お菓子も悪も、
俺が食べ尽くす!!
酸いも甘いも嚙み分けて、人々の幸せを守り抜け!!
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令和ライダーシリーズ6作目にして最新作『仮面ライダーガヴ』の放送がついに始まりました。お菓子をモチーフにしたビジュアルの和やかさとは裏腹に、次々と明かされる人物や世界観設定から不穏なものを感じ取らずにはいられない、放送前から話題になっていた作品でもあります。そしていざ第1話が放送されるや否や、その予想を的中させつつ“仮面ライダー”を突き詰めたような内容に魅了されることとなりました。というわけで今回から、そんな新ライダー・ガヴの感想を書いていきたいと思います。
- 孤独な仮面ライダーとしての主人公
さて本作においてまず語りたいのは主人公「ショウマ」について。温和で人懐っこい性格に加え、お菓子を美味しそうに頬張る様子から見ていて癒される青年となっています。同時に『ガッチャード』の夏映画での先行登場から人間ではないことを予感させていましたが、第1話から敵怪人「グラニュート」と同じであることが明かされたのが衝撃的でしたね。(後述の母親の件から人間とグラニュートのハーフらしいのですが)トラックにぶつかっても無事という絵面も相まって、早い段階から視聴者に人外であることを印象付けてきたと言えます。
それ故か仮面ライダーガヴに変身して戦いながら、人間ではない存在の悲哀が描かれていたのが今回の大きな見どころ。最初に仲良くなった「廣井始(ひろい・はじめ)」少年を守っていた中で、始くんの母親から「化け物」と怖がられる展開には胸が締め付けられました。助けた人間から拒絶される光景は、ベタながら見ていて辛いものがありますね。この時点でたった1人ショウマのことを理解してあげられている始くんとも、手紙で別れてしまっているのが切なさを加速させてきます。(ショウマの意を汲んだ始くんが泣きながら手紙を破り捨てるシーンもここすきポイント)
ただそういった描写があるからこそ、自分のことを理解しているうえで人間たちをグラニュートから守るショウマのヒーロー性が映えるのだと感じます。(母との思い出からか、始くんの母親との関係を慮っているのも見逃せません)加えて同じ怪物であるグラニュートを倒す業を背負いながらも、人間の幸せを想う姿勢には不憫ながらも鮮烈なカッコよさが内包されていました。まさに人間ではない身で理解されずとも孤独に戦い続ける……悲哀を秘めたヒーローとしての“仮面ライダー”が劇中で描かれていましたね。悲しい部分もあるのですが、ショウマの純粋なキャラクターも相まって素直に応援したくなってきます。
そんなショウマの過去も気になるところ。断片的ながらいくつかの情報が明かされており、彼がこの世界にくる以前どんな境遇だったのか何となく想像出来るようになっていました。人間の母親から教えられた「この家のお菓子を食べてはいけない」発言や、冒頭のクレジットで表示された「ショウマ・ストマック」など、本作の敵サイドである「ストマック家」との関連性に冷や汗が出てきます。他にも始くんに残した手紙の文字の拙さから、人間の文字を必死に勉強していた?といった背景が浮かんできますね。幼い一面もあって苛烈な幼少期があったのではないかと想起させる、ショウマの謎の開示が怖いながらも楽しみです。
- ムニムニ&ジューシー!縦横無尽に跳ね回るパワー
グミ!
ガヴ! ガヴ! ガヴ! ガヴ!
EATグミ!
ガヴ! ガヴ! ガヴ! ガヴ!
EATグミ!
ガヴ! ガヴ! ガヴ! ガヴ!
\ヒャアァァ~!/
ポッピングミ!!
ジューシー!
