そして、彼の物語は始まった
萩原聖人さんって今年の内に2回も「ヒーロー兼行方不明の父親役」を演じているのか
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- 「走れ」の言葉に込められたモノとは
今回のアークは予想通り第1話以前の過去編。ユウマがSKIPに初出勤した日にして、初めてウルトラマンアークに変身した戦いの記憶に触れた“第0話”ともいうべき内容が描かれました。まだまだ職場に慣れなくてぎこちないユウマの態度が初々しくて、ちょっとした愛おしさすら抱きましたね。職場の先輩である「夏目リン(なつめ・リン)」に窘められる様子や、祖母の「飛世マスミ(ひぜ・マスミ)」に世話を焼いてもらうシーンなども微笑ましかったです。(余談ですがマスミお婆ちゃんを演じているのが『仮面ライダーガッチャード』でもお婆ちゃんやっていた根岸季衣さんなのが面白い)
そんなアットホームな雰囲気が心地よいユウマのパートでしたが、今の彼のルーツに関わる16年前の事件・K-DAYを体験した時の回想は中々に重めでした。怪獣と謎の光の巨人の戦いに巻き込まれて、両親は失踪&自身は長いこと生き埋め……と、この手の作品にはありがちな悲劇ですが、いざ映像にされると胸にくるものがありましたね。特に1話から描かれていたユウマの口癖「走れ、ユウマ!」が、元々は息子を逃がすために発した父親の言葉という話を聞いている時は、ユウマのトラウマに触れているような気分でいたたまれなくなってきます。
またこの過去が、ユウマがみんなのために頑張る理由に繋がっている点にも複雑な心境を抱きます。「辛い思いをしているのは僕だけじゃない」「みんなのためには走り続けるしかない」という言葉は、立派に感じる反面無理をしているようにも見えました。怖くて一歩も動けなくなっても、父の「走れ」という言葉が呪いになっているのではないか?とすら思えてきますね。ユウマのヒーローとしての精神性そのものは素晴らしいものの、サバイバーズ・ギルト*1に近いモノも見え隠れしているので心配になってくる回でもありました。
- 少年の空想が力になる時
そして今回の目玉であるアークへの初変身は、予想していたモノよりもスムーズで神秘的なモノに仕上がっていたのが印象的。いきなり水溜りの向こうの世界ミラーワールドかな?に連れてこられたユウマが、ルティオンに授けられたアークアライザーとアークキューブを渡されてから即座に変身をこなした時は驚きました。困惑する間もなく変身作業を済ませたことに当初は疑問を覚えたのですが、終盤スケッチブックにアライザーをはじめとした「へんしんどうぐ」も描かれていたことが判明して納得。要は自分で考えたアイテムだからこそ使い方もわかっていたんですね。
そうしてアークに変身してからは、街で暴れるディゲロスとの死闘で大いに奮闘してくれました。いきなり互いにバリアを張った状態で接近し、バリア同士を叩き合ってバリンッ!と割る絵面のインパクトは凄まじかったですね。その後は後述のディゲロスの強さもあってかなり苦戦していたのですが、光線を絞ってムチのようにしならせ、バリアの死角からの攻撃で倒す戦法に感嘆の声を漏らしました。初戦から非常に辛い戦いを強いられたものの、持ち前の想像力による奇抜な戦法で乗り切ったことにニヤリとさせられます。(他にもこの回の戦闘シーンは印象的なものが多かったですね。アークを映した街頭テレビがアークによって壊れて「アークがテレビから飛び出したような」演出と、倒されたディゲロスが一瞬で人形に切り替わって爆破される演出は特に唸らされました)
というわけでアークの変身、ユウマとルティオンの馴れ初めは明らかになったものの、ルティオンがいきなり現れたのには結構びっくりしましたね。ただ恐らくルティオンは16年前の戦いの時点でユウマと一体化しており、ようやく話せるようになったところなのでしょう。(一体化したのも瀕死のユウマを助けるためだったのかもしれません)何故モノゲロスと戦っていたのか?何故ユウマの父「飛世テツヤ(ひぜ・テツヤ)」と同じ声をしているのか?その辺りの謎もありますが、ひとまずはルティオンのユウマに託すかのような優しい声を信じてみたくなった次第です。
- 宙(そら)より現れたるわ、奇怪なツノを携えし獣
