人類の進化か
魂の真価か
誰かのため己のため……今こそ“目覚めろ、その魂”
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
2001年に放送され、平成ライダー史上最高視聴率(13.9%)を記録した『仮面ライダーアギト』。その25周年記念作品にして仮面ライダー生誕55周年記念作品として制作された新作映画が先月末より公開されました。あのアギトの続編ということもあり、ファンの間で激震が走った映画化だったと言えます。制作陣も白倉伸一郎氏&田崎竜太氏&井上敏樹氏という当時アギトを作った黄金トリオということで、かなり気合が入っていることは一目瞭然でしたね。
僕自身アギトは非常に思い入れの深いライダーであり、公開前から楽しみにしていました。そうして先日映画館に足を運び鑑賞したわけですが、強烈な井上敏樹イズムを浴びて興奮させられた次第です。登場人物の懐かしさで攻めつつ、フフッとなるギャグも完備。それでいてアギトにおけるライダー論もしっかり存在していたので、満足度はかなり高かったです。変なところも多く首をかしげる時もありましたが、それを踏まえて視聴後感は爽やかでしたね。今回はそんなアギト超能力戦争の感想を書いていきたいと思います。
※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
- 君のままで変わればいい
というわけでまず触れておきたいのが『アギト』のテレビシリーズ本編に通じる小気味のいい空気感。役職は変わっているものの概ねいつも通りの登場人物が次々と現れ、当時を彷彿とさせるキャラクターを魅せてくれました。暴走列車ぶりを発揮した小沢さんを筆頭に、フランクに毒を吐く翔一くんなどニヤリとさせられる場面が非常に多かったです。これらがテンポよく描かれていくので、どのシーンもすんなり見ることが出来ます。氷川さんと豆腐のくだり*1などファンの間で有名なギャグを回収してくれるサービスもあり、良い意味で彼らの変わらなさを堪能出来ました。
それでいて変わった部分をしっかり用意しているのが注目ポイント。オムロンこと尾室は警視正としてGユニットとは対立するような構図を生み出してしまい、氷川さんが収監されている事実も相まってバラバラになった関係性が重くのしかかってきました。加えて「葵るり子(あおい・るりこ)」のような新キャラも物語に関わってきており、彼女の反発も大きな見どころになっていましたね。個人的にはるり子の心情も理解しやすかったので、既存の人物ばかりではなく彼女もしっかり主役として見れました。(るり子自体、アギトらしい問題点が魅力のキャラクターだったのも大きかったです)
それだけに仲間たちが集まっていき、強敵相手に一致団結していく流れが熱いモノに仕上がっていました。何といってもそれぞれが問題を抱えながら受け入れ突き進む光景は当時視聴したアギト本編に通じるものがあります。ままならないことが多くなってきているからこそ、それを乗り越えていくカタルシスが生まれていたと言えるでしょう。まさに「変わり続けてく 変わらないものを抱いて」*2という言葉が似合う展開であり、東映特撮の続編として“変化”と“向上”の両立がバランス良く成り立っていることに感動させられます。懐かしいばかりを慈しむのではない塩梅は、「ただ同じことをやるようではいけない!」という考えを持つ身としてはかなり突き刺さりましたね。
あと本作は中盤に入ってからやたら強烈なギャグが多めになっていたのも特徴的でした。上述の豆腐ネタはもちろんのこと、やたらガラの悪かった刑務所連中が素敵な歌声で賛美歌を歌い始めた時はクスクスとした笑いが劇場内で巻き起こりましたね。中でもインパクト抜群だったのが北條さんで、醜態を小沢さんに写真で撮られる場面から謎の分裂能力を獲得してからの一連のシーンは本当におかしかったです。基本シリアス寄りではあるものの、このコミカルさのおかげで重くなりすぎていなかったのは結構ありがたかったと思います。
- 人間にして仮面ライダーの資格
さて本作はPG12指定を受けているだけあり、「ルージュ」ら劇中に登場する超能力者たちの残虐性がやたらショッキングなモノとなっていました。一般人を次々と殺害していく様子はアンノウンの不可能犯罪以上にグロテスクであり、見ていてギョッとするものばかり。何よりその不可能犯罪からは悪意に満ちた部分が伝わってきたのもあって、見た目の奇抜さに反して嫌悪感が半端ではなかったです。(誰が呼んだか「『クレヨンしんちゃん』に出てきそうな見た目のくせして『クウガ』のグロンギみたいなことをする奴ら」)そして超能力を使って安易に人を傷つける、人間の凶暴性が露になったような気分に陥りました。
