飛び出していけ 宇宙の彼方
踏み出した一歩が、新たな世界の扉を開く────
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今年1月の劇場先行版公開から約3ヶ月、ついにガンダムシリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のテレビ放送が始まりました。その衝撃的な内容から話題を席巻したものの、放送まで詳細に話しにくい点からもどかしさを覚えていたので結構待ちわびましたね。映画の方を観ていない人たちとも話せるようになったことに今から高揚感を覚えます。
↑劇場先行版の感想については上の記事を参照。
何より主人公のマチュをはじめとした登場人物がずっと気になっていたので、ここから彼女たちの物語が本格始動するかと思うとワクワクが止まりません。サンライズにスタジオカラーが加わって初の共同制作、というオタクにはたまらない組み合わせで送るガンダムが如何なるものか。今回からガンダムジークアクスの感想を書きながらそれを追っていきたいと思います。
- 唐突な始まりと秘めた謎
というわけで第1話は劇場先行版の中盤、サイド6の「イズマコロニー」に暮らす主人公たちがメインのストーリーが展開されました。そして冒頭数分の魔改造された「ザク」が飛び交う辺りで本作がファーストガンダムこと初代『機動戦士ガンダム』と同じ宇宙世紀が舞台であることを、ガンダムファンなら察しやすくなっていたのではないでしょうか。
しかし「シャリア・ブル」率いるジオン軍のソドン艦メンバーの会話劇から「ジオンが戦勝国」「シャア・アズナブルが乗っていた赤いガンダム」といったワードが次々と出てくるので、何も知らないと初っ端から面食らう内容でもありました。映画の方を見ている身としてはすんなり受け入れられましたが、そうでない人にはどういうことなの?という困惑の方が大きかったでしょうね。(そういう困惑が味わってみたかったという複雑なオタク心もあります)他にも「ゼクノヴァ」「マヴ」といった他作品にはない用語まで頻出するので、ある意味では不親切な始まりと思うかもしれません。
それはそれとして行方不明になったシャアを探すシャリア中佐の意味深な態度、彼が追う「赤いガンダム」の異質さはやはり魅力的。この赤いガンダムに乗っているのはシャアではないのなら誰が……!?といった不気味な印象もあるので、部下にもフレンドリーながら終始怪訝なシャリアからミステリアスな雰囲気を堪能出来るかと思います。何よりジオンが勝利した場合の世界線から見た宇宙世紀、という視点はファンにはたまりませんし、ここから少しずつこの世界を掘り下げていく展開に期待が持ててきましたね。
- 正義の怒りをぶつけろJK
といった感じに困惑と高揚が同時に味わえたであろう導入。しかし本筋そのものは主人公の女子高生「マチュ(アマテ・ユズリハ)」がガンダムの戦いに首を突っ込んでいく、と非常にシンプルなモノなので、そちらを意識すれば割と問題なくのめり込めました。そんなマチュはコロニーの空に疑問や不満を抱いており、転じて“自由”を求めている節があることが登場数分で描かれていたのが印象に残ります。良くも悪くも自身の状況と世間への、言いようのない反感が胸中に渦巻いている思春期の若者といった感じでしょう。
またマチュを語るうえで最も重要なのがエグザベが隠していた「ジークアクス」を強奪するシーン。軍警ザクをやっつけようとクランバトル用のザクに乗り込み、やっぱり駄目だったのでジークアクスに速攻で乗り換えるスピード感はいつ見てもギョッとしますね。「あっちの方が強そう」という理由で飛び出す、その迷いのなさが何とも衝撃的です。そもそも事の発端である「ニャアン」との関わりからして、「スマホの弁償してもらうため」だというのですから驚かずにはいられません。この怖いモノ知らずなところも、マチュの「キレた若者」のイメージを強めていました。
