その信頼は偏見を穿つ
特撮世界の配信者、8割方ロクなヤツじゃない説
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- “風邪”を抱えて走るヒーロー
今回のオメガは主人公たちがいきなり怪獣・ゴモラに苦戦するシーンから始まり、戦闘後のソラトの様子にハラハラさせられることとなりました。あの腹減り宇宙人が「空腹ではないのにしんどい」と訴える状況と、歴代ウルトラマンの衰弱シーンを彷彿とさせる展開は過去作を視聴している人ほど危機感を覚えるものだったかと思います。こういう終盤のあるあるを序盤の内に持ってくるのは新鮮だなぁ、と思いつつソラトへの心配が募った次第です。
ちょっとだけテンションが高くなっていたり妙に生々しい風邪ひきソラトの描写ですが、コウセイに止められていたのに結局戦いに向かうので余計にギョッとしましたね。ただその行動の裏にコウセイへの信頼が描かれていたことから、何だかんだで胸打たれました。例え上手くいかなくてもコウセイなら何とかしてくれるだろう、といった考えで戦っていたのかと思うと、ソラトなりの誠意というものが何となく伝わってきますね。自分の身を省みない点には不安を覚えるものの、友達を信じる意気込みは買いたいところです。
また細かい場面でソラトの真面目さを見て取れたのが良かったですね。アユムに作ってもらったお粥の味の薄さに文句を言いながらも、ゴモラの元に向かう前にキチンと食べていく律義さには少なからず感心しました。他にもゴモラの出現した場所を地図で調べたりと、人間社会への適応スピードの高さも印象的。少しずつですが人間として日々に馴染んできている、ソラトの成長ぶりには思わず親戚のような感慨深さを覚えます。
- 友を信じて“風”を切る
上述の通りソラトが風邪でダウンしていたため、今回はほぼコウセイが単身頑張っていたのが大きな見どころとなっていました。彼の看病をするだけでなく、レキネスが反応した謎の隕石の回収までもほぼ1人と非常に大変そうなのが伝わってきましたね。(後述のオオカミ君のせいで追い回されることになったし)以前からソラトという弟に手を焼くお兄ちゃんというイメージがありましたが、この一件はひと際コウセイの苦労人ぶりに微笑ましさと同情を覚える内容だったと思います。
そんなコウセイが苦労をものともせず、ソラトへの信頼を口にしたのが最高に熱かったです。オメガを侵略者だと吹聴するオオカミ君に真っ向から反論し、彼の頑張りを根拠に信じる姿には素直に感動しました。劇中の「何者かわかんねえけど、俺はあいつを信じる!!」は、まさにソラトの戦いを間近で見守ってきたコウセイだからこそ言える言葉でしょう。理解出来ないことは多くとも、風評に流されることなく1本芯の通ったところを見せてくれる登場人物はどんな時もカッコいいもの。改めてコウセイに好感を抱きつつ、カタルシス満載の後半に大満足の一言です。
- 地底の王者は硬き双角を震わせる
今回登場した「古代怪獣 ゴモラ」は初代『ウルトラマン』にて登場した古参怪獣の1体。岩のようにゴツゴツした表皮に三日月型のツノを持つ、地底怪獣の代表格です。後年の作品でも度々出番があり、ファンの間では知らぬ者はいないほどの知名度を誇っているかと思われます。中でも『大怪獣バトル』や『ウルトラマンX』では味方ポジションで活躍しているため、アイドル怪獣のイメージも強め。それでいて本作のように敵怪獣として出てくることも多く、その様々な役どころをこなす姿から怪獣界の名俳優と言えるでしょう。
さて本作のゴモラは冒頭からオメガとレキネスを追い詰めていた(オメガの方は本調子ではなかったのですが)のがまず印象に残ります。特にレキネスの念力を持ち前の怪力だけで打破し、そのまま撃破した時は衝撃を受けましたね。突進や尻尾ビンタなど体を使った攻撃から、代名詞である必殺技「超振動波」による遠距離攻撃も可能とパワフルが故のわかりやすい強さが際立っていました。個人的には尻尾を切られるというお決まりのやられシーンと、その尻尾を抱きかかえるゴモラのいじらしさがここすきポイント。
