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スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド 感想

チームを組めば最強さ

新たな「親愛なる隣人」の物語が始まる

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 今年の1月にディズニープラスにて配信されたアニメ『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド』(原題:『Your Friendly Neighborhood Spider-Man』)米国のマーベル・アニメーションと日本のポリゴン・ピクチュアズの共同で制作されたスパイダーマンの新作アニメシリーズです。当初こそMCU(マーベルシネマティックユニバース)のスパイダーマンの前日譚として発表されましたが、紆余曲折を経てMCUから離れた独立した作品として制作された経緯があります。

 僕自身MCUのピーターの話がアニメで見られると発表当初は期待していたのもあって、作品の方向転換には少なからず残念に感じました。しかしいざ視聴してみた結果、スパイダーマンのオリジンとしてシンプルに面白くてハマってしまいましたね単体でスパイダーマンのオリジンとして完成されており、一方でマーベル作品の小ネタを知っているとニヤリとくる内容。ファンの1人として、これは中々に見応えがあったと言えます。というわけで今回はそんなスパイダーマンアニメの感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 動き出すコミック・描かれる大きな世界観

 まず本作で驚かされたのがアニメーション。一昔前のコミックを意識したデザインであり、それが非常に綺麗に動くので度肝を抜かれました。さながら絵が平面的なテイストはそのままに、立体的に命が吹き込まれたかのよう。アメリカのアニメーションのクオリティと日本のCGを掛け合わせることで、このような映像表現が出来るのかと感動した次第です。場面1枚1枚は古典的なデザインですが、動きが出ることで全く新しいアニメとして楽しめるのは非常に新鮮の一言です。

 さらに調べたところによると原作コミックの中でも当時スパイダーマンを故・スタン・リー氏と共に作り上げた故・スティーヴ・ディッコ氏が手掛けた作画を意識しているとのこと。*1スパイダーマンの生みの親の1人であるディッコ氏の絵が切り取られ、ぬるぬる動き出しているようでファンにはたまらないことでしょう。ちなみに僕は氏が手掛けた実際のアメコミを読んだことはないのですが、どこか懐かしさを感じる絵柄に安心感を覚えました。悪く言えば古臭いものの、それがまた本作の味として楽しめる塩梅になっていたと思います。

 

 また本作はMCUと切り離された独自の世界観なのですが、映画を意識したような要素が散りばめられているのも見逃せません。何といってもアベンジャーズを筆頭に様々なヒーロー・超人が日常的に活動しており、登場人物のセリフから彼らの背景が読み取れるのがたまらなかったです。中でもソコヴィア協定によるアイアンマンキャプテン・アメリカの対立は、『シビル・ウォー』を彷彿とさせるものがあります。本編ではトニー/アイアンマンが少しだけ登場しましたが、やや元気がなさそうに見えたのはキャップとのことがあったからかな……?といった妄想が捗りましたね。

 「ピーター・パーカー/スパイダーマン」をはじめとしたキャラ出演にも触れておきたいところ。デアデビルドクター・ストレンジなど様々なヒーローが登場するほか、一般人のキャラクターも過去のマーベル作品を知っているとニヤリとくるものばかりでした。例えばアマデウス・チョなど『アルティメット・スパイダーマン』を見た身としては嫌味がまた微笑ましく感じましたし、それでいてこれまでとは大きく異なる設定変更が為されたキャラも多数存在。マーベル未履修でも十分に楽しめますが、知っているとより楽しいという理想的な塩梅に仕上がっていたと言えるでしょう。

 

 

  • 2つの物語を経て、ヒーローが生まれる

 そして本作はこの手のヒーロー作品の序盤らしく、ピーターのオリジンが描かれていたのが最大の特徴。スパイダーマンとして自信を得るまでの過程が丁寧に綴られており、主人公への愛着を湧かせてくれるストーリーに初っ端から見入ることとなりました。それでいて本作独自のポイントとして、あの「ノーマン・オズボーン」がピーターのメンター(支援者)に抜擢されたのが意外性抜群でしたね。きな臭くて厳しいものの、何だかんだで気にかけてくれるノーマンの導きは奇妙ながら興味深かったです。

