毎年様々なアニメを視聴していく中で、その年で印象に残ったキャラクターを選出しているシリーズ。それの2024年版をようやく書き上げることが出来ました。もう既に2025年は5月で春アニメも放送している時期で、去年のアニメのことなど今さらすぎるかと思われます。僕自身、忙しさにかまけて中々この記事を進められなかったことで大いに自省するばかりです。
ただ去年のアニメも魅力的な作品が多く、そこに登場するアニメキャラについて語りたいことがたくさんあります。その想いを書き留めておかないのは非常にもったいないと思ったので、この時期になりながらも投稿した次第です。それらの作品を視聴した方、または興味がある方の目にこの記事が目に留まり、共感を覚えてくれたり驚いてくれれば個人的にも幸いです。
↑これまで書いた記事については上を参照。
さて各キャラについての話に映る前に、毎年恒例のルールの説明をば。といっても去年とほとんど変わりがないのですが、念のため以下のようにまとめておきたいと思います。
- 2024年以内に国内でのテレビ放送または映画上映がされた作品(再放送などは含めない)
- 2024年以前に配信されたり、海外で放送された作品でも上の条件を満たしていれば2024年アニメと含める。
- 筆者が内容を8割以上視聴した作品
- 当ブログで感想で書かれた作品(序盤のみや最終話の感想が無い場合も含める)
そしてここに作品のテーマの理解や各キャラの造形、何より筆者の好み(←最重要!)など細かな条件を加えて10作品からそれぞれ10キャラを選びました。一般的な視聴者の好みとは大きく異なる・筆者の趣味が大きく入ったものになりますが、ご了承ください。
(※各作品のストーリーやテーマ、キャラクターの結末にも触れているのでネタバレ注意!!)
というわけで以下、印象に残ったアニメキャラ一覧です。
- ルイス・スミス/ブレイバーン:『勇気爆発バーンブレイバーン』
- シエル:『SYNDUALITY Noir』
- 東雲晶:『終末トレインどこへいく?』
- ぷにる:『ぷにるはかわいいスライム』
- 深山霧島:『来世は他人がいい』
- クリスタ:『Duel Masters LOST ~追憶の水晶~』
- メガトロン:『トランスフォーマー アーススパーク』『トランスフォーマー/ONE』
- キラ・ヤマト:『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』
- 皇サクヤ(ロゼ):『コードギアス 奪還のロゼ』
- 鳴海荘吉/仮面ライダースカル:『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』
ルイス・スミス/ブレイバーン:『勇気爆発バーンブレイバーン』
「イサミ、一緒に戦えなくてごめんな。でも、これでも結構頑張ったんだぜ」
「だからイサミ、キミに私を、私自身を託す」
「キミならやれる。何故ならキミも既に……ヒーローだからだ!!」
まず1人目は昨年冬にとんでもないインパクトを残したことで有名な『勇気爆発バーンブレイバーン』より変態ロボ・ブレイバーン。振り返れば振り返るほど何だったのかよくわからない作品でしたが、劇中で数々の意味不明な言動を吐いてきたブレイバーンはひと際訳が分からないキャラクターとして印象に残りました。人間側の主人公・イサミに対する異常な執着、何かとヒーローらしさを求めては達成する度に陶酔したりと、視聴者から「気持ち悪い」という評価を与えられるのも納得といったところです。かくいう僕も、放送中は戦闘時のカッコよさなどとは別にブレイバーンに対する不信感などを抱いていましたね。
そんなブレイバーンの正体であるルイス・スミスについても色々と思うところがあります。爽やかでヒーローを目指している彼がブレイバーンであることはネット上で予想されていたものの、いやいやそんなまさか……と当時はあまり信じていませんでした。(信じたくなかったと言うべきか……)そのため9話で彼が時空を超えて1話のブレイバーンに至るまでのネタばらしには度肝を抜かれましたね。そのうえスミス=ブレイバーンだとわかるや否や、これまでのブレイバーンの行動の多くが腑に落ちるのも衝撃的。一本取られたとばかりに感心し、同時にスミスのイサミに対する憧れにも色々と納得が言った次第です。