また劇中で「ゴモラは宇宙から来たのかもしれない」といった説が挙がっていたのが面白かったですね。落下した火球もとい隕石の痕跡が見当たらず、落下後に出現したことから可能性の1つとして考えられていたとのこと。ファンにとってはゴモラ=地底のイメージが強いだけに、怪獣の目撃例が少ない本作の世界ならではの柔軟な発想には舌を巻くばかりです。結局隕石の正体はトライガロンでありゴモラは落下の衝撃で目覚めただけでしたが、解釈の幅を広げてくれる事例として個人的にも興味深い描写でした。
- 星の信頼に応え、鋼の虎は大地を駆ける
突如飛来した三日月型の隕石がコウセイの熱い想いに反応して覚醒した姿「メテオカイジュウ トライガロン」。レキネスに続く本作の味方怪獣その2です。レキネスとは打って変わって四足歩行の猛獣のような怪獣であり、機械的なボディからは『ゾイド』のようなメカニカルな印象を受けます。一方で首の周りに白い毛が生えており、そこだけ生物的なのが面白いですね。猛獣のような見た目とレキネスの存在からして、モチーフは青龍と対を為す「白虎」でしょうか。(見た目は黒いけど)
重厚そうなシルエットに反して戦闘では凄まじい機動力を発揮。目覚めた矢先にコウセイを乗せて猛然と走り、すぐさまオメガのところに辿り着くスピードには目を見張るものがあります。どうやら鋭いツメや体のトゲのような部分で相手を斬りつけているようで、ゴモラの尻尾を容易く切断するほどの威力を誇っていました。敵の攻撃を避けながら突っ込んでいき、切り裂き体当たりするバトルスタイルは中々に攻撃的と言えるでしょう。
それでいて仲間にはどこか人懐っこいのが注目ポイント。コウセイの言うことをしっかり聞く様子はもちろんのこと、尻尾を使ってオメガとハイタッチするシーンには思わず萌えを感じました。武骨ながら動きの一つ一つに愛嬌がありますし、レキネスとはまた違った味方怪獣としての魅力が感じられます。こちらもオメガの頼もしい仲間としての活躍に期待大です。
- 滑稽なるウソツキの末路
さてこの回のもう1つの特徴として触れておくべきなのがゲストキャラ「オオカミ君」の存在。初っ端からオメガのフェイク動画でデマを流す迷惑動画配信者として描かれており、加えて日常での横柄な態度に早くも不快感を覚えました。オメガを侵略者だと言い放つのも再生数目的であり、本作始まって以来のシンプルに嫌なヤツとして早くも印象付けてきましたね。コウセイを追い回すシーンといい、たまに登場する人間の醜い部分を担うキャラとして申し分なかったです。(そんなヤツの言うことを聞いてしまう市民も流されやすすぎる……)
それだけに上述のコウセイの言葉とオメガ&トライガロンの活躍によって、周囲からの評価がひっくり返るシーンは痛快ながらも残酷でしたね。自分の言うことに誰1人として耳を貸さず、動画のコメントも辛辣な批判ばかりに変貌する……目立ちたいがために嘘をつき続けてきた、まさしく元ネタであろう「オオカミ少年」と同じ結果を迎えていました。加えてそのまま物語からフェードアウトする味気なさから、炎上して赤っ恥をかいた動画配信者の末路としても秀逸だったと思います。
それはそれとして余談ですが、近年の特撮作品に登場する動画配信者のタチの悪さは中々のモノですね。しかもそうした配信者の言葉を信じて流される人々といい、妙な生々しさに溢れる描写に磨きがかかっているように感じました。やはりあることないことを言われて、制作陣が迷惑をこうむった経験から来ているのかな?といった邪推をしてしまうほど、配信者への憤りが見えてきそうでした。特撮世界の動画配信者はみんなカブトダンシを見習おう!
そして次回はまさかのホラー回?とある山に謎の超常現象が頻発し、調査に乗り出したとあるオカルトサークルを中心に物語が展開されていくとのことです。土地の伝承に深く関わる怪獣は何かと登場しますし、この回もその類のテイストになるのでしょう。ただ気になるのは登場する怪獣は宇宙出身であるはずのモンスアーガーのようで……?このチョイスがどのような化学反応を起こすのか非常に気になりますね。
ではまた、次の機会に。
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