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ウルトラマンアーク 第10話「遠くの君へ」感想

その友情は宇宙(そら)を越えて

変身前でも変身後でも聞き耳を立てる主人公がいるらしい

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  • 声だけでも繋がっていたことを……

 今回のアークはユウマの中学の同級生「木崎カズオ(きざき・カズオ)」と宇宙人「フィオ」の奇妙な友情が切なく描かれた回でした。冒頭からアマチュア無線を通して会話する2人の仲睦まじい様子が目に飛び込み、2人が親友であることがすぐにわかりましたね。特にカズオはユウマを相手にした時のぎこちない態度もあって、彼にとってフィオは自分が心を開ける唯一の存在であると伝わってきたのがグッド。典型的な陰キャ要素に見ていていたたまれない時もありましたが、「たった1人の友人を大切にしたい」という気持ちへの共感は覚えやすかったです。

 そしてフィオに対しては最初こそ本当に宇宙人なのか?カズオを騙しているのではないか?といった疑惑を抱きましたが、見続ける中で純粋に優しい宇宙人だとわかり一安心。それどころか彼女は故郷の星の環境汚染で1人ぼっちという事実に愕然としました。その背景もあって、フィオもまた孤独から他人との繋がりを欲していたことが読み取れます。さらにはカズオを気遣いながらお別れの言葉を残すいじらしさを見せるので涙が止まらなかったです。姿も何もわからない、声だけのキャラクターでありながらこれだけ魅力的に映ってみせたことに感嘆を覚えるところです。

 2人の通信がフィオ側のエネルギー不足で断たれてしまう瞬間は、ここまでの両者の描写もあって中々にショッキング。しかしラストのカズオとユウマの会話で少々救われました。声しか知らない関係でも間違いなく“友情”はそこにあったのだと、カズオの想いを肯定してくれるユウマの存在は非常に暖かったです。カズオも最初は邪険にしていたユウマに感謝を伝える様子から、前を向いていけるようになったことが描かれていましたね。前回に続いてやるせない気持ちが残るものの、ほんの少しの優しさのおかげで後味は悪くなかったと感じています。

(あと余談ですが、カズオ役の佐久間悠さんは『仮面ライダージオウ』で加古川飛流/アナザージオウ役、フィオ役の佐倉綾音さんは『王様戦隊キングオージャー』でデボニカ役を担当とそれぞれ以前から特撮作品の出演経験がある点にニヤリときますね

 

 

  • その繋がりのために奔走する者

 今回は他にもカズオたちを想うユウマの描写も大きな見どころでした。まずカズオとの関係ですが、親しい仲なのかと思いきや中学の同級生でしかなかった話にはズッコケましたね。カズオと久々に出会って喜んでいたものの、話しかけてきたのはユウマだけで向こうは快く思っていなかったというのが変な生々しさを感じさせてきます。それでいてつっけんどんなカズオの態度に押されている辺り、それほどグイグイくるわけでもないのが興味深いところです。良くも悪くも相手に踏み込みすぎない性格なのかもしれません。

 しかし上述のカズオと通信を止めようとしたものの、彼を慮る姿勢には好感が持てました。カズオとフィオの関係を知るな否や、2人の通信の邪魔をしているノイズラーを対処しに向かう姿が素直にカッコよかったです。これらの行動の裏には過去のエピソードと同様に、相手の側に立って何を考えているのかを想像していたのでしょうね。つくづくユウマの想像力は、他者の心と向き合うためのコミュニケーション手段でもあることを実感します。

 それでいて今回やたら聞き耳を立てていたのがおかしかったですね。ユウマの時にカズオの会話を盗み聞きするならまだしも、アークに変身してから所長たちのやり取りをそっと聞いていたことには思わず吹いてしまいました。あの大きさでいつの間にか目の前にいる、という絵面のシュールさには笑いが止まりません。変なところでちょっとマナーが悪いのも、かえってユウマのキャラクターの面白さに繋がっていたと思います。

 

 

  • 空に舞う“波”を喰らう飛翔竜

 カズオとフィオの通信を察知して宇宙から飛来した「騒音怪獣 ノイズラー」は『ウルトラマン80』で初登場した怪獣。近年では『ウルトラギャラクシーファイト』や『ウルトラマンデッカー』で出演していたもののほとんどチョイ役だった(特に後者は衝撃的な展開の連続でノイズラーどころではなかったなぁ……)ので、今回が久々のメインでの登場となります。音波や電波といった振動エネルギーを取り込む宇宙怪獣として描かれており、劇中で音を食べた後は周辺一帯の音が聞こえなくなるという特異な現象を引き起こしていました。

 さらに面白いのが食べる音にも好みが存在している点で、戦闘機の飛行音など風を切る音などがひと際好物な模様。逆にカラータイマーの音には嫌悪感を抱く(胸を突き出すアークにビクッとする姿がちょっと可愛い)など、傾向はよくわかりませんが非常に興味深い生態をしていると言えます。それ故かアークはノイズラーのそんな特性を利用して、アークエクサスラッシュの回転音で宇宙の外へと誘導する方法で解決に導いたことにも膝を打ちましたね。被害もそれほど大きくもなかったですし、ノイズラーへの落としどころとしては悪くなかったと思います。

 また戦闘ではその飛行能力だけでなく、口から放つ音波や目から発射する光線を駆使してアークに肉薄していたのが印象的です。バリヤーの反響音に戸惑いながらも、空でのスピードにおいてはアークに引けを取らない実力を発揮していたと思います。何より今回繰り広げられた夜間の空中戦はアークとノイズラー、そして戦闘機を交えて高速で描かれていたので見応え抜群でしたね。

 

 

 というわけで切なくもほっこりする素敵なエピソードでしたが、一方で今後の展開に繋がりそうな描写もありました。カズオとフィオの通信が繋がった理由については奇跡の産物として捉えれていたものの、カズオの「1年前に奇妙な電波を拾ってから……」のセリフに不穏なものを感じます。もしかして宇宙で何か異常事態が発生しているのではないか……?といった考えすら浮かんできます。まぁこれらはあくまで妄想に過ぎないので、この両者の関係はそのままこの話だけの奇跡であってほしいところです。

 

 

 さて次回は謎のロボットが出現。突如として空から降ってきたそのロボットとSKIPが交流を図ろうとするとのことですが、そこに厳しい現実が立ち塞がるようで……このロボットが何のために現れ、何をしようとしているのか?対話の難しさと同時に、ロボットについてのミステリアスな内容が繰り広げられるかもしれませんね。

 

 

 ではまた、次の機会に。