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たべっ子どうぶつ THE MOVIE 感想

その笑顔で 矛盾さえ きっと変わる

武器なし!策なし!意気地なし!な彼らの大冒険をここに

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 お菓子会社「ギンビス」の代表商品である「たべっ子どうぶつ」。動物の形とその英語名が刻印されたクッキーを一度は口にしたことがある人は多いだろうと思われます。かくいう僕も幼い頃に何度か食べた記憶があり、多くの人が知る食べて美味しい・見て楽しいお菓子としてのイメージが強かったです。

 それだけにそんなたべっ子どうぶつの映画化の話にはびっくり。たべっ子どうぶつの映画化とは何ぞや?と映画情報が告知された時から割と不思議で仕方ありませんでした。どうやらお菓子のパッケージに描かれた可愛い動物たちのキャラクターを主役としているらしいのですが、見た目以外何も知らないのでそれでストーリー映画が出来上がるのか全く未知数だったと言えます。

 そうした疑問を抱えたまま映画館に足を運んだ結果、意外なほど面白い作品として興奮させられました。テンポよく進み、さらにお菓子を絡めた設定と伏線を見事に回収していくストーリーは見事の一言。たべっ子どうぶつとはどういうものなのか、個人的に新たな見地を切り拓けましたね。公開から大分経ってしまいましたが、今回は映画たべっ子どうぶつの感想を書いていきたいと思います

 


※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • おかしーずの世界へようこそ

 というわけでまずは本作の世界観についてですが、食べられたお菓子のキャラクターが「オカシーズ」として実体化する情報が早々に明かされたのですぐに受け止めることが出来ました。お菓子そのものではなくイメージキャラクターというのは不思議ですが、「たべっ子どうぶつが実在する世界」を成立させるための設定としては悪くなかったと思います。何よりこれらの説明が序盤の内に最低限説明されるのみで十分に理解出来るのが秀逸。おかげですんなりと本作の世界に浸れることが出来た次第です。

 またたべっ子どうぶつメインということでギンビスのお菓子のみ出てくるかと思いきや、他社のお菓子やキャラクターも続々登場するサプライズまでありました。うまい棒の「うまえもん」によっちゃんいかの「よっちゃん」など、これまた見覚えのある面々ばかりでわずかな出番ながら鮮烈な印象を残していったと思います。(特にCV速水奨さんの「ポリンキーズ」はやたら出番があって面白かったですね)無論予告でも映っていた「アスパラガス」など、ギンビスの普通のお菓子も出てくるのでそれらを知っているほどニヤリとさせられました。

 またたべっ子どうぶつのメンバーそれぞれのキャラが立っており、キャラ数が多いにも関わらず大体把握出来る塩梅にも感心しました。リーダーの「らいおんくん」が自尊心が激しいばかりに最近人気の「ぺがさすちゃん」に嫉妬するなど、どのキャラがどういうものを抱えているのかがしっかり描かれていたと思います。(何だかんだで全員目立つ場面があり、影が薄いキャラはいなかったと思います)その後反省したり持ち直したりとそれぞれの成長も見せてくれるので、観終わる頃にはすっかり彼らへの愛着を抱くことになりましたね。単純なギンビス製品の販促映画で留まらない、誰もが知るお菓子の世界を作り上げようという気概を感じさせてくれる要素満載だったと言えます。

 

 

  • 収束していくクライマックスの衝撃

 本作のストーリーは「キングゴットン」率いるわたあめ軍団の支配からオカシーズや人々を解放するために戦う……というのが主な大筋。事件発生から逃亡、ぺがさすちゃんを助け出すため作戦を立てるといった流れがテンポよく進んでいくので、あまりダレることなく見続けることが出来ました。(隠れ家でのいざこざは若干グダグダしている印象でしたが、後述の伏線回収を踏まえると必要な描写だったことがわかります)ちなみにそこそこ緊迫感がありながらも、多少のコミカルシーンを挟むので結構クスっとしましたね

 展開としてはある程度そうなるだろうという予想の範疇でしたがそれが決して退屈ではなく、らいおんくんたちの軽快なやり取りなどで飽きさせない作りになっていたのも好印象。子ども向けの冒険映画のお約束をしっかりと守りつつ、大人が観てもあまり既視感を感じさせないのは地味に難しいことだと思います。スイーツランド城の激闘まではこのように驚きは少ないものの、だからこそ安定感のある作風に笑いつつ安心感を覚えることが出来たのが大きかったです

 そして最大の見どころは終盤。協力者である「マッカロン教授」が全ての黒幕だと判明し、わたあめ軍団の対抗策だった「いただきます」を逆に利用されるなど一転して予想外の展開のオンパレードでした。さらに絶望感溢れる状況からの逆転劇、スマホで教授のいただきます発言をリアルタイム配信するといった作戦も意外性抜群で膝を打ちましたね。他にもぺがさすちゃんの秘密などもクライマックスで明らかになり、いずれも唐突なモノではなくここまで匂わせる描写が何度も挟まっているので観ていてかなりスッキリさせられます。まさに積み重ねてきた伏線・布石をとても丁寧に昇華させていたと言えるでしょう