振り返ってみると、ブレイバーンもといスミスの憧れとは困難を前にして立てる「勇気」にあったのではないかと思えてきます。その象徴であるイサミは不憫な目に遭ったり不平不満を口にしていましたが、何だかんだ言いつつも自分の果たすべき役割を全うしていました。人々を守るために戦う選択を取れる、どんな強敵だろうと誰かの身の安全を優先する姿勢にスミスはイサミの勇気を見たのかもしれないと考えています。そう仮定するとあの勢い任せの最終回も、自分の身を犠牲にして戦い抜いたスミスの「勇気」の物語でもあったのではないでしょうか。カオスな作品でしたが、そういった点ではブレイバーンのキャラ共々かなり好印象です。
シエル:『SYNDUALITY Noir』
「♪何度も覚えた甘い痛み ひとつだって忘れない」
「♪繋ぐ指 約束は解けないままで」
「♪あなたの夢がちゃんと叶うように 歌うよ」
荒廃した地球で人間が機械人形のメイガスと共に戦う世界観を描いた『SYNDUALITY Noir(シンデュアリティノワール)』。ボーイミーツガールとしてもシンプルな内容で非常に見やすく、主人公のカナタや他の登場人物たちに愛着が湧きやすい良作でした。その中でもシエルは本作における悲劇のヒロインとしての立ち位置で、最も印象に残りやすいキャラクターに仕上がっていたと思います。
何と言ってもマスターであるヴァイスハイトの支配から逃れて、カナタの味方をするまでの流れがかなり鮮烈。彼女の記憶を何度も初期化させては道具として扱うヴァイスハイトの醜悪さも相まって、シエル個人を見てくれるカナタの存在が眩しかったのも大きかったですね。序盤からカナタに惹かれていく描写が丁寧に積み上げられていたのもあって、シエルがヴァイスハイトを裏切るまでの展開で凄まじいカタルシスを得られたのが本当に爽快でした。メイガスとして誰かの言いなりで終わるのではなく、自分でマスターを選び心のままに生きていく選択を取ったシエルに解放感を覚えます。(ちなみにこの「心のまま」には、後の展開でノワールたちにも重要な要素になっていくのが見逃せません)
それだけにヴァイスハイトが仕込んだハッキングから逃れるために、自分の命を絶つような行為に出たのはかなりショックが大きかったですね。その次の回でも眠ったままのノワールの新たなボディになることでシエルの人格が完全消滅する、と念入りに彼女が死んだことを自覚させられるのが辛くて仕方なかったです。ただそれだけで終わるのではなく、ノワールの意識の中で彼女を導いたりと相変わらずいじらしいところを見せてくれるのがシエルらしかったと言えるでしょう。さらにその次の回でシエルの歌がノワールによって歌われることで、奇跡のデュエットが完成する演出も見事。悲しい退場でしたが、その分別れもキチンとやってシエルが生きた証を作品内に残してくれたことに感謝したいです。
東雲晶:『終末トレインどこへいく?』
「ボーっとしてんなよ!池袋行くって言ってたの何だったんだよ!?」
「池袋行ってオシャレぶりたいんじゃなかったのかよ!?」
「葉香に会うんだろうが!?こんなとこでキノコ培養してる場合じゃないだろうが!」
水島努氏の監督作品として、大いなるカオスをもたらした『終末トレインどこへいく?』。異常な形に変異してしまった世界で吾野から池袋までを西武鉄道で向かうロードームービー、と言っていいのかよくわからない映像や展開の連続で見ているこちらの情緒が揺さぶられるようなアニメでした。それでいて主要人物である少女たちの微妙に危うい関係性と、それらの問題に向き合っていく過程に魅せられる内容が個人的にも気に入っています。
そんな本作の中でもメンバー最年少の晶(あきら)は、良い意味でニヒルな感じが印象に残りました。読書家で雑学に詳しく、序盤からモールス信号で吾野駅の善治郎との連絡を取る役割を獲得していく重要キャラ。それでいて静留たちと池袋に行くことにあまり乗り気ではなかったりと、他の少女たちとはやや異なる意見を持っているのが見受けられました。良く言えば冷静、悪く言えば悲観的といったキャラクターは下手に物知りになっただけにクールに振る舞っている年頃の子どもらしさとも取れますね。
晶に関しての内面は3話以降、東吾野でキノコに感染する騒動から徐々に明かされていくのが前半のポイント。仲間たちがキノコに寄生されて無気力になる中、1人ビクビクしながらも必死で戦いつつみんなを説得していく姿に少々ウルっときます。その後1人キノコによって幼児退行するなど本当に苦難の連続でしたが、その過程で「自分も葉香に会いたい」「玲実が助けてくれると信じている」といった感情を表に出していくのが素敵でしたね。みんなと比べて素直になれないだけで、友達への想いは人一倍強いのが読み取れます。意外と甘えん坊なところが判明したのもあって、末っ子のような可愛さを見出した次第です。
(あと晶だけでなく8話で全員が何かトラウマに苛まれるシーンがあるのですが、そこら辺の詳細はいつ描いてくれるんですか水島監督?)
