陰謀蠢く地下にて
エミコさんが頭空っぽにしてガメラを信じろって言ったんじゃないか!(言ってない)
大人はみんな嫌いだ!!(アマテ・ユズリハ並感)
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- 邪悪な“笑み”が“子”どもたちに迫る
前回衝撃的な真実が判明したところで、さらなるショッキングな要素を静かに味わうこととなったガメラリバース9話。怪獣が人工削減のために生み出され、ユースタス財団はその怪獣を使って「浄化」という名の大虐殺を目論んでいる……そこにエミコたちの真実が加わることで面食らうこととなりました。おかげでこれまで怪しいと睨んでいた財団の真っ黒さに、思わず息を飲んだ次第です。(余談ですが財団職員の服装って改めて見ると『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』に登場する、バイラス星人・人間態の服装とシルエットがほぼ同じなんですよね。この時点で気付くべきだった……)
何と言ってもエミコの冷徹な本性に慄きましたね。ボコたちをバイラスの餌にする計画を、タザキを前に平然と説明するシーンがまず恐ろしかったです。態度そのものは以前とまるで変わりないのに、会話の内容が違うだけでここまで悍ましく見えてくることに鳥肌が立ってきます。優し気な声色と笑顔も、今となっては他人を平然と利用する邪悪な外道のソレに見えてくるのも絶妙。これまでのエミコに「優しいお姉さん」という印象を抱いていた分、このショックは計り知れません。(あとジグラ戦の時にあれほど活躍してくれたドーソン船長たちもエミコ側なのがまた辛いですね)
同時に財団のブラックな面が完全に表に出てきたのも大きな見どころ。怪獣を増殖させて人類の大半を喰わせる作戦について、ほとんどの財団職員は知らないまま働かされている節がありました。そのうえ避難場所である月までのロケットに乗るための席も限られており、エミコたちがその乗員を選別している点に彼女らの傲慢さが窺い知れます。しかしギロンの襲撃で負傷した「ダリオ」もその真実を知る1人のようですが、エミコの口からはっきり「置いていく」と明言されているのが哀れでしたね。怪我人なのにバイラス復活のための重労働に駆り出されているのもあって、知らず知らずのうちに利用されている構図の惨たらしさを感じてしまいます。
それはそれとして、そんなエミコが月面基地の評議会のことを裏切ろうとしている事実がこれまた意外。てっきりあの評議会連中の言いなりかと思いきや、彼らを出し抜く気満々であることに少々驚かされました。軌道ステーションの物資搬入をストップして、兵糧攻めを仕掛けてくる辺り本格的に上を制圧する気なのが伝わってきますね。あのすまし顔に一矢報いてやっているのは視聴者的にも気分はいいのですが、そのために子どもたちや職員が平然と利用されているのもあって嫌悪感も湧いてきます。天使の顔して他者を喰い物にして蹴落とす悪魔……そんな印象を抱かせてくるエミコら大人たちに憤りを覚える回でした。
- 嫌味な大人の常識的な判断
エミコの評価が逆転したところで、同じく第一印象から大きく変化しそうな様子だったのがタザキ。以前から財団への不信感を募らせていましたが、今回のエミコの本性を目の当たりにした時の常識的な反応に少々安心しましたね。「ガキは嫌い」だと言いつつも、そのガキが怪獣の餌にされそうな話に待ったをかけるくらいには良識を持ち合わせていることがわかります。良くも悪くも普通の大人としての“まともさ”といったものが感じられるので、嫌味な態度もかえって愛嬌に見えてきました。
エミコの話にあっさり了承してしまったのはちょっとショックでしたが、その過程で情報を次々と抜き出していく手腕にも唸らされます。ダリオから月行きのロケットに乗るために尽力している話を、ボコたちから怪獣増殖とその目的を聞いて本人なりにまとめているが目に付きました。恐らくはエミコに利用されているのも理解しているうえで、合理的な判断の元ここから出し抜くための手段を講じているのでしょう。タザキが野心家であることは視聴者としても承知済みですし、次回以降彼女たちの鼻を是非とも明かしてほしいところです。
一方で子どもたちの扱いに関してはまだ判断が付けられないです。彼らが怪獣に喰われることに抵抗感は持っていそうですが、当人たちにはいつもの横柄な態度を崩さなかったので少しだけモヤモヤさせられます。ジョーの家族のことを引き合いに出すなど露悪的に振る舞っているのがわかるだけに、この後如何にして子どもたちを助けてくれるのか?そもそも助けてくれるのかこの人?と不安になってきますね。(ネクタイのピンを落としたのも演技か、それとも素なのか……)個人的にもタザキの動向が気になりすぎるので、早く次回を見たくなってきました。
というわけで大人たちの汚い裏側が明らかになった今回ですが、同時に子どもたちの反省会が繰り広げられていたのも印象に残りました。エミコやタザキと信用出来ない大人たちを前にして、まんまと騙されたことを後悔する様子が何とも微笑ましかったです。他にもジョーのことでボコが誰よりも怒ったりと、お互いの友情の深さが感じられる場面がチラホラあって安定感がありましたね。絶体絶命なものの、主人公たちの純粋さに間違いを認めていく過程がプラスされていく構図に心地いいものを覚えます。
そして本作の怪獣について様々な事実が新たに判明したのも見逃せないポイント。シンワードがバンバン出てくるうえ情報もバラバラなのでややこしいのですが、とりあえず箇条書きにしてまとめると……
- 怪獣とは10万年前に人類が「人工削減」のために生み出した人造生物である。
- 「コード」と呼ばれるものを保持する子どもを喰らうことで増殖し、人間を大量に捕食しはじめ最後には肉体が崩壊する仕組みを持つ。
- コードを捕食した怪獣は人間の手で操ることが出来るが、「マイナスコード」を持つ子どもを食べた場合は逆に制御不能になる模様。
- さらに他の怪獣の死骸を吸収することで、急成長したり傷を治すことも可能(ジャイガーの共食いやギロンのジグラ死骸の捕食も恐らくこの機能からくる行動だと思われる)
- 10万年前は計画の最中、裏切り者たちによってガメラが奪取されたとのこと。恐らくこの際にガメラは「他の怪獣を倒すための怪獣」に造り直されたのだと予想出来る。
といった感じ。ここで目に留まったのがボコがコードを保持しているという事実で、これまで怪獣たちがボコを狙っていた理由が間接的にわかりました。怪獣たちはボコのコードを感じ取って行動していたと考えると、これまでの行動にも納得がいきますね。(ガメラもボコの中にあるコードを理解したうえで駆けつけてきたのでしょう)あとは前回ボコとガメラで痛みが共有されたのもコードによるものなのかは不明ですが、そこは次回明かされることに期待したいです。
10万年前の真実など思った以上にスケールの大きい話になってきて、過去に何があったのかも知りたくなってきた次第。しかし本作のキモはガメラと少年たちの物語にあるので、とりあえずはその辺りに集中して視聴していく所存です。調べたところ気になる10万年前を描いたスピンオフ漫画『コードテルソス』(上のサムネにある作品)もあるとのことですし、機会があればそちらもチェックしたいですね。
ではまた、次の機会に。
