ネットの世界でいざ投げ銭!
目を醒ませ 僕らのお金が何者かに侵略されてるぞ
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- 愉快でちょっと怖い空間にようこそ
今回のアークは相次ぐ閉店ラッシュに節約を強いられる生活など、世知辛い現実を見せつけてくる冒頭にやや冷や汗をかかされました。しかし動画配信の投げ銭でお金を稼ごうとするシュウをはじめとして、登場人物のテンションがいつもより高めになっていることで一気にギャグ空間に引き込まれましたね。(この時点で今回は笑って楽しむ回だということが伝わってきます)中でも星元市の電子地域通貨「ホシペイ」を開発した「銅金カナオ(どうかな・カナオ)」さんは、これまでのゲストキャラと比べても凄まじいハイテンションで見ていて圧倒されてしまいます。
それはともかく、物語の内容としてはカナオさんが開発したインターネット・カネゴンの暴走を止めるという電子戦がメインになっていました。事態は深刻なものの電脳空間に閉じ込めて、学習データを食べさせようとする光景のコミカルさにこれまた笑いが込み上げてきます。電脳空間に引きずり込まれたアークも、体から出たコインの奪い合いをしたりユピーに乗った後にゴロゴロ転がったりと、ギャグ漫画のような演出ばかりを披露していたのがおかしかったです。まるで人間だけでなく、ウルトラマンですらこの回の奇妙なノリに持っていかれてしまったかのような印象を受けました。
と思ったらカネゴンが実体を得て現実世界に降り立ったり、ユウマとシュウの動画に投げ銭をしてシュウのアバターを自分に変化させるラストには少々ゾッとしました。詳しく説明されていないので、何が起きたのかよくわからないシュールさ故の恐怖が広がっていましたね。カネゴンが「お金を使う」ことを覚えたのはいいとして、作品の空気感そのものがカネゴンを中心におかしくなっていたように感じます。とはいえ楽しいことは変わりませんし、ちょっぴりホラーでサイケデリックなギャグ回として、中々に秀逸な内容ではありました。
- 電子の海よりあなたのお金をパックンチョ!
今回登場した「V(ヴァーチャル)怪獣 インターネット・カネゴン」は、見た目こそ『ウルトラQ』以降度々登場するカネゴンに酷似していますが全くの別物。カナオさんがホシペイアプリ内に組み込んだ自立思考型AIで、実体を持たないデジタル怪獣とも言える存在です。実際のお金を食べる原典のカネゴンに対して、電子通貨を食べる性質もネット上で生きるAIらしいですね。動画配信をしながら視聴者の投げ銭を受け取り、それを食べて貯め込む……電子通貨が流通してきた現代だからこその新たなカネゴン像が仕上がっていると感じました。
その一方で貯めたお金を使う概念を知らないせいで、星元市内のホシペイの循環を阻害して物価高や休業を引き起こしてしまう迷惑な存在になっていたのが悩みどころ。ただあくまで制作者たちの手を離れて自立しているだけで、本人は純粋に人々を喜ばせて腹を満たしているだけな点に複雑な心境を抱きます。まだまだ学ぶべきことが多い、純粋で未発達な人工知能ならではの問題と言えますね。
戦闘能力は決して高いとは言えないものの、空腹からお金を死に物狂いで奪いに来る様は中々に苛烈の一言。アークを叩くとコインが出てくるなど絵面そのものはコミカルでしたが、周囲の建物に当たり散らす様子はどこか鬼気迫るものがあったと思います。そのうえネットバンクから大量のホシペイを吸収して、アークを見下ろすほどの巨体になった時は正直度肝を抜かれましたね。総じてクスっとくるものの、電脳世界を想うがままに出来る非常に厄介な怪獣として描かれていました。
ちなみにこのインターネット・カネゴンですが、何気にウルトラマンと初めて戦ったカネゴンだったりします。これまでのカネゴンはウルトラマンと共演することはあれど対立する立場ではなかったため、今回のバトルは結構記念すべきことかもしれません。電子通貨に合わせてデジタル怪獣となった点といい、カネゴンも時代に合わせて変遷していることを感じさせてくれる一幕にほっこりしました。
- 学ぼう!節約とお金の流れ
ご覧の通り見事なギャグ回だったのですが、その一方でお金というものについて学べるシーンが多かったのも今回の大きな見どころ。まず序盤のSKIPやユウマの懐事情に対し節約の話が出てきましたが、シュウの「節約とは我慢ではない」「余計に使わず、適度に正しくお金を使うこと」といった旨の言葉にはハッとさせられました。切り詰めるという言葉などから苦しいイメージがある節約に関して、認識を大きく改めさせられた次第です。ただ“買わない”のではなく、適度に正しく“使う”というのはなるほど!と膝を打つ考えだと思いました。
そして上述のカネゴンがホシペイを貯め込んでいる問題について、カナオさんが「お金の循環」を説明してくれたのも見逃がせません。自分の使ったお金が誰かの手に渡り経済を活性化させ、巡り巡って自分の元に戻ってくる……ある程度は知っているつもりのお金の流れですが、ここまでわかりやすい説明も中々ないですね。Eテレの教育番組を彷彿とさせるデフォルメやキャラクター化もあって、和やかにお金について学べる映像に仕上がっていたと思います。子どもたちの教育としても理解しやすく、ある意味で子ども向け番組としての面目躍如を果たしたと言えるかもしれません。
今回は他にも様々な過去作品のオマージュも多め。まず『ウルトラQ』の第15話、カネゴンが登場する回の要素はもちろんいくつかありました。風船で登場するカネゴンや上述のシュウがカネゴンになってしまうオチなど、原典の愉快でそれでいて怖いストーリーを現代風にアレンジしたものと捉えられます。(その中でも原典で「逆上がりが出来ず子どもたちに笑われていたカネゴン」が、本作では「色々なことに挑戦している様子を応援されるアイドルカネゴン」になっていたのここすきポイント)
続いて『電光超人グリッドマン』の要素。こちらはインターネット空間に入り込む時の通路の描写がそのまんまで笑ってしまいましたね。そのうえ今回地味に活躍したユピーも、演じている広瀬裕也さんが『SSSS.GRIDMAN』の主演だったことを踏まえると余計に吹き出してしまいます。過去作のリスペクトを忘れず、イマドキの描写に合わせてアレンジするセンスはファンとして大いに評価したいところです。
そして次回は4話以来のリンメイン回。大学時代の憧れの人との再会を果たす中、その彼が怪獣細胞の横流しの疑惑をかけられている事実に愕然とするとのことです。尊敬する人を信じるべきか、疑うべきか……その狭間に揺れる複雑な彼女の心境が注目ポイントになりそうですね。また予告映像ではネロンガ&パゴスというこれまた懐かしい怪獣たちも久々に登場する模様。2体で争っているようですが、どんな状況なのか気になるところです。
ではまた、次の機会に。
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