ぷにる:『ぷにるはかわいいスライム』
「ぼくのことは当然スライムだと思ってますよね?」
「ぼくは「喋るかわいいスライム」です。ルンルーンも「喋るホビー」です」
「おんなじじゃないですか!何でアリスはホビーだと悲しいんですか!」
週刊コロコロより多くの性癖と少年の微妙な心の持ちようを抱えるかわいいスライム・ぷにる。彼(彼女?)のスライムの特性を活かしたギャグや様々な変身は、アニメの気合いが入った演出でより鮮烈に映っていたことと思います。その多様でニッチな面ばかりが取り沙汰されますが、個人的にはぷにるというキャラクターの独特な味付けについてを今回触れていきます。(原作漫画ではより深く掘り下げられている部分もありますが、ひとまずはアニメ1期で描かれた範囲のみに絞って語っていくつもりです)
さてぷにるというキャラを一言で表すなら、その恐ろしいまでに完成された“自己肯定感”にあると考えます。ぼくが可愛いのは当たり前、それを周囲のみんなが持て囃すのも当然……とばかりに、自分への評価が高く決して揺るがない様子は見るたびに慄かされます。創造主であるコタローに可愛いと認めてもらえず苦戦しているものの、あくまで彼が言ってくれないだけでぷにるにとって自分の可愛さは周知の事実なのです。同時に柔軟な面もあり、周りが可愛いと思うモノを貪欲に取り入れていくのも特徴的。可愛さへの確固たる自信を持ちながらも、トレンドに合わせて自分を磨くことを忘れないぷにるは一周回って感嘆するばかりです。
その一方でぷにるの感覚はあくまで「ホビー」の領域に過ぎない、というのが興味深いポイント。ぷにるは誰よりも自分がホビー(おもちゃ)である自覚を持っているのですが、コタローたちから「個人」として認識されていることを理解していません。上述のセリフのようにルンルーン(ルンル)を認めないアリスを怪訝に見ていましたし、両者の間にある認識の“ズレ”に気付いていないのが面白いところです。転じてぷにるの可愛いとは、着せ替え人形やマスコットを愛でる時の可愛いであることもこの辺りから読み取れます。
コタローがぷにるに人間的な可愛さを意識し始めている反面、ぷにるは彼の表向きの態度のみ見てしまう構図は何とも歯痒いですね。それ故ぷにるが如何にしてこの違いに気付いて認識を改めるのか、いちファンとして密かに期待しているところでもあります。原作でも未だに解決していないこの問題がどのように決着するのか……そうした可能性を楽しみにしつつ、今後もぷにるの動向を見守っていきたいです。
深山霧島:『来世は他人がいい』
「他の男と付き合ってもいい。でも最後はキッチリ飴と鞭の帳尻を合わせないと。それがルールだろ?」
「だから浮気するならキスもセックスも全部目の前でやってくれ。俺のことは柱にでも縛り付けてくれればいい」
「そして最後に俺がその男を殺す。そうすれば全ての帳尻を合わせられる」
ヤクザの闇社会に触れつつ、とある男女の恋とは言えない関係を描いた『来世は他人がいい』。表向きはマトモそうに見えて、実際は抜き身のナイフのようにヤバい連中が繰り広げる血で血を争う泥沼っぷりがクセになる作品でした。その中でも主人公・吉乃と共に暮らすことになった東京ヤクザの養子・深山霧島は群を抜いて異常で、吉乃共々このアニメの最大の見どころとして活躍していたと思います。
霧島に関してはとにかく言うこと為すこと全てが怖かった記憶がありますね。外面は良い感じの好青年ですが、その実破滅願望を持ち合わせたイカレたドMだと判明した時は地味に引きました。自分をめちゃくちゃにしてくれる相手や事件に惹かれ、一度キレると周りの相手を徹底的にぶちのめすブレーキの無さは回を重ねるごとに強調されていたと感じています。その願いを果たしてくれそうな吉乃への執着も凄まじく、彼女に対する異常な発言をする度にコイツ頭おかしい……と困惑すること十数回。石田彰さんの演技も相まって、胡散臭さと得体の知れなさがこれでもかと伝わってきました。(そんな霧島相手に怯まず真っ向からヤクザ啖呵がキレる出来る吉乃も大概イカレていますが)
