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仮面ライダーギーツ 第38話「慕情F:九尾の白狐!」感想

世界は君の思い通り

白き創世の力が、虚飾の理想を塗り替える

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  • 創世の力の在り処

 久々に主題歌なしの演出で始まった今回のギーツは、最初に英寿の宿る力などの創世関連の情報が色々明かされたのが見どころでした。まずスエルの口ぶりからし英寿はどうやらミツメの創世の力を受け継いでいるようであり、前回ラストに無から出現したバックルも彼自身が生み出していたらしい事実には驚かされました。加えてこれまで英寿の輪廻転生も彼自身が無意識にその力で記憶を引き継いでいた模様。これに関してはミツメの仕業にしてはおかしいと思っていたので膝を打ちましたね。母・ミツメのことを忘れないために2000年かけた、英寿の執念とその力が合わさった結果と言えるでしょう。

 英寿と同時に長いこと謎だったツムリの正体、創世の女神の後継者としてデザインされた存在という答えも印象に残りました。劇中では「女神の力をデザインし長いことナビゲーターをさせて力が目覚めるのを待っていた」と説明されていましたが、これはミツメと似たような生涯を送らせることで、彼女が創世の力を手にした時と同じプロセスを踏ませていたということでしょうか。第2のミツメとして作り同じ境遇にすることで、彼女が力を発現する後継者に成長するのをスエルは狙っていたのかもしれません。

 英寿の力が母から正式に継承したものならば、さしずめツムリは人工的な模倣といったところ。前者が家族の愛が為した奇跡ならば、後者は無機質に力の身を利用したものと言えるかもしれませんね。いずれにせよそれらを利用し、自分の意のままにしようとするスエルに対する憤りが例によって湧いてきます。(グランドエンドで景和たちの記憶が失われていく過程がまたキツい)女神の力がどこから発生したものなのかは未だにはっきりしてはいませんが、これだけでも中々に重要な情報だったと思います。

 

 

  • 誰がための幸せのために

 そして今回のキモと言えるのが英寿が改めて自身のやるべきことを定める流れ。謎の狐仮面(英寿と同じ顔だったことから彼の深層意識とかでしょうか)との会話では世界を破壊して作り替えることを望みと答え、ミツメとの再会を果たして「誰もが幸せでいられる世界」を作ると約束する様子に感動させられました。特に母との会話では英寿が両親に愛されて生まれたことや、母子がお互いに相手の幸せを願っていたことが描かれていたので思わず涙ぐんでしまいます。

 そして何と言っても英寿が「幸せの形」について語っていたのが素敵でしたね。ミツメは英寿のことを想って自分を忘れるよう願ったのに対して、英寿は母を想い忘れないために輪廻転生し続けた……どちらも相手のことを想っている中で、別々の願いをしていた事実は中々に興味深いです。願いとは人によって少しだけ異なりちょっとだけすれ違っているだけで、その実誰もが同じように幸せを考えているのかもしれません。

 そんな母の愛を知った英寿が「誰かの幸せが、誰かの不幸の上に成り立っているわけではない」と信じてみせたくだりにも感激してしまいます。これは大切な誰かの幸せこそ自分の幸せだと自分を犠牲にする、それもまた幸せの形であることをミツメが証明してみせたからこその説得力があります。何より他者の不幸と幸せを操作し喰い物にしてきたデザイアグランプリに対して、自分と相手の幸せが同じという考えは最高のアンチテーゼになっているとも取れます。これまで幸せや願い、理想に関することを描いてきたギーツですが、まさに今回はそれらの答えとして非常にカタルシスに満ちた答えでしたね。

 

 

  • 蒼き九尾の創撃が全てを作り替える、純白の狐戦士

 

MARK Ⅸ.

SET IGNITION.

 

REVOLVE ON!

 

DYNAMITE BOOST!!

GEATS Ⅸ!!!


READY!!FIGHT!!!

