きっと未来の幸せは
分け合えば膨らむ
誰もが得られる未来を信じて、今日も彼らは変わり続ける。
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- 変わった者・変われぬ者の切ない最終決戦
ついに始まったガヴ最終回は、ショウマVSランゴの一騎打ちから始まりました。遊園地を舞台に縦横無尽に繰り広げられるバトル、双方の必死な様子が伝わる戦いぶりに手に汗握ることとなりましたね。何といっても最終決戦ということもあって、ガヴのこれまでのフォームが総登場していく演出はシンプルながらも燃えました。マスター・オーバーからブリザードソルベ、ケーキングと獲得順にさかのぼり、最後には基本フォームであるポッピングミで決める流れはオタクほど刺さるモノがあったと思います。
正直言うと決着に関してはかなりあっさり目だったのが気になりました。ポッピングミの必殺技で決める文脈そのものは熱い一方、しのぎを削り合ったとはいえランゴがキック一発で終わってしまうのは若干拍子抜けといったところ。巨大な竜の翼を披露したのに対して、あの強すぎるオートガードを一度も使わなかったのもどこか不自然でしたね。(一度倒された結果使えなくなったとかありそうですが)個人的にはこの2人の対決は36話での激闘が最高だっただけに、今回それを超えられなかったのは残念なポイントです。
ただそれは戦闘シーンとしての話。ストマック家との決着としては、目を見張るものがいくつもありました。
「ランゴ兄さん……最後にもう一度だけ聞く」
「どうする?二度と人間に関わらないか、それとも!」
「この場で俺に倒されるか!!」
まず戦う直前の問答や、クライマックスでのやり取りなどからショウマとランゴそれぞれの心情が窺い知れたのが大きな見どころでした。父親に多くを歪められ、その過去に抗ってきた2人。最大の違いは多くの人との交流を経て変われたショウマと、孤高を気取り続けていった結果間違いに気付けなかったランゴの差でしょうか。劇中でショウマが「ストマック社ってなに?」と問いかけていたように、親が遺した負の遺産(ストマック社)に執着したか、あるいは振り払ったかどうかが彼らの運命を分けたのでしょう。
またショウマの言葉に対し、ランゴがかつてないほど狼狽していたのも見逃せません。これまで威厳のある風に振る舞ってきたランゴですが、内心では不安や焦燥を抱えていたのがこの描写から読み取れます。家の過ちを正すことなく受け継いでしまったがために、笑うことも出来ずに心を閉ざしてきたのがランゴ・ストマックの本質だったのかもしれません。それだけに決着後、ランゴが爆散した場所にグミが置かれていたシーンにウルっときましたね。ランゴも何かが違えば自分と一緒に歩む道があったのだろう*1……そうした想いや家族としての情が感じられる、ショウマの優しさが沁みる最後でした。
- 復讐の果てに守れたのは……
ショウマVSランゴと同じくらいの熱量が籠っていたのが絆斗とジープ&リゼルコンビの対決。こちらは復讐に燃える2人に対し、絆斗が戦うことを止める提案をしたのが印象的でしたね。彼らの心情を理解したうえで復讐の連鎖を断ち切ろうとする様子は、自分の憎しみと向き合い乗り越えた絆斗だからこそと言えます。また前回絆斗とジープの因縁が薄いことに苦言を呈しましたが、今思えば深くない関係がこの説得に繋がったと取れなくもありません。最後にそんな選択が取れる絆斗に、改めて感心させられるばかりです。
結局戦闘は始まってしまったのですが、ジープがリゼルを庇って死亡する展開には度肝を抜かれましたね。彼の末路については色々想像してきましたが、これは予想出来なかったです。ただ大切な人となったリゼルを助けたことで、あの時のシータの気持ちを理解出来たのは敵ながら天晴な最期だったと思います。自分だけの復讐に走ったものの、最後の最後に他人を想ってその身を捧げられた。その点では、ジープの死に様もまた立派な「仮面ライダー」だったのかもしれません。(そして1人残されたリゼルが今後どうやって生きていくのか、それはVシネの方で語られるらしいのでそちらを待ちたいと思います。)
- 気だるげクラゲは戻れない
ショウマ、絆斗と来て最後はラキア。こちらはまずエージェント戦がカットされて、何事もなかったこのように「扉」の前まで来ていたところで内心吹き出してしまいました。前回あれだけ死亡フラグっぽいのを乱立させておいて、特にイベントもなく勝っていることにはズッコケずにはいられません。その後扉を破壊した際も、落下して消息を絶つ……と思いきやエピローグで普通に生きていることにも変な笑いが出てきます。生き残ってくれたこと自体は嬉しいのですが、それはそれとして前回までの不安を返しやがれこの野郎!という気持ちもありますねハイ。