それでいてこの霧島、自分の感情的な部分に無自覚なところが面白かったです。吉乃に惚れているのはわかっているくせに、彼女への好意を求めていることを後から気付くところは不覚にもいじらしく思ってしまいましたね。そのうえ吉乃と付き合いの長い翔真への嫉妬や敵愾心を剥き出しにしているシーンが多く、この辺りはイカレ野郎なりに人間臭く見えてきます。普段からサイコパスな面が出ているのでわかり辛そうに見えますが、吉乃への恋心そのものは割と真っ当なのかもしれません。吉乃の影響で人間的になりつつあるかもしれない考えると、霧島というキャラクターがより興味深くなってきそうな予感もしてきます。彼の変化を見届けるために原作漫画を読んでみるのも悪くはないかもしれませんね。
クリスタ:『Duel Masters LOST ~追憶の水晶~』
(せめて、今だけは……)
「ウィン様……何があっても、私はあなたの味方です」
「それだけはどうか……忘れないでください……」
テレビアニメとしての放送が一旦終了し、独自の展開が始まった『デュエル・マスターズ』アニメシリーズ。その新機軸の一環としてYouTubeにて配信された『Duel Masters LOST』は、配信時色んな意味で話題になりました。カードゲームアニメかと思いきや肝心のデュエル描写がほぼ存在しない、クリーチャー同士のリアルバトルが主体の内容は、ファンの間でも未だに物議を醸しています。僕自身、この辺りについては思うところがあるので色々と不安を覚えることもありましたね。
その一方で本作のヒロインの1人であるクリスタの描写に関しては高く評価しています。そもそも原作漫画では基本主人公のウィン視点で話が進むほか、クリスタの心情や彼との関係にほとんど触れなかったので、彼女がどういった人物だったのかわかり辛いところがありました。原作だけだとウィンの許嫁を自称するストーカーといった印象で落ち着いてしまうところを、アニメではクリスタのウィンに対する愛情について細かくフォーカスしていたのが素晴らしかったです。
特に2話はウィンにべったりだったり突然後ろに立つなど異質なストーカー行為自体は相変わらずだったものの、彼に自分のことを思い出してもらいたい一心で行動していたのが伝わってきました。何よりウィンが過去を思い出せなかったことにショックを受けたり、困惑する彼を刺激しすぎないように一歩距離を置くなどいじらしい場面も多め。これらのおかげで彼女が打算や虚偽ではなく、本心でウィンのことを慕っているのが伺えます。(同時にウィンが断片的にクリスタとの記憶をフラッシュバックしたおかげで、クリスタの発言が事実である可能性が高くなってきたのもアニメを視聴したうえでの大きな収穫でした)
それだけに蠅の王ことクリス・タブラ・ラーサによって蘇り、傀儡として操られる立場がより悲痛なものとして映りました。ニイカにウィンのことを託していく健気さも相まって、彼女の最期には涙ぐむポイントがいくつもありましたね。原作時点では本当に信じていいのかわからない不審なキャラクターだったクリスタを、正真正銘本作のヒロインとして魅せてきた点では大いに頷かされるデュエマアニメだったと思います。
メガトロン:『トランスフォーマー アーススパーク』『トランスフォーマー/ONE』
「隠れるのをやめ外に出る時が来たら、キミたちをよく思わない者もいるだろう。でも胸を張って生きるんだ」
「世の中には、自分と違う考え方もあると知ってくれ。そのことを胸に刻んでいたら、ディセプティコンとオートボットも戦いにはならなかった」
「同じ間違いはしないでくれ。キミたちが、未来の希望なんだ」
「プライムたちの時代は終わりだ!偽の予言者はいらない!ついて来い!もう二度と騙されることはない!」
「立て!俺が、この星の皆を未来へ導く!」
「我が、名は……メガトロン!!」
40周年を迎えて様々な展開を続けている『トランスフォーマー』シリーズから、今回は破壊大帝メガトロンをチョイスしました。敵集団・ディセプティコンのリーダーとして有名なトランスフォーマーですが、24年に日本で放送された『アーススパーク』と映画公開された『/ONE』のメガトロンはこれまでの作品以上に味わい深いキャラクターとして仕上がっていたのが印象的。各作品のメガトロンは名前と立場が同じだけで別世界の全くの別人なのですが、今回は変則的な形で2作品それぞれのメガトロンを比較しながら語ってみたいと思います。
