安野モヨコ氏原作のファンタジー漫画『シュガシュガルーン』の新作アニメ化が決定。先日フランス・パリで行われた「JAPAN EXPO」なるイベントでスタジオカラーの新作として制作されるとサプライズ発表されたとのことです。本作はかつて2005年にテレビアニメ化されたことがありますが、そこから20年経って昨今のリメイク化の流れに乗るのは結構衝撃的ですね。
さてエキスポにて発表された新作映像を早速視聴したのですが、フルCGながら違和感のないビジュアルと動きにまず感動を覚えます。CGアニメらしさを残しつつも、手描きとの違和感のなさに近年の日本アニメの技術の高さを実感しますね。ショコラとバニラの魔界での思い出をダイジェスト感覚で展開される内容も素敵で、これはアニメ本編の方も楽しみになってきました。
というわけで以下、今週の簡易感想です。
ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット
第1話「すべてが猫になる」
ゾンビパニックものを猫に置き換えたシュールギャグがここに開幕。初っ端から猫の大群が雪崩のように襲いかかり、触れられた人間が猫になるという絵面に原作を知っていても度肝を抜かれました。(パンデミックならぬニャンデミックなどのワードセンスにもやかましいわ!と内心ツッコんだり)その後も主人公が猫への愛を叫びながら嘆いたりと、本作のノリがどういったものなのかと端的に説明出来ていたと思います。前後編で時系列が逆転しているなど不思議な構成をしていますが、それも視聴者に方向性を示すためには必要なモノだったのでしょう。そもそも原作からしてこういう順番ですし……
また本作の愉快な特徴として、ニャンデミックが起きる前から猫中心の世界観として形成されている点が挙げられますね。世界人口の9割が猫好きで構成されているうえ、屈強な男たちが基本猫を乱暴に扱わないのもあって安心しながら笑えるのが素晴らしいです。主人公の「クナギ」も記憶喪失なくせして猫の知識と愛情だけは失われていない歪なキャラクターをしており、それが許される作品の空気感にどこかフフッとさせられます。この調子で猫を愛でたいのに愛でられない、そんな葛藤を大真面目に描く展開に期待がかかります。
まったく最近の探偵ときたら
第2話「オバケは膝を狙え」「真犯人を探せ!!」「真白爆発3分前」
幽霊騒動に下着泥棒、爆弾魔とベクトルもスケールもバラバラな事件が取り上げられた3編。犯人どころかそれ以外の一般人も濃いキャラばかりで、特に「胸毛十字(むなげクロス)おじさん」は短いながらも一目でヤバいとわかるインパクトを誇っていました。名雲と真白のコントだけでなく、他の登場人物も個性的であることを早々に見せてくれるのは嬉しい限りです。個人的には前回仲間になった「根津太郎(ねづ・たろう)」が扱いが雑な下っ端枠として定着しているのがここすきポイント。
しかし最大の見どころはやはり真白の圧倒的なパワー。ありとあらゆる事件を力技で解決しようとする脳筋ぶりを発揮し、実際にそれで何とかなる展開の応酬が腹筋に着実なダメージを与えてきます。1話の時点から怪しかった真白のヒロインっぽさは、ここで完全に消え去ったと言ってもいいでしょう。(顔芸も最早持ちネタとして完全に定着していますね)またそんな真白を信頼する名雲のコントロール力も見事で、未だに衰えない推理力と相まって意外な相性の良さが判明していく流れに舌を巻くばかりです。
おそ松さん(4期)
第1話「また始まるざんす」
シリーズ10周年&赤塚不二夫生誕90周年記念として、おそ松さんも4期に突入。赤塚先生を祝う記念作品がこれで本当にいいのか……!?とはいえ特別ぶっ飛んだことをするわけではなく、六つ子たちの夏の一日をゆったりと描いていく内容が繰り広げられました。何の脈絡もなく宇宙に行ったりぶっ飛んでいるところはあるものの、基本は何の変化もない平凡そのものと言ってもいいかもしれません。大きなストーリーがあるわけでもない単調さですが、ここまでシリーズが続いてきたからこそこういったエピソードも許されるのでしょうね。
また1話丸々を通して各キャラのおさらいのようなテイストだったので、誰がどんな性格なのかを振り返るにもちょうどよかったです。六つ子特有のあくどさについても、おそ松とイヤミが子どもたちに阿漕な商売をしている以外は特になかったのでまぁ見やすかったですね。そんな感じで夏休みの風景として見れば微笑ましく感じるのもあるのですが、最大の問題はこいつらが基本ニートなので夏とか関係なく普段からこれくらいだらけている点。それに気付いた瞬間、本作のヤバさといったものが何となく感じ取れてきた次第です。
クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-
第2話「囚われた魔獣王」
前回ラストで山賊たちに捕まったアリシアたちを見守る中で、山賊たちの醜悪さに顔をしかめることに。捕らえた人たちを売りさばくならまだしも、自分たちの慰めに利用する絵面はシンプルに不快感を覚えずにはいられません。特に奴隷の立場から解放させてあげる希望をチラつかせて、確実に魔獣に喰われる試練を受けさせるやり口は悪趣味の極みといったところです。心臓の音で相手の不安を読み取る某宇水さんみたいな面白いキャラ死に際までポッと出のくせにやたらキャラが濃い……!もいるものの、全体的には山賊たちへの嫌悪の方が印象に残ってしまいました。
そしてクレンの方はルナの乳母として「ネル」という女性を見出していたのが目に留まりました。ネルの身の上も上述の被害者に負けじと悲惨で、母の失踪や3度の死産などあまりの過酷さに思わず顔を覆ってしまいます。ただどんなに辛い目に遭っても、子どものためならばと生き続けている逞しさには関心を覚えますね。自分の子でなくてもそれを希望に出来る辺り、ネルは本来強い人物であることが伺えます。(同じ山賊たちの娼婦たちと力を合わせて生きているのもここすきポイント)そんな彼女の生き様が魔獣王にどう映っているのか、人をどう思うのかに繋がりそうな予感がしてそちらにも期待出来ます。
ちびゴジラの逆襲
第67話「ちび怪獣探偵団」
ちびラドンが死んだ!この人でなし!ということで事件解決のために探偵団が結成されましたが、単純にちびゴジラが探偵ごっこしたいだけなのが伝わってきてじわじわきました。「謎は全て解けた!」といった探偵モノあるあるなセリフを口にしたいだけで、これっぽちも推理していないのが笑いを誘います。絡みがひたすら面倒くさいですが、これもまた子どもらしくて微笑ましかったです。
事件に関してもちびメカゴジラがそれっぽいものを考察するだけで、大して進んでいなかったのが茶番感を高めていました。ちびラドンが無事だったのは予想通りでしたし、本作のゆるい空気感が最後までいつも通りなところは安心出来ますね。ただまぁダイイングメッセージ含め、ウザいちびラドン相手に新しい事件に発展しそうなオチになりましたが……(あと現場の足跡は結局何だったのかわからずじまいだったのもおかしかったです)
ところでシュガシュガルーンのアニメをカラーが担当することになった件について、原作者の安野モヨコ氏と庵野秀明氏が夫婦であることが関係しているのではないか?といった邪推をついついしてしまいます。エッセイ漫画の『監督不行届』でも仲の良さなどが読み取れるので、今回のカラー制作にもある程度納得出来ますね。というか1人だと食生活諸々で早死にしそうな庵野氏を懸命に支えてくれた事実があるので、そんな安野氏の代表作をカラーのコネで作ってもバチは当たらないだろうな!とか思ったり。
ではまた、次の機会に。