そんなラキアは生存エンドで終わったものの、人間界とグラニュート界が閉ざされたことでショウマたちとの再会は果たせなかったのは寂しいところ。(というかこの後普通に炭鉱夫に戻れたのでしょうか彼)肉親のコメルもいない以上、プリンテゴチゾウ以外誰も知り合いがいない世界で生きていくことになるのでしょうか。間違いを犯しながらも変わることが出来たラキアの落としどころとして納得がいくものである一方で、少々寂しくなってしまいます。ラキアに関しては作品の切ない部分を一身に引き受けていった印象を受けましたね。
- 人間とグラニュート、どちらの幸せも信じて
そして最後は約3か月後の時間経過と共に、たっぷりとエピローグを用意してくれたのがこの最終回の嬉しいところ。激闘を終えた主人公たちの「その後」をしっかり見せてくれることで、ファンとしても安心させられるので何だかんだほっこりしますね。ところでしれっと登場した「人助けするとユーフォーに攻撃される」次回作主人公なんですが……
まずショウマが闇菓子ならぬ「光菓子」を作っている話が素敵でしたね。ネーミングのせいで光医者を思い出した件人間だけでなく取り残されたグラニュートも美味しく食べられるお菓子を作って、2種族の共存を目指すというのはまさにショウマらしい優しい目標と言えます。過ちを犯しても変わることで幸せを掴めるのは劇中で何度も触れられてきたこと。それを踏まえると、グラニュートの更生・人間との共生という「おいしい未来」を目指すラストは本作に相応しいモノなのかもしれません。*2
そして以前から気がかりだった優さんとの件も思った以上に穏便に済んで一安心。ショウマの境遇を知ったことで、優さんが密かに彼の母親の正体に気付く流れには膝を打ちました。しかもショウマにそのことを追求せず、最後までお菓子屋の店主として接してくれる態度に胸打たれます。下手に真相を明かすのではなく、その想いを秘めたまま相手を思い遣っていく優さんはまさしく本作のメインキャラの1人でした。エピローグのショウマを家族のように、それでいて普段通りに見守ってくれる優さんの選択にほろりときた次第です。
というわけでガヴ最終回の感想でした。前回同様、順当に順当を重ねながらしっとりと終わりましたね。物語として納得のいくポイントが多く、ほろ苦い要素を引っ提げながらも人情と優しさで乗り越えていく作風として最後まで一貫していました。その反面予定調和の範疇を超えられず盛り上がるポイントがドンドン少なくなっていくことに不満を覚えるものの、キャラクターのやり取りなどを安定して楽しめるという点ではまさしく歴代ライダーでも屈指の完成度だったと思います。
何より「幸せ」の在り方についてかなり真摯に描かれていたのが最も評価したい要素ですね。壮絶な境遇を抱える主人公たちが人々のために戦い、その過程で自分の居場所を獲得していく様子はまさしく幸せを掴むための物語だったと読み取れます。一方で悪役が自身のために他者を利用し続け、没落していく連鎖も並行して見せていったのも注目ポイント。誰かの傷付けて孤独に生きても救われることはない……他者を思い遣り、喜びを分かち合うことで幸せを手に出来る……それを「お菓子を一緒に食べる構図」で描いたことに感心を覚えるばかりです。
(余談ですが『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』『カシバトル』など、お菓子をモチーフとした直近の作品にも同様の描写がある点もここすきポイント。お菓子=幸せの象徴というのは、これらの作品の共通点として大いに主張したいところです)
改めまして、ガヴという作品に対して制作陣に最大限の感謝を。素晴らしい作品を本当にありがとうございました!!
そしてガヴ総評に関しては、例年通り後日投稿する予定。そこで評価点や不満点などをまとめ、作品への自分なりの想いを綴っていくつもりなので、そちらの方も読んでいただければ幸いです。
ではまた、次の機会に。
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…………そして来週からは
さぁ、やろうか。
I'm on it.
──目覚めろ──
*1:夏映画『お菓子の家の侵略者』に登場した平行世界のランゴを踏まえると共闘する道があり得ると改めて感じられることだろう。
*2:余談だが光菓子のビジュアルがマフィンなのは、「OPのお菓子ノートのカットに唯一塗られていない(ショウマが劇中でそのお菓子を食べていない)」からだとか。詳細は「仮面ライダーWEB」(https://www.kamen-rider-official.com/gavv/51/)を参照。