最初にアーススパークのメガトロンですが、既にオプティマスプライムと和解して戦争を終わらせている意外性にまず驚かされました。途中再び敵対してしまうのかと予想しましたがそんなことはなく、終始穏やかな人物としてオプティマスや地球の少年&テランたちに友好的だったのが衝撃的。しかし戦争を続けてしまったことで故郷が衰退し同胞の生きる居場所が失われてしまった、という後悔を背負っているのが何ともいじらしかったです。かつての部下たちに「裏切り者」と罵られても、自分の過ちを正そうと前を向いているメガトロンは心の底から尊敬出来ますね。
対してONEのメガトロンは、D-16という名前だった頃からメガトロンに至るまでの過程が別の意味で辛いキャラでした。自分たちを騙していたセンチネルに憤り革命を起こすものの、私刑に走りオライオンパックス(後のオプティマス)に止められてからの「もうお前を助けない」は本当にショックでしたね。これまで純粋なままに信じた相手に裏切られた結果、自分の思い通りにならないものを徹底的に排除する暴君に成り果ててしまったのが伺えます。(そのうえやっていることが忌み嫌うセンチネルと同じなのがひどい)元々が真面目だったが故に、大きく歪んでしまった時の衝動に突っ走る姿はどうにも切なく映ります。
こうして並べてみると、ONEメガトロンは過ちを突き進む途中で、アススパメガトロンは過ちを認めた後と見事なまでに前後したキャラクターなのが読み取れますね。そして彼らの背景にあるのは他者に“寛容”でいられたかどうか、という点も両者の違いを決定付ける重要なファクター。ONEでは裏切りに対する激しい“拒絶”を、アススパでは異なる価値観に対する“理解”を戦争と共に描いていたと言えます。反戦や非戦のメッセージ性を孕みつつ、どちらのメガトロンも魅力的なキャラクターに仕上がっていてファンとしては大満足の一言です。
キラ・ヤマト:『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』
「ラクスに会いたい……」
「ラクス……ただ隣で笑っていてほしいだけなのに……」
「僕にはもう、どうしたらいいのか分からない!」
2006年の映画化決定から約18年、ついに劇場版として上映された『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。当時『SEED』や『SEED DESTINY』を見て待ちわびていたファンの方々を(色々凄まじい力技で)満足させ、ガンダム映画史上最大の興行収入を叩き出した記念すべき作品となりました。かくいう僕も本格的にガンダムを知ることになったのがSEEDだったので、この映画への期待と熱望を抱きながら映画館に足を運んだものです。その結果こちらが「見たい」と思っていたものを全力で楽しむことが出来て本当に嬉しかったですね。
そんなSEED FREEEDOMについて、個人的に最も高く評価しているのが主人公・キラの内面描写。長いこと計りかねていた彼が抱えていたものをハッキリと描き、多くの問題に向き合わせてくれた点に感謝せずにはいられませんでした。映画冒頭からライジングフリーダムに乗って八面六臂の大活躍を果たしていたキラですが、平和を導けずに精神的には疲弊していくばかり……そこにファウンデーションによる策謀に巻き込まれ、愛するラクスを奪われるなど散々な目に遭うので、中盤までハラハラしっぱなしで彼を見守ることとなりました。
そうして心身ボロボロになったところに上述のセリフや「キミたちが弱いから!」といった言葉が飛び出してきますが、ファンとしてはやっと本心を言えたか……という安堵を覚えましたね。抱え込みがちな性格なのは以前から察していたものの、SEED最終回以降本心らしきものを明かすシーンが中々なかったので余計に響きました。誰よりも優れている以上自分がやらなければいけないといった強迫観念や、ラクスを助けたい一心だったキラの辛くてたまらなかった想いを聞き出せたことに心底嬉しく思います。
DESTINYに入ってから達観した態度ばかりが目立っていたものの、本来キラは争いを好まない優しい人物。それを理解しているからこそ上の弱音を言えたこと、そしてアスランをはじめとした多くの人たちの助けを得られたことに感動させられます。そしてキラという若者の人物像について結論を出せずにいましたが、彼の性根はストライクに初めて登場した時から全く変わっていなかったことも察することが出来ましたね。20年以上かけて得られたキラの安らぎと共に、ファンがようやくキラを理解することが出来た点でもこの映画の意義は大きかったと言えるでしょう。
