恐ろしきに挑む幼さ
いがみ合っていた相手とも何事もなかったかのように仲良くなれる、そんな子どもが眩しく見えてくる今日この頃
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- 自由で危うい少年たち
ギャオスの騒動が終わってひと段落、したものの新たな脅威が迫りつつあるガメラリバース3話。今回はその前座として、少年たちの無謀な大冒険が繰り広げられることとなりました。前回登場したタザキたちから財団や怪獣のことを教えてもらい、高揚感を抱いたまま怪獣の目撃情報がある場所に足を踏み入れるので思わず顔を覆ってしまいましたね。前回死にかけたというのに、わざわざ危険に飛び込もうとする蛮勇ぶりは何とも言えない幼さを感じずにはいられなかったです。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とばかりに、過去の反省よりも今の楽しみを優先してしまう子どもの危うさが出ていたと思います。
ただその一方で、ボコたちのはしゃぎように関して何となく理解を寄せることが出来ます。退屈な日常からかけ離れたスリルある非日常は、この年頃の子どもなら憧れるのも無理はないでしょう。そのうえタザキから「キミたちの勇気が世界を救う」なんて言葉をかけられたら、張り切ってしまうのも当然のこと。自分たちがヒーローになっているという感覚でいるのが見て取れます。『スタンド・バイ・ミー』の幽霊の出る線路を歩くのと、同じ感覚で楽しんでいる故にハラハラするもののわからなくはないですね。(それ故後述の件含めて、根に持ちながらもボコたちを止めようとするジョーに頑張ってほしいところなのですが……)
あとはブロディについてですが、何かいつの間にか馴れ馴れしくなってきたのがおかしかったです。あの時のことを棚に上げて仲間面してくるのでコイツいけしゃあしゃあと……!と苦笑いせずにはいられなかったですね。まぁその分ブロディが意外と愉快なキャラクターなのがわかったうえ、ボコやジュンイチと速攻で打ち解けているのが微笑ましかったのも事実。特にあの諍いの後に和解とかもせず仲良くなっているのは、良い意味で子どもらしいと言えます。総じて色々な感情やしがらみに縛られている大人の視聴者としては、ボコたちの純真で自由な面が羨ましくなってくる回でもありました。*1
- 悪意に満ちた怪獣の謎
タザキやエミコが所属する世界的団体「ユースタス財団」の詳細と同時に、彼らが研究している怪獣の生態の一部が明かされていったのも今回の注目ポイント。*2地下に卵などが発掘されている情報から古来より地球に存在しているこの怪獣が、人間を襲い喰らう存在であるとハッキリ説明された時の衝撃は少なからずありました。しかも子どもを優先して狙うという、悪辣な性質も備えているとのことで悪寒を覚えますね。前回のギャオスの行動を振り返ると確かにそのきらいがありましたし、子どもを襲うのが事実ならこれほど悍ましい怪物はいないという印象も深く植え付けられました。
しかも今回登場した「ジャイガー」が下水道にて共食いをしている光景にもゾッとした次第。それ故本作の怪獣は現実の生物でもあり得る一面を多く備えているようでいて、どこか生き物としては不自然な点が多すぎるように感じました。人類の天敵としても、他の種族丸ごと滅ぼす勢いなのでこれまた不可解に思えてきます。この人類への殺意と悪意に満ちた生態からして、怪獣たちは人為的に造られた存在なのではないか?という考えすら浮かんできます。ガメラ怪獣はそういった設定を持ったものが多いので、本作でもその可能性は高いかもしれません。
そんな怪獣を研究しているユースタス財団に関してもかなり怪しいです。「世界的なエネルギー資源の開発」「月面基地開発にも投資ている」と表向きはクリーンに見えますが、問題は怪獣を東京に持ち込んでいる点やオズボーン司令官への態度。これらの要素からどうしてもきな臭いものを感じます。極めつけはボコたちへの対応で、「コミュニケーター」なるデバイスを渡すシーンが顔をしかめてしまいました。子どもたちそれぞれの脈拍などを計測しているとのことですし、子どもたちを何かに利用するために監視しているようにしか見えません。怪獣も恐ろしいですが、やはり財団も油断ならないと身構えるばかりです。
他にも今回の見どころとして、ガメラによるアクロバティックな空中アクションは見逃せません。駿河湾から出現して軍の迎撃を受けながら、華麗にミサイルを避ける姿に思わず惚れ惚れしました。回転ではない飛行形態で自在に方向転換したり、きりもみ回転しながら上昇する光景は美しさすら覚えます。ずんぐりむっくりな見た目に反して軽やかなガメラの空中戦は、まさにアニメーションだからこそ出来る自由度の高さが活かされていたと思いました。
また今回ミサイルを避けるだけで反撃はしなかった辺り、本作のガメラも人間に極力危害を加えないようにしているのが読み取れるのが興味深いポイント。上述の怪獣の説明を受けた後だと、人間に対する敵意を全く持たないガメラはかなり異質な怪獣として見ることが出来ます。何故ガメラだけが人間を襲わず他の怪獣たちと戦ってくれるのか、その生態の謎についても今後注目していく所存です。
ではまた、次の機会に。
