あの日の私に送る
願わくば、心穏やかな終末を
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- 破滅がもたらす喜びに何を想う
汐莉の真実や比名子の絶望、そこからの再起と前回まで怒涛の展開の連続だったわたたべ。その最終回はまさかの女子3人による温泉旅が描かれることとなりました。これまでも何度か遠出するエピソードはありましたが、比名子&汐莉&美胡の3人のみというのはこれが初めて。故にどうなるのかと内心ビクビクしながら視聴したのですが、比較的穏やかな光景が広がって驚かずにはいられなかったです。狐(美胡)VS半魚人(汐莉)のやり取りも、大分こなれた感じで微笑ましさすら覚えてきますね。
そうしてのどかな様子に癒されつつ、汐莉視点で比名子の様子が明らかに変化しているのも伝わってきたのが今回の大きな見どころとなっていました。何より彼女がこの旅行に関して「楽しいなんて思っちゃった」と心情を吐露するシーンは、喜びと切なさが同時に湧いてきましたね。以前お祭りで過呼吸を起こしていた時とは異なる態度は、今度こそ汐莉が食べてくれるという約束を交わしたからでしょうか。死ぬことが出来るとわかった途端に日常に彩りを見出してきたので、比名子の死ありきの生き方に何とも複雑な気持ちを抱かずにはいられなかったです。(汐莉の想いを理解したうえでコレなのでなおさら苦々しくなってきます)
それだけに比名子の一喜一憂に揺らぐ汐莉の姿にも目が離せません。こちらはこちらで幼い頃の比名子の面影を追うことをやめて、今の彼女を少しでも見る決意表明のような口ぶりが印象に残りました。過去に縋っていた自分を見直せたのは成長と言える反面、未来を半ば諦めているのがどうにも心苦しくなってしますね。いずれ終わることが確定した結果、それぞれの心に変化がもたらされたのは何とも皮肉な話です。比名子たちにとって死ぬことは冷たく苦しいことではない、同時にその瞬間のために生きることで得られる喜びもある……わかってはいるものの、美しさとグロテスクさを感じずにはいられない関係性だと思わずにはいられませんでした。
- 世話焼き狐は見守り続ける
比名子と汐莉の湿っぽい関係が胸にモヤッとした感触を残していった中、旅行の発案者である美胡は一貫して明るく振る舞っていました。旅先の温泉街では何かにつけて写真を撮ったり比名子を呼んだりと、例によって親友を楽しませようとしているのが伝わってきましたね。基本ケンカ腰の汐莉に対しても上述の通り、慣れた様子で接するようになりましたし相変わらず頼もしさが段違いです。(お酒を購入しようとする汐莉に「あたしら一応未成年(という設定)だから」と止めるシーンが個人的なここすきポイント)
そして話しかけてきたお婆さんにも親切に対応したりと優しさに溢れている美胡が、比名子と汐莉を買い物に行かせるくだりには面食らいました。2人を一度話し合わせる魂胆だったのはわかりますが、これまで何度も汐莉を目の敵にしていたとは思えない気配りっぷりです。思えば前回の時点であっけらかんとした汐莉に怪訝な視線を送っていましたし、何だかんだで彼女のことも放っておけないのは明白。比名子だけでなく多くの人間を守ってきた美胡にとって、汐莉もその対象の1人になったと思うとグッときますね。
また今回の美胡の温泉街を自分の縄張りの1つにしているという話も興味深かったです。曰く「昔ここらにいた化け狸と知り合いになって土地の一部を縄張りにしてもらった」とのことですが、その化け狸から本当に譲ってもらったのか?ケンカして奪ったとかじゃないの?などと地味に気になってきます。というか美胡が如何にして人間を守るようになったのかの経緯について、以前から詳細を知りたいと思っているので彼女の過去編を余計見たくなってきましたね。
