先日8月14日、週刊コロコロ(コロコロオンライン)にて言わずと知れた巨大ヒーロー『ウルトラマン』と言わず知れたアメコミヒーロー『スパイダーマン』が共演する奇跡のクロスオーバー漫画の連載が始まりました。制作陣も円谷プロの設定協力に大石真司氏、シナリオを松本しげのぶ氏、そして作画が緋呂河とも氏といった顔ぶれで構成されています。特に大石氏は『仮面ライダー響鬼』や『大魔神カノン』など、特撮関係の仕事が多いので今回の抜擢には納得がいきますね。(実際同じく週刊コロコロで連載している『ウルトラマンブレーザー』の漫画版を監修していますし)
↑連載前の告知の所感については上の記事を参照。
ただ個人的には、やはり松本しげのぶ氏がシナリオを執筆することに驚いています。日本の代表的カードゲームの1つ『デュエル・マスターズ』を生み出し、「松本大先生」の愛称で親しまれている松本氏がウルトラマン&スパイダーマンの漫画を描くとはファンとしても予想していなかったです。氏が怪獣や妖怪、ヒーローなどの造詣に深いことは薄々知っていましたが(実際氏の仕事場にはガンQといった怪獣のフィギュアが確認出来ますし)、今回公開されエピソードでそれが想像以上だったのも驚愕ポイントですね。
まぁ何はともあれ、デュエマの作者が描くウルトラマンとスパイダーマンの世界、3つのジャンルそれぞれが大好きなメタレド的には非常に魅力的な話です。マーベルのシリーズをとても好きで、ウルトラシリーズもかなり好きで、デュエマが滅茶苦茶好きなファンの1人として、今回はそんな新連載の感想を簡単に書き綴っていこうと思います。各ジャンルの話が入り乱れた感想になっていますが、ご了承ください。
- 英雄(ヒーロー)の在り方
本作を読んで強く感じたのは、「安定」の部分と「驚き」の部分がそれぞれ濃厚に描かれている点。まず前者はピーター・パーカー/スパイダーマンの苦悩の過程に、松本しげのぶ氏の作風がベストマッチしていたのが見逃せないポイントとなっています。とにかく展開が早く、有無を言わさぬハイテンポで読者を置き去り寸前にまで追い込む第1話には圧倒されっぱなしでした。大ゴマの連発と大仰なまでのセリフ回しなど強烈で、デュエマ漫画を愛読している身としては凄まじい既視感を覚えた次第です。それでいて画面がしつこすぎず読みやすいのが作者の妙と言えましょうか。
また特徴的だったのがスパイダーマンを引っ叩きながら諭すアイアンマンに、攻撃と共にヒーローへの痛烈な批判をしてくるDr.ドゥーム。それぞれのキャラクターの手の早さと語気の強さが印象に残りました。その中に込められた「全てを救えない」といった残酷な真理も、ヒーロー作品としての真摯な作風が感じられて好感が持てます。人を救うことがどれだけ難しいことなのか、ヒーローはどれほどまでに過酷なのか……この辺りも松本氏の描く英雄の在り方らしいと感じますね。
「英雄になるということは常人の生き方を捨てるのも同じ」というメッセージすら聞こえてきそうな内容を1話目から喰らい、早速ハラハラさせられた気分です。現状ではマーベルサイドのみでウルトラマンサイドではどのように描かれるのかは未知数ですが、この調子だとハヤタ/ウルトラマンにも同様の苦悩が待っていそうですね。人々を救うためにヒーローというイバラの道に進もうとするピーターとハヤタ、それぞれの物語に期待がかかります。
- まさかまさかのウルトラQ
続いて驚きの要素ですが、こちらは主にウルトラマンサイドに寄っていましたね。失意のどん底に落とされたピーターが如何にしてウルトラマンの世界に行くのか気になっていましたが、あらすじ通り『ウルトラQ』の異次元列車が出てきた時はビビりました。まんま小田急のロマンスカーがスパイダーマンを轢いたかと思ったら、ト書きの説明付きでウルトラマンの世界に連れていく絵面のインパクトたるや凄まじかったです。別世界に行く手段としてこの列車をチョイスするセンスにはいきなり脱帽せざるをえません。
