昨年ストーリー編第2章が完結したドラ娘アニメも、新年度に合わせて新章が開幕。新しいドラゴン娘を登場し、生徒会の次なる物語が開幕しました。特にタイトルにもある新グループ・Jack-Potはデュエマの構築済みデッキ発売と、かつてないほどのもうプッシュを受けているのが伺えます。そんな彼女たちが加わることでどんな化学反応が生まれたのか、その辺りにも触れながら感想を書いていきたいと思います。
- 挑め挑戦!繋がる音楽の力
まずは今回のストーリーのメインになっているガールズバンドグループ「Jack-Pot(ジャックポット)」について。バンドということで担当パートの他二つ名(バンドネーム)も存在しているなど、設定の時点で気合いの入ったキャラたちになっています。メンバーは以下の通り。
※()内はバンドネーム、《》内は元ネタのドラゴンを記載
- ボーカル「庵野水晶(あんの・あきら)」(Go-Spell)《水晶の王 ゴスペル》
- ボーカル「庵野しゅうら(あんの・しゅうら)」(VAN)《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》
- ベース「ルード・ザーナ」(世界)《蒼神龍アナザーワールド》
- ギター「春咲栄久(はるさき・えいく)」(X)《ボルバルザーク・エクス》
- ドラム「星増樹(ほし・ふぇるき)」(STRA)《インフェル星樹》
大筋では一番上の庵野水晶が中心人物として物語を牽引してきたのが印象的でした。引っ込み思案ながら歌の動画を上げている内にたちまち人気の覆面アーティストになるという、中々に凄まじい経歴と才能の持ち主として描かれているのが面白いところです。何だか某ぼっちでギターなヒーローを思い出すキャラ付けですが、あちらと比べるとはるかにアグレッシブなんですよね……メンタルに関してもそこそこ強くて、自信を無くしていたアーシュを助ける3話には驚きつつも感激しましたね。
そんな水晶の強さもアーシュからきている、というのがこれまた素敵なポイント。元々はバンドへの憧れがあるものの自信を持てずにいた水晶ですが、第2章で新入生交流会に奔走していたアーシュの姿に勇気付けられていた、という背景には膝を打ちました。そうしてみんなの前に立つ度胸を得た彼女が、今度はアーシュに自信を分け与えてくれる構図が何とも暖かくてほっこりしてきます。極めつけは生徒会VSルソー・モンテスの決戦時に、水晶の歌が力になる展開。ベタながらストレートに熱い内容に、素直に感動させられた次第です。
あとはアーシュが例によって一喜一憂していたのもちょっとしたお気に入り。交流会成功をきっかけに大いに調子に乗り始めたのも束の間、校長のせいで栗茶fesに参加する羽目になってしまう流れには笑ってしまいました。内心「無理無理~!」と泣き言を言い出したりJack-Potの演奏を聞いて気圧されるなど、久々に精神的な弱さが描かれていたのが印象に残ります。最近はタフな活躍が目立っていましたが、この辺りもまたアーシュの一面かつ魅力でもあると改めて思いました。
それだけに上述の水晶の言葉を受け、改めて生徒会を引っ張る強さを発揮してくれたのが嬉しかったですね。アーシュもまた情けないところや弱い部分を持ちながら、それでも立ち上がれる少女であることを再確認させてくれたのは見事。それを視聴者に伝え、かつ自分たちのしっかり魅力も用意した水晶のキャラクターも的確に立っていました。まさしく新キャラが既存のキャラと出会い、互いに引き立て合う理想的な関係は個人的にも大満足の一言です。
- 輝き色づく青春が雪崩の如く響き渡る
また今回の特筆すべきポイントとして、桜龍高校生徒会とJack-Potそれぞれのミュージックビデオが制作されたことは是非とも触れておきたいところ。ダイジェストで終わるかと思った演奏パートがガッツリ描かれただけでなく、各楽曲も別の動画で公開された時は度肝を抜かれましたね。何よりデュエマの音楽メディアミックスとして見ても非常に久しぶり*1なので、異例のメディア展開に衝撃を受けずにはいられなかったです。
桜龍高校生徒会の「Colorful」はアーシュのこれまでの日々と心情を表したかのような歌詞が特徴的な楽曲。退屈だったぼっちな日々を変えていこうとしたアーシュが、メガたち生徒会の仲間たちとの出会いを経て少しずつ前を進んでいく過程を見事に歌詞に起こしていました。加えてストーリーの第1話から2章ラストまでの出来事をダイジェストでアルバム風にまとめた映像で、より彼女たちの歩みを実感出来るMVに仕上がっていたと思います。(アニメーションもいつも以上にヌルヌル動いていますし)そしてアーシュ役の逢田梨香子さんとメガ役の荻野佳奈さんの歌唱力にも舌を巻くばかり。
