『Duel Masters LOST』や『ドラゴン娘になりたくないっ!』などここ最近様々なメディア展開に挑戦しているデュエル・マスターズ。その結果例年よりも注目されることが多くなっていることもあり、色々と驚かされる今日この頃です。いくつか問題もあると感じる部分はあるものの、これは新しいやり方を模索している最中として納得出来るところもあるので暖かく見守っている今日この頃を過ごしています。
しかし最も多くの人に触れてほしい『デュエル・マスターズ WIN』本編に関してはテレビアニメの放送終了に伴い、やや影が薄くなっていることに少しだけ寂しさを覚えています。原作である漫画ではウィンとカイザがどうなったのか、CMなどで名前の挙がるサバトが何者なのか知らない人も多いので、昨年は何かとヤキモキすることが多かったです。(とはいえ週刊コロコロコミックで配信が始まり、試しに読んでみる人も多くなってきたのは嬉しい話ですが)
特に昨年からの漫画の新展開は個人的にも胸熱な要素満載で非常に面白く、デュエマのストーリーの本家ここに在りといったものを感じ取りました。こんな面白い漫画を読んでもらえないのは非常にもったいないと思いますし、僕自身ここ数カ月の漫画に関する感想をもっと書き出したいという衝動にも駆られている真っ最中です。(ふせったーで毎月簡単な感想を書いていますが、やはりまとまった感想も残しておきたい心情)ということで今回はそんなデュエマ漫画の単行本第6巻までの範囲の感想を軽く書いていきたいと思います。
- 愛なき邪悪な月の使途
デュエマWIN6巻の最初の見どころとしてはやはり「忌神サバト(いみがみ・サバト)」率いる「月軍」の襲来。前5巻にてウガタをそそのかし《DARK MATERIAL COMPLEX》を解放したノンノの本隊として出てきた月軍は、初っ端からドローン軍団でマイハマ学園を破壊してくるバイオレンスっぷりでインパクトを残していきました。さらに《悪魔神バロム》の力でジャシンの体を切り刻むシーンの衝撃も絶大の一言。この良くも悪くも圧倒的な暴力で周囲を混乱に陥れる月軍は、悪役のイメージを読者に与えるにはこれ以上ないデビューを果たしたと言えるでしょう。
その中でも月軍第1教団リーダーを務めるサバトの得体の知れなさはかなりのもの。目的のために淡々と儀式を進めていく面と、カイザへの恨みつらみを発散させようとする面それぞれが異常者としての風格を醸し出していました。興味のないものには冷淡ながら特定の個人に対しては粘着質、とでも言うべきでしょうか。そういった異質なキャラ造形が見えてくるのでサバトが出てくるたびに鳥肌が立ってきます。ちなみに元D4の一員だったという過去を持つサバトがカイザとどんな因縁を抱えているのかについては……ここでは割愛しますが、中々に狂っているので余計に怖かったですね。
そんなサバトのドライな部分がわかるのがこの巻でのカイザVSノンノのデュエルで、《暗黒剣 フラヴナグニル》が決めた特殊ルールの無法さにはビビりました。「カードを使用するたびに自分のシールドが1枚焼却されていく(シールドが0枚の場合はプレイヤーが燃やされる)」という、速攻デッキや【邪王門】くらいしか喜ばなさそうなルール、加えてデュエルの勝敗に関係なくカイザを燃やして始末しようとする魂胆からは彼のデュエマへの興味の無さが伝わってきます。戦っているノンノもバレエで鍛えた柔軟性で謎ポーズをキメ挑発してくる性格の悪さが滲み出ており、月軍全体がデュエマを嘲笑ってくる辺りが良い意味で憎たらしかったですね。
またこの月軍の連中は、個人的には勝舞編のザキラ率いるガルドに通じる「悪の組織」感があるので結構気に入っています。(ノンノは謎ポーズからしてシズカを彷彿とさせますし、作者の松本しげのぶ大先生がある程度セルフオマージュを入れているかもしれません)自分の欲望のために他者を踏みつけることに何の躊躇も遠慮もない、まさに邪悪な軍団として申し分ないのでかえって清々しさすら覚えますね。まぁザキラの過激派ファンとしてはザキラと比べるとデュエマへの愛情もカリスマ性もないサバトには一歩劣る印象を抱いていますが、そこは上述の狂気に満ちたキャラクターで異なる魅力を出していくのだろうと考えていく所存です。
- 愛を燃やす終炎の皇子
そんなサバトに立ち向かい、衝撃的な退場を果たしたのが我らがプリンス・カイザ。6巻の最大の見どころはやはり彼の戦いぶりで、闇のマナ云々で隔離されてしまったウィンの代わりに主役として大活躍していました。サバトを始末するためにヘリコプターを激突させて殺そうとする強引さには笑ってしまうものの、その根底には愛する学園や街を守ろうとする確固たる意志と使命感があるので何だかんだで好感が持てましたね。でもヘリの自爆特攻に付き合わされたファルゴはカイザに怒っていいと思う。
