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仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦 感想

つかめ最高!

いどめ最強!

素朴な願いと幸せのために、今こそ立ち上がれ仮面ライダー!!

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 毎年12月ごろに公開するのが恒例となっている仮面ライダーの冬映画。今回は今年の8月まで放送していた『仮面ライダーギーツ』と現在放送中の『仮面ライダーガッチャード』の2作の共演が繰り広げられることになりました。

 良くも悪くも空気感が正反対な2つのライダーがどのように組み合わさるのか、その辺りを楽しみに映画館に足を運んだ結果、いくつもの展開をまとめたてんこ盛り映画とも言うべき趣きで大いに盛り上がることが出来ましたね。双方のキャラを上手いこと使い分け、1つのストーリーとして着地させたのも見事。意外なサプライズもあって、個人的にもかなり満足度の高いお祭り映画でした。というわけで、今回はそんなライダー冬映画の感想を書いていきたいと思います。

 

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 急展開と安定のストーリー

 まず本作は一貫してコミカルなストーリーから収束していく「王道」とも言うべき話の流れが特徴的。ガッチャード勢とギーツ勢が序盤の内から邂逅し、1つの事件解決に向かう様子に面白おかしさを感じつつ、中盤からの切り替わりに驚かせられて、最後にはスッキリ解決していく綺麗な構成となっていました。特に前半はレベルナンバー10捕獲のために各自の混合チームが結成され、ドタバタ劇が繰り広げられていたのが面白かったですね。英寿に化かされ向きになる宝太郎など、各キャラが絡んだ場合の絵面が予想通りなのもあって両作品を見ている人ほどニヤリとさせられたかと思います。

 そして前半と後半で空気感がガラリと変わっているのに、不自然さもなくシームレスに移行する展開もお見事。その前後の切り替わりのスイッチとも言えるのが「夢の世界」で、無事レベルナンバー10を捕獲してからの微妙な違和感が生まれていく様子には一気に見入ることになりました。突然ガッチャードの主題歌が流れて大団円になったかのような雰囲気はかなり異様でしたし、その後の夢の世界はコミカルながら恐ろしいとも感じられる絵面のオンパレードで面白かったです。(余談ですが、当日映画館で観た時に主題歌が流れるシーンで「あれ、もう終わり?」という子どもの声が聞こえてきたり……)

 その後の後半は若干シリアスな方向性で話が進んでいきましたが、作品そのものの明るい空気感でまとめに入った点は変わらなかったのも好印象です。本性を現した釘宮調査官とのバトルも程よい緊迫感があり、いくつかのサプライズや意外な展開もあって見応えがありましたね。激しい絶望感やそこを振り払う高揚感といったものはなかったものの、安定してハラハラさせつつスッキリと終わらせてくれる塩梅が観ていて心地よかったです。個人的にはガッチャードのテレビシリーズ本編を視聴している際の“ちょうどよさ”や“そうそうこういうのでいいんだよ”とも言うべき雰囲気が映画でも発揮されている感覚でした。

 

 ストーリー以外だとアクション面でも見どころが多かったですね。序盤からギーツライダー4人とガッチャード&ヴァルバラドの組み合わせでジャマト軍団とのバトルが観れましたし、その後も定期的に両作品のライダーたちが共闘する場面が多くて興奮させられました。特にヴァルバラド&バッファのコンビは前半のコミカルなやり取り含め期待していた通りのもので嬉しかったです。他にもモンスターマグナムフォームやリボルブオンによる回避などの華麗さを魅せたギーツ、複数のケミーカードを使いケミーとの絆を発揮したガッチャード(弾かれたガッチャージガンに自ら装填されつつガッチャードの手に戻ってくるよう動くアッパレブシドーたちの奮闘がここすきポイント)など見どころ。総じてこちらが見たかったものを概ねやってくれたのが本作のアクション面での面白さだったと思いますね。

(余談ですがCGを駆使している場面はもちろんのこと、特にCGを使わない場面でのアクションの迫力も凄まじかったです。倒れる高台からジャンプするシーンとか)

 

 