さらにピーターがウルトラマンの世界で、深海怪獣 ピーターを目撃する瞬間でさらにギョッとすることに。こちらも『ウルトラQ』出身の怪獣ですが、選出した理由は間違いなく“ピーター”繋がりでしょうね。「ピーター・パーカーが初遭遇する怪獣もピーターにしよう!」とかいう発想には腹筋が崩壊しそうになりました。上述の異次元列車含め、ウルトラマンではなくQのマニアックな要素を拾ってきたことには正直感服してしまいそうになります。
そんなウルトラマンのファンの中でも相当なマニアが考え付きそうなネタを、誰が考案したのかも気になってきます。恐らくは大石真司氏か松本しげのぶ氏のどちらかでしょうが、個人的には後者だったらニヤリときますね。何はともあれ異次元列車などの解釈に一石を投じた、制作陣の次なるマニアックなネタは何かとワクワクしてくる導入になっていたと思います。
では以下、各キャラクターについての所感です。
ピーター・パーカー/スパイダーマン
ご存じニューヨークの親愛なる隣人。初っ端から民間人を救えず、ドゥームから心身ともボロボロにされるなど曇らせ展開の餌食になった哀れな主人公といった印象でした。この打ちのめされる様子はいつものスパイディといった具合なので、ある意味で安心感を覚えます。むしろまだまだ若いピーターがここからどのように起き上がりヒーローになっていくのか、その成長に期待が持てますね。
あとは第2話で見せた外人リアクションが結構面白かったですね。(1話の時との温度差も激しかったです)「SUSHI!FUJIYAMA!GEISHA!(芸者ではない)」だけでもシュールなのに、ハヤタを「JAPANESE SAMURAI」と呼称した時のは吹き出してしまいましたよえぇ。反応が一昔前の外国人のようで少々古臭く感じますが、そこもかえって本作ならではの味と捉えましょうか。
ハヤタ/ウルトラマン
ご存じ怪獣退治の専門家。2話ラストに登場しただけですが、お約束のぐんぐんカットと共にウルトラマンになるシーンの高揚は中々のものでした。怪獣の方のピーターにチョップをかますラストシーンも、原作のウルトラマンの初戦を思い出すファイティングスタイルとなっています。日本人としてはこのビジュアルと登場プロセスに安心感を覚えますね。
それ以外だと現時点で描写が少なくてあまり語ることがないのですが、強いて言うならばハヤタがウルトラマンの力を自覚している発言が気になるところ。十中八九ハヤタの中のウルトラマンの人格でしょうが、制限時間3分を明言するセリフ回しといい少々新鮮に感じます。このマン兄さんもといハヤタが本格的に口を開くとどんなキャラに仕上がっているのか、興味が湧くばかりです。
Dr.ドゥーム
本作のマーベル側のヴィラン。悪魔博士だでよ。ちょうどMCUでメインヴィランとして登場することが決定しており、結果的にタイムリーな出演となりました。そしていきなりドゥーム軍団と共にスパイダーマンを襲い、ヒーローたちに過ちを指摘してくるキャラは非常に強烈の一言。異次元列車の先にあるものを予感したりと、油断ならない敵として描かれていたと言えます。
それでいて言動から傲慢さ・歪んだ使命感を見せるのがまたドゥームの魅力。一見すると正しいことを言っているようですが、そもそも街を廃墟にしたのがコイツなので自分のことを棚上げしまくっているのが最高にドゥームしていると思います。この性格がウルトラマンの世界でどのように発揮されるのかにも注目ですね。あらすじだとメフィラス星人と組むみたいですが、アイツと協力出来るのか……?
