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ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ 感想

最悪は塗り替えられる

これは、愛らしい怪物と異常者たちの激闘である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2018年に公開された映画『ヴェノム』。スパイダーマンの宿敵である「ヴェノム」を主役とした映画で、公開前には予想されていなかったヴェノムのフレンドリーな要素を押し出した内容が話題となりました。かくいう僕もイメージとは大幅に異なっていたものの、萌え要素の多いヴェノムのキャラクターに当時ノックアウトされた記憶があります。

 そんなヴェノムの続編として公開された本作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を先日観に行ったのですが、予想通りのわかりやすく面白い映画となっていました。今回は上述の要素を理解したうえで行ったためイメージの乖離が激しくない分、本作の楽しみ方をすぐさま理解出来ましたね。約90分という短さもあって非常に見やすく、お手軽に楽しめる映画に仕上がっていたという印象です。というわけでそのヴェノムたちの面白さについて感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • お約束のバディ

 主人公のエディと相棒のヴェノムのバディものとしての側面が強い本作ですが、今回はそんな2人の「痴話喧嘩」とも言うべき内容がメインとして描かれていました。記者としての仕事が絶好調のエディとそれに結構乗り気で付き合うヴェノムの様子から順調にコンビとしてやっていけているのだと最初は思いましたが、始まってから十数分で雲行きが怪しくなっていくので一気に見入りました。

 思い通りに食事が出来ないヴェノムと彼に振り回されるエディの不満が少しずつ溜まっていき、ついには爆発して大喧嘩へと発展していくのですが、これが実に微笑ましかったです。互いのことを罵り合いながら喧嘩別れしていくものの、その後早くも相方のことを考えてしまう様子は実に面白いです。特にヴェノムは仮装パーティーでの盛り上がりでエディへの感情ですぐ静めてしまう辺りが実にいじらしくて悶えてしまいます。それ故、仲直りからのコンビ再結成の流れがあっさりしていた点にも不思議と納得がいきましたね。

 

 最終的に仲良く海岸に佇むラストも含め、まさに痴話喧嘩のような騒々しさが見られましたが、一方で話の流れ自体は極めて正統派に仕上がっているのが面白いところ。上述の通り喧嘩別れからの和解の流れは昔から見られるもので展開が容易に想像出来るのですが、それでいて決して退屈しない辺りに話の基本を大事にしていると感じました。凸凹コンビ故のすれ違いが喧嘩に発展していくものの、お互いを必要としていることに気付いて絆を深めていく・・・・・・そんなバディものとしてのお手本の展開をキッチリこなしていたと本作を見て思いました。

 また前作を見た際に疑問に思っていた「ヴェノムがエディに入れ込む理由」についての掘り下げがされていた点も良かったですね。エディ以外にも様々な人物に寄生してきたヴェノムが、何故エディにばかりこだわるのかという点において前作では説明不足のまま終わってしまったのですが、「適合する相手がエディ以外にいない」とはっきり明言されたおかげですんなり受け入れることが出来ました。それ以上にエディに対して深い情を抱きつつあるヴェノムを描いたことで、適合云々以上の理由が彼の中に出来ていたことが伝わってきたのもグッド。

 前作で築いたエディとヴェノムのキャラクターを、さらに発展させたのがこの映画でした。開拓された要素をさらに広げていくという点では理想的な続編とも言えますね。前作のヴェノムを好きになった人ほど、期待していた内容に盛り上がったと思います。

 

 

  • 人間味溢れる異常者たち

 本作のもう1つの特徴が題名にもある「カーネイジ」もとい「クレタス・キャサディ」の存在。凶悪なシリアルキラーということでとんでもない狂人として登場すると予想していたのですが、こちらはこちらで意外なキャラクターとして描かれていました。

 まず映画の冒頭にてキャサディが恋人である「シュリーク」こと「フランシス・バリソン」と引き離されるシーンに驚愕。バリソンと相思相愛の様子がまざまざと見せつけられ、この時点で殺人鬼としてのイメージから大きくかけ離れていきます。その後カーネイジとなって脱走した後もバリソンを謎の施設から救出し、2人で仲良く復讐に乗り出す姿は予想外の方向性でした。それでいて自分以外に大切な人物が存在する殺人鬼、というキャラ付けは個人的に不思議と魅力的に見えましたね。