  • 何てことのないものがみんなの「幸せ」

 大まかな話の流れは上述の通りでしたが、個人的に注目したいポイントとして各キャラの「素朴な願い・幸せ」に関する描写があります。様々なキャラが一貫して自分の願いのために戦っているというギーツ本編を彷彿とさせる要素をチラつかせつつも、その願いの本質が普通ながらどこか尊く感じられるものばかりだったのが印象的でした。

 まず主人公の1人である宝太郎については母親との関係にフォーカスしていたのが最大の特徴。冒頭からテストの件などで母親と喧嘩してしまうものの、中盤からそのことに対する罪悪感や謝ろうとする意志を見せたのが素敵でした。クロスウィザードに夢の世界の魅力を説かれた時も、「現実の母さんにちゃんと謝りたい」とハッキリ言ってみせた辺りに好感が持てます。何てことのない家族の問題にキチンと向き合い、虚構の理想を否定するくだりはベタながら胸が熱くなるものがあります。そしてそんな宝太郎だからこそケミーとの共存を真面目に考えている点や、クロスウィザードに手を差し伸べる点にも説得力が生まれていると改めて感じましたね。

 さらにもう1人の主人公である英寿のパートはギーツケミー(コンスタンティン)の存在が大きく関わっていたことが大部分を占めていました。ギーツケミーの正体が英寿が幼い頃に飼っていた犬のコンというタネ明かしには最初目が点になったものの、普段から飄々とした英寿が子どものように涙を流す様子には胸打たれました。本編でも母・ミツメにしか見せたことのないような表情の数々は、ある意味で“英寿という個人”のキャラクターを形成していたと感じます。何だかんだで若い英寿がコンと楽しそうな日々を送り、悲しい別れをする回想には涙ぐむものがありましたし、本編での超然的な英寿を見てきたからこその感動がそこにあったとも言えます。

 そんな願いを正道を進むことで叶える気持ちよさも本作のポイントだったのかな、とも考えています。というのも黒幕である釘宮調査官の起こした計画や準備の壮大さと、動機と目的のみみっちい点のミスマッチ感が変な笑いを引き寄せたからですね。大したことのない逆恨みなのにやっているスケールはやたら大きい、そして失敗する過程のどうしようもなさは、願いのために他人を陥れずに進む宝太郎たちとはある意味で正反対でした。ガッチャード本編でも鉛崎ボルトという似た方向性のネタキャラがおり、その哀れなラストもあって「周りを羨むよりも自分の目的のために真面目に邁進出来る人間が1番偉い」とも言うべきメッセージが込められているかのように感じました。何てことのない願いや幸せを、自分自身の手で掴み取ることこそが本作のテーマだったかもしれません。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

一ノ瀬宝太郎/仮面ライダーガッチャード

 『ガッチャード』の主人公。ガッチャを追い求める元気な高校生という本編でのノリはそのままに、本作では英寿らギーツ勢との絡みも多少加わることでより少年らしさが強調されていたように感じます。特に上述の通り母親と些細なことで喧嘩してムキになったり、化かしてくる英寿をギャフンと言わせるために行動するといった子どもっぽい行動の数々にはどこかクスっとさせられます。それら含めてまさに「等身大の男子高校生」といった趣きになっていました。

 そんな宝太郎ですが、後半に入ってからは母親との仲直りを望んで目先の欲望に負けない意志の強さを発揮してくれたのは流石といったところ。俗っぽさを抱えながらも、大事な場面では決して間違わない主人公らしさは本編同様で見ていて安心感がありましたね。そしてテレビ本編で度々口にしているケミーと共に生きる理想も、それらの描写とクロスウィザードへのやり取りのおかげでだいぶ地に足が付いてきたように感じました。素朴な願いや幸せを真剣に考え、突き進む宝太郎はまさに本作のテーマに沿った主人公だったと言えます。

 

 

浮世英寿/仮面ライダーギーツ

 『ギーツ』の主人公。創世の神になってからも圧倒的な強さと頼もしさは健在で、レベルナンバー10のゲームや釘宮調査官とのバトルでも苦戦らしい苦戦はほとんどありませんでした。(敵が少々創世の力をメタって来た時も仲間の協力である程度何とかなりましたし)それでいて宝太郎のことを翻弄しながらも導くシーンもあり、あちらとは別の意味で安心感が半端なかったです。その強さで現行のライダーを支え共に戦う……まさに後輩を支える理想的な先輩ライダーの務めを果たしてくれていましたね。