ショウマがカラフルで甘いグミを食べることで生み出した眷属「ポッピングミゴチゾウ」を腹部にあるもう1つの口「ガヴ(赤ガヴ)」に装填、ガヴガヴ食べさせることで変身した姿「仮面ライダーガヴ ポッピングミフォーム」。本作の主役ライダーの基本形態です。紫をベースに黄色や緑のグラデーションが入った色合いの鮮やかさと、シンプルながら歯を彷彿とさせる頭部などのデザインが目を引くビジュアルとなっています。(また赤ガヴは獅子舞、ゴチゾウは浄瑠璃人形といった日本の伝統芸能をモチーフにしているようにも見えます)
またグミをモチーフとしているだけあって、装甲がグミになっているのも特徴的。そのためプニプニあるいはムニムニとした質感があって、従来のライダーのような硬さはあまり感じられないのが興味深いですね。このようにポップなところもあるのですが、一方で不穏な描写もいくつかあるのが面白いところ。グミが体に纏わりついて侵食していくかのような変身プロセス、基本の立ち姿が獣を彷彿とさせる前傾姿勢なことから、異形の怪物としての側面を孕んでいるとも捉えられます。
戦闘においてはグミの弾力を駆使した跳躍や俊敏な動きを遺憾なく発揮。グラニュート「ハウンド」を相手に、飛んだり跳ねたりしながら繰り出すパンチとキックで大いに活躍していました。さらにグミで出来た装甲は相手の攻撃を跳ね返したり、剥がれることで変身者のダメージを抑える役割を持っているのが印象的。剥がれた装甲は逐一同じゴチゾウを食べて貼り直す必要があるのが面倒ですが、裏を返せばゴチゾウを補充出来る限り戦い続けられるとも言えますね。
さらに特定のゴチゾウを食べることでさらなる力を得る「追い菓子チェンジ」もガヴ特有の戦法の1つ。今回は「キッキングミゴチゾウ」を使い、右足に巨大な追加武器を装着した「キッキングミアシスト」を披露していました。キッキングミでキック力を高めたように、状況に応じた追い菓子で対応していくのがガヴの基本となっていくのでしょう。他にも固有装備「カヴカブレイド」や本作のバイク「ブルキャンバギー」なども、赤ガヴから用意する模様。総じてもう1つの口で「食べる」ことによって力を発揮する異色のライダーと言えるでしょう。
(また余談ですが、公式ホームページで確認出来るポッピングミのカタログスペックの低さには驚きました。*1過去のライダーと比較しても、クウガのグローイングフォームより下のスペックながら、ショウマの元々の身体能力もあって戦える塩梅に感心しますね)
- 怪物&アイテムから見る“食べる”行為
ショウマ以外にも、グラニュート全体やゴチゾウにも闇の深いものを感じずにはいられませんでした。まずグラニュートですが、人間世界に潜伏しながら幸せな人間を襲うというのがまずホラーチック。捕まえた人間はグルグル巻きにしたアクスタ「闇菓子(やみがし)」なるものの材料にするとのことですが、この闇菓子が如何にもただのお菓子ではないことが読み取れます。食べながらキマっているかのようなシーンからして、グラニュート世界における麻薬のようなものにも見えてきますね。そう考えるとストマック家に人間を差し出すグラニュートたちは、麻薬中毒者のようなもの……といったアウトな絵面が思い浮かんできて仕方ありません。
そしてショウマの眷属兼本作のアイテムである「ゴチゾウ」に関しては、可愛らしい見た目からくる健気で儚い性質にこれまた度肝を抜かれました。まず変身アイテムとして使い捨てというのが珍しいですし、食べられて使われたゴチゾウが「シアワセ~」と言いながら昇天する絵面は中々にショッキング。主人に尽くすことを至上とする姿勢は、なるほど眷属という呼び名が相応しいと言えますね。食べられるためにたくさん増えて、ショウマを支えようとするゴチゾウに『ピクミン』染みた献身性を覚えずにはいられなかったです。(前作のケミーが純真無垢な存在だった分、別のベクトルでマスコット的可愛さを引き出したのは見事の一言です)
といったようにグラニュートもゴチゾウもギョッとする要素満載でしたが、それらが全て“食べる”という行為に属するものなのが興味深いところ。食事は他の命を貰い自分の糧とすることなので、食べる側と食べられる側それぞれの生命を良く描いてみせているとも捉えられます。ただ片や他人を喰い物にして快楽を得る怪物、片や食べられることで力を与える奉仕者、と力を奪ったり与えたりする形で食べる行為を解釈しているのも面白いです。食に対しある意味で真摯な描写をしてくる本作に、ちょっとした感動を覚えた次第です。
というわけでガヴの1話感想でした。いやぁ主人公の正体などが早くも描かれつつ、ライダーとしての立ち位置を魅せてくれるロケットスタートでしたね。上でも書きましたが、ショウマの優しい人間性と不憫な扱いの合わせ技にも一気に引き込まれました。また彼に何があったのか?そもそもグラニュートとは何か?など、情報開示によってさらなる疑問が湧いてくる構成も素晴らしいです。ここまで1話から魅了されるライダーも中々ないので、次回から楽しみで仕方ありません。
何より今年もまた1年、仮面ライダーを楽しめそうでファンとしては本当に嬉しい限り。この調子でガヴの感想も頑張って書いていく所存です。
さて次回は行き倒れたショウマがある女性に拾われて、彼女の経営する何でも屋を手伝うことになる模様。さらに上述のストマック家の連中も登場し、闇菓子などについても色々明かされそうですね。物語の本拠地となる場所も登場し、メインキャラも揃ってきて物語が本格的に始まりそうな予感がします。次なるスナックのフォームも地味に楽しみです。
ではまた、次の機会に。
*1:「ライダー」のページ(https://www.tv-asahi.co.jp/gavv/rider/gavv/poppingummy/)を参照。