しかし軍警と戦うことを決意した理由が理不尽を目の当たりにしたから、という点は見逃せません。謎の機体の捜索のためとはいえ難民の家を破壊する横暴はもちろんのこと、ニャアンの顔の傷を確認してから動いたことからもその動機が読み取れます。まさに目の前の許せないことには頑として立ち向かう、そんな優しさと強さが彼女の根っこにあるのでしょう。そして理不尽と戦うためのジークアクスに乗り込む選択も、ガンダム主人公らしい“正義感と反骨心”を秘めていると言えます。見ていて危なっかしい面も間違いなくありますが、そのうえで自ら動ける激情を持ち合わせているマチュのことを、個人的にも好感を抱いた次第です。
- 瞬く輝きへと導く未知なる力
マチュが乗り込む本作の主役機“gMS-Ω”「ジークアクス」。ジオン公国が開発した最新鋭の試作型MS(モビルスーツ)です。「ガンダム・クァックス」という別名(こちらが正式名称か?)を持っており、本作における立派な「ガンダム」の一機であることが伺えます。恐らくは一年戦争中にシャア・アズナブル大佐が鹵獲したガンダムを元に設計されたと思われますが、現状は情報が少なすぎるので何とも言えません。少なくとも赤いガンダムと渡り合えるだけの性能を持ち合わせていることは確かのようですが……
そのビジュアルは細身で空洞の多い、それでいて角ばっている機体といったところ。フレーム部分がそのままボディと化した剥き出し状態で、ザクなどの武骨なMSとは真逆のイメージを与えてきます。また背中の巨大なスラスターと、推進装置が露出した足先は特に身も蓋もない合理性を感じますね。さらに頭部に関しては普段は格納されているアンテナが、マチュが乗ることで展開し昆虫のツノを思わせる形状になる瞬間が印象に残りました。(カラー制作故か『エヴァンゲリオン』を意識しているのがわかります*1)
そして性能に関しては「オメガ・サイコミュ」なる謎の実験機能が最大の特徴。従来のサイコミュ兵器が機体制御の補助だった中、このサイコミュは操縦するニュータイプの思念で自在に動かすことが出来るようです。起動時に腕のような操縦桿が展開され、操縦方法を知らない素人の少女の動きに合わせて軍警ザクに勝利してみせるほどの実力を発揮していました。(一方で武器は今のところザクから奪ったヒートホークしかないのが寂しい)しかし何故厳重にロックされていたオメガ・サイコミュをマチュは起動することが出来たのか、機体の謎と合わせて懸念すべき要素であることは間違いなさそうです。あとマチュの隣でサイコミュ起動を感知したハロは何なの……?
というわけでジークアクス1話の感想でした。ほぼほぼ映画のおさらいという形で視聴しましたが、何度見てもこの辺りの盛り上がりにはやはりテンションが上がります。世界観の説明と共に主人公がガンダムに乗り込み、戦いに身を投じる流れを過去作とはまた違う形で魅せてきたのが本当に素晴らしかったです。特に米津玄師さんが歌う本作のOP「Plazma」をバックに、マチュがジークアクスを起動させるシーンの演出は胸熱の一言。まさに懐かしくも新しいガンダムが始まった!!という感覚を味わいながら、次回が楽しみになってきましたね。
(また余談ですが、星街すいせいさんが歌う本作のED「もうどうなってもいいや」の映像は映画鑑賞者にとって貴重な新規映像となりましたね。ルームシェアで気だるげな日常を送りながらも、何だかんだで楽しく過ごすマチュとニャアンの姿が可愛すぎて……本編でこういうの見られるかどうかは難しそう)
というわけで次回ですが、何と映画における「-Beginning-」のパートをやるようで仰天しました。「Beginningはテレビでは放送しない」という旨の情報を公式が発表していた気がしましたが、どうやら気のせいだったようです。これで話がわかりやすくなるのは嬉しい反面、時系列が逆なので混乱しそうでもありますね。特にマチュたち美少女を期待していたら、次回オッサンばかりが活躍する内容に殴られることを想像するとじわじわきます。
ともかく本編の5年前、地球連邦軍とジオン公国軍による一年戦争の真っ只中で何が起きたのかしっかりと描写してくれるのはありがたいところ。何故ジオンが戦争に勝利したのか?何故シャアは行方不明になったのか?戦時下に何が起きていたのかを改めて確かめていきたいと思います。
ではまた、次の機会に。
*1:実際コンセプトの1つとして「エヴァンゲリオンのデザイナーがガンダムをデザインしたらどうなるか」を設定しているとのことで、エヴァのメカニックデザインを担当した山下いくと氏がジークアクスを手掛けている。