対してJack-Potが歌う「アヴァランチ」はスピード感溢れる曲調などまさにロックバンドとも言うべきパンクな印象を受けました。それでいてこちらも水晶の迷いや不安をぶった切る、少女の悩みに対する全力投球な歌詞が素晴らしかったです。「流れ星の行方」などアーシュから影響を受けたと思われるフレーズもチラホラ見受けられるので、上述のストーリーを加味したうえで聞いていると胸にくるものがありますね。さらに映像の方はJack-Potメンバーの様々なイラストが炸裂しており、省エネながら全く飽きさせない工夫が施されていたのもグッド。(個人的にはよいねこ247氏が手掛けたデフォルメ立ち絵がお気に入り)総じてそれぞれ持ち味が異なる楽曲を、見事魅力的に披露してくれたものだと感心する動画でした。
さてここからは毎回恒例、劇中のクリーチャーやカードの元ネタに触れていくコーナー。今回は各グループの交流がメインなのでクリーチャー側がそこまで目立っていなかったのですが、気になる小ネタもいくつかあったのでそれに触れていきたいと思います。
- Jack-Pot
上でも散々書かれている水晶たちが所属するガールズバンド。デュエマに詳しい方ならすぐにピンときた通り、《龍秘陣 ジャックポット・エントリー》は元ネタとなっています。(水晶の「Jack-Pot、エントリー!」という掛け声からしてわかりやすいですね)「(賭博やカジノにおける)大当たり」を意味する言葉らしく山札の上をめくってコスト8以下のドラゴンを踏み倒す呪文であり、かつてはこのカードを主軸にしたデッキが構築されたほどです。
それだけに上のサムネにもあるキャラプレミアムデッキで再録されるなど、かつての人気呪文がこうして大々的にフィーチャーされるのは何とも不思議な気分でした。しかし本作でのネーミングとしては自分の未来も漠然としたままでも、わずかな輝きを得ようとする少女たちの決意が溢れているようにも読み取れます。こうした一瞬にかける情熱もまた若さだと思うと、どこか憧れるものがありますね。
- ザーナのワードチョイス
Jack-Potのベース担当にしてリーダーのルード・ザーナですが、劇中では度々エキセントリックな発言をしているのが面白いキャラクターに仕上がっていました。そのワードの数々がデュエマのカードを元ネタとしているので、思わずニヤリとくる発言も多かったですね。海外出身で歌詞担当というポジション故に、こうしたキャラ付けになっているのでしょう。
今回のストーリーだけでも3話の「魂の絆(ソウルメイト)」(《魂の絆 ヘモグロ&ハナコ》などの魂の絆サイクル)や、5話の「ゴールデン・ビクトリーな結果ね!」(《王牙秘伝ゴールデンビクトリー》)など、そこ拾ってくるのか!?というチョイスが多くて発見する度に楽しかったです。今後も短編動画などでザーナが登場した際には、彼女の発言に注目していきたいところ。
- 《ルソー・モンテス》
ゼオス編からまさかまさかの再登場。クリーチャーによる事件も起こらず平和なバンド活動に癒されていた中、唐突に現れこちらの意表を突いてきました。そういえばあの後どうなっていたのかは詳しく描かれていなかったので、こうして再び姿を出してきたのは納得ではありますね。(改めてゼオス編を見返してみると、アカリの体から追い出された際に負けセリフを吐いて逃亡しているのが確認出来ました)
主人である《黒龍神モルナルク》の復活のためにアーシュから負のエネルギーを手に入れようとしていましたが失敗、その後の生徒会との決戦時に彼女らを追い詰めるなど敵としても突然強大になっていて驚きました。それでいてドラゴンの力を封じ込める異空間まで用意するといった、策を駆使していくスタイルは相変わらず。色々と意外性の強いチョイスでしたが、ともあれこのクリーチャーが今になって目立つ事実は個人的にも非常に興味深かったです。
これにてJack-Pot編が完結しましたが、1つ不満点を挙げるとしたら水晶たちJack-Potメンバーのドラゴン娘の力の出どころが全く判明していないことでしょうか。4話ラストでいきなりドラゴン化しただけでもギョッとしたうえ、何故彼女たちがドラゴンの力を有しているのか全く説明がないまま話が終わってしまったので少々モヤモヤしていました。彼女たちに力を与えたのは校長かそれとも他の五龍神か……それだけでも明かしてほしかったですね。
それを除けばかつてないほど力の入れようとなったストーリーと演出で見応え抜群でした。新キャラたちへの愛着もあっという間に湧いてきましたし、アーシュの音楽などさらなる魅力を追求していった展開は見事の一言。Jack-Potはこの先の短編でも度々出番があることでしょうし、ますます勢いを増すドラ娘の展開に今後も期待していく所存です。
ではまた、次の機会に。
*1:一応前例としては「デュエルヒーロー」や「ハラグロX」などの楽曲が存在する。
