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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第20話「望みの果て」感想

彼ら彼女らの末路とは

ありえたかもしれない光景(エンドカード)で追い打ちしてくるの止めてもらえます?(血反吐を吐きながら)

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  • それぞれの手に入れるための戦い

 例によって驚異的な情報量、そしてショッキングな展開の連続が待っていた今回の水星の魔女。まずはグエルとシャディクの対決が大きなポイントになっていました。一連の事件の黒幕への怒りを露にするグエルと、ミオリネを巻き込んだ相方への怒りを滾らせるシャディク……方向性こそ違えど、どちらも相手への怒り心頭のまま戦い合っていたのが何ともシュールで面白かったですね。

 この2人の戦いに関してはお互いの本音をぶつけ合いが印象的。特にシャディクは虐げられた者としての憤りやグエルたちへの複雑な感情を見せていたのが興味深かったです。本音を隠して大切なものを遠ざけようとする気質なのは以前からわかっていましたが、まさかグエルに対してここまで英雄的な立ち位置を求めていたとは思ってもみませんでした。自ら守ろうとしない割には自分の認めた相手を勝手に期待して勝手に失望する、という面倒くささには相変わらず呆れてしまいます。他人を信用せずに報復と暗躍のみをしてきた者として、これ以上ないほど滑稽だったと思いました。

 対するグエルは徹底して自分の罪へのケジメを付けようとしていたのが何とも立派でした。シャディクに父親殺しの件やスペーシアンが無意識の加害者となっていることを詰め寄られるものの、最後まで戦い抜いて勝利したことに思わず感激してしまいます。中でも「奪うだけじゃ手に入らない!」と、他人に理不尽を強いる者を糾弾する言葉を放ってみせたことに惚れ惚れさせられます。この言葉は地球での現実を目の当たりにし、自分の出来ることを見直してきたグエルだからこその説得力がありますね。本音を隠してきたシャディクとは対照的に、自分を偽らなくなったグエルの心の強さが勝敗を分けたのかもしれません。

 また個人的には2人のMS(モビルスーツ)戦の決着の仕方も好きですね。互いに肉薄する激戦を繰り広げながら、最終的にはダリルバルデのドローン攻撃でミカエリスの四肢を切り落として無力化してみせた瞬間は興奮が収まらなかったです。17話の決闘の際もそうでしたが、グエルがAIも武器の1つとして取り入れたからこその勝利だと言えます。家族の繋がりを大切にしたグエルと他人との関係を利用してきたシャディクの差が如実に表れた戦いでもありましたね。

 

 

  • まず生きることを求めて

 そして今回最もショックを受けたのがノレアの死。シャディクの目論見によって解き放たれて学園で大暴れした時点で嫌な予感はしていましたが、エラン5号とのやり取りの最中に撃たれて死亡というのは中々に衝撃的でした。怒りのあまり暴走して学園の生徒たちを襲撃した以上、生き残るなんて虫のいい話があるわけないのはわかっています。が、やはりこういった最期はあんまりなので胸に来るものがありますね。

 とはいえ5号の言葉に突き動かされたのは、ノレアにとってはいくらか救いのある最期だったかもしれません。死ぬことに怯えながら怒り暴れていた彼女にとって、生きることや逃げることを肯定してくれる相手は間違いなく必要だったと思います。「生きてもいいんだって証明させろよ!」という言葉をかけられる構図は、見ている側にとってもグッときますね。そうだよね、生きるか死ぬかじゃなくまずは生きてこそなんだよね……

 そして5号がノレアを必死で説得する様子が結構意外でした。これまでのねっとりした印象とは正反対の、主人公のような熱い言葉には驚かされます。(花江夏樹ボイスもあって余計主人公っぽい)とはいえ生きることに貪欲な5号だからこそ、死ぬことを前提に考えているノレアを止めようとするのは納得ではありますね。同じガンダムパイロットとしての宿命もあって、5号も知らず知らずの内にノレアのことを想っていたのかもしれません。