 肝心のエディへの復讐も彼に対する愛憎が感じ取れました。キャサディが自分を死刑に追いやったエディに憎しみを抱く一方で、「友達になりたかった」と告白するシーンは彼にとってエディが通じ合える存在であることをわかりやすく描いていたと言えます。思えば教会で繰り広げられたヴェノムVSカーネイジの激闘も、キャサディは終始エディを殺すというよりも「取り込む」ことに執着していたように見えます。

 上述のバリソンとの関係然り、キャサディは大多数とわかりあえない殺人鬼だからこそわかりあえる存在を欲していたということでしょうか。本作のキャサディは根本はイカれた異常者ではあるのですが、そのような寂しさを抱いている辺り理解出来ない怪物というわけでは決してなかったのかもしれません。

 

 一方で彼に執着されているエディですが、こちらは前作の時も感じた異常者としての側面がより強調されていました。思えば前作の時点で人を食べたいヴェノムに「悪人なら食べてもいい」と倫理的にもおかしな点が見られていました。今回ヴェノムに人を食べることを禁じていたのも良心の呵責などではなく「証拠が見つかったらまずい」という理由からですし、彼は関係のない人間の死に関して興味を抱いていないことがうっすらと読み取れます。

 そのくせ上述のヴェノムとの喧嘩や元婚約者のアンとの会話など、真人間らしい要素もしっかり持っているのでその中にあるドライな面が中々わかりづらい。そんな状況でキャサディへの取材に躍起になるのは、エディもまた自分とキャサディに通じるものを感じたのかもしれない・・・・・・なんて思ってしまいましたね。両者はある意味で似た者同士なのかもしれません。

 思えばエディもキャサディも“他人との繋がり”に執着しているように見えました。異常者ながら人間味を感じさせるキャサディに、人間味の中に異常者を隠したエディ。どちらも「人間味溢れる異常者」で、それ故に抱える孤独を他人やシンビオートで埋めようとしていました。エディは騒動の末アンとの関係を切り離すことでヴェノムと和解出来たのに対し、キャサディはバリソンとの関係を切り離せなかったためカーネイジと仲違いしてしまったように思えます。異常者は結局、怪物と孤独を埋め合わせるしかないのかもしれない・・・・・・本作を見て何となくですがそう感じましたね。

 

 

 さて本作は他にも相変わらず有能なアン&ダンのカップルにヴェノムに優しいチェンさん。ヴェノムが気に入った鶏のペットに謎の伏線を残した「パトリック・マリガン」刑事など、魅力的な登場人物が数多く登場しました。(調べたところこの刑事、原作だと「トキシン」なんですね)彼らのような個性的ながら常識的な面々がいることで、異常者としてのエディたちが映えるのだろうと思ったりしています。

 

 他にも例によってコミカルなシーンなど本作の特徴は様々でしたが、それ以上に印象に残ったものといえばやはり、スパイダーマンの登場でしょう。ラストにエディとヴェノムがMCUの世界に移動し、『ファー・フロム・ホーム』のラスト辺りのピーターの姿をテレビ越しに見つめるシーンには衝撃が走りました。ここまでの物語が全て吹っ飛んだ気分です。(何気にヴェノムのアースとMCUアースは別々ということが判明したのも大きな収穫ですね)

 今回の件でまさかのMCUに合流することになったヴェノムたち。果たして彼らは今後の作品にどのような形で登場するのでしょうか。スパイディとの絡みが予感されていることから、直近の『ノー・ウェイ・ホーム』での出演もありそうな気がします。(少なくともアメリカでの公開や試写会で観た人たちの反応からしてとんでもないサプライズがあるのは確か)そうでなくともいずれ共演することはほぼ確実なので、トムホピーターとの共闘などに期待がかかってきました。どうやらエディ&ヴェノムのこれからも目が離せないようです。

 

 

 というわけでヴェノムの感想でした。良くも悪くも前作同様単純なアクション娯楽映画といった内容だったので、感想を書くのに結構苦戦しました。何だかんだでまとめられてホッとしています。ダークヒーロー感がほとんどないとか痴話喧嘩が長いなどの不満もありましたが、上述の通り概ね予想通りだったのでかなり楽しめましたね。

 そしてこの先は上述の通りMCUのヒーローとの共演にも期待したいところ。来年公開の『モービウス』も気になりますし、マーベル映画の楽しみはこれからも続いていくようでワクワクが止まりません。まずはもう少しで見れるスパイダーマンを心待ちにしながら年を越していく所存です。

 

 

 ではまた、次の機会に。