視点の違いが起こす争い
少年時代のアメジオの写真を見た時……なんていうか、その……フフッ
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- 俺が戦う理由は
ついに六英雄が全て揃い、リコたちライジングボルテッカーズがラクアへと目指すことに。しかし今回のアニポケはエクスプローラーズ、もといアメジオたちが主役のエピソードが展開されました。65話で任務から外されてしまった後も独自に情報を集めている様子が見られましたが、とうとうエクシード社に潜り込んできたことには少しギョッとしましたね。自分を失脚させたスピネルが何を企んでいるのかを探るため、彼の研究室にまで入る大胆さはアメジオのなりふり構わずっぷりが感じられます。
とはいえ罠に嵌めたスピネルへの復讐、といった動機で動いているわけではないのが流石といったところ。祖父・ギベオンの力になろうとする点は一貫しているうえ、「お爺様の代わりに戦うつもりはない」「俺は俺であることだけで十分だ」とギベオンに盲目的ではなくなっていることも伺えます。恐らくリコとの交流を経て、ギベオンたちの考えに少なからず疑問を抱きはじめているからこそのこれらの言葉なのでしょう。自分なりに物事を考え・見定めようとする、アメジオの覚悟が感じ取れました。元々真面目な人物であることはわかっていたので、こうしてエクスプローラーズの傀儡で終わらないのがほぼ確定しただけで嬉しいです。
またジル&コニアがアメジオに付いてくる味方として魅力的になってきたのも見逃せません。以前から自分たちの意志でアメジオに付いてきていますし、後述の話を聞かされた後も力になる気満々なのでどこかホッとさせられますね。(ちなみにアメジオを含めた3人とも、手持ちのポケモンに愛情を注いでいるのがわかる描写も挿入されているのがここすきポイント)敵サイドの動向も目が離せない中で、独立して戦おうとするライバルポジションとしてのアメジオに期待せずにはいられない回でした。
- 彼らにとっての異なる真実
アメジオの決意の他にも、彼の家族や100年前の話についての情報も大きな見どころでした。何と言ってもアメジオの自宅が判明しましたが、その豪邸っぷりに仰天しましたね。ショタアメジオ可愛い食べちゃいたいくらいネギガナイトやシュバルゴが屋敷を守っているかのように鎮座していたり、イエッサンが微笑ましく給仕を担当しているなどポケモンごとの役割がわかりやすい光景には不思議と惹かれるものがあります。それでいてアメジオの母親が、彼が物心つく前に交通事故で亡くなっている切ない事実なども気になるところです。本当に事故で亡くなったのかとか、つい疑ってしまう……
何よりハンベルの口から100年前に何があったのかが語られましたが、リコが聞いた話とは異なる印象だったのが興味深かったです。大まかな話は75話のリスタルの回想と同じですが、「ルシアスがギベオンを裏切った」という語り口には思わず耳を疑いました。ただこれに関してはハンベル、ひいてはギベオンの視点で話しているのが大きいからかもしれませんね。ギベオンにとってはルシアスは自分の理想を理解しなかった裏切り者であり、ラクアでの出来事は土壇場で仲間と相棒を失った悲しい過去ということなのでしょう。
またギベオンの目的が「全てのポケモンの未来のため、ラクリウムを有効活用する」というのも印象的。ここだけ見るとだと聞こえはいいのですが、ラクリウムの危険性が何度も描かれてきた後だとどうにも胡散臭く感じますね。ラクリウムを使うリスクに関して、ギベオンとハンベルはどこまでわかっているのかと疑問を抱きます。リスタルの視点とはまるで真逆のイメージ故懐疑的になるものの、しかしこれもまたギベオンとハンベル、そしてアメジオにとっての真実であるのも事実なのかもしれません。
- 恐れるよりも楽しむ姿勢を
ラクリウムについても気になるところですが、こちらは前半にて描かれたライジングボルテッカーズパートである程度深堀りされていました。黒いレックウザがラクアまで案内してくれている間、ラクリウム(永遠のめぐみ)が何なのかを考えている様子が微笑ましかったです。またモリーが生物の細胞の働き(新陳代謝)を説明しくれたうえで、ラクリウムが「生物の細胞を急速に活性化させる代物」ではないかと考察してくれたのもありがたかったです。それとなく予想していた身としても、こうしたわかりやすい解説のおかげでスッと頷くことが出来ました。
上述の話からギベオンが崩落からラクリウムで生き残ったことも判明し、フリードたちもラクリウムによってギベオンは今も生きているのではないか?と推測を立てているシーンも注目ポイント。これらの情報によって、ラクリウムが危険な代物なのかが改めて伝わってきました。それだけにこの物質の起源についてが気になってきますが、そこは今後に期待するとしましょう。(生命力を活性化させる一方で生物の死を早めるリスクも孕んでいる……「生と死」という要素からカロス地方に存在するある2体の伝説のポケモンを連想しますねぇ……)
そんな話をしたうえで、リコたちはラクアへの冒険に胸躍らせていたのが素敵でした。この子たちからすれば目的は最初からパゴゴをラクアへ連れて行ってあげること。そのためラクリウムはあくまで二の次、細かいことは着いてから考えようとする姿勢には膝を打ちました。待ち受けてくるかもしれない危険について身構えることも大事ですが、深刻になり過ぎないことを大人たちが子どもから学ぶ構図も見事です。本作のテーマもまた「冒険」であることが、ここにきて再び実感となりましたね。
というわけでラクアへの道のりやクライマックスに向けて大きく動き出した83話の感想でした。ルシアスの意志を継ぎ冒険を楽しむリコと、ギベオンの意志を継ぎ自分の道を模索するアメジオ、双方の対比とも取れる展開が興味深かったです。何よりアメジオもまた、この物語の主人公であることがそれとなく読み取れますね。彼にはスピネルの企みに負けず、リコたちと時に対立・時に協力しながら立ち向かっていってほしいです。
また上でも触れた通り、ギベオン視点の過去の話には色々と考えさせられるものがあります。リスタル視点では突然暴走したように見えたギベオンですが、当人は至って理性的に動いたつもりでむしろあちらが裏切ったも同然という解釈はある意味で真実なのでしょう。各々異なる視点と考えを以て行動しており、それにより見えてくるものも違ってくる……その“違い”こそが争いを生むのだと、深く思い知りました。ここまでくるとルシアスが何を思っていたのか、当時の彼の視点についても知りたくなってきますね。
あと余談ですが、OP映像がまた少しだけ差し変わったのにも触れておきます。Aパートの前半辺りで、パゴゴが割れた世界に引きずり込まれる光景、そしてリコがルシアスとリスタルに向かって手を伸ばす様子には思わず胸がザワつきました。あまりにも不穏な描写なので、この後何かしらショッキングな展開が待っているのではないかとつい考えてしまいますね。いずれにしても、次回以降のエピソードで回収されることをいしきしておきたいところです。
さて次回はリコたちがラクアに向かう途中、ある断崖絶壁の町(久々にアニオリの町っぽいすね)で一休みすることになる模様。そこでは黒いレックウザは「不吉」と恐れられているようで……?この町とレックウザにどんな関係があるのか、非常に気になります。他にもこれまでボールに入っていた六英雄も積極的に出てきて活躍するようですし、ド派手な冒険になりそうですね。
ではまた、次の機会に。