 それでいてギーツケミー(コン)との物語で涙を流したりと、上述の通り普通の青年のような描かれ方も印象に残りました。ギーツ本編ではめったに見せなかったその様子は、デザイアグランプリに関する一切を排した英寿ならではの感情だったのでしょう。転生を繰り返すデザグラプレイヤーでもなければ創世の神でもない、浮世家に生まれた英寿という若者の幸せを掘り下げるのにこれ以上の表現はなかったとも捉えられます。最後に浮世家宅に残されたコンの犬小屋を見て微笑む英寿のシーンは、そんな彼個人のキャラクターが見せたささやかな願いの表れだったのかもしれません。

 

 

九堂りんね仮面ライダーマジェード

 本作最大のサプライズ要素。いつかは来るだろうと思っていたりんねの変身ですが、まさか本編よりも映画で変身を果たすとは思ってもみませんでした。夢の世界での父・風雅とのやり取りを経てから上がり始めた期待を直球で魅せ、大活躍を果たすまでのくだりはテンションが上がりっぱなしでしたよえぇ。(「2号ライダー初の女性ライダー」という記念すべき肩書きも良き)公開された日と同日の夕方にこの情報が発表されたのもあり、公開日に観に行って良かった!!と本気で思える瞬間を味わえた気分です。あと薄々予想していたけど風雅パパ生きとったんかワレ!!

 りんねに関してはこのマジェード変身までの流れが最大の魅力だったと言っても過言ではありません。何といってもクロスウィザードが見せた夢の世界で父親と穏やかな日々を夢見ながら、再び夢の中の父に会いに行って戦う覚悟を固めるシーンは見事の一言。宝太郎とはまた別の形で、目先の欲望よりもやるべき使命に準じた姿がカッコよかったです。「この一言で私は変わる!」「字(あざな)は、仮面ライダーマジェード!!変身!!」からも、これまでの見ているだけではない、自らも戦う決意を見せたりんねの強さが現れていて最高でしたね。

 

 

桜井景和/仮面ライダータイクーン

鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴ

吾妻道長仮面ライダーバッファ

ツムリ

 英寿と共にデザグラを戦ってきたライダーたちとナビゲーター。本作ではツムリ以外はクロスウィザードにケミーにされ、中盤まで可愛い姿だったりカードに入ったりとコミカルな役回りでしたね。さらに夢の世界では何ともシュールな理想の光景を晒しているのもポイント(中でも「A5ランクの牛肉を後輩に奢る夢」を見ている道長でほっこりしました)で、彼らのどこか平和そうなやり取りに和まされますね。本編での出来事が過酷だったからこそ、このような愉快な目に遭う様子にどこか癒されるものがあります。

  そしてそれぞれガッチャード勢とチームを組んでケミー捕獲に動き出す前半が、最も彼らの魅力が出ていました。ガムシャラに突っ走る宝太郎と共に痛い目を見る景和、スパナを説得して協力を持ち掛ける道長など、こちらが予想していた通りの絡みが見られて満足度が高かったです。その中でも蓮華と錆丸と共にエクシードファイターを追っていた祢音が見どころで、「造られた存在」としてケミーへの親近感を抱いたことが捕獲成功に繋がる流れには膝を打ちました。まさにキャラの特徴を抑えた的確な描写に唸らされましたね。

 

 

黒鋼スパナ/ヴァルバラド
銀杏蓮華
鶴原錆丸
ミナト

 宝太郎とりんねの頼もしき仲間たち。他のキャラと比べると良くも悪くもでいつも通りすぎて、かえって影が薄くなってしまった印象は否めなかったです。とはいえこちらもギーツ勢との絡みで理想的なやり取りを見せてくれたのは変わりません。ガッチャード本編での楽しそうなシーンもあり、何だかんだで彼ら彼女らがいてくれる場合の安心感もありましたね。

