ウルトラマンオメガ 第11話「グライム 再び」感想

戦うのは何のため

長田さんがカッコいい役をやってて僕も鼻が高いよ（後方理解者面）

[バンダイ(BANDAI)] ウルトラマンオメガ ウルトラ怪獣アドバンス グライム

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• 認められない焦燥と疑問

 冒頭からオメガVS怪獣の戦いが繰り広げられた11話。その戦い自体はすぐに決着したものの、今回はどちらかというとコウセイが焦りや憤りを露にする光景が目に飛び込んできました。ラジオで巨人（オメガ）があまり支持されていない事実に怒り、少しでも手柄を挙げようとするので見ていてハラハラさせられましたね。案の定軽率な行動でソラトたちを危険に晒してしまったので、今回のコウセイのやらかしに心配しつつもやや呆れてしまった次第です。

 ただコウセイの心情に関しては理解が寄せられるものになっていたのが好印象。上述の怒りは頑張っているオメガもといソラトが評価されていないのに不満を覚えているということですし、彼の友人に対する優しさは失われていないことが伝わってきました。同時に自分が役に立っていないことへの焦燥があり、こちらもコウセイの身の上を考えると納得がいきますね。問題は少々考えなしで勇み足になってしまったことなので、ここからコウセイが如何にして挽回していくのかに期待したいところです。とりあえずオメガを支持している人に目を向けた方がいいぞコウセイ！前回のマキ姉とか上の階のナリアキ社長とか！

 そんなコウセイとソラトの会話で「ウルトラマンが戦う理由」を問う流れが出来ていたのも興味深かったです。コウセイは周囲にオメガを認めさせようとしていましたが、ソラトとしては「何か違う」となるのも当然だと思います。見返りを求めて戦うのではなく、困っている人を助けるために動く……ヒーロー作品において基本であり最も重要な動機に繋がっていると言えるでしょう。（劇中のソラトがコウセイやアユムたちを庇うことからも、その捨て身のヒーロー性が強調されていたのがここすきポイント）この戦う理由がコウセイにどのような答えをもたらすのか、そちらも要注目ですね。

• その出現は暴走？それとも逃亡？

 今回冒頭でオメガと戦っていたのは「古代怪獣 リオド」。こちらは昨年の『ウルトラマンアーク』初出で、アーク怪獣の中では初めての再登場を果たしました。背中や頭部に湾曲したツノを生やし、象のように長い鼻を持っているのが特徴的です。また前作では恐ろしい怪物として言い伝えられていましたが、この世界ではそういった伝承は残っていないようです。そしてオメガ相手での戦闘では早々に鼻を結ばれて、オメガスラッガーによって倒されるあっさり目な登場となりましたね。（あとソラトの「普段は大人しい」という評価に思わずえ！？となってしまったり。アークでの凶悪な面が印象に残っているので……）

 さらに本作の第1話で登場した熱線怪獣 グライムも再び出現。今回の個体はアユムたち研究者の間では既に存在が確認されていたらしく、長いこと地中で大人しくしていたのにいきなり地上に出てきたとのことです。リオドもそうですが、突然現れている中でどこか逃げているような節が見られるのが興味深いところ。劇中でもその可能性が仄めかされていましたが、その予感は後述のエルドギメラによって当たることに……ともかく今回のグライムは街などでの被害を出さなかった分、どこか不憫な印象を与えてきたのは何とも言えない味わいでしたね。

• 地底より出でしは、禍々しき捕食者

 そしてグライムを追うかのように地底から現れた「爆進細胞怪獣 エルドギメラ」。冒頭からソラトの視点で存在が察知されていた謎の怪獣です。体型自体はシンプルな2足歩行ですが、両肩がコブのように肥大化しており、頭部もトサカと髪の毛のような触手が生えています。さらに注目すべきは左右非対称のビジュアルで、目は片や三白眼、片や青い瞳孔が開いているのが何とも不気味に感じますね。また良く見ると両足のツメがそれぞれ1本ずつ欠けており（しかも左右で欠けている位置がバラバラ）、それが生活の中で失われたのか元々なかったのかは不明。これらの要素から、他の怪獣にはない不気味さが醸し出されていると言えるでしょう。