さらに本編から大きく様変わりした木野さんや、ギルスの遺体という形で衝撃的な姿を見せてきた葦原さん*3はそれ以上にショックが大きかったです。特に前者はそういった考えに走ることに納得出来るものの、力に溺れてしまっている感覚も大きくて何とも言えない味わいを生み出していたと言えます。上述の変わりゆくものを肯定していく作風から、優れた存在になることが何よりも尊いとするかのような歪んだ考えが暴走していく様は仰天モノ。超能力関係なしに人は力を手に入れることで心が怪物になりうる、ある種の生々しさを体感させられる展開でした。
といった超能力者の恐ろしさを味わってから、力を得たうえで戦う人間たちを魅せていく過程が素晴らしかったですね。「黒谷(くろや)」のような超能力を人のために役立てようとする人物も出てきて終始戦ってくれるので、精神の強さが何よりも重要だと感じられます。そのうえ仲間たち全員で仲良く警察に自首するラストが最高に素敵の一言。悪いことをしたらしっかり反省し償おうとする姿勢に加えて、どんな困難も仲間と共に乗り越えていけるというメッセージに溢れていました。人間の正義感や倫理を重んじてくれる、爽快感溢れるポジティブな雰囲気は鑑賞後もかなりグッときます。
また仮面ライダーシリーズの文脈と僕がアギト本編で学んだ「仮面ライダーの定義」を見事に踏襲しているのが最大の評価点。敵と同じ力を手に入れながらも、人間の自由と平和のために使う志は初代『仮面ライダー』から続くライダーの背景。そこにアギトで氷川誠が見せた心の正しさ・弱さを受けれていく強さを加えて、本作の仮面ライダーの在り方を示していたのだろうと考えています。言うなればこの事件に立ち向かい共に戦った全員がこの作品における「仮面ライダー」を名乗ってもいい、と思ったくらいです。凶悪な敵を目の当たりにした分、この眩しいほどのライダーの姿勢は最高に盛り上がりましたね。
では以下、各キャラクターについての所感です。
氷川誠/仮面ライダーG7
本作の主人公。アギト本編でも人間代表として主役を務めていたこともあり、今回の映画では物語の中心人物として大いに目立っていました。自分の罪を否定しない不器用さと真摯さ、そして正義感は相変わらず。そのうえで木野さんに進化の在り方を訴えるくだりは、氷川さんらしい志の高さに満ち溢れていましたね。ラストに自爆特攻をかます、自分のみを省みないハラハラさせられるところまで良い意味で氷川さんの真っ直ぐさを味わえました。
そして本作で氷川さんが装着した「G7システム」はとうとうドローンによる現場での着装に進化しているのが最高の注目ポイント。ドローンが装甲に変形して見についていく最先端のシステムに、Gシリーズ特有の武骨さ(アンダースーツ装着を事前にする必要があるのも良き)が合わさって新時代のGユニットに相応しいと感じられました。あとアギトのアギト因子を受けてクロスホーンが展開しキックする場面は「そっち!?」とびっくりしたり。
葵るり子/仮面ライダーG6/トリニティ・ギル・アギト
本作の新キャラの1人。初登場から口が悪いものの市民を守る場面を見せてくれたので、クセは強いけど根は善良な人物であることがすぐに読み取れました。(「口だけでなく性格も悪いぜ!良いのは顔だけ」という開き直ったセリフもここすきポイント)氷川さんを認めない負けん気から、蕎麦屋でかき揚げに対して色々言ってくる場面まで親しみやすさが強かったです。若干蚊帳の外なのもあって、結構応援したくなりましたね。
そんなるり子が終盤超能力を身に着けて、トリニティ・ギル・アギトに変身した時は衝撃を受けました。アギトのトリニティ枠をここで消費する展開もさることながら、超能力を自分だけのアイデンティティとして昇華する逞しさに舌を巻くばかり。G6の時点でもそこそこ強かったですが、吹っ切れてからの彼女はしたたかなのは魅力的に見えたほどです。(G6に関してはモブギル・アギトを倒せた時点でちゃんと活躍したと考えているのであまり不満はないです)
津上翔一/仮面ライダーアギト
ご存じアギト本編の主人公。氷川さんとは別ベクトルでいつも通りなキャラクターを魅せてくれました。アギトに変身出来なくなってしまっても変わらず朗らかな一面を見せ、時には天邪鬼な要素もばっちりやってくれるのでニヤニヤしっぱなしです。(変身出来ないのに変身ポーズでオムロンを脅すのとかここすきポイント)あまり本筋に関わってこない助っ人ポジションの趣だったものの、存在感は非常に大きかったと思います。
