呪いと祝いの記憶
ブンブンジャーといい、「懐かしキャラの再登場祭り」が最近の東映のトレンドかな……?
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- 加治木涼の憂鬱と困惑
今回のガッチャードは加治木を中心としたエピソードが展開。交流を続けていた聖さんとの関係に陰りが見え始めたことで、落ち込む彼を救おうとする過程に微笑ましさや愛おしさを覚えることとなりました。聖さんに別れ話を切り出されて嘆き悲しむ加治木の様子は、ちょっと愉快な部分と彼に対する同情も相まって加治木らしいコミカルさがあったと思います。(ホッパー1とニジゴン目撃→記憶が戻りかける→なんかスタンバってたミナト先生に記憶を消される流れのテンポの良さとか特におかしかったです)
一方で加治木の聖さんへの一途な想いもしっかり描かれており、好感を抱きやすくなっていたのも良かったですね。彼女が東京に来たこと、加えてクロトーによって脱獄版画出た情報を聞いて飛び出す姿などは特に印象に残ります。ひょうんきんだけど見ていて応援したくなる、そんな加治木涼のキャラクターの魅力を再確認しました。
そんな加治木や聖さんの記憶の問題について触れられていたのが今回の大きなポイント。これまでの記憶操作が記憶に蓋をしているようなものだと判明したことで、加治木たちの記憶が戻るリスクが出てきたことに驚きました。この情報はこれまでのゲストキャラの記憶が戻ってくる可能性と同時に、ケミーに関する掟との向き合い方が問われるものとなっていたのが印象深いです。秩序を優先して記憶の完全消去を施すべきか、それとも個人を優先して加治木を助けるべきか……スパナと宝太郎それぞれの主張がよくわかるだけに、この問題の難しさが深刻に映っていたように感じましたね。
- その記憶が力になると信じて
上述の通り根の深い記憶の問題ですが、個人的には封印した記憶が各々の生きる糧となっている点に注目したいところ。今回に限っては兄の面会拒否に落ち込んだり、SNSでの誹謗中傷で職場を辞めざるを得なかった聖さんの姿に胸が痛みました。(お兄ちゃんは恐らく聖さんに迷惑をかけないために拒否しているのがわかるのが余計に辛い)それだけに加治木との記憶をおぼろげに思い出すことで思いとどまるシーンにグッときましたね。辛いことばかりでも大切なことがあれば立ち上がれる様子は、まさに10話で加治木が口にした「楽しかった思い出まで否定するなよ!」に繋がっていると言えます。
聖さんに限らず、ガッチャードではこれまでケミーや人々との記憶で成長してきたゲストを描いてきたのが大きな特徴となっています。ケミーとの出会いはマルガムに襲われたりマルガムになったりと大変なことも多いのですが、それだけで終わらないのが本作の秀逸な要素。ケミーや他の人たちとの交流がその人の力になるというポジティブな面をしっかり描いているからこそ、宝太郎の理想に対する期待や高揚感が湧いてくるとつくづく思いました。
また余談ですが、記憶といえばラケシスのモデルとなった人間の記憶についても触れていましたね。人間になるために自身のモデルの記憶を呼び覚まし、感情を手に入れる流れは興味深かったです。それでいてラケシスがモデルがロクでもない奴だったら……と思い悩む姿が新鮮で、記憶を取り戻すことへの抵抗や不安も描かれていました。間違いなく一歩前進するものの怖いものは怖いという気持ちはわかるだけに、これまた記憶云々の複雑な心情を抱きそうになります。
- 冥黒が悪しき心を呼び覚ます
そして今回もう1つの見どころといえば、過去のゲスト悪人の再登場。聖さんだけでなく3話のストーカーや9話のナイフペロペロ男まで出てきた時は思わずビビりましたね。性格の悪さや凶暴さなどはそのままで、全く変わっていない野性の悪人たちに変な笑いが出てしまいます。そんな悪人たちがケミーを介さず再びマルガムになったことに驚きを隠せなかったのですが、やられ役が不足しがちなライダーの終盤にここまでちょうどいい敵を用意してきたことに少々感心させられたり。
さて上述にもあるマルガム化ですが、ようやく動き出したガエリヤが明かした「一度マルガムになった人間にはケミーの因子が残っている」「冥黒の力があればケミーなしでもマルガムにさせられる」情報は中々に衝撃的。過去の悪人たちがまたマルガムになって暴れるかもしれないという事実は、ケミーと人間の共存に立ち塞がる大きな壁として描かれているように感じました。この因子をどうにかしなければマルガム化の危険性などもあって、宝太郎の夢がさらに遠のくことになりそうですが、如何にして解決するのか気になるところです。
あとガエリヤに関してはクロトーをいいように扱っていたのも見逃せない要素。心のイライラを沈めてもらった代わりに悪人の脱獄を手伝わされるクロトーを見て、何とも複雑な気分を抱いてしまいます。ラケシスのように人間になる決意を固めるわけでもなく、アトロポスのようにグリオンを優先するわけでもない……前を見ず昔の姉妹に固執し続けたあまり迷走を続けているクロトーはあまりにも痛々しかったです。悪人共々利用されっぱなしの彼女の明日や如何に。
というわけで44話の感想でした。いやぁ聖さんをはじめとした序盤の要素を再び持ってくるファンとしては嬉しい回でしたね。あぁ、こんなやついたなぁ~という懐かしい気持ちになりつつ、拾ってくる手腕に舌を巻きました。(この調子で旭さんや理玖くん辺りの再登場も期待したいです)同時に記憶や悪人たちの件など、序盤から示されてきた問題に触れてきたのも好印象。物語が終盤だからこそ、これらの問題をなぁなぁにせずにキチンと解決させようとする気概が伝わってきて俄然楽しみになってきます。人とケミーが仲良く暮らせる世界を実現させるための、大きな一歩を目撃している気分になりました。
戦闘シーンに関してはガッチャーブラザーズで召喚されたヴェノムマリナーを交えた水中戦が最大の見どころとなっていました。ディープマリナーの因子から生まれたマルガムに対し、同じディープマリナーの力で対抗するという構図がオタクにはたまりません。何よりマッドパイレーツと同じく、序盤に1回出たきりのフォームをこうして再登場させてくれるだけで1話から見ている身としては興奮させられます。上述然り、ガッチャードは忘れられがちなものを拾ってくれる描写力が大きな魅力になっていると思いましたね。
そして今回のエピソードは実は今月末に公開される映画『ザ・フューチャー・デイブレイク』の後日談でもあるとのこと。つまり前回43話→夏映画→今回44話という時系列らしいですね。*1加治木のフラッシュバックする記憶の中に、映画に登場予定のスチームライナー進化系が映っていたのもそのためでしょう。同時に冒頭で描かれた知らない夏祭りの記憶も映画に関わっているとか?と妄想せずにはいられません。映画を観ていないとわからない部分には不満を覚えるものの、やはり本編とのリンクを仄めかしてくれるとワクワクしますね。
さて次回はガエリヤに攫われた聖さんを救出するための戦いが繰り広げられる模様。ガエリヤの精神攻撃に追い詰められる聖さんへのハラハラを抱きつつ、加治木の活躍に期待がかかります。戦闘そのものは出来ないものの、加治木なら10話の時のように聖さんの心を救えるはず!という確信があるからこそテンションが上がってきますね。加治木推しとして、彼と聖さんの関係に幸せな結末があると信じて見届けてみせる所存です。
ではまた、次に機会に。
*1:仮面ライダーWEB(https://www.kamen-rider-official.com/gotchard/45/)を参照。