 その中でスパナは割と大きく活躍していましたね。上述の道長とのチームでも超A級錬金術師としてのプライドを持ち続けながら、道長の言葉に一定の理解を得る様子は見ていてニヤリとさせられます。道長を囮にしつつリクシオンを倒す瞬間は、まさにこの我の強い両者ならではの協力プレイだと感じました。またこの2人の問答がどうしても「2号ライダーが言いそうなセリフ集」にしか聞こえなかったり……

 

 

クロスウィザード

 本作の事件の発端ともなったレベルナンバー10、ジョブ属性最強のケミー声はクロスウィザードというよりもアークウィザードですねエクスプロージョン!ゲームを楽しむ愉快な言動と性格で翻弄してきながら、中盤の夢の世界に引きずり込む姿は何とも不気味なものがありました。子どものような無邪気さと悪意のなさで恐怖を引きずり出す演出としては十分なものといったところです。どこか倫理的な面が欠如しているかに思える面も、ケミーの純朴さが出ていたと思います。

 それでいて一人ぼっちになることへの苦悩を見せるシーンにも惹かれました。大昔から子どもたちと遊んでは、去っていくこの後姿を眺めていたという回想だけでも彼(彼女?)の孤独がハッキリと伝わってきます。それだけに宝太郎という理解者を得るパートにグッときますね。その後釘宮調査官のせいで色々酷い目に遭いましたが、最後には助け出されてアカデミーの仲間の一員になれたことにホッとさせられるキャラに仕上がったと言えるでしょう。

 

 

釘宮リヒト/ウィザードマルガム/ギーツキラー

 本作の黒幕。ガッチャード本編に登場していたキャラが実は映画の黒幕であるだけでも驚きなのに、「2000年前のデザイアグランプリに参加していたプレイヤーの1人」という意外すぎる正体には度肝を抜かれましたね。前作との関わりを持ったボスキャラを本編に先行登場させる、その采配はある意味で斬新で衝撃を受けつつも大いに興奮させられました。(しかもライダーたち4人を同時に相手取って拮抗するなど妙に強かった点も印象に残りました)

 一方で「英寿への復讐」という目的の理由のしょうもなさや、それを達成するための大掛かりな準備の数々には何とも言えないシュールさを覚えます。何で2000年前から生きているのか?といった疑問には全く答えていない点も余計に笑いを誘いますね。そんな鉛崎ボルトのパワーアップ版とも言える調査官が主役ライダー2人に倒され、ミナト先生に連行されていく姿はあまりにも哀れ。錬金術としては立派なのにどうでもいい目的のためにそれらを台無しにした、どうしようもない人物としての完成は見事なものです。

 

 

ギーツケミー(コンスタンティン

 謎多きケミー、そしてラストの涙腺崩壊要員。とても愛らしいキツネとして、登場してからずっと英寿について行く様子に癒されました。他にも夢の世界に囚われた宝太郎に違和感を持たせるなど、要所要所で活躍していたのもあって結構好印象の多いお助けキャラになっていましたね。英寿に邪険にされていても離れない健気さもまた可愛らしいです。(白上フブキさんの声や、りんねに抱きかかえられているシーンが特に可愛い!

 そんなギーツケミーの正体でしたが、最初は唐突すぎる(あとごんぎつねネタやりたかっただけだろ!)と思ったものの何だかんだでウルっときてしまいました。冒頭の雨のシーンや英寿のみケミーにならなかった理由、そして英寿の「ペットは飼わない主義」という言葉の意味など全ての点が繋がる瞬間は中々に胸にくるものがあります。上述にもあるただの浮世英寿の幸せの象徴として、死後も彼を想い続けた忠犬ぶりに感動させられましたね。

 

 

 というわけでガッチャードギーツの映画の感想でした。本編と密接にリンクさせつつ、違和感なくまとめ上げた内容はやはり見ていて楽しかったです。物語の構成や盛り上がりに関しては良くも悪くも平均的で期待以上のものというのは少なかったものの、だからこその安定の面白さは間違いなく存在していたと思います。特にガッチャードとギーツ両方が好きな人にとってはファンサービス含めたまらない要素満載になっており、観て良かった!!と心の底から感じましたね。特撮の映画はこういうものでいいんだよ、とも言うべき満足感で本当に素晴らしい映画体験でした。

 

 

 ではまた、次の機会に。