上述の通りアギトの力を失ってしまったと見せかけて、最終決戦で久々にアギトに変身してくれた時は期待通りだと大興奮。最低限の動きで敵の攻撃を避けて、隙をついて自分の技を叩きこんでくる戦闘スタイルも健在で惚れ惚れさせられます。必殺キックの出番をG7に譲ってしまったものの、スマートな戦いぶりは決して衰えていないと感じられる仕上がりでした。
小沢澄子
ある意味本作随一の働きぶりを見せる主役でもある人。冒頭からラストまで出ずっぱりであり、実質物語を牽引していたと言っても過言ではありませんでした。何よりGユニット解散に全力で抗議したり、氷川さんの脱走計画を企てたりと暴走するのも流石といったところ。警察上層部が彼女を縛り上げたいのも納得だったものの、目的のためなら組織のルールにすら屈しない小沢さんのロックな生き様は今でも憧れるものがあります。
北條透
何故か私立探偵になっていた渋い人。婚約者の死の真相を探る復讐者としての側面を抱えながらも、氷川さんの人間性を信じる腐れ縁の強さを見せつけてくれたのでメロつかずにはいられません。(婚約者にらしくないクサいセリフを口にしていたのも印象的)そのうえ分身能力を身に着けて普通に使いこなしていったのはじわじわきましたね。本編で超能力に懐疑的だった割りにはすんなり受け入れているのですが、まぁそんな調子の良さにも納得した次第です。
木野薫/シャイニング・ギル・アギト
まさかの黒幕にしてラスボス。いきなりアギト優性思想に目覚めてバイオテロまがいの暗躍を続けたのは最初目が点になりましたが、思い返せば極端に走りやすい人物だったのでこうなるのもまぁわかるっちゃわかります。(ただそこに至るまでの過程が省かれているので、唐突に闇落ちしてしまった印象が強かったのは否めません)アギトの力に呑まれた存在として、シンプルに恐ろしい方向性にねじ曲がっていったのでしょう。
そんな木野さんが変身したシャイニング・ギル・アギトはまさかの巨大な怪物。四つ足の異形っぷりに対して、シャイニングフォームの面影を残しているのが歪さを強調していると言えます。個人的にはこの木野さんの歪んだ考えが形になっているかのようで、ラスボスとしてはある種当然にも思えましたね。怪人に堕ちたアギトとしてもインパクト大でお気に入りです。
というわけでアギト超能力戦争の感想でした。現代の井上敏樹氏らしいユーモアを交えながら、アギトのテイストを味わわせてくれるような作品でしたね。木野さんの暴走などファンとしては賛否を呼ぶ内容に関しても、僕個人はあまり気にならないタイプなのもあり問題ではなかったです。むしろ当時アギトを視聴した際に学んだ「力のあるなしではない仮面ライダーの在り方」を、思い出させてくれる作品として最後までテンション爆上がりして鑑賞することが出来ました。
他にも本作ではGユニットの杵島くんと香川くんのコント染みたやり取りや、超能力者連中の濃さなど印象に残るキャラクターが多かったですね。中でもアギトと同期である『百獣戦隊ガオレンジャー』にて獅子走/ガオレッドを演じた金子昇さんがサプライズ出演してくれたのは、ガオレンジャーをスーパー戦隊最推しにしている身としては本当に嬉しかったです。*4総じてアギトに全力でハマっていた少年時代を思い出しつつ、今の時代ならではのアギトを味わえて最高に楽しい映画体験を果たせました。
(余談ですが先に映画を鑑賞した母が「映画館のみんなで笑ったシーンがあった」と事前に聞いていたのですが、思い当たるシーンが多すぎて結局どこのことを言っているのかわからなかったのも良い思い出です)
ではまた、次の機会に。
*1:この豆腐についてはラストに氷川さんがとうとう箸で豆腐を掴めるシーンがあるのだが、この項の変わることを肯定する在り方にも沿っていて筆者としては結構気に入っている。
*2:ORANGE RANGE「ドラマティック平凡」より
*3:この辺りは友井雄亮さんの不祥事からくる出演の難しさもあって余計に切なくなってきたり。(まぁギルスの頭部が普通に力を発揮していたので、本当に死んでいるのか怪しいところである)
*4:直近の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSブンブンジャー』のアニバーサリーレッドのゲスト出演にガオレッドがいなかったのを残念に思っていたのもあって、この出演はメタレドとしてはかなり嬉しいモノだったとここに記しておく。