皇サクヤ(ロゼ):『コードギアス 奪還のロゼ』
「忘れるな……忘れるな!」
「サクラを……日本人を……奪われた全てを……奪還する!」
「それが俺の、覚悟だ!!」
ゼロ年代後期に大きな話題を呼んだ『コードギアス』シリーズの最新作『奪還のロゼ』からは、主人公であるロゼもとい皇サクヤ(すめらぎ・サクヤ)を選びました。視聴前はそこまで注目していなかった本作ですが、いざ1話を視聴した際の衝撃に全てを持っていかれて一気にハマってしまいましたね。その中でも謎の少年・ロゼの正体が、ネオ・ブリタリアによって囚われているとされる皇女・サクヤだと明かされる瞬間のインパクトは半端なかったです。
サクヤの影武者として代わりに捕まっている親友のサクラを救い、家族を奪ったネオ・ブリタリアへの復讐を果たす。その目的のためにアッシュを兄として洗脳し操るといった、“嘘”に塗れた人物像は叔父のルルーシュを彷彿とさせるものがあります。冷酷に振る舞っているようで親しい相手への情を捨てきれない、中途半端なところも叔父そっくりなのでニヤリとくるものが多かったです。それでいてアッシュたち騙した相手への罪悪感に苛まれる場面も多かったので、個人的にかなり好感が持てますね。(ルルーシュほど開き直れる度胸や頭脳はないとも取れますが)
そしてアッシュの記憶を改ざんし、彼にとって命よりも大切だった弟の記憶を奪ってしまった件の気まずさはかなり印象的。それだけに罪を背負ったうえで最後まで嘘を突き通し続ける決意を固めるシーンは、まさしくコードギアスの主人公たるに相応しい姿でした。何よりロゼというもう1人の自分がただの隠れ蓑ではなく、人々を救うための希望に変わろうしていたのが伝わってきましたね。結果アッシュを失い自分も声ごとギアスを封印する結末を迎えてしまいましたが、それもまた罪を背負ったサクヤの覚悟ということなのでしょう。もう少し救いが欲しいので続編を望む気持ちもありますが、これはこれで納得のいくケジメの付け方だったと思います。
鳴海荘吉/仮面ライダースカル:『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』
「心を捨て……街を泣かせた悪党は……もう人ではない」
「倒す以外では救えない」
「さぁ……お前の罪を……数えろ」
ラストは『風都探偵』の映画にて主役として登場した「おやっさん」こと鳴海荘吉。原典である『仮面ライダーW(ダブル)』の冬映画シリーズ(『ビギンズナイト』&『仮面ライダースカル メッセージforダブル』)にて吉川晃司さんの渋くてクールな演技から人気も高いキャラでしたが、アニメでもそのイメージを見事に出してくれて感動しましたね。津田健次郎さんの声の存在感もあって、アニメでさらなるおやっさんの魅力が引き出されていたと思います。加えて仮面ライダースカルに変身してからの戦闘シーンも、退廃的でダンディなところがしっかり見られてまた素晴らしかったです
原作漫画の時点でも描かれていたおやっさんの掘り下げとして、彼の人間臭い“弱さ”が取り上げられていたのが印象的。親友のマツを手にかけたことを引きずり探偵を一時辞めかけ、その時現れた当時の翔太郎の真っ直ぐな心に感化される流れはアニメでもかなり鮮烈に映っていました。翔太郎の視点では欠点のない最高のハードボイルド名探偵ですが、その裏で迷いや不安を抱いていたのは驚きつつも納得のいく描写でしたね。悪人とはいえ元は人間のドーパントを倒す時も心を痛めていたであろうに、その弱さをおくびにも出さない突っ張ったところに惹かれます。まさにおやっさんは“Nobody's Perfect(誰も完璧ではない)”を体現した、弱さと強さを持ち合わせた人物なのだと確信した次第です。
