新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

仮面ライダーガヴ 第35話「甘さゼロ!鉄壁のランゴ」感想

弱さを忌む“不寛容”

U・M・Aといいサイレンといい旅客機といい今回音が凄まじい!!

吹替版

吹替版

  • Crab 蟹 Club
Amazon

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • 不動なる力を振るいし長男

 長い間雌伏の時を過ごしてきたランゴ・ストマック、その本気がついにお披露目されたガヴ35話。ボッカ大統領に闇菓子1000万個という無茶ぶりを受けてからどうするつもりなのかと思っていたら、予想以上の手際の良さでこなしていくので感嘆せずにはいられませんでした。客船やドーム会場、旅客機と大勢の人が密集した閉鎖空間を狙う、かつてのラキアの作戦をものの見事に再現して成果を挙げているのですから驚きです。そのうえ真夜中に一斉に行動を行うシーンは、着実に作戦を遂行する仕事人のような厳かさを感じましたね。(ヘリのプロペラやパトカーのサイレン音が静かに響き渡る演出も相まって地味に怖かったです)

 ショウマたちの介入で戦闘が始まった時も、こちらの予想を超えた圧倒的な強さを発揮してきました。何と言っても強力なのがランゴが持つ固有能力「オートガード」で、本人が意識してなくても向かってくる攻撃に自動でバリアを張って弾き返してくれるのが非常に厄介。ガヴ オーバーモードの必殺技も複数枚張って何とか防ぎきりましたし、サブタイの「鉄壁」に恥じない堅牢さを誇っていたと思います。それでいて大剣を駆使した戦闘能力も半端ではないのですから恐ろしいですね。相手のベルト部分を的確に狙ってくる描写といい、強大な威力と正確無比なバトルセンスこそがランゴの本領であることを認識させられます。

 他にも作戦実行前にリゼルたちに「人間世界にグラニュートの存在がバレる可能性」を示唆したうえで言質を取るなど、抜け目のないところもランゴの優秀さを物語っていました。前々から感じていたことですが、ランゴは案外現場向きの人材なのかもしれません。今回の行動力といい障害を跳ね除ける戦闘力といい、これまで事務仕事をさせるには惜しい実力者っぷりでした。何よりこれまで目まぐるしく変わる状況に対応出来ず、不憫な目に遭ってばかりだったランゴがしっかりボスキャラとしての風格を出してきたのが嬉しいですね。主人公がボロ負けしている故不謹慎ながら、敵としてこれ以上ないくらい強大なランゴ兄さんに爽快感を覚える回でした。

 

 

  • 理解出来ぬものを認めない

 ランゴの強さに惚れ惚れした一方で、彼がショウマへの嫌悪感を露にするシーンは何とも言えない苦々しさを覚えました。父親が突然別の種族の女性にその子どもを連れてきて「お前たちの弟だ」と言われる……そんな回想シーンの異常性もあって兄弟たちに同情する一方で、罪のないショウマに対して辛辣すぎるのが見ていて辛かったですね。何かショッキングなセリフを言い放つシーンでは旅客機が飛ぶ音でかき消えていたものの、ショウマの存在そのものを認めようとしない傲慢さだけは伝わってきました*1

 しかしそうしたランゴの口ぶりから、グラニュート界の「力こそが全て」という考えが読み取れたのは興味深かったです。これに関してはリゼルやマーゲンの強さから権力者ほど実力が高い可能性に薄々気付いていたので、それがほぼ確定したと見るべきでしょう。そして強い者こそ多くを享受出来る弱肉強食の価値観だからこそ、ショウマのような庇護される存在は異質だった場合が見えてきます。ショウマにとっては酷な話ですが、ランゴからすればこの弟の存在は理解出来ない化け物のように見えているのかもしれません。(ただグラニュートが全員同じ考えなのかどうかについては、ラキアの件もあるので一概にはそうとは言い切れなさそうなのも絶妙)

 ショウマもランゴも父・ブーシュに翻弄された被害者であるのに、考えや立場でここまでの差が出ているのも面白いところ。個人的にはこの2人の違いは他者に対する“寛容”が大きく影響しているようにも考えられますね。片や人間やグラニュートそれぞれの事情を理解するのに対して、片や人間をあくまでスパイス扱いしその仲間であるショウマを否定する……他者を認められるかどうかが両者の断絶を生んでいるのだと思いました。弟の弱さの意味を考えようともしないランゴに、ショウマはどこまで抗えるのかここから先が楽しみです。

 

 

 ランゴとの直接対決という大詰めの展開の最中で、いくつかの癒しや優しい見どころが多く存在したのも今回の特徴。第3話以来の登場となるりっつんが推している謎のバンド「U・M・A(ウマユー・エム・エー)*2に面食らいました。馬の覆面を被ったまま演奏している光景は現実でもそう珍しくは無さそうですが、それでもインパクトは強め。そんな不思議なグループのライブに行く予定のりっつんのために、100均でグッズ制作をする前半に大いにほっこりした次第です。これまでが忙しかったのもあって、平穏な日常を過ごせている様子が何とも心地よかったですね

 また今回ラキアがほんの少し表情を曇らせていたのが印象的でした。ランゴの作戦がかつて自分がやったものと同じ可能性だと見抜くや否や、あの時の事件を幸果に話していないことに罪悪感を覚えている様子に胸が痛みました。巡り巡って自分が犯した罪がのしかかってくる展開は重いものの、それほどまでにラキアが幸果のことを大事に想っているのが伝わってきたのが素晴らしかったですね。すかさず入ったショウマと絆斗のフォローも素敵ですし、罪を背負って戦うライダーの悲哀を上手い具合に中和していたと思います。

 そうそう前回息絶えたと思われたデンテおじさんですが、普通に寝ていただけというオチには内心でズッコケてしまいましたね。あのラストで普通に生きていることがあまりにも意外過ぎて、良かったという感情以上に困惑が止まらなかったです。この調子ならおじさんも最後まで生き残るだろうという安堵と共に、前回の涙を返せやコラァ!という気持ちが湧いてきましたねハイ。前回の感想で「愛する甥っ子のためにその身を尽くしてくれたデンテおじさんのことは僕も決して忘れないでしょう」とか書いたのが今になって恥ずかしくなってきたんですけどどうしてくれるんですかおじさん!?

 

 

 次回はランゴの計画を止めるための戦いが開始。次なるターゲットがりっつんが参加するU・M・Aのライブだと判明したことで、楽しんでいる彼女たちを守るためにライダー3人がそれぞれ動き出すようです。あれほどコテンパンにやられても決して諦めない、ショウマたちの心の強さには思わずグッときますね。(一方で絆斗がグラニュートの情報を世間に流すことを予告で明かしていますが……こちらは少々心配)

 そしてオーバーモードに続く、ガヴもう1つの最強形態もついに登場。ランゴのオートバリアを攻略するほどの力を秘めているのはわかりますが、果たしてどんな能力を発揮するのでしょうか。パワーのオーバーと来たらシンプルにスピードか……?といった予想が今から楽しみになってきます。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:爆音でかき消されたセリフに関してだが、ランゴの口の動きから読み取る限り「お前は生まれてくるべきではなかった」かと思われる。

*2:余談だがU・M・Aが劇中で披露した楽曲は「Crab 蟹 Club」さんという実在の覆面バンドが歌う「吹替版」(当記事のサムネにもなっている曲)を引用している。,詳しい情報は仮面ライダーWEB(https://www.kamen-rider-official.com/gavv/36/)を参照。