というわけでわたたべ最終回の感想でした。思っていたよりもほんわかした空気で完結したものの、結局比名子の問題は先送りになっているので安心とモヤモヤの両方が襲い掛かってくる面白い後味となりましたね。表面上平気そうな顔をしている汐莉が内心曇っているのが伝わってくるだけに、余計に何とも言えない感じに胸が締め付けられてしまいます。ここから先彼女たちの行く道はどうなるのか気になる一方で、どうあがいても結末は変えられなさそうで見るのが怖くなってくる……どこまでも2つの感情がせめぎ合う感触がたまらなかったです。心がふたつある~~
そして最終回の感想からそのまま簡単な総評をば。苗川采氏原作の漫画作品のアニメ化であり、百合要素を多分に含んだ本作。実際少女同士の関係性を綿密に描いているものの、それ以上に主人公周りの地獄のような関係性にしんどくなってくるような内容となっていました。死にたくて仕方ない主人公と彼女の死を止めたい妖怪少女たちそれぞれの感情がすれ違ったりぶつかり合い、どうしようもない状況を視聴者に叩きつけてきた印象を受けた次第です。比名子を止めるべきとなる反面、彼女の希死念慮の深さと重さを前にして「詰んでいる」という感想が湧き上がってきたほどです。
彼女たちの心の傷からくる対話の難しさ、自分の願いのために他人の想いを踏みにじってしまう事実の大きさに何度も辛くなってきました。同時にその少女たちのエゴからくるやり取りがタイトルにある「ひとでなし」に繋がっているのが面白いですね。お互いに大切な人であるだけに、その相手の感情を無視してしまう比名子たちはそれぞれが等しく“ひとでなし”。単なる人間ではない妖怪である少女たちを指す言葉で終わるかと思いきや、こうした形でダブルミーニングを発揮してきたので思わずニヤリときてしまいます。
また話が進むにつれて、登場人物の印象が変わってくる構成が興味深かったです。まず比名子は何故死んだ家族の後をすぐに追わなかったのか?そうした序盤の疑問が解消されていくと同時に、彼女のどうしようもない問題が露になっていくので納得しつつ衝撃を受けました。そして何といっても汐莉の変化が最も強烈でしたね。最初こそ得体の知れない化け物として見ていたのですが、本当の目的が明らかになるにつれてお労しさに満ちていった際の興奮は忘れられません。正直本作は汐莉のキャラクター造形だけでも大いに評価出来ます。
あと本筋とはあまり関係のない話ですが、本作の主要登場人物が少なさは地味ながら驚くべきポイント。亡き比名子の家族やあやめさんといったサブキャラもチラホラいるものの、基本比名子と汐莉と美胡の3人だけでここまで話が回っているのは驚異的な事実だと思います。物語の展開そのものはゆったりとしている分、最低限のキャラクターだけで長期の作品を描いてみせる、原作者の苗川氏の手腕には舌を巻くばかりです。(超個人的な余談ですが、曽山一寿氏が「登場人物が少ないわかりやすい漫画」を好んでいる話を思い出しました。それを踏まえると苗川氏は曽山氏の理想を強く体現したストーリー漫画家ということになりそうですね)
そうしたことからお気に入りキャラと挙げるとなると3人とも!になりそうですが、ここでは敢えて社美胡としておきましょう。序盤から妖怪だったと判明した時は驚愕したものの、比名子に対する献身的な様子などに速攻で胸打たれて応援したくなりました。そのうえ最終回では汐莉のことまで気にかけてくれるなど、どこまでも健気な彼女にときめかずにはいられなかったです。上の感想でも書きましたが、美胡の過去編を望むくらいには彼女のことを気に入りましたね。
2025年秋アニメとしては『SANDA』『DIGIMON BEATBREAK』と並んで特にハマった本作。そのためアニメ第2期があれば是非とも視聴したいと思うものの、これ以上どうやって彼女らの関係は進展するのか?これ以上やることはあるのか?といった疑問も湧いてきますね。何よりしんどい要素も引き続きありそうなので、続きを追っていくのは覚悟がいるかもしれません。ひとまずは原作漫画をチェックしつつ、気長に待っていく所存です。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。
