彼らが目指す“先”とは
そうだった……この作品の年代って宇宙世紀0085だったわ……
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
- “先”なんて知らない、“今”を守りたい
自分だけのものだと思っていたジークアクスやキラキラの件でニャアン相手に取り乱すなど、マチュの不安定な情緒が描かれたジークアクス6話。今回はさらに母親・タマキに塾をサボっていたことがバレたり、アンキーたちがシュウジと赤いガンダムを売ることを画策していたりと逃れようのない事態に揉まれていく様子が目に付きました。特にモヤモヤを抱えたままの三者面談にて、母から問い詰められるシーンは何とも言えない閉塞感を覚えましたね。自分の居場所が無くなりつつある状況でも、反発することしか出来ないマチュの息苦しさが伝わってくるかのようです。
それでいて母だけでなくポメラニアンズの「ナブ」やニャアンのバイト先の元締め「マーコ・ナガウラ」の大人としての微妙な面倒見の良さも見逃せないポイント。後者は打算込みでしょうが、それぞれ子ども相手に進路など“この先どうするか”についてを案じている様子が印象に残りました。中でもマチュ母などは至極真っ当な親であることが伝わってきたのですが、一方で娘の「地球の海で泳ぎたい」を否定する姿勢に顔を覆ってしまいます。恐らくこの良くも悪くも真面目な話しかしないところがマチュにとってはうっとうしい「普通さ」なのでしょう。
そしてここまで見ているとわかりますが、マチュやニャアンにとってはシュウジやみんなと過ごせる“今”が何よりも重要。それが読み取れているからこそ先のことしか話さない大人に反抗しますし、崩れようとしている状況を必死で守ろうとしていることも理解出来ます。よくわからない未来のこととかどうでもいい!大切なのは今でしょ!という姿勢は、例によって彼女たちの若さ故の青臭さを感じますね。それだけに次回以降大切な非日常が丸ごと壊れてしまいそうな、その危機的状況にマチュはどう立ち向かうのか気になるところです。
- 真意の見えぬ男の“先”とは
サブタイにもある通りジオンを牛耳るザビ家の長女「キシリア・ザビ」暗殺の可能性が出てきているのも今回の大きな見どころ。イズマ・コロニーの大統領と会合をするために向かっているとのことで、ジオン側もサイド6側もピリピリしているのが目に付きました。軍警などは「戦争はよそでやってくれ」とばかりにエグザベを狙ってきましたし、無用な争いを避けようとして新しい火種が起きそうな状況に妙な緊張感を覚えます。(そしてまたもや不憫な目に遭っているエグザベくんが本当に可哀想……)
そんな中シャリアの動向については今回も怪しかったですね。アンキーに接触してジークアクス回収の交渉をしてきたりと、キシリアを迎えようとしている裏でも、やはりジークアクスを優先しているのが気になるところです。これに関してはかつて自分が使っていたMA(モビルアーマー)「キケロガ」を持ち込ませたことと合わせて、分散していた戦力をかき集めている最中のようにも見えてきました。問題はその戦力がキシリア閣下護衛のためのものなのか、それとも暗殺を狙っているのか……真意が未だにわからないだけに判断が付きにくいです。
実はシャリアの監視役であるエグザベやずっと側で不信がっていたコモリと、部下がことごとく訝しんでいる中マイペースに場を引っ掻き回している印象のシャリア。ここまで不敵だと視聴者としても怪しまずにはいられません。それでいてエグザベを助ける際にジェットパックで宙をスイーッと浮かんで出てくるシーンがややシュールで吹き出してしまいましたね。ネタ方面でも強くストーリーに深くかかわるキーパーソンとして、一気に気になってきたシャリアの目指す“先”が気になるばかりです。
- “Z”より来たりし忌むべき力
そして今回最も衝撃を受けたのが「バスク・オム」の登場。『機動戦士Zガンダム』にてドン引きレベルの悪逆非道ぶりを視聴者に知らしめたキャラが、本作でも登場するとは思ってもみませんでした。ただキシリアの暗殺を目論んでいる黒幕としては、これ以上ないくらい納得のいく人選で感心すら覚えますね。反スペースノイド主義者としてZ本編で凶行を繰り返してきたバスクが、ジオンが勝利した世界を何よりも許せないと感じているのも当然なのかもしれません。(またバスクの命を受けコロニーにやってきた「ゲーツ・キャパ」については、これまたこういう奴もいたなぁ~、といった反応になったり)
さらに強化人間にサイコ・ガンダムと、Zの要素がこれでもかと出てきたので驚かずにはいられませんでした。ただ本作がZから大きく外れたifの世界観であることは理解していたつもりですが、Zの登場人物や設定がこの世界ではどうなっているのか?については考えたことがなかったですね。それだけに今回本編でその答えの一部を用意してきたことに膝を打たずにはいられません。宇宙世紀0085年という時代だからこそ出来る、ちょっとしたネタの入れ込みようが炸裂していた回でもあったと思います。まぁその結果ファーストだけでなくZまで履修する必要が出てきているのが厄介かもしれませんが……
ともかく本作の強化人間「ドゥー・ムラサメ」に関しては、一見不思議ちゃんのようで得体の知れない恐ろしさが感じられるキャラクターだったと見ています。サイコガンダムを「本当の体」とし、自身を「(サイコガンダムの)心臓」と評するシーンにゾッとしたものを覚えました。マチュたちと同じくキラキラを追い求めているものの、ここまで破滅的な狂気を放っているのも異質でしたね。何より強化人間ということで悲惨な末路を迎えそうな可能性が高いので、次回以降の彼女については今からでも身構えてしまいそうです。
多くの不安や恐怖を抱えながら、次回はついに最後のクラバが開始。しかしキシリアを標的としたバスクの策略によって、それどころではない事態に発展することが予想されます。というか予告映像で既にサイコガンダムらしき巨体が町を蹂躙しているシーンまで確認出来るので、民間人に甚大な被害がもたらされるのは確実ですね。何よりもしかしたらマチュの母も……と嫌な予感ばかりしてきます。
マチュはジークアクスに乗ってこれを迎え撃つようですが、予告にて苦しそうな表情を見せているのが気になるところ。その顔は悲惨な光景を目の当たりにしたからなのか、それともジークアクスの秘密からなのか……どちらにしても、マチュがこれまで過ごしてきた日常も非日常も、全てがぶっ壊されることを覚悟して見た方が良さそうです。
ではまた、次の機会に。
