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ウルトラマンオメガ 第5話「ミコとミコト」感想

大切なあなたを想う

ミコトがミコを騙しているかもと疑った人はちゃんとごめんなさいしようね!ごめんなさい!!!

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  • 少女は怪獣のために 怪獣は少女のために

 ソラトの「はじめてのおつかい」から始まったオメガ5話。コウセイの代わりに田舎町に荷物を届けに来た中、そこで暮らす少女「ニシキ・ミコ」との不思議な体験を重ねていくエピソードが展開されました。その結果少女と怪獣の友情が描かれたのですが……辛い育てた怪獣の力で疲弊していく少女と、彼女の身を案じ自らを犠牲にした怪獣。何とも救いのない話を目の当たりにして、唸りつつも意気消沈してしまった次第です。

 何と言ってもミコもミコトも互いを想い合っているのが切なかったですね。最初こそミコを利用しているのではないかとミコトに警戒した(大体『ガメラ3』のイリスのせい)のですが、優しい目つきと挙動から本当にミコのことを慕っているのが読み取れました。突然暴れ出すシーンも、敢えてソラトたちに自分を倒させるつもりだったであろうことが伝わってきます。建物に被害を出さなかったことや、オメガに斬られる瞬間口を閉じる動作には思わず涙が溢れてきました。ここまで優しい怪獣なのがわかるだけにやるせない気持ちで溢れてきます

 そしてミコの物語としても秀逸で、ミコトとの出会いと別れを経験して少しだけ前を向くストーリーにウルっときました。母を失い叔母のササコさんとも打ち解けられなかった中、ミコトとの出会いは非常に大きなモノだったのでしょう。それだけに自分の命を省みずミコトと添い遂げようとした際はハラハラしましたが、その過程でササコさんに大切にされているとも気付けたのかもしれません。中でもラストにササコさんと白髪を見せ合うシーンは彼女と打ち解けた証に加え、白髪をミコトとの思い出として受け止めたのだろうといった考えが浮かんできましたね。

 また登場人物たちの視点の違いが興味深い回でもありました。ミコトを優先して周りが見えていなかったミコはもちろんのこと、そんな彼女のために体を張ったササコさんなどそれぞれが誰かを思い遣っていたことが感じ取れます。それはオメガの援護のためにレキネスを召喚したコウセイも同様で、それが結果的に視聴者にとってはもどかしくなったのも面白かったですね。(レキネスがミコトを攻撃するシーンはナイスアシストだけどあの子を傷つけないでぇ~、とか思ってしまったり)人によって見えているものが違う当たり前を、的確に表現した点においてもこのエピソードに感心させられるばかりです

 

 

  • 哀しき宿命に抗いし友愛の白蛇

 ミコ少女と山奥で出会い、彼女に育てられた大切な友達・ミコトこと「伝説蛇獣 オオヘビヌシノミコト」。名前はその地域に伝えられている神「大蛇主命」から来ており、シリーズで定期的に登場する伝承上の怪獣の系統であることがわかります。その見た目はまさしく大きな白い蛇といったところで、頭部の小さなツノや耳元のヒダはさながら竜のよう。脱皮を繰り返して大きくなっていく特徴も蛇に似ていますが、一晩で人間大から全長100mに迫るほどになる成長スピードはミコトがただの蛇ではないことを物語っていました。(あと巳年である2025年に白蛇*1の怪獣を出すのは何ともオシャレですね

  鉄などの金属類を主食としており屑鉄などを口で食す特殊な生態をしていますが、問題は周囲の成分の鉄分を吸収してしまう能力。どうやら相手の血中の鉄分を光の粒子に変えているようで、そうして奪われた人は目まいや立ち眩みを覚えてしまうほど。髪の色素が抜け落ち白髪が出来る光景からは、最悪鉄分不足で死に至ることが容易に想像出来ます。しかもミコトは能力を制御出来ていないようで、当人が望まなくても勝手に発動してしまうのが非常に厄介です。ミコト自身は心優しかっただけに、この力だけで人間に害となってしまうのは悲しい話です

