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気まぐれ漫画簡易感想 その20(マガポケ編)

 

 

 近年は様々な漫画アプリが存在しており、工夫次第で様々な漫画が楽しめる時代になってきました。僕もいくつかアプリをダウンロードしたり、WEB雑誌にログインして各掲載作品を読んでいます。コツコツと楽しめるのが性に合っているのか、個人的にもこの手のアプリには結構好意的です

  中でも気に入っているのは「マガポケ」(マガジンポケット)。名前からして少年マガジン系列専用のように思えますが、講談社作品の多くを網羅しているので読める作品が非常に幅広いです

 

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↑以前書いた感想について上の記事を参照。

 

 以前も『仮面ライダーSPIRITS』やら『K2』やら『のだめカンタービレ』やらといった作品の感想も書きましたが、雑多にいろんなジャンルを読んでみたい身としてはこれ以上ないくらい楽しいですね。マガポケの宣伝のつもりではありませんが、今回はそんな掲載作品の感想を書いていきたいと思います

 

 

 というわけで以下、漫画の簡易感想です。

 

 

 

 

定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~

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 一発目はモーニングにて連載中のエッセイもしくはルポ漫画『こづかい万歳』について。こちらは作者・吉本浩二氏の視点で世の大人たちのお小遣いの使い方に触れていく作品です。ネット上でも度々話題になるほか、テレビでの紹介されたことがあるので知っている人も多いかと思われます。(個人的には作者を知ったのは『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』からなので色々と感慨深いものがあります)一応実話とのことで、SNS上で「こづかい超人」を公募しているのも有名ですね。

 何と言っても月2万千円のお小遣いを如何にしてやりくりするのかという吉本氏の話から、徐々に他のお小遣い制の人たちの物語にシフトしていくところからが本番。それぞれ自分なりの工夫でお小遣いを使い、それを日々の頑張りや特別な日の楽しみに変えていく様子に驚いたり引いたり感心したり出来るのが本作の楽しみ方となっています。家庭菜園や野草採集、公園で筋トレなど読んでいる側としても参考になりそうな塩梅の工夫も多く、各エピソードに個々人の楽しみが描かれているのが素敵ですね。

 その一方で予想を超えた奇人変人が出てくるのも大きな見どころ。駅の片隅で道行く人々を眺めながら晩酌を楽しむ人とか、甲子園に行くくせに開会式だけ見て帰る人とか、果ては通勤している会社を推しとして働いている人などこちらも多種多様。若干意味不明なレベルのこづかい超人も出てくるので、世の中には自分の理解の範疇の外にいる人間がこれだけいるのかと不思議な感嘆を覚えることもあります。(何より取材した吉本氏が「なんだこの人……」という反応で終わる回もあるので変な笑いが出てきます

 とまぁ本当に毎回いろんな人が出てくるのですが、彼らのほぼ全員がマイペースかつポジティブに日々を楽しんでいるのが本作最大の魅力。現実の日本を舞台にしているためか物価高騰などの話題がリアルタイムで反映されており、そんな状況で各々が自分の出来る範囲で生活に潤いを見出していく過程に勇気付けられることが多数ありました。世の中への不満に触れつつもネガティブな印象を全く感じさせない、このバランス感覚には舌を巻くばかりです。

 他にも子どもの成長に涙する残飯つまみ回や、市民だよりに書かれたイベントに参加して青春プレイバックする老夫婦のエピソードなど、素直に感動出来る内容も結構ありますね。清貧な生活にどこか共感を覚えることもあるので、こうした人たちの楽しみが存在していると思うとどこか嬉しくなってきます。総じて“豊かさ”とは単純なお金や物の価値を表わす言葉ではなく、その人それぞれの心の在り様に秘められているものなのだという学びを得るうえでも貴重な作品だと思いました。

 

 

しゅごキャラ! 

 

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 『ローゼンメイデン』で知られるPEACH-PIT氏作の少女漫画。かつて「なかよし」にて連載され、アニメ化も経験している当時の話題作の1つでした。さらに現在続編である『しゅごキャラ! ジュエルジョーカー』も同誌で連載中と、今もなお根強い人気を持っていることが伺えます。マガポケに掲載された件は当ブログでも一度取り上げており、あの後毎日各話を読み返してその魅力を再認識した次第です。続編共々そんなしゅごキャラの面白さに触れていきたいと思います。

 まずは少女たちの心の成長を助ける物語性。本作は子どもの心の奥底にある「なりたい自分」が形となった「しゅごキャラ」の力を借りて変身する変身ヒロインモノとしての要素もありつつ、幼い心と体の変化に戸惑う子どもの在り様についてが描かれていました。大好きなスポーツで男子に勝てなくなってきたことへの葛藤や、家庭環境での抑圧など生々しい問題が出てくるので読んでいて妙に身に詰まされます。メインキャラが持つしゅごキャラも、彼女たちの隠された本質に迫ってくるので理解した時の没入感は半端なかったですね。(個人的にはクールな真城りまのしゅごキャラ・クスクスがピエロのビジュアルである理由を知った時に何とも言えない苦々しさを覚えたり)