何よりこの巻のカイザは終始デュエマへの「愛」を語っているのが最大の特徴。前巻でのウィンとの全力対決を果たしたことでデュエマが好きな気持ちを思い出せたことから、上述のデュエマへの愛なきサバトに憤る姿が印象に残りました。命がけのデュエルも「楽しい」と笑う姿ははたから見ると異常ですが、「デュエマは楽しんでやるもの」というメッセージが伝わってくるのでどこか爽やかにも感じます。ホビー作品のおいて重要とも言える「そのホビーを遊びとして楽しむ精神性」を、愛という一言で語るのはかえってロマンチックにも思えますね。これをそれまで張りつめていたカイザが言うのですから感動ものです。
相棒のボルシャックもカイザの覚悟に応えるために戦い抜いたのがこれまたカッコよかったです。新形態《終炎の竜皇 ボルシャック・ハイパードラゴン》が、《ハイパー・キャストオフ》で装甲を脱いだハイパーモードへと変貌を遂げるシーンは見開きの迫力もあって圧巻もの。ハイパーキャストオフ!チェンジ、ハイパードラゴン!!ウンメイノー最終的には燃え尽きてしまったものの、カイザが遺した意志はしっかりボウイたちに伝わったという形で終わるのが美しいとも感じましたね。彼の愛はウィンたち次なる仲間に託された……とばかりに鮮烈な退場を遂げたカイザに敬礼を贈りたくなる巻でした。
あと余談ですが、見返し表紙にはウルっとさせられましたね。カイザとウィンが砕けた態度で楽しそうにデュエマをしている一枚絵は「ありえたかもしれない光景」として、あまりにも胸にくるものになっていました。特にカイザが少し余裕そうな笑顔を浮かべているのが嬉しいような切ないような……この光景を本編でも実現してほしいので、歴代ライバルの如くカイザの復活を願うばかりです。……いつものデュエマの展開から復活すること前提で考えていますけど、カイザは復活しますよね大先生!?
とまぁ最早カイザが主人公のようになっていたデュエマWIN第6巻ですが、その結果ウィンが割を食ってしまったのがちょっとした不満点。単行本などで一気読みするとそこまででもないのですが、月刊ペースで読んでいるとウィンがず~っと深海に隔離されっぱなしのまま話が進むので非常にもどかしかったです。(ちなみに下の読者の応援コメントに「ウィンがんばれ」と書いてあるけど肝心のウィンはずっと出番ないんだよなぁ……と余計にシュールに感じます)あと彼の新切り札である《邪魂の王道 ジャシン帝》が中々出てこないので、主人公のカードの販促的にもどうなのか?と思わずにはいられなかったですね。その分この先の展開でウィンには活躍してほしいものです。
その他気になる要素を簡単に箇条書きにすると……
- イノシシのようなツノを付けているサバトの車の『マッドマックス』感が凄まじい
- ジャシン帝が黒い穴からどんな仲間を呼び出そうとしたのかが地味に気になる
- バラバラにされたジャシンを見て「どろろだ」とか「エクゾディアだ」とか思ったのは内緒
- そういえばD4ってみんな家が大金持ちの設定だということを思い出した……
- 学園長「あなたは特定危険デュエリストになったの」←まず特定危険デュエリスト is 何?
- 技の先生である「マゼンタ」先生の格好ってこれビキニアーm(ry
- カイザが見つけた《暴徒-da-bummer》と《ビシャモンス・デーケン/「深淵より来たれ、魂よ」》のコンボは後で調べて感心したなぁ
- この巻のファルゴはヘリ云々で酷い目に遭いまくっているな……
- サバトの過去を知れば知るほど「あの時のことは詫びる」と言えるカイザの優しさが沁みる
- カイザがボウイに期待を寄せているのも素敵だし、それをイッサが本人にコッソリ教えてあげるシーンが地味ながらここすきポイント
- 《光喜の夜 エルボロム》は漫画でも不気味で怖い
- ハイパードラゴンがハイパーモードになった瞬間の見開きでカイザが楽しそうな笑みを浮かべているのもここすきポイント
- 心の先生「ターコイズ」のドジっ子ぶりには苦笑い
といった感じでした。単行本のおまけページなどがないのは残念だったものの(まぁLOSTとかウルスパとかあまりにも多忙すぎて書く暇がないのでしょうね)、やはりデュエマ漫画は面白い!と感じられる内容でした。次の7巻は早くて来月辺りに発売されるかもしれないので、その時を楽しみにしていたいと思います。
ではまた、次の機会に。