新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

岸辺露伴は動かない 第9話「密漁海岸」感想

そこに眠るは秘宝か?罠か?

トニオさんとかいう実写化されたことでよりヤベーヤツになった人

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

 荒木飛呂彦氏原作の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ『岸辺露伴は動かない』の実写ドラマシリーズが今年もやってきました。昨年は映画『ルーヴルに行く』が劇場公開され大きな話題を呼び、その代わりテレビで放送されるドラマは無しという嬉しくもあり少々寂しくもある体験をしました。そんな中で今年の春にいきなり新作疱瘡の情報が舞い込んできたのですから、それはもう喜びましたね。

 

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

↑これまでのエピソードについては上の感想を参照。

 

 しかも今回のエピソードは待望の「密漁海岸」。岸辺露伴のエピソードの中でも個人的にお気に入りの1編で、以前からドラマで見ることを強く願っていました。同じように切望していた人も多いようで、実写化の情報にネット上でもかなりの反響があったことも記憶に新しいです。(「ついに公共放送で高橋一生に密漁をさせることが出来るぞ!」とか言っている人がいて吹き出してしまいました)これまで何度も人気のエピソードを実写化し、その度に高い評価を受けてきたドラマ版岸辺露伴、今回はその9話の感想を書いていきたいと思います。

 

 

  • イタリア料理を食べに行こう

 今回まず驚いたのはトニオさんこと「トニオ・トラサルディー」と露伴が出会うくだり。ジョジョ4部でトニオさんが初登場したエピソードを再構成しており、元ネタでは仗助と億泰が体験した出来事を露伴と泉ちゃんに置き換える展開には驚嘆しました。原作漫画で印象深い億泰の料理リポートを、2人がそれぞれ担当するという流れも自然で面白かったです。(トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼを食べた時のインテリな例えリアクションを露伴にさせたのがここすきポイント)あまりにも違和感がないので、元からこの2人のセリフだったのではないかと一瞬錯覚してしまったほどです。

 また原作からのアレンジとして、トニオさんが「毒を駆使した料理人」として描かれていたのも特徴的『トリコ』の「毒料理のタイラン」かな?元はスタンド「パールジャム」を料理に混入させることで料理に異常な治癒性を付与していたものを、強力な毒性を他の食材で打ち消して代わりに有用な効能を引き出す技術に改変した時は膝を打ちましたね。不思議な能力も手のひらを見るだけで体調を読み取れるだけになりましたし(まぁそれだけでも大分異常な能力なんですがね)、スタンドの像(ヴィジョン)を出さずに異質な力を表現する本作らしい塩梅に仕上がっていたと言えます。

 そうして実写化されたトニオさんのイタリア料理のコースなんですが、料理はともかく食べることで引き起こされる異常とリアクションには軽く引いてしまいました。涙がドバドバ出たり肩の垢がドンドン剥がれたりする光景はわかっていてもかなりビビってしまうものがありましたね。とにかくシュールギャグとホラーの中間を行ったり来たりしているような絵面のオンパレードで、終始にこやかなトニオさんと合わせて妙な恐怖を覚えることが必至です。

 何より涙やら垢やらが出まくる中で食事を続けるって、いざ実写にしてみるとすごいイヤ~な抵抗感が出てくるなぁ……と思いましたね。全部トニオさんが処理してくれるとはいえ、衛生観念的にも食欲が湧いてきそうにありません。(さすがに内臓が飛び出ることは無くてホッとしましたが)漫画やアニメで見た時はどんな体の不調を治してくれることを羨ましがったのですが、その時の感情が若干揺らいでしまうくらいのインパクトがある食事シーンになってしまったと思います。

 

 

  • 密漁者に渡る恐怖

 上述の長いイタリア料理パートを越えた後は、いよいよ本作のメインである密漁要素へ。トニオさんのフィアンセ「森嶋初音(もしりま・はつね)」の脳にある腫瘍を治すため、伝説のアワビを手に入れようとする流れはある意味で原作通り。ただトニオさんが日本の密漁の罪についてあまり知らなかったことや、露伴の方が最初から乗り気であることを隠していないなどの細かい改変で話がシームレスに移行していく様子が描かれていました。それでいて原作の有名なやり取り「密漁をします」「だから気に入った」をしっかりやってくれたことに好感が持てますね。

 そうして始まった秘密の海岸でのアワビの密漁で、次々と体に引っ付くアワビの恐怖を描いていたのが印象的。アワビの大きさは正直ギャグのレベルでしたが、あの巨大なアワビがフジツボのように次々と引っ付いて海に沈めていく様子は中々に怖かったです。加えて海岸に打ち捨てられた人骨や、劇中で流れた能の「阿漕(あこぎ)」と「法華経(ほけきょう)」の方便品*1も、この先に待ち受けている露伴たちの末路を予感させてきました。何よりシリーズでは珍しく怪異が関わってこない分、溺れ死ぬというリアルな危機感が募っていたと言えます。

 あとはやはり、解決後の料理の改変も興味深かったです。タコにヘブンズ・ドアーを使うことでアワビを取り外して助かる展開は同じでしたが、そのタコを採って料理にしたのは結構意外でした*2アワビのことは諦めて、代わりにあのアワビを大量に食べたであろうタコを食べることで効果を期待するのは上手いと感じましたね。流石に公共放送で密漁を成功させるわけにはいかなかったでしょうし、それを踏まえてある程度納得のいく解決方法を提示したのは見事の一言。本編とも言える内容はわずか15分程度でしたが、確かな満足感を感じさせてくれる見事な描写として感激せずにはいられなかったです。

 

 

 今回は他にも様々な点で気になる要素が多く、個人的にも結構リアクションに浸かれるほどでした。残った注目ポイントの感想を簡単に箇条書きにすると……

 

  • 冒頭のシーン「小悪党が露伴の地雷を踏んでヘブンズ・ドアーされる」展開はこのシリーズのお約束になりつつある
  • 泉ちゃんコイツ、取材と称して経費で料理を堪能する気だ……!
  • トニオさんが飼っている犬の名前がよりにもよって「アンジェロ」という
  • アワビのことを話してくれた漁師の役がまさかのでんでんさん
  • トニオさんの密漁用姿、原作通りとはいえコック帽はそのままなのがじわる
  • 一瞬だけ映ったタコのシーンの異様な迫力にシビれる!あこがれるゥ!

 

 といったところ。まとめると今回も本当に面白い実写化でしたね。ずっと見たかった密漁海岸ですが、原作ジョジョのエピソードを加える改変には本当に感心しました。トニオさんのキャラクターを描きつつ、密漁の恐怖を描くパートに進んでいく構成の綺麗さには舌を巻くばかり。そして何といっても、トニオさんを演じるAlfredo Chiarenzaの演技にも感服しました。優しいけどどこか不気味なトニオさんを完全再現しており(そして上述の要素で原作よりも異常者っぽくなった印象を受けましたね)、この人を見つけてきた時点でこのエピソードの実写化は勝利したようなものではないかと思います。

 

 というわけで密漁海岸の感想でしたが、次回作の方も早速気になるところ。ラストの泉ちゃんの発言から「懺悔室」や「グッチへ行く」が予想されていますが、現時点では希望に過ぎないのであまり期待しすぎないように構えたいと思います。時間をかけて見事な実写化をやってくれる岸辺露伴のドラマシリーズ、次なるエピソードもじっくり待っていく所存です。

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:いずれのBGMも能声楽家の青木涼子氏が担当している。

*2:一応原作漫画ラストでも、露伴はタコのトマトソース煮を振る舞われている。