 そんな2人に少々感動させられただけに、ノレアの儚い死と5号の慟哭は見ていて辛かったです。お互いに本当の名前を知ることもないままだっただけでも胸が痛むのに、エンドカードでありえたかもしれない2人の穏やかな光景を見せてくるのが残酷すぎて思わず顔を覆ってしまいましたよえぇ。男女がわかり合えたと思ったら片方が死ぬ……という初代ガンダムから続く無情な死別展開をここまで綺麗にやってみせた展開に舌を巻きつつ、5号のことが心配になってくる回でもありました。ここまできたら5号には何が何でも生き抜いてほしいですね。

 

 

  • 理不尽にも果敢に立ち向かう重装馬兵

 新たに登場したMS「デミバーディング」。以前から存在が告知されていたもののシュバルゼッテ同様本編での登場が遅く、今回ようやくその姿を現した機体です。見た目と名称からしてデミトレーナーの派生機であることは明らかで、劇中の説明によるとデミトレーナーを製造したブリオン社の新型コンセプトモデルとのこと。全体的なシルエットはデミトレーナーと同じですが、頭部のアイセンサーをはじめとした要所要所が角ばっているのが特徴的です。武装もより大型化しており、旧型のデミトレーナーから発展した実戦用の新型であることが伺えます。

 ブリオン社製ということでセセリアたちブリオン寮所有の機体なのですが、今回の事態に対処するために地球寮に貸し出されるという経緯もまた特殊でした。というか個人的にこの機体はチュチュのデミトレーナーを改造したものなのかもとばかり思っていたので、実際はセセリアたちからの借り物だった事実に驚きを隠せません。緊急事態とはいえ気前よく貸してくれたセセリアさん好きぃ……

 そうしてチュチュが乗ることになったこのデミバーディングですが、フェルシーの駆るディランザと共にガンヴォルヴァ相手に善戦していたのが印象的でした。パイロット科同士、学生ながら善戦していたことにも驚かされます。(そしてスペーシアンとアーシアンの共闘という本作の理想の構図を図らずも実現していたのがここすきポイント)余談ですが、終盤のデミバーディングが明らかにライフルでそのまま相手に殴り掛かっていたと思われる絵面には笑ってしまいましたね。ライフルのビームが切れたからやむを得ず……とかそういった理由なのかもしれませんが、銃を鈍器として利用する荒っぽさはある意味でチュチュらしいです。そんなチュチュがデミバーディングを乗るのは今回限りなのか、それとも今後も貸してもらえるのかも気になるところです。

 

 

 というわけで今回は他者から奪うことしか出来なかった者たちの末路が描かれていたような内容でした。他人を利用してきたシャディクや理不尽に理不尽を返すしかなかったノレアたちが人々を傷つけた結果に強烈な皮肉を感じずにはいられません。上述の通りグエルの「奪うだけでは手に入らない」が実に刺さりましたね。虐げられてきた過去は悲しいものの、報復した者には相応の報いが待っていることが伝わってきます。

 そんな奪う側によって理不尽に追い詰められた側も印象に残りました。中でも大切なペトラが死亡(?)したうえ、父親の死の真相を知ってしまったラウダが気の毒でなりません。着実に闇堕ちの道を進んでいるような気がしなくもないのですが、ラウダの今後も気になるところです。

 

 

 そして次回のサブタイは「今、できることを」。これはまさに今回のラスト、巻き込まれた人々を助けようとしたスレッタたちのことを指しているのでないでしょうか。今回は逃げるシーンのみで活躍してはいなかったものの、助けられる命が何とか助けたいと動くスレッタにはちょっと感動させられました。そんな今回のように、スレッタたちが今自分にやれることを精一杯やっていく様子を描いていくのかもしれません。この凄惨な状況で彼女たちに出来ることがあるのか?とも思いますが、ひとまずはスレッタを応援していきたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。