甘い青春もほろ苦く……
バラゴン「もしかして、俺がこいつら(ネロンガたち)のご先祖様になるのか……!?」
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- あの頃の想いにさよならを
今回のアークは4話以来となるリンにスポットが当たった内容。恩師が恐ろしいことに手を染めている疑惑が立つ中、必死に彼を探り説得する姿に胸打たれることとなりました。まず学生時代からお世話になっていた「山神サトル(やまがみ・サトル)」との関係が回想シーンで度々描かれ、リンにとって山神さんが如何に大きな存在なのかがよくわかる構成になっていたのが渋かったです。特に描写からして恋にも通じる感情が見え隠れしている辺りに、個人的には悶えてしまったり。(山神さんが所帯を持っている事実を知りショックを受けるシーンとかじわじわきますね)
そんなリンが山神さんへの疑いを晴らそうとする中で、ドンドン確信に迫っていくのがまた辛いながらも見事。山神さんの「嘘をつくとき口元に手を添えるクセ」を知っているからこそ、彼が嘘をついていると気付いてしまう場面には思わず顔を覆ってしまいました。山神さんを救いたいと思って説得するものの、聞き入れてもらえない辺りでもリンの苦悩が感じられます。憧れの人だからこそ正しい道を辿ってほしい、という訴えがまたいじらしいです。
そして連行されていく山神さんと言葉ですれ違い、涙するリンの姿がまた切なかったですね。自分の言葉が届かなかった無力感(実際はそうではなかったのですが)や、儚い恋の終わりが伝わってきます。ただそのうえで過去と決別するために、「あの頃の私」とさよならする旨のセリフにはグッときました。道を違ってしまった山神さんへの配慮も含め、あの人への想いにスッパリ諦めを付けたのは立派な決断だったと思います。それ以上に今回のサブタイがリンの退場かと見せかけて、実際は上述の意味だった点にも膝を打つばかりです。
- 間違えながらも優しかった嘘つき
今回リンの掘り下げにも繋がった山神さんの行動と主張もちょっとした見どころとなっていました。山神さんはフランクな態度と研究熱心な一面もあって序盤の印象は上々。そのため怪獣の細胞の横流しをしていたことにショックを受けてしまいますが、それらの行為に「未来の技術発展のため」という理由があったのでまた複雑な気分にさせられます。(実際怪獣の能力や宇宙人の技術を応用する例はシリーズ過去作にいくつもあるので、その考えに至るのも当然だと言えるんですよね)
何より子どものことを口にしたことで、彼が自分の子の未来を憂いていたことも読み取れました。苛烈な違法行為をしてしまったものの、その想いは邪ではない本物だったと思うので憎むに憎み切れなかったです。さらにリンを吹っ切らせるために、過去の思い出について「覚えていない」と嘘をつく辺りも素敵なポイント。リンが憧れていた未来を真剣に考える、優しい先生は確かに“ここにいた”ことを感じ取った次第です。
また山神さんとユピーの関係性が仄めかされていたのも見逃せないポイント。リンとの出会った際に「危険な怪獣災害の現場を調査するロボットの制作」をSKIPから依頼されている話を聞いて、山神さんがユピーたちを作った可能性が出てきたことに思わずテンションが上がりました。さらに上述の傷心状態のリンをユピーが励ますシーンも意味深。山神さんへの想いに決着を付けたリンですが、彼が残したユピーは今でも彼女を見守っているということなのでしょう。総じて山神さんにやりきれない思いを抱くものの、嫌いになれなくなってしまう回でしたね。
- 起源を同じくする電撃と虹の交差
冒頭で早速姿を見せた「透明怪獣 ネロンガ」と中盤地上に出現した「地底怪獣 パゴス」。前者は初代『ウルトラマン』で後者は『ウルトラQ』といずれも初出は古く、それでいて近年の作品で度々登場を重ねている定番の怪獣枠とも言える存在です。昔はマイナー枠の印象があっただけに、いつの間にか番組の常連となっているのが感慨深いところ。
そんな2体が今回地底から現れ騒ぎを起こしていましたが、その原因が縄張り争いだったことにはなるほど納得。しかしネロンガは戦いに敗れ地上に逃げたのはわかりますが、パゴスはわざわざ追いかけてきたのは意外でしたね。外敵は徹底して追い詰めるスタンスも、ある意味では野生動物らしいと捉えられるのでしょうか。(それでいてアークに2体まとめてトドメを刺される直前、仲良く抱き合っているように見えたのがここすきポイント)
他にもネロンガがダイモードによる過充電を受け一度は倒されたかと思いきや、実は仮死状態に陥っていたのも興味深かったです。一般的に「疑死」と呼ばれるこの生態は現実のオポッサムなどが行うことでも有名なので、怪獣たちが似たような手段を取るのも十分にあり得るでしょう。こうした怪獣たちが動物らしい特徴を見せるのは、本作の魅力的な作風の1つだと考えているので一連の描写は大変好ましかったです。
また今回特に目に留まったのがこの怪獣たちのご先祖様の話。山神さんの研究によるとネロンガとパゴス、それに名前だけ挙げられたウラン怪獣 ガボラと地底怪獣 マグラーは共通の祖先を持った怪獣ではないかという考察が為されている話には思わず興奮しました。これは恐らくこの4体のスーツは元々『フランケンシュタイン対地底怪獣』に登場する地底怪獣 バラゴンを改造したもの、という裏話から来ていることが読み取れます。となると彼らの祖先はバラゴンになる……?といった妄想が膨らみますね。こうしたオタクならニヤリとくるネタを自然に話に盛り込む、そんな設定が個人的にも面白いと感じました。
次回はユウマの友人・カズオを中心としたエピソード。予告によるとカズオくんは遠くの星の人と交信するとんでもないことを成し遂げ、それが原因で宇宙怪獣を呼び寄せてしまうとのことです。個人でやったのかは知りませんが、宇宙人と交流を交わすことに成功したカズオくんにまず慄いてしまいますね。彼が何故はるか遠くの友人を作ったのか、その辺りも非常に気になるところです。(そしてノイズラーがいよいよ本格的に暴れ回る時……!)
ではまた、次の機会に。
