私事ですが、最近作品を追うことに疲れることが何度かあります。楽しいものの感想を交えて視聴するのも楽ではないとつくづく思います。そうした中で息抜きに昔読んだ漫画を読み返したみたところ、楽しくて止まらなくなってしまいました。特に当時読んだ時の衝撃や興奮を思い出せたのが大きくて、作品を楽しむ初心を取り戻すことが出来た次第です。
というわけで1か月ぶりの簡易感想である今回は、久々に読んだ家の本棚にある漫画を取り上げていきたいと思います。(というかほぼPRもとい布教です)相変わらず取り上げるジャンルの雑多さや作品の古さなどもありますが、読んでいただければ幸いです。
というわけで以下、漫画の簡易感想です。
NEEDLESS(ニードレス)
今井神氏作の異能力バトル漫画。2009年にアニメ化されたこともある作品で、当時は本編以上にEDが色々と話題になったことを覚えています。EDの過激な絵面から「ニードレズ」とか言われたり……あとアニメを配信しているサイトがほとんどないので、見返したくても中々出来ないもどかしい思いをしている真っ最中です。
それはともかく本作は第三次世界大戦後の汚染隔離された地域にて出現した特殊能力者「ニードレス」たちの戦いを描いており、各能力はシンプルながら圧倒的な画力と構図で読ませるパワーはあるのが特徴的。一方でギャグ描写も要所要所で挿入されるのも本作の持ち味で、どんなに殺伐とした状況だろうとどんなに真面目なキャラであろうと必ず1度以上はボケるのが鉄則みたいになっています。(個人的に印象に残っているのはサブタイトル「血の雨編」を「ヒゲの登場人物が多いから途中で「ヒゲ編」に変更する」という意味不明な軌道修正を行ったことだったり)バイオレンスかつエロティックな描写も満載ととにかく過激で、かなり人を選ぶ作風だと思いますね。
そんなニードレスで個人的に気に入っているのはやはり小気味のいいセリフ回しやキメのド迫力なコマ。主人公である破壊神父「アダム・ブレイド」がメンタル・フィジカル共に揺るぎなく、敵を容赦なく倒す戦いぶりには読んでいてスカッとさせられるものがあります。そしてブレイドが敵を倒した際の決めセリフ「判・決・死・刑!!」の圧倒的なインパクトの凄まじさたるや……!(アニメではCV子安武人さんなので声量もすごいぞ!)ここで本作が小難しいことを考えず、勢いと絵面の破壊力で読み進めるタイプだとわかります。何よりブレイドの「全裸に靴下&手袋」という好みの尖り具合や、唯我独尊が故の横暴さに細かいことを抜きにした魅力を当時感じましたね。
それでいて中盤から謎解き要素が入るのが面白いところ。敵が隠れている場所や幹部キャラの能力、果ては謎の連続殺人事件の犯人を探り当てる過程がいくつか見られました。これはもう1人の主人公ポジション「山田」「クルス・シルト」が無能力者な故、推理力で仲間を助けるための処置なのでしょう。同時にクルスの成長劇にも繋がっており、非力なままでもブレイドたちの力になろうとする様子に思わず応援したくなってきます。謎の解明パートも意外とロジカルで、思わず納得させられるものばかり。バトルとギャグ同様、ブレイドとクルスの2人の主人公それぞれの持ち味を活かした緩急を楽しむのが本作のコツかもしれません。
YASHA-夜叉-
実写映画化された『海街diary』やアニメにもなった『BANANA FISH(バナナフィッシュ)』など、メディア化豊富な作品を数多く手掛けた吉田秋生氏によるサイエンス・スーパーロマン。(本作も実写ドラマ化された経験がありますが、筆者は未視聴なのでここでは割愛)人より優れた知覚を備える「有末静(ありすえ・セイ)」を主人公に、彼の周囲で巻き起こる事件と戦いを描いていくハードな内容となっています。バナナフィッシュを読んだまたは見た人なら伝わると思いますが、主要人物でさえあっさり死んで主人公たちが曇ったり苦しむ展開が容赦なく続くので、メンタルの弱い方は間隔を空けて読むことをおすすめします。
といったようにキツい展開は多いものの、その中で描かれる少年たちの悲劇やすれ違いは儚くも美しいものに仕上がっています。何と言っても静の双子の弟「雨宮凜(あまみや・リン)」の葛藤に比重が置かれており、静に対する並々ならぬ愛憎には序盤から引き込まれること必至。世界でただ2人しかいない常人を超えた存在として、通じ合うものがあるのに戦い合うことになる流れは胸を締め付けられるものがありますね。そんな両者最後は掛け値の無い兄弟として和解出来る……のですが、そう上手くはいかなかったラストは本当に切なかったです。しかしそんな悲哀に満ちながらもスッキリと終わるのが絶妙で、読後感は非常に爽やかなものでした。読み進めるのは大変ですが、是非最後まで読んでほしいと思える作品ですね。