 

 

  • お菓子だからこそ出来ること

 世界観、ストーリーときて、次に語りたいのが本作における「お菓子」について。劇中でたべっ子どうぶつはおかしーずという存在にしてお菓子の具現化としても描かれており、それが物語に大きな意味をもたらしていました。というのも上にもある通り戦闘能力皆無で可愛いだけが取り柄のたべっ子どうぶつですが、それを単なる欠点で終わらせず魅力として描いてみせたのが良かったです。城の兵士たちとのバトルはまさにその体現で、ケンカでは絶対に歯が立たない分可愛さで骨抜きにして倒す戦法は彼らの真価として大いに納得させられます。

 また上述のマッカロン教授に過去を語らせることで、お菓子がもたらす「幸せ」について触れていた点も見逃せません。教授のお菓子を食べても幸せになることはなく、世の中の全員を自分と同じ不幸を味わわせることに固執する哀れな悪役として完成度はかなりのもの。同時にぺがさすちゃんを快く思っていないらいおんくんを序盤から描くことで、他人を妬む姿勢や蹴落とすことの恐ろしさが伝わってきました。他人から奪うだけでは自分は真に幸せにはなれない、という理屈は大人になっても考えさせられるものがありますね。

 それだけに終盤わたあめの「ゴッチャン」を助けたり、ぺがさすちゃんに寄りそうらいおんくんの活躍から「他者と分かち合うことで得られる幸せ」という答えが読み取れます。お菓子は誰かを傷付けたりするものではない、みんなと一緒に食べて笑顔と幸せを分かち合うものだ……最後まで安易な暴力を取らなかったたべっ子どうぶつたちの姿からは、そうしたメッセージが一貫していました。(同じお菓子モチーフの作品として『仮面ライダーガヴ』『カシバトル』などが存在しますが、このお菓子と幸せの定義はどの作品もある程度似通っているのが個人的にここすきポイント

 他にもたべっ子どうぶつの特徴を活かした復活劇もちょっとした見どころですね。人間の少女「ペロ」ちゃんが教授に潰されたたべっ子どうぶつ(お菓子の状態)を元に戻す際、さり気なく英語を頼りにしている様子にグッときました。モチーフの動物の形をしているだけでなく、その動物の英名も書かれている知育菓子要素ならではです。しかもペロちゃんが書かれている英語を教えてもらい勉強するシーンも事前に描かれていたので自然と受け入れることが出来たのも素敵。総じて最初から最後まで、お菓子だからこそ出来る物語をキチンと成り立たせていたことに脱帽するばかりです。

 

 

 さて本作の登場キャラクターはどれも魅力的で印象に残っていますが、敢えてお気に入りを挙げるとすればまず「ぞうくん」でしょうか。たべっ子どうぶつの数少ない頭脳派として冷静なまとめ役から作戦立案までこなす柔軟な活躍ぶりに惚れ惚れとしました。何よりらいおんくんの数少ない理解者という点が素晴らしく、序盤空回りばかりしている彼をフォローすることで主人公としての面子を守ってくれたと言えます。他にもあざとい「ねこちゃん」や渋い声で大活躍する「わにくん」も強烈ですが、個人的にはぞうくんを推したいところ

 たべっ子どうぶつ以外だとやはりマッカロン教授が印象的。途中まで不愛想だけど優しい人というイメージだった中、本性を表してからの豹変ぶりには目を疑いました。(大塚明夫さんの怪演ぶりが抜群に発揮されていましたね)そして厳しい家庭環境で育ちまともな子供時代を送れなかったばかりに、笑っている人たちを疎ましく思うようになってしまった哀しい存在として、本作で最大のインパクトを残してくれたと思います。その分ゴッチャンに助けられた後の更生していく様子をEDで見られて一安心しましたね。本作の終盤を盛り上げてくれた名悪役にして、幸せについて考えさせてくれる絶妙なキャラでした

 

 

 というわけでたべっ子どうぶつの感想でした。いやぁ基本トンチキに話が進む中、物語の構成そのものは真っ当で最後に感動させられるので本当に驚きましたね。それでいて『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』とも異なるテイストになっているため、それらに慣れている側にも新鮮さが感じられて非常に面白かったです。そうした要素もあって、久々に子どもの純真さを取り戻して観られたと思っています。

 ともかくもう既に3ヶ月ほど経過してしまいましたが、何とか感想を書き上げることが出来てホッとしています。(ガヴとカシバトルが終わるまでに感想書きたいな~と思っていたのですが、カシバトルの方が6月に連載終了した色々とショックを受けたのはまた別の話)たべっ子どうぶつのイメージに新たな見地をもたらしてくれたという意味でも、非常に興味深い作品でしたね

 

 

 ではまた、次の機会に。