 同時にピーターのクラスメイトである「ロニー・リンカーン」がもう1人の主人公のようなポジションだったのも大きなポイント。最初こそ気の良いクラスメイトくらいの認識でしたが、弟を守るためにギャングと関係を持ってから彼の人生が徐々に陰りを見せていく展開にハラハラさせられました。最初は嫌々ギャングの仲間入りをさせられたのに、段々と乗り気になりつつあるロニーの姿は視聴中気が気でなかったです。彼ら一家の生活の苦しさがさり気なく描写されている*2のもあって、華やかだった学園生活からの転落は非常にショッキングなモノとなっていました

 

 片や一大企業を築いた社長の協力を得ながらのヒーロー活動、片やギャングの抗争に身を堕としていくまでの崩壊の物語。この2つのストーリーを並行して進めていき、大きな形で交わっていく終盤は非常に見応えのあるものとなっていました。何といってもスコーピオン相手にピーターとロニーが共闘するという、意外な胸熱展開があったおかげでかなりのカタルシスを得られましたね。そのうえ怒りからヒーローの道に外れかかったピーターを、ロニーが止める構図に感動させられます。ヒーローとしての覚悟を決めたピーターが、冷静さを学ぶ過程をかつてのクラスメイトに教わる瞬間は個人的にもかなりのベストバウトでした

 何よりピーターが挫折を経験しながらも立ち上がり、最終的にスパイダーマンとしてのヒーロー像を確立させていく最終回はこれまた面白かったです。ストレンジの登場によって彼が力を得た理由がようやく明かされ、その真実を知ってなお揺るがなくなった主人公の完成には思わず胸が高鳴ってしまいました。伏線回収としてはもちろん見事でしたし、見たかったスパイダーマン像をストレートに魅せてくれたので満足感もかなりのもの。見応えのあるアニメーションと合わせて、多くの人に薦めたいスパイダーマンアニメだったと胸を張って主張したいです。惜しむらくはこれがディズニープラス独占配信という点なのですけどね……

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

ピーター・パーカー/スパイダーマン

 本作の主人公にして言わずと知れた「親愛なる隣人」。過去のスパイダーマン同様科学オタクな高校生であり、勉強や家のこと・ヒーロー活動の両立などで悩む若者として描かれていました。これまでと比べてもややおっちょこちょいな面が見られるものの、概ねスタンダードなピーター・パーカーのイメージに忠実な形で仕上がっていたと思います。

 個人的にはノーマンへの依存を抜け出すまでの物語として、ピーターの成長を楽しめたのが大きかったですね。非常に頼もしい支援者だったものの、彼の技術や助言を頼りにしすぎてスコーピオンに敗北する展開は見ていて非常に痛々しかったです。その分自力で立ち上がり、暴走したノーマンの元を離れてもヒーローを続けられるようになったのは感動ものでした。まさしく本作は彼の「自立」を描いていたのだと感じられます。

 

 

ロニー・リンカーン/トゥームストーン

 実質的な主人公その2。如何にもジョックっぽい第一印象に反して、気さくな態度でピーターと打ち解けていくので見ている側としてもすぐに好感を抱けました。それだけに弟がギャングとつるんでいたせいで、裏社会に身を堕としていく過程は見ていて本当に辛かったです。学校も辞めたうえギャング仲間から持ち上げられ、悪くない気分になっていく様子から本気でロニーのことを心配しました。

 しかし終盤スパイダーマンと共闘したり、彼の暴走を止めたりするなど根は優しいままだとわかって一安心。変な化学薬品(ガンマ線かな?)を浴びて肉体が強化されたようですが、そこまで深刻じゃなさそうで良かったです。まぁ逃げたリーダーに変わりギャングを率いながら通信教育の道を選ぶのは……色々と危うい道に走っている気がするものの、ロニーなら何とかなりそうかもとちょっと思いましたね。

 

 