他にもいくつか魅力が存在します。まず劇中で登場するウイルス「CKV」の存在が現実で発生した新型コロナウイルスと酷似している点は、コロナ過当時密かに話題になっていた記憶があります。低い殺傷性と潜伏期間で容易く感染を起こし、感染者が年配ほど猛威を振るってくる特徴は「パンデミックに都合がいい形」と言われるほど。実際僕も本作のウイルスを思い出したので、現実と漫画の境が無くなりかけた例として印象に残りました。
もう1つは前作&続編について。上述のバナナフィッシュとは世界観を共有しており、“あのキャラ”が成長した姿でまさかの登場を果たすのでバナナフィッシュのファンならチェックしてほしいところ。そして続編に『イヴの眠り』が存在し、長く続いた物語の集大成として短くもまとまっていました。例によって辛い展開が多いですが、本作を読んだ後は是非イヴの眠りまで読んでほしいですね。
寄宿学校のジュリエット
最後は金田陽介氏の寄宿学校のジュリエット。月刊少年マガジンで人気を博し、週刊少年マガジンに移籍した経緯を持ったラブコメ作品です。2018年にアニメ化もしているので名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。1対1のラブコメとしてシンプルな造りとなっているので取っつきやすい反面、色々ぶっ壊れるギャグや作者の趣味である筋肉要素の唐突感が凄まじいので読む際はその辺りにご注意をば。
さて本作はタイトルからも察せられる通り、かのシェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』がモチーフとなっています。表向きは友好関係にあるものの実際は険悪である2つの国と、分断された学園で対立する生徒たちの中で主人公とヒロインが秘密の恋愛を重ねていくのが大きな特徴。バレれば大変なことになることを理解していながらも、それでも付き合うことをやめない2人に何度もハラハラしつつ悶えることとなりましたね。それでいてこのいがみ合う両国とそれに引っ張られる人々の構図に疑問を覚え、2人が堂々と愛し合える世界を作ろうとする姿勢は見ていて清々しいものを感じます。
何より登場人物のほとんどが好感が持てる造形になっているのが現代的で読みやすいですね。主人公の「犬塚露壬雄(いぬづか・ろみお)」は乱暴でおバカな分、情に厚く好きな相手に一途なところが素敵なポイント。ヒロイン「ジュリエット・ペルシア」に愛を注ぎつつ、幼馴染の「狛井蓮季(こまい・はすき)」にバカ正直で誠実な面を見せる辺りで犬塚への好感度はうなぎ上りです。それ故負けヒロインポジションである蓮季と時折傷付け合いながらも、最終的には丸く収まるので安心感もありました。誰1人として不幸なままでは終わらせない作風という点は大いに評価したいところです。
中でも個人的なお気に入りキャラが「丸流くん」こと「丸流千鶴(まる・ちづる)」。犬塚とライバル関係にある不良男子で初登場時こそ卑怯で粗暴な面が目立っていましたが、徐々に憎めない弄られキャラ&味方にすると頼もしいヤツとしての魅力を開花させていきます。しかもペルシアとはある関係で色々ややこしい誤解を生むのですが、それが巡り巡って犬塚たちの味方になる流れに繋がるのが最高の一言。終盤の活躍には思わず膝を打ったほどなので、本作を読む場合は是非とも丸流くんに注目してほしいですね。
余談ですが、作者の金田氏は現在マガジンポケットにて『黒猫と魔女の教室』を連載中。本作に続くクセの強さと魅力に加え、魔法を駆使したバトル描写も気合が入っていて見応えのある学園ファンタジーに仕上がっています。本作を気に入った方にもこちらをおすすめしたいです。
(『黒猫と魔女の教室』第1話のリンクはこちら→ https://pocket.shonenmagazine.com/episode/3269754496804329748)
他にも語りたい作品はあるのですが今回はここまで。上記の漫画の中で、読者の皆様が興味を持ってくれそうなものが1つでもあれば、その作品のファン冥利に尽きます。あるいはそれらを読んだことのある方に、僕自身の好みを理解してもらえれば最高ですね。出来ればこれらの作品を語り合える人と巡り会ってみたいものです。
ではまた、次の機会に。