甘美な毒をご賞味あれ
不穏と動揺を織り交ぜながら、物語は新たな展開へと突入する
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
- 気だるげバイトの甘い密約
新年最初のガヴはお正月ムードの中で、いつも通り謎の失踪事件からグラニュートの影を追うショウマたちが描かれました。しかし同時に進行していくラーゲ9の動向が個人的にはまず気になるところ。今度は特殊詐欺セミナーの教室を襲うなど、確実かつ効率的にヒトプレスを収穫していく手際の良さにも最早感心すら覚えます。今回のグラニュート「チョール」のやり方が地道すぎるのもあって向こうが気の毒になるレベルですが、むしろ彼ら一般バイトをを囮にして大量に稼ぐために用意されているのがかえって伝わってきました。
それでいて闇菓子には気にも留めず、ヒトプレス集めや普段からの態度が終始気だるげなのがラーゲ9の特徴的なポイント。ヒトプレスの扱いもそこまで良くはない辺り、今やっていることはストマック社に近づくための手段に過ぎないことがわかりますね。彼の正体は未だに不明(ただ後述の実力の高さなどからして、訓練された戦士の可能性がありそうです)ながら、何かと「だるい」と口にする態度もあって今のバイトや人間たちには全く興味を持っていないことが伺えました。これだけで彼がこれまでのグラニュートとは明らかに異なる異質な人物であることが読み取れます。
そんなラーゲ9とニエルブが「秘密のバイト」という名の契約を行うシーンは一転して、待ってましたと言わんばかりに乗り気に見えたのがまた面白いところです。闇菓子以外の報酬を要求してくるなど、こうなることを見透かしていたかのようでゾクゾクしましたね。対するニエルブも彼の慇懃無礼な本性を気に入りつつ、自分の新しい発明の実験台にする気満々な模様。フレンドリーに見えて、実際は互いに相手を利用するつもりなのが視聴者視点でも丸わかりでした。今後腹の探り合いを繰り広げそうなこのコンビには、思わず緊張感を抱いてしまいそうになります。
(余談ですが今回のニエルブは上手いなぁ~、と思ったところが「ランゴたちの邪魔をせずに自分の目的を果たそうとしている」ところ。双子のように隠し事をしていながらも、グラニュートハンターを倒すというむしろストマック社の利益になる行動で本来の目的をカバーしている点にこの次男のやり手ぶりを感じましたね)
- ぷるぷる+カラメル!蕩ける触手で組み伏せよ
ヴラスタムギア!
カップオン!
プティング!!
───────────
ヴ ラ ム シ ス テ ム
VRAM SYSTEM
───────────
ラーゲ9がニエルブ開発の「ヴラスタムギア」に「どっプリンゴチゾウ」をセット、中身を押しだすことで変身した姿「仮面ライダーヴラム プリンカスタム」。ついに現れた本作の3号ライダーです。ガヴやヴァレンが肉体の改造手術によって変身する力を得たのに対して、こちらはヴラスタムギアという外付けの変身ベルトを装着するタイプになっている模様。従来のライダーシリーズではありふれた方式ですが、改造が基本の本作においてはかえって斬新になっているのが面白いですね。
見た目に関してはプリンモチーフということで、カラメルがかかったプリンの意匠が上半身を中心に施されています。(胸や肩、膝のカラメルが垂れている部分が食欲を湧かせてくるのでここすきポイント)アーチのように繋がったプリンの装甲以外は比較的軽装で、全体的にスリムでスタイリッシュなビジュアルに仕上がっているのが面白いところ。というか黒と銀のアンダースーツに、黄色と茶色のプリンがここまでマッチしていることに驚かされます。またプリンを掬うためのスプーンが側頭部に突き刺さり、ヘッドフォンのアンテナのようになっているのもオシャレです。
そんなヴラムの戦闘力ですが、まずラーゲ9の固有能力である触手を使ってきたのが特徴的。変身前の力も使用可能というのはこれまた珍しいですね。しかしそれ以上に目を引いたのがヴラム自身のバトルセンスで、ガヴとヴァレンの攻撃を華麗に避けて圧倒する姿には思わず惚れ惚れしました。中でもヴァレンを組み伏せるシーンの自然な動作には息を飲むばかり。赤子の手をひねるかの如く容易くねじ伏せる辺りで、ラーゲ9の試合巧手ぶりが伺えました。元から異様に強い変身者の戦闘力を、さらに底上げしてきたのがこのヴラムの力ということなのでしょう。描写的にもわかりやすい強敵出現に高揚が止まりません。
- 隠し事と目的の違いはどこへ誘う?
今回もう1つの見どころとしてショウマたちの行方不明者探しが繰り広げられましたが、その過程でショウマと絆斗の若干のすれ違いが発生していたのが印象に残りました。何より心配だったのが前回のことでショウマが隠し事をしていることを絆斗もハッキリ認識してきたようで、少しだけ怪しむようになってくる様子にこちらも思わずドキドキしてしまいます。絆斗なら頭ごなしに否定してこないだろうと思う反面、ショウマが臆病になる理由も理解出来るので複雑な心境を抱かずにはいられません。
ショウマもショウマで正体を隠す動機に関して「自分のことしか考えていない」と自責の念に駆られているので見ていて辛かったですね。他人のことを十分に考えているのに自己肯定感が低すぎるので、むしろもっと自分のことを考えていいんだよ……!と声をかけたくなってきます。(ただこのショウマの考えは常に誰かの笑顔のために一生懸命になれる幸果が隣にいるのも原因のように思えますね。聖人すぎる彼女と比べて自分を卑下してしまうのも無理はないかも……?)
またチョールが化けたスカーフの女性の手口に対して、2人の行動の違いが出てきたのが印象的。幸果の身の安全を真っ先に考えるショウマとグラニュートを倒すために追いかける絆斗の対比は、そのままこの2人の目的の違いを表わしているようにも見えました。「人間をグラニュートから守る」と「グラニュートを一匹残らず潰す」は似て非なるものなので、優先するモノが異なってしまうのも仕方ないのかもしれません。現状は絆斗もわかってくれたものの、この違いがいつか重要な場面で爆発してしまうのではないかと改めて気が気でなくなってきます。今回はそんな表面化してきたショウマたちの問題が提示された回とも言えるでしょう。
さて次回はVS仮面ライダーヴラム後編。グラニュートハンターのハンターとして立ち塞がってきた強敵に、ガヴとヴァレンはどこまで喰いついていけるかが楽しみなところです。(一方チョールは用心棒を得たと調子に乗って大胆な策に出る模様ですがまぁそれはいいでしょう)また絆斗がショウマの隠し事について言及してくるようですが、果たしてショウマは自分の正体についてどこまで話すのか……2人の関係の行方についても注目していきたいです。
ではまた、次の機会に。