 戦闘においては攻撃力と防御力、そのいずれも高い単純な強さが強調されていました。トライガロンをあっという間に倒したほか、グライムの熱線を受けても怯むことなく攻撃してくるフィジカルは目を見張るものがあります。さらに長い尻尾を自在に動かして鞭のようにぶつけたり、相手を締め上げて拘束する技も披露。こちらはオメガを軽々と持ち上げていたことから、本体に負けじとかなりのパワーを誇っているようです。その強靭さ故オメガVSグライムという混戦の中で、ただ1体のみ悠然と立っていたのも納得ですね。

 それ以上に特筆すべきは尻尾の先端、牙の生えた口にような器官で他の怪獣を捕食する能力。劇中では大きく開いてグライムを丸ごと飲み込み、吸収したので初見はかなり度肝を抜かれました。そして捕食した怪獣を取り込み、そのまま自分の体をパワーアップさせるのがエルドギメラ最大の特徴。右肩からグライムのツノが生え、熱線攻撃が使えるようになったのは脅威と言えるでしょう。上述の歪なビジュアルも他の怪獣を取り込んだ結果なのでしょうか……？口からだらんと出た舌と拭うような動作といい、怪獣を喰らう怪獣としてこれ以上ないインパクトを残してくれました。

• 新たなチームと隊長への期待

 また今回はアユムが怪獣対処のチームである「NDF」に出向するシーンもちょっとした見どころとなっていました。こちらは政府によって設立され、別の対怪獣チームとも連携を取っていく予定になるとのことです。長いこと怪獣という未知の存在に翻弄されてきた本作の人類でしたが、ようやく本格的な対策が取られることに思わず興奮を覚えます。これが後にこの世界における怪獣防衛チームの前身になる可能性に期待しつつ、ドローンや麻酔ミサイルによる現実的な装備を堪能していく所存です。

 そんなNDFの隊長として登場した「タイラ・カズヤス」についても触れておきたいところ。今回のアユムとのやり取りを見た限りの印象は冷静な合理主義者、といった感じでしょうか。グライムへの対処を綿密に計画している一方で、アユムたちの生態調査などの情報は無用と言い放つ様子にドキッとしました。あくまで作戦遂行のために必要なものだけを追求し、それ以外はバッサリ切り捨てるスタイルにどこか冷たいイメージが湧いてきてしまいます。

 その一方で「現場に必要なのはキャリアじゃない」「必要なのは能力と熱意」という考えを口にしたのは面白いかったです。肩書きよりも実力を重視しているのは予想通りですが、個人のやる気も評価しているのは好ましいところ。そのため冷徹というわけでもないことが読み取れて、少しだけこの人への好感度も上がってきました。このタイラ隊長が今後活躍したり、アユムと交流を重ねていくのが楽しみになってきましたね。

（余談ですがタイラ隊長を演じている長田成哉さんは『騎士竜戦隊リュウソウジャー』にてナダ／ガイソーグを演じていたことでも有名。個人的にナダは推しキャラの1人であり、同時にナダを見事な演技力で魅せてくれた長田さんのことも応援しているのでタイラ隊長にも期待しています）

 今回は前半のクライマックスということで強敵の出現・オメガの敗北と衝撃展開の連続となりました。しかも告知されている強化形態が出る気配がないため、次回どうやってエルドギメラを倒すのか！？という緊迫感に繋がっているのも良かったですね。ソラトが倒される間際に何かを思い出したような描写も気になりますし、本作の物語が動きつつあることを実感させられる内容だったと言えます。

 というわけで次回はエルドギメラとの戦いが始まる模様。アユムの調査の元、NDFによる一大作戦が決行されるとのことです。正直成功する気がしませんが、決死の思いで頑張っているであろうアユムやタイラ隊長たちのことは素直に応援したくなりますね。

 そして問題はソラトとコウセイについて。前者は構成を巻き込んだことへの後悔から倉庫を飛び出し、後者は今回の失敗から失意の果てに彷徨うようで既にドキドキが止まりません。2人とも早く立ち直ってほしい、また一緒に戦ってほしい……！そうした想いが内心を駆け巡ってきますね。ここまで描かれてきた2人の友情の結果を、物語の前半に解き放ってほしいところです。

 ではまた、次の機会に。