカーを相手に思いのほか善戦するだけでなく、一度は退けるという大金星を挙げたことに驚かされます。デッカーのセルジェント光線の直撃を喰らって立ち上がるタフネスに加え、地中を海底のように変化させて相手や建物を沈める強力な技まで披露。そのため初登場の『ウルトラQ』からウルトラマンシリーズに登場してきた今までの個体の中でもトップクラスの強さを持っているイメージを抱きました。神様として扱われるのも納得の強さです。

 一方で最近のラゴンらしく、可愛らしい一面を見せていたのも特徴的。今回のキーパーソンである「ウラサワ・ナギ」の幼少時代に姿を現し、彼女と一緒に遊ぶ微笑ましい様子を見せてくれました。その後のラゴンの復活に関してウラサワさんは怒りから荒神になったと語っていましたが、劇中での振る舞いを見ているとそうは思えなかったです。むしろウラサワさんと共に踊り彼女を連れて海女の岩戸に戻ろうとするシーンを見る限り、ラゴンはウラサワさんともう一度遊びたかったのではないかと考えずにはいられませんでした。深きものやら荒神やらと祀られているらごんさまは、その実友達との触れ合いを求めていた何てことのない怪獣だったのかもしれませんね。

 

 

  • 逃げ閉ざすあなたに手を伸ばす

 上述の通り恐ろしいながらもどこか愛おしさを感じさせてくれるラゴンに惹かれたウラサワさん、そして彼女にシンパシーを覚えるイチカ今回の大きなポイントでした。前者は幼いころにラゴンと離れ離れになった思い出を忘れられず今日までその想いを引きずり、後者はスフィアのせいでかつてのような日々を送れなくなったことを憂う……どちらも「現実の息苦しさ」に思うところがあるのが興味深かったです。(またウラサワさんのように別世界に惹かれた者を描いた『ウルトラマンガイア』第29話「遠い町・ウクバール」を彷彿とさせる点も数多く見られました)

 しかし身近な人に先立たれ海女の岩戸の先に向かおうとしていたウラサワさんに対し、イチカはあくまでこの現実で生きていく覚悟を決めるという対比が為されていたのも特徴的。別の世界に行こうとするウラサワさんにラゴンとの別れを促し、こちらの世界に引き戻すイチカの果敢な行動には驚かされました。ラゴンと岩戸の先に魅了されたあまり、現実をないがしろにしてしまった老婆に対して「心を閉ざさないで」と語りかけるシーンは、イチカらしい寄り添った言葉だと思います。どんな目に遭おうとも弱音を吐かず、かつ誰かの弱さを理解してくれるキリノイチカという女性の強さを改めて再確認出来ましたね。

 この展開はある種残酷な決別とも取れますが、個人的には辛い現実に立ち向かうことを描いてきた本作だからこそのものだとポジティブに捉えたいところ。どんなに悲しいことがあろうとも、力を合わせれば必ず道は開けると信じる若者たちの物語だからこその前向きさに溢れていたと言えます。(ウラサワさんもラストにはイチカに触発され、彼女と共に元気そうな姿を見せてくれたのでホッとしました)

 

 

 といった感じに、深きものの話かと思いきや現実と向き合う強さを描いていた20話の感想でした。『ウルトラQ』を思わせる、現実と非現実の境界線が曖昧になったかのような演出が多々見られた一方で、前向きの極みみたいな答えを提示してくれたのは実にデッカーらしかったと思います。実相寺アングルの多様に見ている間は不安にさせられましたが、最終的には微笑ましい結末が迎えられたことには安心感を覚えますね。

 また戦闘シーンが印象深かったですね。カーブミラー越しにデッカーたちを映すシーンや長回しの連発など、カメラワークがいつになく凝っていた気がします。デッカーの活躍もガッツファルコンに乗ったカナタが即撃墜→即デッカーに変身する流れやあっさり敗れる展開などやや情けないところがあったものの、ラクルタイプになってイチカたちを海女の岩戸から助け出す見せ場があった点にはグッときました。別次元に囚われた仲間を救う展開は、ミラクル(奇跡)の名前の面目躍如だったと言えます。(他にはデッカーがガッツファルコンをそっと降ろすシーンがここすきポイント

 

 

 さて次回は「Sプラズマ増殖炉」なる未知の新技術を巡ることに。膨大なエネルギーを生み出せる夢の増殖炉とのことですが、ウルトラマンでこの手の新エネルギーという組み合わせは嫌な予感しかしません。予告映像でも突如怪獣が出現するらしいですし、この時点でロクなことにならないのが伝わってきますね。

 またアガムスが3度目の襲撃をしてくる展開も見逃せません。今度は彼が増殖炉に関する恐ろしい秘密をカナタに話すようですが、それがアガムスの秘密と関わりがあるのかどうかが気になるところ。そろそろアガムスが地球を憎む理由を明かしてほしいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:ただラゴンの名前の由来が「ダゴン」からきていると考えた場合、ようやく元ネタに寄った存在として描かれたとも取れる。