トニー・スターク/アイアンマン
鉄の意志を持つヒーロー。近年スパイディのお目付け役になることが多く、本作でもその立場で描かれていました。スパイディに救助よりも元凶を討つことを優先させ、救えない命があることを諭してくる様子は中々に悲痛でした。そのうえ「救える人がいるなら救いたいに決まっている」と吐露してしまう辺り、トニーも苦悩しているのが伺えますね。
あとはトニーのキャラが違うという声も聞きますが、個人的にはあまり気にはならなかったです。というのもマーベルのキャラクターは作品によって微妙に性格が違うことがありますし、それこそトニーはアニメの出演も多いので色んなキャラがいても不思議ではないでしょう。(『ディスク・ウォーズ』『フューチャー・アベンジャーズ』『アベンジャーズ・アッセンブル』に『地球最強のヒーロー』を視聴したメタレドに隙は多分無い)命の選択に重きを置いている骨子は同じだと思うので、その違いもまた楽しんでみたいところです。
異次元列車
キャラクターではないですが一応。上述の通りウルトラQに登場した列車ですが、ブルトンとかを差し置いてピーターとドゥームを別次元に連れていく役割を担っていたのは本当に驚きの要素となっていました。ただ異次元列車の「現実に疲れ果て・絶望した人間を別の場所に案内する」という設定を上手いこと調理したなぁ、と感心も覚えますね。
あとX(旧Twitter)上での指摘で気付いたのですが、列車のデザインがどう見てもプラレールなのがこれまた愉快なポイント。異次元列車は以前プラレールで商品化されたとのことですが、その時のプラレールを資料として使ったのでしょうか。おかげで玩具のような列車が異次元を渡り歩く、非現実的な絵面が生まれていたと思います。
深海怪獣 ピーター
こちらもウルトラQで初登場した、カメレオンみたいな見た目の怪獣。ピーター・パーカーが怪獣の方のピーター出会う!というギャグに振り切れた要素ですが、正直その発想はなかったので笑うとかよりも先に膝を打ちましたね。列車同様Qのオタクが考えたとしか思えない発想にはかえって舌を巻くばかりです。
またピーターがウルトラマンと戦うのは今回が初めての模様。ペギラといい後年になってウルトラマンとの対決を実現するQ怪獣の仲間入りを果たしたのは感慨深いです。というかこのマッチング、「初代ウルトラマンとウルトラQを戦わせてみてぇなぁ」というオタクの願望を実現させるためのものではないか……?などと邪推してしまったり。
というわけでウルトラマン&スパイダーマンの感想でした。いやぁ両作品の要素を感じつつ、松本大先生の作品を読んでるなぁ!と確信が得られる濃い序盤でしたね。特にコマ割りなどは、毎月読んでいるデュエマ漫画を彷彿とさせるものがあって実に興味深かったです。デュエマのテイストでウルトラマンとスパイダーマンが描かれているというのは何とも奇妙ですが、そこがまた面白いところ。好きな要素ばかりの幕の内弁当みたいな作品だと個人的に思っているので、今後の展開により期待が持てる結果となりました。
その一方で松本しげのぶ氏の仕事量には慄くばかり。現在月刊コロコロコミックで連載している『デュエマWIN』の他、本作と同じく週刊コロコロで第2章が始まったばかりの『デュエマLOST』も含め、実に3本もの連載を持っていることに驚愕させられます。(そこにデュエマカードのクリーチャーデザインや販促の兼ね合いもあるので、他の漫画家と比べても尋常ではない仕事量になる模様)いずれの作品も氏が楽しんで描いているのが伝わってくる反面、倒れたりしないか心配になってきてしまいますね。とはいえどの作品も面白くて盛り上がっているのでもっと読みたい!という複雑なオタク心もあるので、大先生には無理せず楽しみながら仕事を続けてほしいと願うほかありません。ともあれ次回も楽しみに待っていたいと思います。
ではまた、次の機会に。