 そうしてオメガに襲い掛かってきた際には鋭い尻尾の先での刺突や嚙みつき、長い体を活かした締め上げと実に蛇らしい攻撃を繰り出してきました。ただ上述のミコトに関する考察を踏まえると、そこまで本気ではなかったのではないかと読み取れます。オメガがさほどダメージを受けていない様子も見られましたし、ミコトはあくまで「倒されるために」攻撃していたのかもしれません。もしそうだとすると健気でとことん悲しくなってきますね……

 本筋とはあまり関係のない余談ですが、ミコトの動きは全てパペット操演かCGによって描かれているのが今回の大きな見どころ。独特のビジュアルのため着ぐるみにして動かすのは難しいのは明白として、今の時代にここまでヌルヌルと動かす操演が見られたのは嬉しかったですね。昨年公開された故・村瀬継蔵*2氏の映画『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』にてヤマタノオロチの見事な操演に魅了された身としては、テレビで同じように蛇の怪獣の操演に感無量の一言です。

 

 

  • 腹ペコ宇宙人は誰かを想い……

今回は他にもソラトのコミュ力の高さが印象的で、ヤマさんなる地元民と速攻で仲良くなってヒッチハイクしてもらうシーンに吹き出しましてしまいました。ミコの叔母のササコさんともすぐに打ち解け一晩泊めてもらうことになりましたし、周りが親切なのを差し引いてもソラトの遠慮のない性格が活かされているようでほっこりしますね。(その一方で野菜が好きかどうか聞かれて嫌そうな顔をしているのがここすきポイント)

 そんなソラトのコミュ力でミコ&ミコトと通じ合っていく過程が何とも素敵でした。最初は警戒されていたものの、ミコト用に屑鉄を持ってきてあげるシーンで一気に打ち解けていくのは納得の光景だったと思います。「腹が減るってのはヤなもんだ」といったセリフも、ここまで描かれていたソラトの腹減りキャラも相まって説得力が違いましたね。マイペースな面ばかりが目立っている感じがしますが、こうした配慮が出来るのもソラトの魅力であることが何となくわかります。

 そうした相手を想う気持ちが、オメガに変身してからのミコトとの戦闘でも見られたのが胸熱でもあり切なかったです。いつものようにオメガスコープをするかと思いきや途中で止めるなど、無言ながらミコトと戦うつもりがないことが丸わかりな構図に胸が締め付けられました。極めつけはミコトをオメガスラッガーで斬るシーンで、目元が腕とスラッガーで隠されている演出に膝を打ちましたね。ミコトの真意に気付いたうえで介錯した、彼の胸中は察するに余りあります。人並みの情緒を手に入れていったソラトにとって、ミコトとの思い出は忘れられないものとなったことでしょう

 

 

 さて次回の怪獣は山奥に出現する模様。しかし突然死んでしまい、その後同種の怪獣が街へと降っていく予測不能の事態に発展するとのことです。何故片方の怪獣は死んでしまったのか?もう片方は何を探しているのか?謎に満ちた怪獣の行動に色々想像を膨らませてしまいます。そしてそれらの問題に対して、アユムが学者としての意地と度胸を魅せてくれるであろうエピソードとして期待したいです。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:ちなみに白蛇は日本各地に様々な伝承を残す「縁起物」として有名であり、諏訪神社では神使としても扱われている。

*2:美術造形師。『大怪獣バラン』から始まり『モスラ』『マタンゴ』『ゴジラVSキングギドラ』『仮面ライダー』『ウルトラマンA』など数多くの特撮作品で怪獣・メカニックの造形を手掛けてきた特撮クリエイター業界における“レジェンド”である。(特撮以外にも太陽の塔内部の「生命の木」制作にも関わっている)