 子どもだけでなく大人も夢を諦めざるを得なかったり、現実的な問題のために多くを切り捨ててしまったりと現実に打ちのめされているので大人の読者ほど胸が苦しくなること必至だったかと思います。それだけに主人公の日奈森あむが時に叱咤し時に激励を送ったりと、自分も迷いながら人々を助けていく過程にほっこりします。中でも「“優しさ”や“楽しい思い出”はおやつと一緒」「そればかりだと甘やかされて太っちゃうけど、ココロが大きく強くなるためには必要な栄養」という言葉は読んだ時胸打たれましたね。なりたい自分を見つけられずにいる子どもにやりたかったことを見失ってしまった大人。それぞれのアイデンティティ確立の力になってくれる夢に溢れたストーリーは、個人的にも大いに元気付けられるものでもありました

 そして続編である『ジュエルジョーカー』ですが、中学生新旧と共に新たな学園に転向したあむたちのストーリーとしてより現代的な問題に切り込んでいたのが印象的。前作当時はガラケーだったのに自然とスマホが使われているのはともかく、「借り物の価値観」に囚われている子どもたちの描写に焦燥感を覚えました。そもそも舞台の学園でたまごを生徒に配布し、出てきたしゅごキャラをアタリハズレで判断する光景が異様でしたね。さながらソシャゲのガチャのごとく、アイデンティティであるしゅごキャラを道具として扱うので言いようのない憤りも湧いてきます。そんな与えられたキャラに囚われている生徒たちの問題をどう解決するのかにも、注目していく所存です。

 それはそれとして本筋のテーマ以外で、本作で気に入っているポイントとして主人公以外のCP要素も挙げておきたいところ。あむには唯世&イクトという相手がいますが、仲間たちそれぞれも番外編にて結ばれていくのでその様子にニヤリときました。中でもほしな歌唄と相馬空海のエピソードは最高の一言。本編でも度々絡みがあった2人なので、付き合っていく過程も自然で素敵なモノに仕上がっていましたね。なぎひこ(なでしこ)で女装男子の良さに目覚めた記憶があるのですが、こうしたサイドキャラのエピソードもこの作品で学んだのだと再認識したところです

 

 

ボールパークでつかまえて!

 

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 上の『こづかい万歳』と同じくモーニングで連載中の作品。今年の春にアニメ化された1作で、当ブログでも2025年春アニメ簡易感想にて毎話取り上げていました。ギャルな売り子とのラブコメ要素から始まったものの、次第に球場で働く人たちや観客たち全体を描いていく群像劇となっていく過程には大いにハマりましたね。そのためアニメ放送中に須賀達郎氏原作の漫画の方もチェックしていきましたが、結果アニメ化範囲以外も見どころの多い日常コメディ漫画として楽しめました

 

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↑アニメ最終回の感想は上の記事を参照。

 

 アニメにならなかったエピソードに関しても異様にバラエティ豊かで、対戦チーム所縁の食品をバランスよく食べる審判やグラウンド整備のプロ、飲み屋でテレビ観戦するおじさんたちなど印象深い登場人物ばかり。(中でも後者は「球場に来なくても楽しめる野球の良さ」についてを描いているのが素敵でしたね)何より彼らの多くが野球に対する情熱や愛などを持っており、試合に臨む選手たちへの真摯な想いが伝わってくるのが見事でした。野球の楽しみ方についても多様な在り方を綴っており、どんな形であれ気楽にかつ真剣でいられる空間の心地よさが伝わってきます

 またアニメのその先のエピソードを読んでいる途中ですが、ザワザワさせられる展開が多くなりより物語に深みが出てきたのも見逃せません。松戸監督の解任後新たにモーターサンズの監督になった桐谷さんの、真面目故に冗談が通じなさそうな雰囲気は何とも言えない緊張感を抱いてしまいます。新しい監督と選手の軋轢も生まれなさそうで……といった様子にハラハラさせられっぱなしです。さらには元選手の登場と共に現選手をネガキャンする動画も出てくるなど、波乱の要素もかなり見られます。

 ただ例によって本作に明確な悪人はおらず、それぞれの背景もしっかり描いている点を忘れてはいけません。上述の不穏な要素も何かしらの理由が存在しており、単なる不快なポイントとして終わらせないことに感激せずにはいられなかったです。特に栗原元選手のエピソードの顛末は感動もので、燻ぶっていた心を1人の少年の言葉が解きほぐしていく瞬間に内心ボロボロ泣いてしまいました。モーターサンズが決して強豪チームではないからこそのドラマこそ本作の真骨頂だと、アニメに続いて再確認させてくれる素敵な原作でしたね。

 

 

 私事ですが最近ではアニメ化作品を視聴して、そこから原作もチェックするという過程が多くなってきた気がします。ただ結果色々新しいことを知ることが出来るので、この行動自体は割と悪くないと思っていますね。この作品はどういったテイストなのか、アニメと原作でどう違うのかを調べて楽しむ姿勢も見に付いていると捉えるべきでしょうか。そういった方法で作品を味わうのもまた一興です。

 

 

  ではまた、次の機会に。