今回登場した怪獣、まず1体目は回想シーンに登場した「宇宙獣 モノゲロス」。1話の時点で度々名前に上がっていた劇中世界で初めて存在が確認された宇宙怪獣です。「モノホーン」と呼ばれる巨大な1本ヅノを持っており、そのモノホーンが今もなお発生現場に残されている本作のキー怪獣とも言える怪獣となっています。そのビジュアルはカブトムシを思わせるモノホーンを除けば、かなり人間的なシルエットをしているのが特徴的。しかし前かがみのような前傾姿勢はさながら獣染みており、各所に配置されたブツブツとした形状の発光体などもかなり奇妙。ギョロリとした目も合わさって、様々な生物を掛け合わせたかのようなアンバランスさが目立ちます。
さらにモノホーンに呼応するかのように今回姿を現わしたのが「宇宙獣 ディゲロス」。モノゲロスと関係のある宇宙怪獣と思われますが、まだ動物らしかったあちらに対して直立姿勢から人間染みたシルエットに変化しています。頭部のツノもこちらはクワガタムシの如く2本ヅノになっており、頭部の中心の発光体を光らせて意思表示する絵面も相まってかなり不気味です。(それでいてギョロリとした目玉は側頭部にちゃんと隠れているのでギョッとしましたね)宇宙獣という別名に反して生物的な要素が薄い点、意志があまり確認出来ない点、そして後述の技の数々……と、さながら初代『ウルトラマン』最終回に登場した宇宙恐竜 ゼットンを彷彿とさせる怪獣となっています。
そんなモノゲロス&ディゲロスの戦闘能力ですが、まずモノゲロスは体当たり攻撃をしたりモノホーンから電撃光線を発射したりと、獣染みた荒々しい戦闘スタイルが特徴的。(あとモノホーンを巨大化させていましたが、そのまま突進して攻撃するつもりだったのでしょうか)対してディゲロスは光線や火球攻撃、浮遊能力やあらゆる攻撃を弾き返すバリアと、多彩な技でアークを翻弄していました。特に後者は圧倒的な攻撃で街の広範囲を焼き払ったり、息をつかせぬ攻勢でアークを追い詰めたりとシャゴンやリオドが可愛く見えるほどの強敵っぷりが印象に残ります。バリアの側面をついた攻撃で何とか倒したものの、初戦にしてはかなりハードな相手だったことは間違いないでしょう。
そうして何とか倒したものの、ここまでの描写からしてディゲロスたちの話が終わりとはとても思えません。何よりこの2体は何故現れたのか?そういった謎は全く解明されていないのが不穏に感じますね。ディゲロスがモノホーンを目指して進撃していたのも気になりますし、この宇宙獣は今後もアークの物語に関わってくる可能性があります。次は3本ヅノのトリゲロスが出てきたりして!?などと妄想しつつ、これらの情報を記憶の中に留めておきたいと思います。
今回は他にも本作の世界観を思わせる発言や描写も印象に残りました。何と言っても序盤SKIPが連絡を受けた「歪んだ空」に関するやり取りで、連絡した業者の人が少々呑気にも見えたのが気になりましたね。同時にリンが「怪獣災害も自然現象」として捉えている発言をしており、本作において怪獣は害獣による災害と同等の存在であるということを認識させられます。(そういったことを学校で習うらしいのも興味深いです)こういった細かい要素で、物語のリアルな部分を伝えてくれるのはやはり面白いと感じます。
あと特撮オタクのちょっとした小ネタとして、ユウマの父・テツヤ役の萩原聖人さんについても話しておきたいところ。一般的なオタクにとってはアニメ『逆境無頼カイジ』の主役・カイジの声を演じていたことを思い浮かべることでしょう。
しかし個人的に荻原さんで思い出すのは今年の冬に放送された深夜特撮『牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者』の方なんですよね。萩原さんはこちらで白羽ゴドウ/光斬騎士ザンゴを演じており、非常にカッコいいキャラクターだったのもあってかなり印象に残っています。というかこのゴドウもその作品における強くて立派なヒーローであり、行方不明の父親というポジションなのでどうしても本作との共通点を見出さずにはいられなくて……同じ年に放送された特撮作品で、似たような役どころを演じる萩原さんには今後の出番にも期待したいところです。
さて次回はリンのメイン回になる模様。彼女の行きつけの商店街で害獣被害は発生するのですが、ただのネズミの仕業だと思われたものがとんでもない事態に発展するようで……?身近な人情話にもなりそうなこのエピソードで、リンはどのようにして商店街を救うのでしょうか。そしてユウマのスケッチブックに描かれていた“新たな力”がいよいよ披露される瞬間にも注目したいです。
ではまた、次の機会に。
*1:戦争や災害、事故や事件、虐待などから生き残った人が、自分だけ助かったことに対する罪悪感を覚える状態のこと。他の症状も含めた「サバイバー症候群」という総称も存在する。
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