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漫画 仮面ライダークウガ 第1、2巻 感想

伝説は新生する――
中々面白い、新約『クウガ』の始まり






















 月刊ヒーローズで連載されている漫画版『仮面ライダークウガ』を2巻まで読んでみて、色々と言ってみたいう衝動に駆られたので書いてみることにしました。初めての漫画感想ですがよろしくお願いします。
※2巻までの内容に深く触れているのでネタバレ注意!!





 さてこの『仮面ライダークウガ』はリアルタイムで見ていたものの当時幼かった僕としてはグロンギの殺人シーンなどがものすごく怖くて数々のトラウマを作らされました。(今でもトラックの「バックします」を聞くとゾッとします……)それでもクウガのアクションシーンとか結構好きで印象に残っているので平成ライダーでもかなり好きな作品です。

 脚本がクウガにあまり関わっていない井上敏樹ということで今回の漫画はどんな感じになるのだろうかと思っていましたが、割と面白いですね。1話は一条さんが連続殺人犯を追う、という内容で進んでいき、「これ刑事ものだっけ」と思っていたら実写よりも禍々しい形相のグロンギが現れ、と思ったらビルのてっぺんに佇む白いクウガと共にサブタイトルがカラーページでドーン!と載せているので序盤で焦らされた分テンションが上がりましたね。そこから五代がクウガに変身するまでかなりかかりますが、何となく当時クウガを見ていた時感じていた「いつ変身して戦うんだろう」とか「早く赤くならないかなぁ」といった風に子どもながらに退屈に思っていた頃と似た感覚で少し懐かしく感じましたね。

 原作からの改変については十分許容範囲です。以前『デスノート』のドラマ版の感想を書いた時も言ったかと思いますが、中途半端な原作再現をするくらいなら原作から全く異なる作品を作った方がいいと考えていますので、むしろもっと原作を跡形もなく破壊してみるのもありなんじゃないか、とも思います。(とは言ったもののクウガはかなりそのあたりの設定がキモとなる作品なので破壊するのは難しいと思います)そもそも特撮と漫画では表現方法が全く違ってくるので下手に原作通りにしても違和感があるかと思います。その点ではグロンギS.I.C.じみたデザインは漫画ならではの表現が活かされているかと思います。

 恐らく原作に思い入れのある人ならすごく拒絶反応を示しそうな漫画版五代ですが、これには最初僕も度肝を抜かされました。なんたって耳にピアスをつけている上に髪を半分メッシュにしていますからね。原作の素朴な好青年としてのイメージからかけ離れたこのチャラさには正直めまいがしました。しかしこの五代、読み進めていくうちに可愛く思えてくるのが面白い。少し丸っとした表情で常に笑顔、さらに行動がいちいち奇抜で先の読めない性格で見ているとどこか愛らしく思えてくるんですよね。(2巻ラストで変身ポーズ考えるシーンは読んでて本当に和みます)原作の方でもやっている窓からの訪問もこの五代ならやりそう、って説得力もあります。一方でシリアスな場面ではすぐカッとなったりするなど未熟な面も多いのですが、一条さんに支えられて徐々に成長していく様子からこれから成長していく主人公としてかなり王道を行っているのではないでしょうか。
 一条さんの方は1話の時点で原作以上に主役みたいになってますね。五代が登場した後もほとんどこの人の視点で物語を進めていき、妹など背負う者たちの存在もしっかり描いているあたり、漫画版は一条さんの物語として描いているのかもしれません。面白いのが劇中で「正眼の構え」で、怒りなどの感情を抑えて平常心で物事を水平に見極めるというこの構えは度々五代と一条さんの感情を静める際に使われており、五代が一条さんに教えてもらった構えを一緒にすることで赤のクウガに変身するなどかなり漫画版の重要なキーワードになっています。上記の通りこの五代はどこか精神的に不安定なのでこの調子で行くと「凄まじき戦士」に到達するための鍵になりそうですね。

 そしてグロンギ側ですが、原作では人間としてのシルエットを残していた怪人態がかなり異形めいたデザインになっているのも漫画版の特徴だと思います。実写で人間らしさを残していたのは「すぐ隣の人が殺人鬼かもしれない」という恐怖を表現するためのものだったと聞いていますが、今の時代で同じことをやる意味はあまりないと思うのでこれくらいぶっ飛んだデザインにするのは個人的にありですね。グロンギ語もバルバが登場してからはルビで日本語訳が表示されていますがそれまでは最初のグロンギ(たぶんグムン)が話すグロンギ語は訳がないので未知の存在としての不気味さが伝わってきます。さしずめ原作が「怪人」ならこちらは「異形の怪物」と言ったところでしょうか。
 現在登場している面子については相変わらず綺麗なバルバ姉さんはともかく、これまでと同じネタキャラとしてだけではなくドMキャラとしても覚醒しつつあるゴオマさんやタバコを吸ってみて涙目でせき込むメビオなど、これまでとは違った姿が描かれていて面白いですね。特にゴオマさんは怪人態の見た目は原作以上に怖くて強そうなのに元祖平成ライダーネタキャラとしてのいじられっぷりがエスカレートしているのがすごいwww

 一方で驚きだったのが2巻の終盤。ドルドがこんなにも早く登場しているだけでも驚きなのに、ある刑務所の人間を従えているのは新鮮でした。そしてそれ以上に衝撃的だったのがドルドの発言……

※この先最大級のネタバレなので要注意!!




















 ドルド「……無駄なことを。グロンギを倒せるのは……」

 ―—アギトだけだ


 ……………………え?ここでアギト?

 と言った風な感じでとにかく困惑しました。まさかアギトと絡めてくるのでしょうか。確かに『アギト』はクウガとの繋がりが示唆されていますがここでアギトを出すとアンノウンや”闇の力”との関係性はどうなるのでしょうか。話がこんがらがりそうで若干不安に感じてますがクウガとアギトのツーショットを見られるならそれはそれで悪くないかも……。
 他にも気になることがいくつかあります。ドルドはいかにして刑務所所長を取り込んだのか、一条さんの妹に会ったと思われる事件や1巻の前半まで登場し五代にクウガの力を与えた先代のクウガらしき人物など、疑問は多いです。また、原作では人間側は善として描かれていたのに対し、グロンギに協力する人間が現れるなどこれまであえて避けていた描写を用いているのも興味深いですね。

 興味深いと言えば2巻の巻末に掲載されている白倉伸一郎プロデューサーのインタビュー(?)も面白かったです。脚本に荒川さんではなく井上さんを起用したのにも昔の番組の掘り下げではなく、クウガを見たことがない人たちにも向けた新しい作品として広げていくためにそれを得意とする井上さんを呼んだと回答していてなるほど、と思いましたね。それでいて原作をなるべく踏襲したうえで違うものを書こうとする井上敏樹の姿勢も良い。あと「『クウガ』『アギト』くらい混ぜちまえよ」って……やっぱりアギト組み込むんかい!


 とまぁ色々語りましたが、これまでのクウガでは考えられないような作風でかなり楽しめています。クウガは熱心なファンが多い分この作品に拒絶反応を起こしてしまう人が少なからずいるかと思います。しかし「これまでのクウガを壊している」のではなく、「新しいクウガを作っている」と考え、原作は原作、漫画は漫画と分けていくことが大事だと思います。そう思って読んでいくと漫画ならではの『クウガ』がより一層楽しめるのではないかと。僕はそう考えてこの漫画を読んでいこうと思います。


 ではまた、次の機会に。