そして表に出さない弱さを抱えているからこそ、翔太郎の“優しさ”を誰よりも評価していたのが素敵なポイント。未熟なところも多く危なっかしいものの、不当な暴力に怒り傷付いた相手に手を差し伸べる彼の長所に誰よりも心奪われていたのが劇中で伝わってきました。自分には出来なかった「被害者も加害者も、依頼人も全員救う」という選択肢を、翔太郎なら果たしてくれると信じていたのでしょう。おやっさんはあの時死んでしまったことが改めて確定したのが辛いものの、その願いは間違いなく翔太郎とフィリップに受け継がれたこともわかる一幕として、心に残る映画となりましたね。
というわけで2024年の各アニメキャラのコメントでした。例によって文章量が多くなってしまいましたが、その分書きたいことを書けて個人的には満足出来ましたね。これを読んでくれた読者の皆様にも、熱量が伝わったのではないかと信じています。
また振り返ってみると、今回は選んだ作品のほぼ半分がロボットアニメという意外な形になりました。トランスフォーマーやガンダム、ギアスといった往年のシリーズを好んでいるのも含めても、何だかんだロボアニメが豊富な年だったことが伺えてニヤリときますね。
そして今回選ばなかった時点のキャラも数多く存在します。ざっと挙げるだけでも……
- センシ:『ダンジョン飯』
- スターリア・レーゼ:『ラグナクリムゾン』
- 漢羅漢:『薬屋のひとりごと』
- エデン・ヴァロック/漆黒のノアール:『メタリックルージュ』
- 十亀条:『WIND BREAKER』
- 高梨・キム・アヌーク・めい:『夜のクラゲは泳げない』
- 泉志帆:『ささやくように恋を唄う』
- 夜桜凶一郎:『夜桜さんちの大作戦』
- 小鳥遊ホシノ:『ブルーアーカイブ The Animation』
- ホロ:『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』
- フィオネ姫:『異世界スーサイド・スクワッド』
- テロンナ・アクア・ベガ:『グレンダイザーU』
- アトランティス:『キン肉マン 完璧超人始祖編』
- 虎視餡子:『しかのこのこのここしたんたん』
- ミラ:『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』
- 鳴嶋メルト:『【推しの子】(2期)』
- 周防有希:『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』
- 京楽春水:『BLEACH 千年血戦篇ー相剋譚ー』
- ウィーン・マルガレーテ:『ラブライブ!スーパースター!!(3期)』
- 乃苺佳寿/ベリーブロッサム:『アクロトリップ』
- ちびガイガン:『ちびゴジラの逆襲』
- ゴーハ・ユウナ:『遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!』
- 石山タクミ:『BEYBLADE X』
- ミッカ:『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』
- 御影玲王:『劇場版ブルーロック-EPISODE 凪-』
- ナナ:『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』
- シンパイ:『インサイド・ヘッド2』
- 石嶺小糸:『映画 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』
- 雑渡昆奈門:『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』
こんだけいます。こちらに関しても10選の中から選ぶことが出来なかったものの、非常に印象的かつお気に入りのキャラだとここで言っておきたいです。(無論ここに書き出されなかった作品にも印象に残るキャラが存在します)
さてこれにて2024年のアニメとも一応の整理を付けたので、ようやく本格的に2025年のアニメに注目していけますね。現在放送中の作品も非常に魅力的なものが多く、今のうちに気になるキャラをピックアップしていくだけでも楽しいです。この調子でアニメを全力で楽しんでいけたらと思いつつ、無理せず今後もブログを続けていく所存です。改めて当ブログをよろしくお願いします。
ではまた、次の機会に。










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