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ウルトラマンアーク 第5話「峠の海」感想

想像力は僕らの翼

アバレた数……ではなく調べた数だけ強くなれる!

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  • 地道な調査と暮らしの様子

 今回のアークは大光峠(だいこうとうげ)なる場所で発見された怪獣の化石のニュースから物語が始まりました。化石調査のために招かれた古生物の権威である「牧野信也(まきの・しんや)」博士と共に、突如海に沈んだ峠を調べるSKIPの様子が描かれることに。何の変哲もなかった集落が突然水に包まれ、巨大な海水で満たされる事件からして非常に奇妙でしたね。謎の現象とそれを探る人々の光景からして、この回はいつにも増して怪奇要素が強めになっていると思いました。

 そうして始まったSKIPの調査の描写は、これまで以上に地道で綿密なものであることが感じ取れたのが今回の見どころ。周囲の環境の観察や周辺住民の聞き込みと、様々な観点で怪獣被害の可能性を模索しているのが伝わってきました。確証が取れず本部でうんうん唸るユウマたちの姿も、かえって妙な生々しさを生んでいたと思います。そこから後述の博士たちの閃きから早速真偽を確かめに行く行動力、そしてあらゆる状況を想定している点など、SKIPという組織の在り方を再認識させられます。怪獣を一種の生物として捉え研究・調査するのも、本作の醍醐味と言えるでしょう。

 またわずかな描写ですが大光峠の住人の反応も興味深かったです。故郷が突然海に沈んで避難所暮らしを強いられていた人々が、避難中の不満や終わることへの安堵を漏らす様子がニュース越しに描かれた時は少々見入りました。怪獣などの被害で住む場所を失った人たちの声を、こうしてリアルに描くだけでも世界観が読み取れますね。(日本でも地震・津波による災害もあるので他人事とは思えないようになっているのが絶妙)怪獣災害と隣り合わせの世界がどのようなものなのか、視聴者の想像力が試される場面でもありました。

 

 

  • 過去を受け入れ可能性を模索する

 そして今回はSKIPの所長である「伴ヒロシ(ばん・ヒロシ)」と牧野博士の関係が最大の注目ポイントとなっていました。前者はこれまでのエピソードから気さくで親しみやすい雰囲気を持っていましたが、諦めかけたユウマたちに「とことん調べるぞ」と発破をかけるシーンで熱い一面を見せてきたのが驚き。対する後者は恐竜博士として子どもに大人気(特にユウマが怪獣への苦手意識を克服するきっかけになっているのが素晴らしいです)という納得の肩書きとは別に、所長に対する仄暗さが何となく感じられました。

 その理由が過去のちょっとした行き違いというのがこの2人の微妙な関係を表わしていましたね。当時学生だった伴所長の意見に聞く耳を持たなかった牧野博士が、怪獣の出現と共にその時の選択を後悔している姿に胸が締め付けられました。若者の芽を摘んでしまったかもしれない嘆きに対し、所長の方も苦々しい表情を浮かべていたので余計にいたたまれなくなってきます。この両者の間にある申し訳なさや気まずさは、大人になるほど言葉に出来ない感情が湧いてきますね。

 それ故今では子どもたちに夢を与えようとしている博士、そして身近な人々のために知識を活かそうとする所長の選択が響きました。「納得がいくまでとことん調べる」姿勢も、そうした過去があってこそ。過ちや後悔を忘れることなく、それでいてネガティブにならずに前に進む糧にするのが見事の一言です。何よりそうしたいざこざを乗り越え、子どものように無邪気で仲良く研究する2人の姿に大いに癒されました。清濁を併せ呑み、可能性を否定せずに追求する……まさに博士が子どもたちに伝えている「想像力は僕らの翼」を体現した大人たちの素敵な回なのだと感じた次第です。

 

 

  • 大海に死を振りまくは太古の姿

 今回登場した「巨鯨水獣 リヴィジラ」は牧野博士が調べていた化石の怪獣の同種、すなわちその昔生息していたとされる古代怪獣です。巨鯨の別名の通りクジラそっくりの体型に加え、かつ深海魚を思わせるビジュアルが何とも印象に残ります。左右ニュッと飛び出た目玉はシュモクザメやカタツムリを彷彿とさせ、全身にフジツボも付いているなど水棲生物の特徴がこれでもかと詰まっています。その結果ずんぐりむっくりながら、魚のヒレも併せ持つユニークな見た目になっているのが面白いですね。

 そんなちょっとゆる~い外見とは裏腹に、生態や戦闘能力は中々に危険。まず体の噴出孔から発射される塩化ナトリウムによって、周囲の水をたちまち塩水に変えてしまうのが厄介極まりないです。海に近いならまだしも、塩分濃度35%という濃さは海の生物ですら生きていけないほど。劇中では他の生物を寄せ付けないための生存戦略だと考察されていましたが、これは明らかに現代の生態系を破壊しかねないレベルにまで達しています。何もなかった場所を海水で満たし、自分に適応した環境にしてしまう……今の時代には迷惑極まりない怪獣といえるでしょうピ○チュウの次はカ○オーガかぁ……

 そして鈍重そうと見せかけて、水中での機敏な動きも凶悪でした。しかもただでさえ濁っている海中で潮を吹くことで、アークの視界を封じる戦術もかなり狡猾。自分はクジラ由来の超音波によるソナー探索で相手の位置を認識し、一方的に攻撃してくるので見た目以上に強力に感じました。攻撃方法は体当たりのみですが、これらの能力を遺憾なく発揮してくる辺りに海の怪獣としての強さを感じ取りましたね。

(あと余談ですが、このリヴィジラのデザインを担当した「河本けもん」氏はコロコロコミックやてれびくんで様々な漫画を連載していたのもあって少々個人的な思い入れがあります成人向けでも大活躍していたのは秘密だ!『R/B』の時から絵コンテで参加していたのは知っていましたが、とうとう新怪獣のデザインを担当したことに驚きと感銘を受けましたね

 

 

 今回は他にもアークのいつもの想像力(そういえばあの首を傾げる動作は「アークトリッキーテクニック」という技名があるらしいですね)が発揮されていたのも面白ポイント。何と言ってもギガバリヤーを光輪(エクサスラッシュ)で三分割し、扇風機のような形に組み立てた時は度肝を抜かれました。しかもその回転で視界を晴らしつつ、リヴィジラをおびき寄せる戦法まで披露したので感服するほかありません。その場その場で最適な道具を用意してみせる、アークのDIY精神が毎回発揮されるのが余計に楽しみになってきました。

 

 

 さて次回は山奥に存在するとある旅館が舞台。そこを経営する番頭さんを怪しむシュウの鋭い視線、そして苛烈な捜査にユウマたちが困惑するようです。予告映像からして宇宙人絡みの可能性がありますが、シュウが何故ここまで必死になっているのか気になりますね。アークの世界における宇宙人事情と合わせ、石堂シュウの掘り下げが描かれる予感がします。

 さらに1話に登場したシャゴンがまさかの再登場。別の個体が出てもおかしくないのですが、ここまで早いスパンでの出現は予想外です。そしてシャゴンに合わせてあの寄生生物の生き残りも出てきそうで、色々と不穏に感じずにはいられません。

 

 

 ではまた、次の機会に。