 

 英寿が自身の創世の力で作り出した「ブーストマークⅨ」レイズバックルを2つに分割・装填し、リボルブオンすることで変身した姿「仮面ライダーギーツⅨ」。ついに登場したギーツの最強フォームです。やはりというべきか、九尾の狐をモチーフにした形態となりました。バックルもリボルブオンすることでブーストのマフラーが九つの尻尾に変形するなど、バックル自体もかなり凝った作りになっています。

 前回ラストで登場したブーストマークⅢと同様デザグラ運営のテクノロジーから逸脱したアイテムによる変身であるため、その姿は本作のライダーの中でも異質。まず全身がほぼ白一色になっており、これまでのプレイヤーライダーの基本だった黒いアンダースーツも真っ白になっています。首元のマフラーも九尾を模した9本分に増えており、これを束ねることでマントのようになっているのが大変オシャレです。

 そして極めつけはマスクの複眼の奥に瞳のようなものが見られる点。瞳が描かれたライダーは『エグゼイド』以来ですが、こちらは怒りを宿しているかのような眼光の鋭さが目に付きます。一方で口元のマスクは吊り上がっており、怒っているようにも笑っているように見えるのが特徴的。さながら怒りと余裕を同時に見せる妖艶な狐のようです。   他には変身シーンが「レジェンドキュウビ」なる九尾座の聖衣ロボットアーマーを装着するようなプロセスを踏んでいること、九つの火柱が経つ様子なども印象に残りました。何より変身直後にグランドエンドで暗闇に閉ざされた世界を破壊し、青空のある世界を取り戻す光景は筆舌に尽くしがたい美しさに溢れていましたね。徹底して運営とは異なる、英寿による英寿のための英寿の力であることが伺える変身でした。

 肝心の戦闘ではスエルが変身したゲイザーを圧倒するほどの基本性能を発揮。これまでのライダーではなす術がなかったドミニオンレイの攻撃や防御を難なく対処するなど、これらの描写の時点でかなり強化されていることがわかります。さらに専用装備である「ギーツバスターQB9(キュービーナイン)」を使用した華麗な銃撃&剣戟戦も披露。レールガンモードとブレードモードどちらも強力で、ゲイザー最大の防御壁であった五重バリアを破壊するという快挙まで成し遂げています。

 この時点で十分に強いのですが、さらにギーツⅨは英寿が持つ破壊と再生の力を自在に行使する能力まで備えています。劇中ではビルや壁、地面といったものを触れただけで分解し、瞬時に再構築する演出には度肝を抜かれました。それを利用してゲイザーを地面に埋め込み、一方的に攻撃する中々に鬼畜な戦法も見られましたね。他にも空中歩行や時間を遅延させる能力まで持っており、どれをとっても驚異的な形態と言えるでしょう。そしてこれまで運営、というかスエルの思い通りだった世界を彼を倒すことで作り替える爽快感はたまらなかったです。運営の思惑を超えた英寿のみの力として、これ以上ないほど鮮烈なデビューだったと思います。

 

 

 今回は他にもニラムの活躍と最期が印象的。スエルのヘイトが高まる中、ニラムが意外にも猛反発してくれたので個人的にも大分溜飲が下がりました。例によってリアルとフィクションを多用した口調には困惑させられますが、「女神の愛」を肯定してそれを侵害するやり方に異を唱えてくれるのは嬉しかったですね。ここ最近の展開といいニラムにはニラムなりの矜持が感じられて好感が持てます。最終的にはサマスに撃たれて退場してしまいましたが(まさかニチアサであんなリアルな射殺シーンが見れるとは……)、最後の最後にニラムのことが好きになれて良かったです。

 またそれらの憤りを全てギーツの最強フォームで吹き飛ばす後半は最高の一言。ここまで好き勝手してきたスエルを倒す流れは、満を持して主題歌が流れる演出も相まってテンションが上がりまくりました。慕情編のクライマックスとしても素晴らしかったですし、強大な敵を最強の力で粉砕する、最強フォームのお披露目回として満点と言ってもいい神回だったと思いますね。

 

 

 そして次回は新章「創世」編がスタート!英寿によって作り替えられた世界で新たなデザイアグランプリが開幕するようですが、英寿主導でデザグラをまたやることに少々困惑してしまいますね。英寿が運営するのか?とか敵キャラや優勝賞品はどうするの?といった疑問が湧いてきます。景和や道長も記憶を戻されるもののエントリーするかに迷う様子ですが、見返りがないゲームにはまぁ参加しない気持ちもわかります。

 しかし何故かジャマトの生き残りが出現!さらには現代に残ったベロバやケケラが暗躍するなど、まだまだ不穏な要素は残っている模様。しかも謎のゲームマスターも現れるとのことで、平穏な世界にはまだまだほど遠いことになりそうです。恐らくは次回からがギーツの最終章なのですが、波乱の展開が続きそうな今後が実に気になりますね。

 

 

 ではまた、次の機会に。