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ヤング ブラック・ジャック 第7~8話 「苦痛なき革命その1~2」 感想

その痛みは誰のもの?
七色いんこ』がまた読みたくなってきた






















・不死身の活動家
 前回までベトナムでの大冒険をしていた間でしたが、今回は岡本先輩と共にアメリカでリーゼンバーグ教授の公開手術の見学に来ていました。そこで先輩の知り合いの女性ティアラから彼女の幼馴染であるジョニーを紹介されます。ジョニーは黒人解放運動に参加していて決して暴力を振るわずどれだけ傷ついても立ち上がり訴える姿から「不死身のジョニー」と呼ばれているそうです。
 しかしその不死身にも理由がありました。店で他の黒人がジョニーに対して攻撃し、ティアラにも被害が及びそうになった際、間がナイフを投げてティアラを守りましたが、その結果起こった黒人が取り出した銃の流れ弾がティアラに命中し、彼女の手術が行われることに。(間は完全にゲラの時と同じ轍を踏んでしまっていますね)しかし殴られていたジョニーも腕が凄まじい方向に曲がっていましたが、ジョニー本人は間に言及されるまでその骨折に全く気付いていませんでした。これはもしや……


・「まともかどうか」について
 ティアラの手術の他にジョニーの骨折の方はリーゼンバーグ教授のおかげで無事に処置され(間がこれまた学生であることを隠して手伝ったけど)、骨折した腕を動かされても平然としているジョニーの姿から間たちはジョニーが「先天性無痛無汗症」であることに気付きます。しかしジョニーは自分の体の異常を強いている上でそれを利用し、その不死身ぶりから黒人たちが受けて来た怒りや苦しみを「心の痛み」としてテレビを通じて訴えていこうとしているようです。
 その話を聞いた間と先輩はジョニーの体をどうするかで議論になっていましたが、先輩の「私たちが(ジョニーを)まともな体にしてやらなくて誰がするっていうの?」という発言にキレた間はすごかったですね。

 間「冗談じゃない!今のジョニーは十分まともだ!まともかまともじゃないかなんて、本人が決める事じゃないですかね!?」

 これは本当にその通りと思いますね。他の人と違うことを「まともじゃない」と認識してしまうこともまた一種の差別とも言えますしね。間の怒りようから察するに彼も昔は顔の傷で苦労したんだろうなぁ…………。
 結局ジョニーの件はこのまま手を出さずに終わるかと思いきや、ティアラの口から幼いころの彼は普通に痛覚を感じていたことを知り、先天性ではなく未知の病気の可能性があることからジョニーを説得します。しかし自分の体の秘密がわかるわけないと言い切るジョニーに対して間がここに滞在できる残り3日間で原因を見つけてみせると言ってきます。


・謎の実験
 さて7話ラストでついに登場した我らがメインヒロイン、藪さん。彼はベトナム戦争に参加した結果PTSDを患ってしまい、今も苦しむトミーという男性を連れてジョニーが入院している病院でリーゼンバーグ教授と共にPTSDの研究をしていました。
 一方間はジョニーの問診を続けますが、ベトナム戦争で戦場を経験した後に今の無痛症になったこと以外全く謎が判明していない状況でした。しかし藪さんと一緒にいたトミーがジョニーと知り合いであることを知り、彼から話を聞いたところ、ジョニーはベトナムには行っていないとのことでした。どういうこと!?
 そのことからジョニーが嘘をついていることに気付いた間は、「原因はベトナムで発見された風土病で、今すぐ手足を切らなければ命にかかわる」とこちらも嘘をつくことでジョニーから本当のことを聞き出すことに成功します。(でもその直前の間の満面の笑みに笑ってしまったww)

 そして真実を話す気になったジョニーの口から出たのは沖縄での謎の訓練。さらに間はここからジョニーの無痛症はその訓練によって引き起こされた人為的なものと予想します。この辺りの間は悪い顔して鎌をかけたり妙に鋭かったり後のブラック・ジャック時代を彷彿とさせるもので見てて面白かったです。


・狂気の真相
 さてこの実験に関わっていたのが意外にもリーゼンバーグ教授。3話に登場したCIAの男と一緒にいた彼は何とナチスの兵器実験開発に携わっていたようで、その時開発した神経ガスが沖縄での訓練でジョニーに使用されたものだと判明します。
 CIAの男はその結論に至った間やジョニーを危険視し、ジョニーを消そうと考えていたようで、教授はそれを阻止するために間を呼び出してジョニーに関するデータを破り捨ててしまいます。ここの場面はかつて目的のために闇に落ちてしまった自分と同じ道を間に歩んでほしくないという教授の想いが感じられますが、結局彼が闇医者になってしまうことを考えると色々と切ないなぁ……。
 しかもその後ジョニーを拘束して謎の実験めいた手術を開始。でもその内容が縛り付けて電流を流すという拷問としか思えない方法だったからもしかして殺すつもりなのではとハラハラして見ちゃいました。


・不死身じゃなくても……
 結局3日でジョニーの体の原因を暴くことが出来ずに日本に戻った間はティアラの手紙からジョニーの痛覚が戻ったことを知ります。ここでリーゼンバーグ教授が真実を知っていたことよりも自分がその方法を見つけられなかったことに怒っていました。というか起こるとこそこなの?
 ジョニーの方と言えば再び痛みを感じるようになったことでかつてのように暴力を振るわれても立ち上がれず、逃げ出してしまうという彼に注目していた人からしたら情けない姿でしたが、ティアラという支えてくれる存在の下で「不死身ではないただのジョニー」として生きていくのを考えるとこれで良かったかもしれませんね。


・まさかの七色いんこ
 そして今回一番驚いたのがトミーについて。彼のその後は最後のナレーションで「道化として生きていく」というものでしたが、その映像で一緒に登場したのが何と七色いんこ!?ということはこのトミーはいんこの師匠であるあのトミー!?
 これには驚きです。まさかここで『七色いんこ』を見ることになるとは思いませんでした。これまではこの作品も手塚作品特有のスターシステムを活用しているだけでしたが、まさか他の手塚作品とクロスオーバーさせてしまうとは中々すごいです。しかも今回のこれは両作品を深く読み込んでいなければできない芸当です。原作者は手塚作品が好きなんだろうなぁ……と感じさせてくれました。(あと今回出て来たリーゼンバーグ教授も『ミッドナイト』という作品の登場人物らしいです。こっちは読んでいないのですが、機械があったら読んでみようかなぁ)


 というわけで今回は黒人差別を始まりに前回のベトナム編に続いて戦争がもたらす様々な出来事についてが描かれていました。戦場に行った人がPTSDによって苦しむなんて話はよく聞きますし、戦争が人々にもたらしている負の遺産は大きいことがわかります。(前回が「戦場のど真ん中」を描いているなら今回は「戦争の枠の外」についてを描いている感じですかね)しかし劇中で教授が言っていたように「戦争が医学を発展させた」こともまた事実。戦争で発達したものはそれ以外にもたくさんありますからここら辺は難しいところですね…………。
 話が重くなりがちなので買えますが、それ以外にも注目だったのが『七色いんこ』などの他の手塚作品とのクロスオーバー。特にトミーは何者だったんだ?という感想になってしまうところをラストで上手いこといんこと絡めた手法には本当に感心しました。ブラック・ジャックだけでなく、他の手塚作品への愛が感じられる構成です。


 さて次回は散々OPのラストに出ていた百鬼丸らしき人物が登場する模様。あのOPみたいにバトルするのか?この作品は医療バトルものになってしまうのか……ww


 ではまた、次の機会に。