ノーマン・オズボーン

ハリー・オズボーン

 スパイダーマンを語るうえで外せないオズボーン親子。本作では上述の通りノーマンがピーターに協力してくれたのですが、頼もしくもどこか胡散臭くて仕方なかったです。結果最終回で大惨事を引き起こしかけたものの、ピーターへの信頼などは本物という絶妙なバランスでヘイトを稼がなかったと言えます。総じて悪い人ではないんだけどね……といった感じの評価に落ち着くのが何ともノーマンらしいですね。

 息子のハリーの方は色んな意味でいつも通り。ピーターの正体を知るや否や興奮気味に協力したりそれでいてヘマをやらかすなど、わかりやすいお調子者枠として存在感を放っていました。それでいて終盤落ち込んだピーターに的確な助言をしてくれるので、割と侮れない相棒になりうるポテンシャルを秘めていると思います。(父の没落に関して気の毒に感じましたが、普通に会社を設立するノリの良さにはいい意味で笑いました)

 

 

ニコ・ミノル

 本作のピーターの親友枠。オカルト好きで陰気ながら、オタク趣味でピーターと気が合う異性の友達はかなり珍しいと感じました。ハリーとも最初ぎこちなかったりしましたが、すぐに打ち解けたので作中屈指のコミュ強かもしれません。調べたところ彼女も原作コミックではチームに所属するヒーローらしいのですが、本作のニコはあくまで一般人の代表としていてほしいところですね。(しかし魔術云々の発言が色々怪しい……)

 

 

オットー・オクタヴィアス/ドクター・オクトパス

 ボスキャラになるかと思いきやそんなことはなかった人。作り上げた武器を売りさばく黒幕的な登場をしたため最後にピーターと対決するのかと予想していたのですが、大ボスの座をスコーピオンに奪われたのは結構驚きでした。それどころかピーターと対面すらしないまま逮捕されるので拍子抜けもいいところでしたね。ただノーマンに対する嫉妬や野心からして、この先のストーリーで何か大きな悪事を働いてくれそうな点は期待出来ます

 

 

マット・マードック/デアデビル

スティーブン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ

 ゲストヒーローの皆さん。まずデアデビルは唐突に出てきてピーターと対決するので、個人的にはかなりのサプライズとなりました。ノーマンを警戒しているもののそれだけで終わったのは肩透かしでしたが、世界観を広げる役割を担っていたとは思います。オズコープにスパイとして潜入していた仲間と一緒に、今後の活躍にも色々胸躍らせたくなりますね。

 そしてストレンジに関しては、序盤から出てきたうえピーターが力を得るきっかけになる重要な役どころとして印象に残りました。最終回での警告など相変わらずの苦労人ぶりが目に留まる中、最後にピーターへの激励を送るシーンは良かったですね。未来を継げなくても今の彼なら大丈夫と、短い共闘の中でピーターを信頼しているキャラクターは何とも穏やかなストレンジを感じました

 

 

 というわけでスパイダーマンアニメの感想でした。いやぁ配信時に見るのを忘れてしまい先月まで視聴していなかったのですが、いざ見始めたら止まらなかったですね。ピーターの戦いはもちろんのこと、ロニーはどうなってしまうのか?といったクリフハンガーの強さはかなりのものだったと思います。そのうえ他のヒーローや世界の背景などもサラリと描かれるので、マーベル好きにはたまらないアニメーションでした。

 さらに最終回ではノーマンやドックオクなど様々な人物の今後を匂わせるシーンもあって、続編が楽しみになってきた次第です。現状は音沙汰なしですが、他のマーベル作品を楽しみながら気長に待っていたいと思います。『スパイダーバース』や『ブランド・ニュー・デイ』といったスパイダーマン新作と合わせて、まだまだ続くスパイダーマン旋風にワクワクが止まりませんね

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:リンク先(https://theriver.jp/yfnsm-is-amazing/)の記事を参照。

*2:ロニー周りの描写は現実でも続いている黒人差別を念頭に置くとより真に迫る描写になっていたと感じる。